NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2004年12月前半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

12月14日号

商務省とビッグスリー、米国自動車産業の製造競争力改善の為、新パートナーシップを形成

商務省の技術局 (Technology Administration = TA) と米国3大自動車メーカーは12月9日、ミシガン州サウスフィールドにある米国自動車研究協議会 (United States Council for Automotive Research = USCAR) 本部で、米国自動車産業の製造競争力改善を主要目的とする新パートナーシップ「米国自動車製造技術工学同盟 (United States Alliance for Technology and Engineering for Automotive Manufacturing = U.S. A-TEAM)」の形成で、合意書 (memorandum of agreement = MOA) に調印した。同MOAには下記の特定条項が盛り込まれている:

  • 商務省の国立標準規格技術研究所(NIST)、フォード、ゼネラル・モーターズ、及び、ダイムラー・クライスラーの科学者やエンジニアを一同に集結させ、競争前の(pre-competitive)技術研究、特に、(1)デジタル/バーチャルなツール;(2)工場の設備制御装置(plant floor controllers);(3)人間工学(ergonomics)の3分野に焦点をあてた研究活動を行なう。
  • 商務省の技術政策部(Office of Technology Policy = OTP)と業界パートナーが協力して、新たな研究開発課題、グローバルな自動車産業における製造パラダイム、および、そうしたパラダイムが科学技術や標準規格や世界貿易等にもたらす意味を探る。
  • U.S. A-TEAMの活動に対して指針を提供するため、ハイレベルの産官運営委員会を創設する。
  • USCAR本部にNISTの連絡事務所を置く。
  • OTPと商務省国際貿易局内に新設される製造担当次官補室との間の調整を図る。

(Technology Administration Press Release, December 9, 2004)

カナダ政府、エタノール拡大プログラムの第2ラウンドを開始

カナダ政府は12月6日、国内のエタノール生産能力増強を狙い、エタノール拡大プログラム(Ethanol Expansion Program) の第2ラウンドとして、エタノール生産施設新設提案または既存施設拡張提案を募集すると発表した。カナダ政府では、第2ラウンドのグラントとして2,750万カナダドルを予定しているという。

2003年10月に開始された総額1億カナダドルのエタノール拡大プログラムは、その第1ラウンドで6件のエタノール生産施設新設プロジェクトを選定した。新設工場の年間エタノール総生産量は6億5,000万リットルと推定されている。第2ラウンドでは、給付されるグラントが如何に効率的にエタノール燃料生産を拡大し、温室効果ガス排出を削減するかという点が選定要素になるという。第2ラウンドの提案受付期限は2005年2月22日。(Natural Resources Canada News Release, December 8, 2004)

米国議会、全米研究委員会の報告を受け、ハッブル望遠鏡修理計画に関する公聴会を開催すると発表

全米研究委員会 (National Research Council = NRC) は12月8日、ハッブル宇宙望遠鏡の修理は、米航空宇宙局(NASA)が計画中のロボットミッションではなく、有人シャトルミッションによって実施されるべきであると主張する報告書をNASAに提出した。

NASA当局者はこの数ヵ月間、2007年12月までにはロボットミッションを実行に移せるという楽観的な見解を抱き始めていたのだが、NRCの『ハッブル宇宙望遠鏡延命オプションの査定評価 (Assessment of Options for Extending the Life of the Hubble Space Telescope)』は、コロンビア号事故の後でSean O'Keefe局長がハッブル修理有人ミッション中止を発表して以来の論争を再熱させている。これを受け、下院科学委員会、および、上院商業委員会は既に、NRC報告書とNASAの取るべきハッブル宇宙望遠鏡修理手段を検討するため、来年の早い時期に公聴会を開催する予定であると発表した。

NRCのシャトルミッション支持とNASAのロボットミッション支持に見られる主要な見解の相違は下記の通りである:

  • ロボットミッションは実現可能か? … NRCは、2007年までに解決されねばならない技術的課題が多すぎるため、NASA計画は非現実的であると主張。現実的に見て、ロボットによるハッブル望遠鏡の修理日程は2010年頃になるであろうと示唆している。
  • 推定コストは正確か? … NRCは、10〜16億ドルというO'Keefe局長の推定は実際には、17〜24億ドルになると主張している。
  • 安全面の懸念は妥当なものなのか、あるいは、コロンビア号事故への過度な反応であるのか? … NRCでは、シャトルをハッブル望遠鏡修理に送るリスクと、国際宇宙基地に送るリスクの差は極僅かであると指摘している。

(CQ Today, December 8, 2004; Washington Post, December 9, 2004)


12月13日号

国家エネルギー政策委員会、エネルギー政策に関する超党派提言を発表

国家エネルギー政策委員会(National Commission on Energy Policy = NCEP)が12月8日、「エネルギー政策膠着状態の終結:米国のエネルギー課題を満たす超党派戦略 (Ending the Energy Stalemate: A Bipartisan Strategy to Meet America's Energy Challenges)」という調査報告を発表した。NCEPは、ブッシュ大統領 (父) 時代に環境保護庁長官を務めたWilliam Reilly氏、ハーバード大学のJohn Holdren環境政策学教授、大手電力会社Exelon社のJohn Rowe最高経営責任者、Ford自動車のMartin Zimmerman副社長と始めとする産官学の専門家16名から成る超党派グループで、とかく分極化しがちな将来の国家エネルギー政策提言についてのコンセンサスを確立するべく、この3年間努力を重ねてきた成果をこの提言にまとめたという。NCEPでは同報告書の提言・戦略が議会法案の土台になることを期待しているという。

エネルギー供給確保に対する懸念やエネルギー関連温室効果ガス排出に起因する世界気候変動のリスクに対応しながらも、手頃で安定したエネルギー供給を保証するために、NCEPでは下記の6部門に分けてエネルギー政策を提言している:

  1. 石油供給確保の改善
    • 世界石油生産の増産と多様化、および、世界的な戦略石油備蓄ネットワークの拡大
    • 制定30年という企業平均燃費(CAFE)基準の改正と大幅な強化
    • ハイブリッドや先端ディーゼル自動車の国内生産および購入を奨励する製造者・消費者向けインセンティブとして今後10年間で30億ドルを提供
  2. 気候変動に起因するリスクの削減
    • 将来の温室効果ガス排出増加を抑制するため、2010年までに強制的な排出権取引システムを導入:当初のコストは二酸化炭素換算で1トンあたり7ドルを上限とする。
    • 2010年以降の米国の排出削減行動を、他の工業国や途上国のコミットメントと連携して推進
  3. エネルギー効率の改善
    • 新型電気器具や設備、および、ビルディングのエネルギー効率基準のアップデートと実施
    • 対象技術のインセンティブや研究開発イニシアティブ、および、電気・ガス会社の効率改善計画等を活用
    • 産業部門におけるコスト効率的なエネルギー効率改善努力
  4. 手頃で信頼の高いエネルギー供給確保

   <天然ガス>

  • アラスカの天然ガスパイプライン建設に対するインセンティブの導入
  • 液化天然ガス輸入拡大に必要なインフラの立地および建設の奨励

   <先端石炭技術>

  • 石炭ガス化複合発電(IGCC)技術の早期導入インセンティブとして今後10年間で40億ドルを提供
  • 商業規模の炭素地下隔離・回収実証インセンティブとして今後10年間で30億ドルを提供

   <原子力>

  • 現行の核廃棄物管理に対する連邦政府コミットメントを履行
  • 1〜2ヵ所の新型原子力発電所を実証するため、研究開発・実証・設置予算として向こう10年間で20億ドルを提供
  • 国際的な核拡散防止体制を強化

  <再生可能エネルギー>

  • 連邦政府の再生可能エネルギー技術研究開発費を年間3億6,000万ドルづつ拡大
  • 再生可能エネルギー利用発電に対する連邦生産税控除期間を4年間延長
  • バイオマスから生成する輸送用非石油燃料の国内生産を増産するため、10ヵ年15億ドルの計画を設置
  1. エネルギー供給基盤の強化
    • 必要不可欠なエネルギー基盤の立地を妨げる障壁を削減
    • 重要インフラを事故やテロ攻撃から保護
    • 大規模発電所や小規模「分散型」発電といった多様な発電源を支援
    • 発電所の排出を削減する統括的な複数汚染物質抑制プログラムを設立
  2. 将来に備えたエネルギー技術開発
    • 連邦政府のエネルギー研究開発予算を倍増
    • 民間部門のエネルギー研究・開発・実証・早期導入に対するインセンティブを拡張
    • (1)石炭ガス化・炭素隔離;(2)国産の燃費の良い自動車;(3)国産の輸送用石油代替燃料;(4)新型原子炉、の早期普及の為のインセンティブ

(NCEP Report, December 8, 2004; New York Times, December 8, 2004)

ブッシュ大統領、次期エネルギー長官に現財務副長官のSamuel Bodman氏を指名

ブッシュ大統領が12月10日、Samuel Bodman財務副長官をエネルギー省(DOE)の次期長官に指名した。1965年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で理学博士号を取得したBodman氏は、化学工学部の準教授として6年間MITで教鞭についていた時に、テクノロジーやイノベーション中心の新会社に財政・経営面でのアドバイスを行なうコンサルタント業を開始している。その後は、Fidelity InvestmentsやCabot Corp.で最高経営責任者を含む要職に就いたが、2001年にブッシュ大統領によって商務副長官に任命されたのをきっかけに政権入り。2004年2月からは財務副長官職にあった。ブッシュ大統領はBodman氏を「目標を設定し、設定目標を達成する方法を心得た問題解決者」であると高く評価している。しかしながら、同氏はエネルギー業界には馴染みの薄い人物であり、エネルギー長官候補として名前があがっていなかったため、同氏の指名は意外な人事であると言える。

エネルギー業界情報筋では、今回の人事は、DOEの数十億ドルにのぼる核施設を監視できる経営面の経歴を持った人物をブッシュ政権が捜していたことの現われであると示唆しているが、いまのところ、エネルギー業界の反応は肯定的で、エジソン電気協会のTom Kuhn会長も米国ガス協会のDavid Parker会長もBodman氏のリーダーシップや科学技術面での知識を評している。

Bodman氏はこれまでに商務副長官と財務副長官として上院承認を受けているため、DOE長官の承認審議も比較的容易に進むものと見られている。DOE長官として同氏は先ず、包括エネルギー法案の議会可決への助力、および、停滞しているヤッカマウンテン核廃棄物貯蔵所問題の解決に直面することになるであろう。(Greenwire, December 10, 2004)


12月10日号

カナダ国家研究会議の燃料電池革新研究所、再生可能資源を利用した水素生成装置を公開

カナダ国家研究会議の燃料電池革新研究所(National Research Council Institute for Fuel Cell Innovation = NRC-IFCI)が12月9日、バンクーバーの研究施設で太陽光を利用する水素生成システムを公開した。このシステムは、太陽光パネルで発電した電気を使ってハイドロジェニックス社製のHyLYZER電解槽モジュールを動かし、水から水素を生成するという仕組みである。こうして生成された水素は、バラード・ネクサRMシリーズの燃料電池モジュールの燃料として利用され、NRC-IFCI施設に予備電力を提供することになる。

NRC-IFCIの同プロジェクトは、台頭する水素技術分野におけるカナダのリーダーシップ実証計画の一環であるため、システムのコンポーネントはすべてカナダ製となっている。太陽光発電パネル(晴れの日には最高7 kWを発電できる)は、ブリティッシュ・コロンビア技術研究所(British Columbia Institute of Technology = BCIT)が設計し取り付け、電解槽はオンタリオ州のハイドロジェニックス社が、燃料電池はバラード社が供給している。(Fuelcellstoday.com. December 9, 2004)

コロラド州、コロラド燃料電池イニシアティブの提案募集中

コロラド州知事のエネルギー管理・省エネ室(Office of Energy Management and Conservation = OEMC)が、州内で燃料電池の研究開発、教育、商品化を推進するコロラド州燃料電池センター (Colorado Fuel Cell Center = CFCC) 設立計画案の入札を公募した。OEMCは2ヵ年で最低200万ドルの資金調達を保証しており、計画案が最低100万ドルのマッチング資金を保証することを要請している。

計画案には、作業、主要管理点、CFCCの運営、見積もり費用予算明細書、当初の2年の期間以降のCFCCの持続可能性をどう確保するかの説明が含まれなければならない。入札申込受付期限は2005年3月で、落札者は2005年4月中旬に発表される予定である。(Colorado Governor's Office Press Release, December 9, 2004)

グリーンフュエル・テクノロジー社、 発電所の排気物を処理する光合成プロセスを開発

グリーンフュエル・テクノロジー社が発電所の排気物を捕獲し、バイオディーゼルを生産する斬新なバイオテクノロジー・プロセスを開発し、国際的に特許を受けた。

このプロセスには藻類の懸濁液の入った回転式チューブが使われる。チューブの回転運動は複雑な数学的方式で決められており、藻にあたる日光量を調節してプロセスを阻害する日光不足や日光過剰が起こらないようにしている。窒素酸化物などの有害排気物がチューブに注入されると、藻が発育し繁殖する過程でこれを光合成によって分解してしまう。この極めて効率的なプロセスには、二酸化炭素を捕獲するという付加的メリットもある

藻の収穫は極めて簡単で、回転式チューブの回転を止めて底に沈んだ藻を集めることができる。こうして収穫された藻はバイオリアクターでバイオディーゼルに加工することが可能である。(USEA Luncheon Symposium, December 9, 2004)

窒素酸化物規制の強化を見越し、オハイオ州立大学がガス検出用新型センサーを開発中

環境保護庁(EPA)が発電所およびディーゼル車から放出される窒素酸化物の規制を強化することを予期して、オハイオ州立大学化学部のPrabir K. Dutta学部長はガス検出のための新型センサーを開発している。このセンサーによって、特定部位の漏洩検出が容易になり、ボイラーやエンジン全体を交換して巨額を支出する代わりに、余分な排出を減らす小型の修復が行えるようになる。

5年前から開発が始まったこのセンサーは現在も開発中だが、ゼネラル・エレクトリック社やダウ・ケミカル社を始めとする企業が関心を寄せており、この両社はテストを行っている。テキサス・インスツルメント社も将来提携する可能性がある。GEの発電センサー担当エンジニアリング主任Carl Palmerがセンサーの市販化のためにDr. Duttaに協力している。(Wall Street Journal, December 8, 2004)


12月8日号

サンディア国立研究所、飲料水の安全性を確認するセンサー開発の契約に調印

サンディア国立研究所のカリフォルニア州リバモア施設が、CH2M Hill社(コロラド州) およびTenix社 (オーストラリア) という防衛関連エンジニア企業2社との研究契約に調印した。この契約に基づき、同研究所は飲料水中の毒素を検出する化学・バイオセンサーの試作品を6ヵ月以内に2社に納入することになる。CH2M Hill社とTenix社は、コントラ・コスタ水道局の施設でこのセンサーの実地試験を行なう予定であるという。

MicroChemLabと呼ばれるセンサーは小型の化学実験室のようなものである。先ず、一種の色層分析法(Chromatography)を使ってバクテリアの分泌する毒素を確認し、発見されたバクテリアを蛋白質に分解する。その細菌独特の化学的「指紋」は病原体の化学的パターンをまとめたデータベースと比較されて、汚染物質の正体を正確に確認するという仕組みである。同プロジェクトの目的は、水道本管やポンプ室といった水源を1時間に2回リアルタイムでモニターできる無人装置を作製することで、サンディア国立研究所のPeter Davies地球科学・環境センター所長は、米国の水源インフラは非常にオープンで攻撃に弱いため、同センサーはテロ攻撃時の問題解決方法として有用になると指摘している。一方、同様の試みが過去に失敗しているため、このセンサーが実際に問題解決に役立つかどうかを疑問視する者もいる。(Oakland Tribune, December 7, 2004)

カリフォルニア大学バークレー校、ナノテク研究センターの創設で全米科学財団からグラント受領

カリフォルニア大学バークレー校が、総合ナノ機械システムセンター(Center of Integrated Nanomechanical Systems = COINS) 創設で、全米科学財団 (National Science Foundation) から1,190万ドルのグラントを受領した。同校では既に、世界トップレベルの施設、80名以上のナノサイエンス専門教授を抱え、(1)低価格太陽電池の製造;(2)分子大トランジスターの設計;(3)世界最小モーターの作製といったプロジェクトを実施しているが、今回新設されるCOINSにより、同大学はナノ科学分野における世界的リーダーとしての地位を確実にすることになる。

しかしながら、同校におけるこうしたナノテク分野の成長にも拘わらず、ナノテクノロジーは環境および人間の健康面に危害をもたらし得ると指摘する者も多い。例えば、同校のEricke Weber材料科学博士は、ナノ分野を慎重に研究・管理しなければならない証拠として、ナノ粒子への暴露で有害な副作用が生じたことを実証した動物研究をあげている。こうした懸念が存在する一方で、ナノテク分野に関する連邦政府の関心が高まっていることも事実であり、政府支援はこの4年間で2億7,000万ドルから9億6,000万ドルに激増している。(Small Times, December 1, 2004)

エネルギー法案を巡る攻防、来年の焦点は上院

上院エネルギー・天然資源委員会のPete Domenici委員長 (共和党、ニューメキシコ州) は、包括エネルギー法案の可決を確実にするため、第109議会では新たな戦術を採用する予定であると語っている。第一の優先事項は、北極圏野生生物保護区域(ANWR)条項の可決であって、民主党議員による議事妨害を回避するために、同委員長はANWR条項を包括エネルギー法案から切り離し、2006年度財政調整 (budget reconciliation) 法案に添付する予定であるという。第二には、この春に同氏が提案した上院第2095号議案を基にした新たな包括エネルギー法案を、共和・民主両党の上院議員等と協力して策定していく意向であるという。

下院エネルギー商業委員会のJoe Barton委員長 (共和党、テキサス州) は、エネルギー法案よりもクリーンエア法の改訂に関心を抱いていると伝えられている一方で、上院が包括エネルギー法案を可決させた場合には、下院はその法制化で助力する用意があると語っている。(Greenwire, December 6, 2004)


12月6日号

進歩政策研究所、経済成長に環境技術を活用するよう提言した政策報告を発表

進歩政策研究所(Progressive Policy Institute = PPI)が、環境技術の推進によって経済成長を図るようブッシュ政権に進言する政策報告書を発表した。「新たな環境技術で経済成長を鼓舞する方法 (How New Environmental Technologies Can Stimulate Economic Growth)」では、1990年代に40%の成長を遂げ、鉄鋼や化学や繊維工業よりも多数の雇用者を抱える環境技術部門が、ここ数年間は年率僅か2%の成長に留まっていることを指摘し、米国が世界環境技術市場でリーダーシップを失ったと主張している。

PPI政策報告では、ドイツ・アイスランド・日本等の諸国が環境技術投資を推奨する積極的な戦略を取ってきたのに対し、ブッシュ政権は環境技術部門の成長を助長する健全な政策の実施を怠ったばかりか、環境規制をロールバック(逆転)し、規制施行戦略を緩和し、クリーンな代替エネルギーよりも国産石油や石炭を追求することに傾注、これが米環境技術部門の減速に繋がったと批判している。

一方で、中国やインドといった開発途上国が汚染問題を取り上げるにつれ、環境技術企業のビジネス機会が拡大することになるため、米国の環境技術部門には大きなポテンシャルが見られるという。そこで、同部門における米国のリーダーシップを復活させるため、同報告書は下記の7段階計画を提言している:

  1. ホワイトハウスは、環境技術分野におけるイノベーションの必要性を強調するためにリーダーシップを発揮すべきである。:大統領は科学技術政策局(OSTP)に、クリントン政権時のイニシアティブを範とした新たな環境技術イニシアティブを作成し管理するよう指示すべきである。
  2. ブッシュ政権は、米国企業による環境技術の商業化を助成するため、連邦政府内にワンストップショップを設置すべきである。:大統領は、ワンストップショップの形成、および、連邦省庁間の調整を行なう責任をOSTPに託すべきである。
  3. ブッシュ政権は、積極的な政府調達計画によって環境技術の需要拡大を支援すべきである。
  4. 行政府は、今後5年間で主要な環境技術の輸出を倍増させるべきである。:この目標を達成するため、OSTPは、商務省や輸出入銀行、国務省や米国国際開発庁(USAID)、環境保護庁(EPA)や米国通商代表部(USTR)等の協力を得て、クリーンテクノロジー輸出戦略を作成すべきである。
  5. 大統領は、環境関連科学技術の研究を推進するべきである。:この一環として、(1)1995年に廃止された技術評価局(Office of Technology Assessment)のような、台頭する新技術を査定評価する連邦プログラムの再設置;(2)「環境DARPA」の設置;(3)民間部門の資本にてこ入れするベンチャーキャピタル基金の創設等を行なうべきである。
  6. 新たな環境政策の原動力となる「優良センター(Center of Excellence)」を5〜10ヵ所設置する。
  7. EPAは、有望な若い研究者をリクルートし、雇用する能力を改善すべきである。

(PPI Policy Report, December 2004)

全米石油同盟、低硫黄ディーゼル規制は供給問題を引き起こす可能性があると指摘

全米石油同盟 (National Petroleum Coalition = NPC) は、2007年までに低硫黄ディーゼルへの移行を義務づける環境保護庁(EPA)規制の遵守が、これまで考えられていた以上に困難であることを指摘している。NPCによると、ディーゼル燃料の硫黄含有量を15ppmとするEPAの2007年規制は、海外のディーゼル生産業者の低硫黄ディーゼル生産能力不足、および、欧州連合の低硫黄ディーゼル需要増加等が原因となって、米国内での供給不足を引き起こす可能性があるという。

NPCではまた、パイプラインでの運搬中、および、貯蔵タンクでの保存中に、ディーゼルが硫黄残留物で汚れて、ディーゼルの硫黄含有量が増大することを懸念している。ディーゼルが精製所を離れた後で発生する可能性のあるこうした汚染に対処するため、精製業者は、EPA基準よりも更に低い硫黄含有量のディーゼルを生産しなければならないだろうと主張している。(Greenwire, December 2, 2004)

カリフォルニア州自動車排出基準の採用を画策する、ワシントン州のMurray下院議員

ワシントン州議会のEd Murray下院議員 (民主党) が、同州で販売される自動車にカリフォルニア州の厳格な排出基準を採用する法案を草稿中である。カリフォルニア州の立法者達は今年9月に、2012年型車の二酸化炭素排出量を現行車両の22%減、2016年型車で30%減という基準を自動車メーカーに義務づける規制を満場一致で可決し、米国北東部の7州もこれに倣うと表明している。

カリフォルニア基準を採用するというワシントン州法案には、環境保護団体だけでなく、ボーイングやBP、および、マイクロソフトといった同州内の大手企業も支持を表明している。ワシントン州の新知事となるDino Rossi氏(共和党)は、カリフォルニア基準に対する見解を明らかにしていない。(Greenwire, December 2, 2004)


12月3日号

進歩政策研究所、米国クリーンテクノロジー部門の現状に警鐘を鳴らす政策報告を発表

進歩政策研究所 (Progressive Policy Institute = PPI) が、米国がクリーンテクノロジー分野での競争力を失った主要原因は、行政府の政策と議会審議の行き詰まりであると指摘する政策報告書「米国がクリーンテクノロジーでの優位を損失した理由(How America Lost Its Clean Technology Edge)」を発表した。

米国は、風力発電や太陽光発電を始めとする数々のクリーンテクノロジーの開拓者であるにも拘わらず、風力発電容量では米国 (6,370メガワット) はドイツ (14,600 MW) に大差をつけられ、太陽電池生産や燃費の良い自動車設計では日本に大きく水をあけられているように、同部門で他国に追い抜かれてしまっている。PPIは、世界クリーンテクノロジー市場で他国が優位にたった理由を探るため、米国と欧州連合(EU)、および、日本のクリーン成長政策を比較分析したところ、米国の政策が下記の点で他の先進国と異なっていることを確認したという:

  • 現時点では炭素排出上限設定を拒否していること
  • クリーンテクノロジーを推進する暫定戦略の導入を欠いていること
  • クリーンエネルギー研究開発投資が減少傾向にあること
  • 連邦省庁間活動の調整が不十分であること
  • クリーンテクノロジー開発資本が不十分であること
  • クリーン製品の商業化が不十分であること
  • 効果的な市民啓蒙プログラムの実施を欠いていること。

(PPI Backgrounder, December 2004)

Scientific America誌のトップ50技術/企業に選ばれた、先端技術計画(ATP)支援の3プロジェクト

国立標準規格技術研究所 (NIST) の先端技術計画 (Advanced Technology Program = ATP) から助成を受けた3つのプロジェクトが、Scientific American誌の「2003〜004年度に実業部門で傑出した技術的リーダーシップを見せた50の技術/企業(50 technologies and companies that exhibit outstanding technology leadership in business in 2003-2004)」に選ばれた。この名誉は、これらのプロジェクトに供与されたATPのグラントが有効に利用されたことと、プロジェクトが極めて高い成果を上げていることを示している。

  • モトローラ、ダウ・ケミカル、ゼロックスの各研究所が関与する合弁事業 … ディスプレイの廉価で効率的な組み立てを可能にする特定用途向け集積回路 (application-specific integrated circuit) の為に、全く新しい有機電子材料と処理技術を開発するプロジェクト。ATPの助成額は760万ドル。
  • MTIマイクロフュエル・セルズ社とデュポン社の合弁事業 … 携帯電話やノート型パソコンのような携帯電子機器に使用できる小型燃料電池を開発するプロジェクト。ATPグラントは460万ドル。
  • グリコファイ社(GlycoFi, Inc.)… 現在の細胞培養技術の10分の1のコストと4分の1の時間で貴重な治療用タンパク製剤を作製するため、数々のヒト・タンパク質を大量に生成することが可能な遺伝子組み換えイースト菌を開発するプロジェクト。助成額は200万ドル。

(NIST TechBeat, November 24, 2004)

国立標準規格技術研究所、有機エレクトロニクスの計量プロジェクトを開始

低温で加工され、廉価かつフレキシブルな有機エレクトロニクスは、布や紙や掲示板等にもプリント可能であり、シリコン系回路の代替として広範な利用が期待されているが、そうした期待に応える為には、新たな計量法、基準、及び、処理能力の開発が必要となる。国立標準規格技術研究所 (NIST) は、こうしたツールや方法を生み出すために新たな5ヵ年研究プロジェクトを開始した。同プロジェクトでは、ポリマーやナノ複合材料といた有機エレクトロニクスの候補材料を調査するほか、インキジェット方式印刷やロールトゥロール方式 (roll-to-roll) 印刷といった様々な加工方法も調査する予定である。

究極的な目標は「統合計量プラットフォーム (integrated measurement platform)」を開発することで、NISTによると、このツールにより科学者やエンジニアは組成や構造および材料特性に基づいて、様々な有機電子デバイスの性能を把握し予測できるようになるという。これにより、同デバイスの製造に現存する問題が解決され、この新型チップの普及が加速するものと考えられている。(NIST TechBeat, November 24, 2004)

米国特許商標局、ナノテク関連知的財産保護に向け、ナノ・ダイジェストを確立

10月中旬に米国特許商標局 (USPTO) は、ナノテクノロジー用の新しい索引とクロス・リファレンスのダイジェスト (Class 977/Dig.1と指定) を確立した。これは、定義、サブクラス、他の米国のクラスの分類に関連する検索メモを含む、包括的なナノテクノロジー・クロス・リファレンス・アート・コレクション分類(Class 977, ナノテクノロジー)を究極的に作成する為の、マルチフェーズ分類プロジェクトにおける第1ステップとみなされている。

  • この分類プロセスは、知的財産の法的保護を求めるすべてのナノ系企業や投資家に影響を与える可能性が高く、下記の目的に役立つものと考えられる。
  • 特定の革新技術への特許がすでに下りているかを判断するための「先行技術」の調査が容易になる。
  • 2者が同じ発明を同時に特許出願した場合の争いの回避に役立つ。
  • 究極的にこれが特許の強化と保護しやすさにつながり、特許制度への信頼増大によって技術革新が助長される。

一方、これによって特許取得が以前より難しくなる、またスタッフが索引作りに集中するため、出願処理が滞る恐れがあるという意見も一部にある。 (Small Times Magazine, November/December, 2004)


12月1日号

ダウ・ケミカル社とGM、産業用水素燃料電池の共同実験で第2フェーズに突入

ダウ・ケミカル社とゼネラル・モータース社 (GM) が行っている、自動車用水素燃料電池の実現可能性および分散型発電源として可能性を証明する共同プロジェクトが第2フェーズに入った。第1フェーズではGM製の燃料電池1個をテストしたが、第2フェーズでは、複数の燃料電池から成るパイロットプラントを、配電網と特殊な水素浄化パイプライン・システムを通じて、テキサス州フリーポートにあるダウ・ケミカル社の化学品・プラスチック生産工場に統合する予定である。

第2フェーズの目標は、(1) 第1フェーズでの教訓を基に、分散型発電用としての燃料電池の信頼性を実証し;(2) 燃料電池利用発電の信頼度を改善・最適化し;(3) 燃料電池の廃熱回収利用方法を調査し;(4) 水素純度に関する条件の理解を深めることであるという。

ダウ・ケミカル社がこの燃料電池発電により、今後の同技術開発に必要な現実的データを収集できるほか、自社工場に最高1メガワットの電気も供給されると述べている一方、GMは、実世界の環境で不純物の混合した水素を使うことにより、水素純度のテストを実施できるだけでなく、様々な燃料電池発電を実験することも可能になると語っている。(Fuel Cell Today, November 29, 2004)

ダウ・ケミカル社とVeeco Instruments社、ナノ複合材料の機械的性質を測定するスキャニング装置の開発で協力

ダウ・ケミカル社が、ナノ複合材料を産業界の厳しいテストにかけた時に何が起きるかを査定するため、ナノ複合材料の機械的性質 (mechanical property) を測定可能なスキャニング装置の開発でVeeco Instruments社と提携関係を結んだが、この共同プロジェクトが国立標準規格技術研究所 (NIST) の先端技術計画 (ATP) から3ヵ年660万ドルのグラントを受領した。

ナノ複合材料生成時に発生する欠陥の発見は、材料損失によるロス …バッチあたり最高1,000ドル… を削減することになるばかりか、観察方法の向上はナノスケール現象のより良い理解にも繋がるため、最終的には、ナノ複合材料の製造方法や質管理を改善することになると期待されている。

科学インスツルメント会社であるVeeco Instruments社が、次世代の原子間力顕微鏡 (atomic force microscopy) 装置の開発を行ない、ダウ・ケミカルはスキャニング装置の実験材料となるナノサイズのポリマーを開発する予定である。(Detroit News, November 28, 2004)

ブッシュ大統領、Arden Bement博士を全米科学財団総裁に正式任命

ブッシュ大統領は11月24日、Arden L. Bement博士を正式に全米科学財団 (National Science Foundation = NSF) 総裁に任命した。国立標準規格技術研究所 (National Institute of Standards and Technology =NIST) の所長であるBement博士は今年2月22日から、暫定的にNSF総裁職を兼任してきたが、この公式任命により、NIST所長職を辞任することとなる。

同氏の約40年にわたる職歴には、NSFの政策機関である国家科学評議員会(National Science Board)メンバー、NIST先端技術計画 (ATP) 諮問委員会の委員長、防衛先端研究計画局 (DARPA) 高官といった政府要職の他に、パーデュー大学原子核工学部の部長、ゼネラル・エレクトリック社幹部や中西部超電導コンソーシアム所長といった学界・産業界での経歴も含まれている。(NSF Press Release, November 29, 2004)


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