NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2005年12月後半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

12月23日号

上院、米航空宇宙局(NASA)の活動を認可する「2005年NASA認可法案」を可決

米航空宇宙局(NASA)の科学、航空学、探査他の活動に対する2006〜2010年予算を認可する「2005年米航空宇宙局認可法案(National Aeronautics and Space Administration Authorization Act of 2005:上院第1281号議案)」(注1)が、2005年12月22日に上院本会議で発声投票により可決された。下院では12月17日に同法案を発声投票で可決済みであるため、NASA認可法案は大統領の署名を待つばかりとなった。

同法案ではNASAに、2007年度予算として約179億ドル、2008年度予算として約187億ドルを認可しているほか、NASAの国際宇宙基地(International Space Station = ISS)用予算の15%を有人宇宙探査プログラムとは無関係の無重力研究に充当するよう指示している。同法案のその他主要条項は下記の通り:

  • 有人宇宙飛行、航空学、宇宙科学、地球科学、および、無重力研究の分野においてプログラムを実施するようNASAに指示。
  • ブッシュ大統領の宇宙探査ビジョンを支持。
  • NASAが懸賞コンテストを実施することを認可。
  • 国防省に適用されるNunn-McCurdy規定(プロジェクトが当初予算を超過した場合に議会決議を義務づける規定)を手本とした、新たな報告義務要件とコスト管理を導入。
  • 航空学・科学・施設・作業要員のための複数年度計画策定を義務づけ、2007年3月16日以前の一時解雇を禁止。
  • ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッションを安全に遂行出来るのであれば、シャトルによる修理ミッションを支持。
  • ISSの米国所有部分を「国立研究所」に指定。
  • NASAのK-12(幼稚園から高校)教育プログラムの見直しを全米科学アカデミーに義務づけ。
  • 万が一にしてスペースシャトル他の有人探査機の事故が発生した場合、大統領調査委員会を指定する手順を確立。

(CQ Today, December 21, 2005; CQ.com, December 22, 2005)

新たな戦いを誓う、北極圏野生生物保護区域(ANWR)解禁支持者達

上院本会議は、北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge = ANWR)の一部を石油・天然ガス掘削に解禁する条項を「2006年度国防省歳出予算法案(Department of Defense Appropriation Act, 2006:下院第2863号議案)」から削除し、2005年12月21日夜半にANWRを含まない国防省歳出法案を93対0で可決した。

ANWR解禁を支持する議員等は、来年も同条項を推し進めることを誓っており、上院エネルギー・天然資源委員会のPete Domenici委員長(共和党、ニューメキシコ州)は上院本会議の採決終了後、来春草稿される2007年度財政調整法案に、またしてもANWR条項を盛り込む意向であると記者団に語っている。また、アラスカ州選出のLisa Murkowski上院議員(共和党)もANWR条項可決の為に再度挑戦すると宣言している。一方、ANWR解禁に反対する議員等は、今回はかろうじて勝利を収めたものの、再浮上まちがいのないANWR問題に関する更なる抗争に備えているという。(Environment and Energy Daily, December 22, 2005)

注釈:

1:この認可法案は、11月22日に大統領の署名によって公法109-108号として成立した「2006年度商務省・司法省・科学関係省庁歳出法案(下院第2862号議案)」 …2006年度NASA予算を含む… とは異なることに留意。


12月21日号

北東部7州、地球温暖化に対応する地域協定に署名

北東部7州 …コネチカット、デラウェア、メイン、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、バーモント州… の州知事が12月20日、米国初となる義務的温室効果ガス排出削減の地域協定合意書に署名した。これにより、地域別温室効果ガス先導策(Regional Greenhouse Gas Initiative = RGGI)と呼ばれる地域協定が公式にスタートすることになる。

同協定は25メガワット以上の化石燃料火力発電所を対象とするもので、7州は米環境保護庁(EPA)が酸性雨やスモッグの規制に採用した市場志向型制度を手本とし、同地域の二酸化炭素(CO2)排出量を1990年水準(約1億2,130万トン)に制限した排出権取引プログラムを利用する意向である。同プログラムの開始日は2009年1月1日で、各州には下記の年間排出予算(emissions budget)が配分される:

コネチカット州

約1,069.5万トン

デラウェア州

約756.0万トン

メイン州

約594.9万トン

ニューハンプシャー州

約862.0万トン

ニュージャージー州

約2,289.3万トン

ニューヨーク州

約6,431.1万トン

バーモント州

約122.6万トン

同合意により、各自の排出削減目標を達成できなかった州は炭素排出権(1トンあたり最高7ドルで固定)の売買によって、温室効果ガス排出削減義務をみたすことが可能となる。当初RGGI に参加していたマサチューセッツ州とロードアイランド州は遵守コストに対する懸念を理由に、先週、この地域別計画から脱退している。(Greenwire, December 20, 2005)

エネルギー情報局、米国の温室効果ガス排出に関する年次報告を発表

エネルギー情報局(Energy Information Administration)が12月20日に、米国内の温室効果ガス排出動向を詳細する年次報告書を発表した。『米国の温室効果ガス排出:2004年(Emissions of Greenhouse Gases in the United States 2004)』の主要点は下記の通り:

  • 2004年の温室効果ガス(GHG)排出量は二酸化炭素(CO2)換算で71億2,210万メトリックトンで、2003年の排出量よりも2%増、1990年比で15.8%増。
  • 2004年に米国経済は4.2%拡大。従って、2004年のGHG原単位は2003年と比べると2.1%の減となり、1990年日では23%の削減。1990年から2004年まで、GHG原単位は年率平均約1.9%の減少。
  • エネルギー消費および産業プロセスに起因するCO2の排出量は59億7,300万メトリックトンで、2003年よりも1.7%増加。
  • メタンガスの排出量は、主として埋立地からの排出増加が原因で、2003年よりも0.9%増の6億3,390万トン。
  • 窒素酸化物の排出量は、主として農業部門からの排出増加のために5.5%増え、3億5,370万トン。
  • ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)という3種の人造ガスの排出量は2003年より9.6%増加し、1億5,590万トン。この3種ガスの排出は1990年以降77%増加。

(EIA Press Release, December 19, 2005)

近日発表予定の全米研究委員会報告書、州政府の自動車排出基準に関して論議を蒸し返す可能性

近刊予定の自動車排出に関する全米研究委員会(National Research Council = NRC)報告書に対し、州政府の大気汚染規制担当者が懸念を表明している。問題の核心は40年ほど前に成立した連邦条項で、この解釈次第によっては、全米市場の3分の1で販売される自動車の大幅な燃費改善が自動車メーカーに義務付けられることになる。

米国議会は1967年に、自動車用基準の設定権は連邦政府にあると規定したが、カリフォルニア州に限っては、その独特の地形・天候パターン・自動車台数急増のために、同規定の対象外とすることを認めた。1977年には、議会は、オンロード車両を対象とするカリフォルニア州規定を他州が採用することを条件付きで認める新条項をクリーンエア法に追加している。

カリフォルニア州は、自動車メーカーに燃費の良い自動車の製造を事実上強いることになる自動車排ガス削減提案を着々と進めているが、これに北東部および太平洋岸の9州(注1)が追従している。一方、自動車メーカーは、州政府には連邦規制をないがしろにする企業平均燃費(CAFE)基準を設定する権利はないとして、カリフォルニア州およびカリフォルニア州規制を採用する他州に挑戦している。

ここ数週間以内に発表される予定のNRC報告書には、カリフォルニア州規定を採用する州は、その計画を環境保護庁(EPA)にレビューさせるべきであるという提言が含まれるものと予想されている。州政府代表等は、見たところ小さな行為にすぎないものの、これが議会で採択された場合には新規制導入が著しく遅れる可能性があると主張している。(Greenwire, December 15, 2005)

注釈:

1:Greenwireの同記事では、カリフォルニア州の他に9州となっているが、11月26日付けのニューヨークタイムズ紙では、ニューヨーク、メイン、ニュージャージー、バーモント、マサチューセッツ、ロードアイランド、コネチカット、ペンシルバニア、オレゴン、ワシントンの10州が、カリフォルニア州規制を採用する見通しであると報告している。


12月21日特別修正版(修正箇所は赤字

上院本会議、北極圏野生生物保護区域(ANWR)解禁条項を含んだ国防省歳出予算法案の認可を拒否

北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge = ANWR)の一部を石油・天然ガスの掘削に解禁する条項は、第109議会の第1会期で所在先を転々とし、12月18日には、上院歳出委員会国防省歳出小委員会のTed Stevens委員長(共和党、アラスカ州)の肝いりで「2006年度国防省歳出法案(Department of Defense Appropriations Act, 2006)」に添付されることとなった。

下院本会議は同法案を12月19日早朝に308対106で可決し、審議の場は上院本会議へと移っている。上院の議事妨害(filibuster)を阻止するためには60票を必要とするが、12月21日の討議終結(cloture)採決の結果は56対44(注1)で、議事妨害阻止には4票足らず、上院は事実上、ANWR条項を盛り込んだ「2006年度国防省歳出法案」を拒否することになった。ここでは、今会期におけるANWR条項のこれまでの動きを時宜的に概説する。

1. 2005年包括エネルギー政策法案(Energy Policy Act of 2005)

  • 下院は2005年4月21日に、ANWR解禁条項を盛り込んだ下院のエネルギー政策法案(下院第6号議案)を249対183で可決。一方の上院は、ANWR条項を含まない上院のエネルギー政策法案(上院修正法案第775号議案)を6月28日に85対12(及び、棄権3)で可決。
  • 上院と下院の異なる法案を擦り合わせるため、2005年7月14日より上下両院協議会を開始。両院協議会は、8月の議会休会までに包括エネルギー政策法案を可決するべく、上院可決が困難なANWR条項や下院可決が危ぶまれる再生可能エネルギー使用基準(RPS)等を次々に削除し、妥協案を7月26日に完成。
  • ANWR条項が盛り込まれていない妥協案を、下院は7月28日に、上院は7月29日に可決。
  • 2005年8月8日、ブッシュ大統領の署名をもって「2005年エネルギー政策法」が成立。

2. 2005年赤字削減包括財政調整法案(Deficit Reduction Omnibus Reconciliation Act of 2005)

  • 上院の共和党指導層は、ANWR解禁条項を財政調整法案(注2)に添付する方針にでる。上院は2005年11月3日、ANWR解禁条項を盛り込んだ上院案(上院第1932号議案)を52対47で可決。
  • 一方の下院は、ANWRを含まない下院案「2005年赤字削減法案(Deficit Reduction Act of 2005:下院第4241号議案)」を11月18日に217対215の僅差で可決。
  • 上院と下院は互いの法案の違いを擦り合わせるため、12月14日に上下両院協議会を要請。12月15日に協議会メンバーを指名し、協議を開始。下院協議会メンバーは、ANWR条項を盛り込んだ同法案が下院で可決される見通しは低いと主張。両院協議会は12月18日、同条項を削除することで同意。ANWRを含まない妥協案に合意。
  • 下院本会議は12月19日早朝、ANWR条項を盛り込まない「2005年赤字削減包括財政調整法案」を212対206で可決。上院本会議も同日に本法案を検討する動議を86対9で可決、12月20日に審議を開始した。12月21日の上院本会議における採決は50対50であったが、チェイニー副大統領がタイブレークの賛成票を投じ、51対50で可決された。

3. 2006年度国防省歳出法案(Department of Defense Appropriation Act, 2006)

  • 下院本会議は、2006年度国防省歳出法案(下院第2863号議案:ANWR条項を含まず)を2005年6月20日に398対19で可決。一方の上院は10月7日に、下院第2863号議案を修正した上院案を97対0で可決。
  • 下院案と上院案の違いを擦り合わせるため、12月14日に上下両院協議会を開始。
  • 上院歳出委員会国防省歳出小委員会のTed Stevens委員長(アラスカ州)は、ANWR解禁条項を(上述の)「2005年赤字削減包括財政調整法案」に添付する手段に見切りをつけ、国防省歳出法案(注3)に添付する策に切り替え。両院協議会メンバーは、ANWRを国防省歳出法案に添付することを認め、妥協案が完成。
  • 下院本会議は、ANWR条項を含む下院第2863号議案を12月19日に308対106で可決。
  • 12月21日、上院本会議は同法案に関する討議終結動議で採決をとったが、56対44で議事妨害阻止ならず。

(Environment and Energy Daily, December 16, 2005; Greenwire, December 21, 2005; CQ.com, December 21, 2005)

注釈:

1:討議終結に賛成票を投じた民主党議員は、ハワイ州選出のDaniel Akaka上院議員とDaniel Inouye上院議員、および、Mary Landrieu上院議員(ルイジアナ州)とBen Nelson上院議員(ネブラスカ州)の4名。一方、同動議に反対票を投じた共和党議員は、Lincoln Chafee上院議員(ロードアイランド州)とMike DeWine上院議員(オハイオ州)。投票を再審に付す選択肢を残すため、Bill Frist上院院内総務(テネシー州)も反対票を投じている。

2:財政調整法案は、少数党(今は、民主党)が議事妨害を行使することの出来ない、単純多数決で決定される唯一の法案である。

3:国防省歳出法案の年内可決は緊要と考えられている。従って、ANWR条項に反対する議員であっても、イラク戦争時に、国防省予算を計上する歳出法案に反対票を投じることは非常に困難となる。Stevens上院議員は、ANWR条項に反対して同法案に投じる反対票が国防省予算への反対と見られることを躊躇する議員の心理を狙って、ANWR条項を国防省歳出法案に添付したもの。


12月15日号

米国とインドの高官、先端クリーンコール技術分野での協力について検討

Mark Maddoxエネルギー省(DOE)化石エネルギー担当主席次官補がインドのPradeep Kumar石炭・鉱山閣外大臣と会談し、インドがクリーンコール技術を採択できるよう援助する協力の可能性について検討した。DOEのイニシアティブやプロジェクトの中で、インドは特に以下に関するものに関心を抱いている。

  • 選炭と廃炭効率利用による石炭灰削減
  • 石炭のガス化と液化
  • 炭層メタン
  • 炭鉱閉鎖と安全問題
  • FutureGen
  • 炭素隔離

(DOE News Release, December 8, 2005)

カナダ政府、気候変動に関し、様々な諸国と二国間条約を締結

気候変動枠組み条約の第11回締約国会議の開催地となったカナダが、幾つかの発展途上国や社会主義から資本主義への移行過渡期にある国々と二国間条約を締結している。

カナダは韓国そしてインドと個別に、京都議定書の定めるクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism = CDM)のプロジェクトに関する二国間対話および二国間協力を可能にする覚書に調印したほか、ウクライナとは共同実施(Joint Implementation)プロジェクトに関する覚書に調印、更には、インドネシアともCDMプロジェクトに関して同意書(Letter of Intent)に署名している。

カナダはまた、メキシコとは気候変動に関する対話と協力の強化を謳った共同声明(Joint Statement)に調印している。カナダとメキシコは、環境問題や持続可能な開発問題で既に堅固な協力関係にあるが、今回の共同声明ではCDM、技術開発と技術普及、適応策、排出削減、国民の啓蒙といった広範な分野での協力にコミットし、これらを達成するために、気候変動に関する合同作業部会の設置を要求している。メキシコの環境天然資源省、カナダ環境省、カナダ外務省の高官が作業部会の共同議長を務め、2006年5月までに当初の作業計画を完了する予定であるという。メキシコのJose Luis Luege Tamargo環境天然資源大臣はまた、カナダとの関係の重要性を考慮して、(メキシコの)基盤整備や環境部門キャパシテイ開発プロジェクトへの投資を働きかけるため、メキシコの環境天然資源省はカナダに代表部を開設すると発表している。(Environment Canada, December 8, 2005)

エコロジー・コーティング社、ナノ粒子を利用した新型被膜剤を開発

オハイオ州アクロンを本拠とするエコロジー・コーティング社が、市販の従来型有機被膜剤よりもはるかに硬い新しいポリカーボネート用被膜剤を開発した。ポリカーボネートには多くの保護特性があり、眼鏡のレンズ、防弾ガラス、自動車部品などに多用されている。破損耐性が極めて高いものの、これまでポリカーボネートの主な欠点は、引っかき傷が付きやすい点であった。

新しい被膜剤は、酸化物のナノ粒子を紫外線で直接ポリカーボネートにエッチング処理した設計で、横幅約50ナノメートルの粒子が、粗い表面や角などが被膜を貫通したり、傷つけたりするのを防止する。粒子は小さいので、通過する光が影響を受けることもない。

ウィスコンシン州ニューバーリン市のテクラ社がこの新被膜剤の分析を行ったところ、市販の従来型有機被膜剤よりも硬度が3〜4レベル高いことが分かった。UPI通信社によれば、この分析は、「被膜剤の硬度を調べる厳格なテスト」である日本の業界基準に従って実施されたという。(United Press International, December 14, 2005)


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