NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2003年5月後半分

エネルギー

DOE、水素自動車と水素基盤の開発推進を目的とするプロジェクト提案公募を発表(2003/5/20)

エネルギー省(DOE)が、「水素自動車と水素基盤の実証及び確証プロジェクト」の提案公募を発表。予算総額1億5,000万ドルというプロジェクトは、産業界とDOEが均等にコストを負担する共同協定 (Cooperative Agreement)という形式で、公募は8月14日まで行われ、3〜5件のプロジェクトが選定される予定。応募チームは、自動車メーカーとエネルギー会社の双方の参加が必要条件となっている。

 

水素産業発展の好適地として期待されるカナダのマニトバ州(2003/5/20)

先頃発表された水素オポチュニティの予備報告:マニトバ州の水素開発方針設定」によると、豊富な水力資源に恵まれ、北米で電力価格が最も安く、燃料補給システムのような水素関連技術を専門とする製造会社を多数抱えるマニトバ州は、水素産業のセンターとして非常に魅力的な適地となる可能性があるという。

 

Abrahamエネルギー長官、ブッシュ政権の成し遂げたエネルギー業績リストを発表(2003/5/27)

エネルギー省(DOE)のSpencer Abraham長官は、ブッシュ大統領の国家エネルギー政策発表2周年を記念し、過去2年間に成し遂げた業績のリストを発表。@国内エネルギー生産の増産;Aエネルギー源の多様化;B省エネルギー努力の近代化など105項目の内、96項目で前進が見られると称賛する一方で、北極圏野生生物保護地域の掘削解禁や水素燃料イニシアティブ権限認可、および、電気事業再編等のように、議会採決の必要な提言が未だ達成されていないことを指摘した。

 

成長が続く米国の風力エネルギー産業(2003/5/27)

米国風力エネルギー協会(AWEA)では、米国の風力発電容量が2003年に、現在の約4,700メガワット(MW)から約6,000 MWに拡大(約25%増)すると推定。電力業界が全体として振るわないにも拘わらず、こうした風力発電増設ブームが起きている裏には、今年末に満期終了となる前に風力エネルギー生産税控除を活用しようとしている風力業界の実態が存在する。しかし同税控除の恒久化要請が議会に何度か提出されているが、全て失敗に終わっている。

 

ニカラグア政府が在郷地域における再生可能エネルギーによる発電事業を計画(2003/5/28)

ニカラグア政府は、世界銀行からの無利子融資などを受け、送電線がきていないような在郷地域において、再生可能エネルギーによる発電事業イニシアティブのプロジェクトを立ち上げることを計画中。このプロジェクトが成功すれば、単に在郷地域16000世帯に電気が供給されるこという効果だけでなく、今後行なうこととなる全国レベルで行う政府主導イニシアティブの模範となることを期待する。

 

石炭からメタノール精製を行うクリーンコールテクノロジー実証試験が終了(2003/5/28)

クリーンコールテクノロジー事業のうち「石炭からメタノール精製する技術」が11年のプロジェクト期間をもって終了。レーガン政権時代に開始された38件のクリーンコールテクノロジープロジェクトの1つで、DOEとAir Products Liquid Phase Conversion Company社(Air Products社)以下が共同研究契約を締結し、総額2億1370万ドルで実施された。液化メタノール技術(LPMEOH)を確立したこの事業では、従来の方法よりも精製効率がよく、触媒の寿命も長いことから事業化が強く期待されている。

 

米国の2大運送会社がクリーン自動車の導入を実施(2003/5/28)

米国の2大運送会社であるFedExとUPSがクリーン自動車導入事業を発表。FedExでは、4つの都市であわせて20台のディーゼル・電気ハイブリット車を導入するという。今回は、今後のハイブリット車導入を進めるための初期ステージで、10年間に3万台のハイブリット車導入を目標にしているという。一方、UPSでは、ダイムラークライスラーと協力し、ミシシッピー州Ann Arbor地区に2台の水素燃料電池自動車導入を計画。このプロジェクトにはEPAも協力し、水素燃料供給施設を建設、水素燃料自動車の実用化に向けた実証試験を行なうという。

 

ワシントン州の電力会社が波力発電を行う企業と契約を締結(2003/5/28)

ワシントン州にある公営電力会社のClallam County PUDは、米国の公営電気事業者としては初めて、波力発電を行う企業との電力売買契約を締結。AquaEnergy社がワシントン州Makah湾の沖合い約3.2マイルに4つの「アクアブイ」と呼ばれる発電能力250kwの波力変換器を設置し、発電された電気は海底ケーブルで陸上の中継ポイントまで運ばれる。購入した電気は、Clallam郡の顧客に標準の価格で再販する。プラントは、2004年の中頃までには完成する予定。

 

憂慮する科学者同盟、州政府の再生可能エネルギー導入への取り組みを評価(2003/5/28)

憂慮する科学者同盟は、全米の各州政府における再生可能エネルギーへの取り組みに対する評価を実施、“Plugging In Renewable Energy”という報告書で発表。報告書では、多くの州の対応の遅れを指摘。また、各州を評価した独自の成績表ではカリフォルニア州とネバタ州がもっとも評価高く「A−」。「恥ずべき」として厳しい評価を与えられたのは、ミズーリ州、ネブラスカ州、ノースダコタ州、オクラホマ州、サウスダコタ州、ユタ州の6つの州。さらに最低限の国家レベルの再生可能エネルギー使用基準(RPS)が必要であると訴えている。

 

DOE長官、上院歳出委員会の内務省担当小委員会で、2004年度予算要求を説明(2003/5/29)

ブッシュ政権は2004年度のDOE予算として、前年度予算を12億ドル上回る総額234億ドルを要求中。しかし、内務省・関連省庁歳出予算法案の管轄下にはいるDOEプログラムへの要求額は、前年度より7,670万ドル少ない17億ドル。Abraham Spencer DOE長官は5月22日、上院歳出委員会の内務省担当小委員会で開催された2004年度DOE予算要求に関する公聴会で証言を行ない、DOEの予算削減は、行政管理予算局の提言、および、DOEが実施したプログラム効率評価の結果であると説明。


環境

全米石炭委員会、石炭関連の温室効果ガス排出管理に関する研究報告を発表(2003/5/20)

全米石炭委員会(NCC)が、「石炭に関連する温室効果ガス管理問題」という研究報告を発表。この報告書ではDOEに対し、自主的プログラムによって温室効果ガス排出を管理すべきであると提言しているほか、排出削減報告ガイドラインを企業フレンドリーにするために包括エネルギー法案の見直しを行い、炭素管理技術に関連する国際的な研究開発や実証プログラムを推進するために国務省や商務省との協力を強化すべきであると答申している。

 

ニューヨーク州は温室効果ガス排出削減政策で北東部諸州のリーダーとなるべしと提言(2003/5/22)

クリーンエア政策センターとニューヨーク温室効果ガス特別調査委員会は「Pataki州知事に対するニューヨーク州温室効果ガス排出削減の為の答申」という調査報告を発表。運輸・ビルディング・電力という3部門が中心となっている同州の温室効果ガス増大を危惧し、公共輸送機関対策や中小型車両に関する地域的排出政策を実施し、2010年までに1990年レベルの5%減、2020年までに1990年レベルの10%減に削減するという州全体目標を設置すべきであると提言。これにより米国北東部諸州全体が利益を得ることになると主張している。

 

ピューセンター、排出権取引システムの重要性を指摘した報告書を2冊発表(2003/5/29)

世界気候変動に関するピューセンターが先頃、米国気候変動対応政策の構想を検討する報告書2冊を新たに発表。MITのA. Denny Ellerman氏とPaul L. Joskow氏、および、NERAのDavid Harrison氏の共著である「米国の排出権取引:温室効果ガスの為の経験・教訓・考慮」では、米国の排出権取引計画を検証し、上手く実施された場合は、「命令統制型」よりも低コストで迅速に環境目標を達成することが可能であると報告。もう1つのピューセンター研究者のRobert Nordhaus氏とKyle Danish氏らが作成した「義務的温室効果ガス排出削減の設計」では、GHG排出削減計画のオプションを検討している。

 

ワシントン大学の研究者、エアロゾルが気候変動に及ぼす影響を重視した研究論文を発表(2003/5/29)

ワシントン大学研究者のTheodore Anderson氏とRobert Charlson氏は、研究論文でエアロゾル(浮遊粒子状物質)が気候変動に及ぼす影響を十分に理解しない限り、気候モデルや気候モデルから得られた予測は不正確なものでしかありえないと主張。論文によると、エアロゾルと温室効果ガスの双方が地球温暖化傾向の原因ではあるものの、人間活動に起因する気候変動の支配的要因は現在のところエアロゾルであるという。

 

議会は減税法案から対立事項だった環境関連規定を除外(2003/5/30)

上下両院は、先に採決された減税法案から、“企業が政府に対して支払った環境関連等の罰金や違約金を税控除の対象とすることをやめる”という規定を落とすことで採決の直前で合意に達したという。


サイエンス・テクノロジー

国防省、極超音速機の開発に1億5,000万ドルの投資を予定;目標は2012年にマッハ12(2003/5/20)

国防省が、極超音速航空機の開発努力を復活させることに力を入れていると伝えられている。国防省が2004年度予算として1億5,000万ドルを要求している極超音速研究開発の新計画は、2012年までにマック12での飛行を目標とするもので、実現に必要となる数々の野心的な開発目標を段階的に設定。国防省高官達は、新計画には数十億ドルの研究開発費がかかるものの、その成果は投資に値するだけの価値があると断言。

 

UCバークレー校の研究チーム、ナノテクノロジーを活用した注射器を開発(2003/5/20)

カリフォルニア大学バークレー校のBoris Stoeber氏を中心とする研究チームが、ナノテクノロジーを活用した無痛の薬剤投与方法を開発。チクレットという正方形の飴に形が似ていることから「チクレット注射器」と呼ばれる新デバイスは、太さが毛髪の約5分の1という針の密集体(クラスター)で、長さは厚い外皮を突き刺すには十分であるが、神経の痛感系を刺激するほど深くは刺さらないため、殆ど痛みを生じないという。

 

国立標準規格技術研究所、原子を必要に応じて一個づつ隔離・供与する新技巧を開発(2003/5/22)

国立標準規格技術研究所(NIST)の物理学者達が、需要に応じて単独原子の隔離・供与を行なう新たな技巧を開発。新方法は、特定周波のレーザー光線を吸収した原子が、蛍光を発するという特性を利用している。この新デバイスは、ナノテクノロジーや量子コンピュータを始めとする幅広い研究分野に大きな反響をもたらすものと期待されている。

 

ローレンスバークレー国立研究所で空調システムの漏れを防止する新しいツールを開発(2003/5/28)

ローレンスバークレー国立研究所の研究では、業務用ビルディングでのエアコンなどの配管漏れを防止することにより何十億kwhもの電力が節約ことに着目し、これを行なうための装置を開発した。MASISと呼ばれる装置は、シーリングプロセスモニタリングシステムと小型の噴射装置から構成され、ケーブルを使って配管外部からのコントロールを行い、基管内部を移動してシール材を噴射し、配管漏れ箇所を修繕するというもの。様々な先端技術が利用されている。

 

米国の製薬会社Genentech社が、ガン治療の新しい薬の臨床試験に成功(2003/5/28)

米国の製薬会社Genentech社は、予てから議論されていた新しいタイプのガン治療薬について臨床試験を行い、一定の効果があることを証明したことを発表。Genentsch社の“Avastinモという新薬は、血管の成長を抑制し、ガン腫瘍に酸素や栄養分の供給を妨げることでガン治療が行えるというコンセプトに基づき開発されたもの。これまでに7つの類似の新薬で人体を対象とした臨床試験を行なっているがいずれも失敗に終わっている。市場からの期待は大きく、アナリストによると年間10億ドルの市場が見込まれるという。

 

UCアーバイン校が腫瘍検査を行なうためのナノプローブ開発に着手(2003/5/28)

カリフォルニア大学アーバイン校の研究者らは、良性及び悪性腫瘍を発見するためのナノプローブ開発として、NIHから5年間総額290万ドルの補助金を獲得。ガン腫瘍や良性腫瘍の治療は、早期発見がポイントになっており、現在の技術では発見できないような体内の変化や小さな腫瘍を発見することができるナノプローブの開発を行うというもの。UCアーバインが持つ、Optical Coherence Tomographyと呼ばれる技術を活用し、体内の詳細の映像化や生体組織検査ツールを開発する。

 

ベンチャーキャピタルが1997年レベルに後退(2003/5/28)

PriceWaterhouseCooper社とGrowthink社が行なった調査によると、米国でのベンチャーキャピタルは2003年度第1四半期において、1997年レベルまで後退しているという。また地区別の投資については、全米のベンチャーキャピタルが最も多い地区は引き続きサンフランシスコのベイエリアで、全米1位の29.5%、以下、ボストン、ワシントンDC、ニューヨーク、シアトルの順に続く。また、前四半期に上位10位から落ちたシカゴなどは再び6位に返り咲いている。

 

Bell研究所、景気後退の影響をうけ、製品開発志向型に方向転換(2003/5/29)

米国企業リサーチのトップクラスのBell研究所が、研究の重点を、基礎的なナリッジ志向型から製品開発志向型に転換しているという。最盛期には数千人の科学者を雇用し、年間約3億5,000万ドルの研究開発(R&D)費を享受したBell研究所も、13四半期連続で赤字を計上した親会社のLucent Technologies社のコスト節減・組織再編の影響を受け、現在ではスタッフが約400名、年間予算も1億1,500万ドルまで削られている。真っ先に削減されたのが基礎研究プロジェクト。

 

NISTは新たに7件のATP支給を決定(2003/5/30)

NISTは、ATPの新規採択テーマ7件を採択。新規採択テーマの7件は、幅広いテーマをカバーするもので、総額12.8百万ドル(2003年のATP予算は178.8百万ドル)。ATPでは、年間を通じた審査制度(年3回)を用いており、今回は、2002年申請提出分の第2回目審査の結果。全ての受給案件は小企業がリードするもので、受給先負担も全体で6百万ドルとなっている。


議会・その他

Whitman環境保護庁長官、ブッシュ大統領に辞表提出(2003/5/22)

Christie Whitman環境保護庁(EPA)長官が、6月27日付けで長官職を辞任する旨を記るした書簡をブッシュ大統領に提出。環境保護と経済繁栄は協力して前進出来るという信念の下EPAの職務をこなしたというWhitman長官は、ブッシュ政権の京都議定書離脱など数々の環境論争で矢面に立たされ、産業界・環境保護者・保守派・穏健派はもちろん、行政府高官からも批判を受けていた。後任としては、John Engler元ミシガン州知事、David Struhsフロリダ州環境保護長官、自動車メーカー同盟の現CEOであるJosephine Cooper女史等の名前が上がっている。

 

下院エネルギー・商業委員会の衛生小委員会、ゲノム情報の将来利用について審議(2003/5/27)

下院エネルギー・商業委員会の衛生小委員会が公聴会を開催し、国際的なヒトゲノム計画(HGP)で収集したデータの活用方法について討議を行なった。公聴会では、連邦政府のヒトゲノム配列解析への投資が、公衆衛生およびバイオテクノロジー産業界にどのようなベネフィットをもたらすのかという点に関心が集中。証言者達は、最終的には国民一人一人の遺伝子が解析・分析され、遺伝子情報に基づいた個人別の治療方法が可能になると発言したほか、疾病治療ではなく、疾病予防策を取ることで生まれる医療費の低下が、遺伝学のベネフィットの一つであると指摘した。


Top Page