NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2006年10月前半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

10月13日号

国立再生可能エネルギー研究所とシェブロン、輸送用再生可能燃料の開発を促進する研究同盟を形成

国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory = NREL)とシェブロン社の子会社であるシェブロン技術ベンチャー(Chevron Technology Ventures = CTV)が10月4日、新たなバイオ燃料製造技術を研究開発する5ヵ年契約に調印した。これにより、NRELとCTVの研究者は農林産廃棄物のようなセルロース系バイオマスを、エタノールや再生可能ディーゼル等のバイオ燃料に変換する次世代製造技術の開発プロジェクトで協力していくことになる。 CTVではこの他に、NRELで行われているバイオオイル改質研究(注:1)…生物原料の分解で発生したバイオオイルを水素に変換する研究… にも資金を提供する予定であるという。

シェブロン社とNRELとの協力合意は、セルロース系バイオ燃料研究開発を焦点として2006年に同社が結んだ一連の契約の3本目にあたる。シェブロンは今年これまでにカリフォルニア大学デイビス校、およびジョージア工科大学とも契約を結んでいる。(NREL Press Release, October 4, 2006)

世界銀行、メキシコのハイブリッド型太陽熱発電プロジェクトを支援

世界銀行がメキシコのSolar Thermal Project Agua Prieta IIに、地球環境機構(Global Environment Facility = GEF)から4,935万ドルのグラントを授与することを承認した。同プロジェクトは、太陽光集光フィールドと在来型の火力発電施設を統合するIntegrated Solar Combined Cycle System(ISCCS)のベネフィットを実証するもので、ソノラ州アグア・プリエタ市の郊外に建設される予定である。

このプロジェクトは、@ソーラーフィールドの設計および建設;Aガス火力発電所の設計および建設、という2つの要素から成る。GEFの融資で設置されるのは、31 メガワットの太陽光集光フィールドであって、トラフ式方物局面鏡が整備される。集光器が集めた太陽熱は加熱流体に転換され、一連の熱交換器に流されて高圧高温の蒸気を発生し、この蒸気が、480メガワットのガス火力発電所で生成される蒸気の補増として、発電に使われることになる。このプロジェクトにより、二酸化炭素排出が25年間で合計391,270トン減少すると推定されている。(World Bank News Release, October 5, 2006)

全米科学財団、2006年度グラントで新たに科学技術センター4ヶ所を選定

全米科学財団(National Science Foundation = NSF)が、次世代ポリマー;気候モデリング;海洋微生物学;)沿岸環境の分野で根本的な問題に取り組む4つの学際的(cross-disciplinary)センターに向こう5年間で7,600万ドルのグラントを授与した。新グラントの授与により、NSFが支援する科学技術センター(Science and Technology Center)の総数は17ヶ所となる。今回選ばれた4センターは各々約1,900万ドルを受領するが、NSFが認可すれば、さらに5年間の資金援助を受けることができる。NSFが選定した4センターは以下の通り:

  • オハイオ州クリーブランドのケース・ウェスタン大学を拠点とするポリマー積層体科学技術センター(Science and Technology Center for Layered Polymeric Systems) … 物理科学とポリマー学とエンジニアリングが交錯する部分の研究に焦点をあてるもので、特にナノおよびミクロのスケールでのポリマー積層プロセスに注力する。同センターのパートナーは、テキサス大学オースチン校、南ミシシッピー大学、ロチェスター工科大学、ワシントンDCの海軍研究所、等。
  • コロラド州立大学を拠点とする大気中プロセス多重スケール・モデリング科学技術センター(Science and Technology Center for Multiscale Modeling of Atmospheric Processes) … 雲形成過程のより正確な描写や、気候・天候予測の改善のために、気候モデルを改良する。カリフォルニア大学サンディエゴ校のサンディエゴ・スパコンセンターやコロダド州ボルダーの国立大気研究センター(National Center for Atmospheric Research)のほか、カナダや日本、英国やオーストラリアの研究者もパートナーとして参加する。
  • ハワイ大学マノア校を拠点とする海洋微生物科学技術センター(Science and Technology Center for Microbial Oceanography) … 海洋学、微生物学、生態学、ゲノミクスという本質的に異なる学問間の協力を推進するもので、海洋が環境の変動性や気候変動や海洋微生物の生物地球化学等にどう反応するかに焦点を当てる。同センターのパートナーは、マサチューセッツ工科大学、オレゴン州立大学、モンテレー水族館研究所、等。
  • オレゴン健康科学大学を拠点とする海岸周縁部観測予測科学技術センター(Science and Technology Center for Coastal Margin Observation and Prediction) … 気候変動が海岸周縁部に与える影響、海岸周縁部が炭素や栄養素やその他の天然および人工物質の循環に果たす役割、および、人間の活動が海洋エコシステムに与える影響を予測するコンピューターモデルやシミュレーションを構築する。ワシントン大学、オレゴン州立大学、ポートランド州立大学等がパートナーとして協力する。

(SSTI Weekly Digest, October 9, 2006)


注釈:

1:この研究は、多様な原料から水素を生成できる分散型(distributed)改質システムの開発を促進するものと期待されている。


10月10日号

カナダ天然資源省、2020年までのエネルギー需給見通しを発表

カナダ天然資源省(Natural Resources Canada)が、2020年までのエネルギー需給を予測する『カナダのエネルギー見通し:リファレンスケース2006年(Canada's Energy Outlook: The Reference Case 2006)』という報告書を発表した。今回の見通しでは、2002年に発表された前回の見通しよりも、原油と天然ガスの価格を高めに想定し;経済が2010年までに8%拡大し;オイルサンド生産量が増大し、国内の原子力発電所の改装が終了することを想定している。また、2020年までの国内総生産(GDP)成長率を年間2.4%、人口増加率を年間0.7%と仮定されている。カナダのエネルギー見通しの主な内容は次の通りである。

  • エネルギー総需要は年間1.3%の割合で増加する。
  • 家庭・業務部門のエネルギー原単位は年間約0.25%の割合で改善すると見込まれるものの、家庭部門のエネルギー需要は年間約1%、業務部門のエネルギー需要は年間約2.4%の割合で増加する。
  • 自動車の燃費効率改善イニシアティブにも拘わらず、運輸部門の需要は年率約1.6%で増大する。
  • 産業部門のエネルギー原単位は年率約0.7%の改善を見せるものの、エネルギー需要は年間約1.1%で拡大する。
  • 従来式の石油生産量が減少する一方で、オイルサンドの生産は大幅に増加し、2020年までにオイルサンドの生産量は総原油生産量の約80%を占めるようになる。
  • 天然ガス生産量は2011年に6.6兆立方フィート(trillion cubic feet = Tcf)でピークを迎え、天然ガス輸出量は2020年には現在の3.7Tcfから1.3Tcfまで落ち込む。
  • 温室効果ガス排出量は、2004年の758 メガトンから2010年には828メガトン、2020年には897 メガトンへと増加する。カナダの2010年の排出量は、京都議定書の2010年目標値(1990年水準の6%減)を265メガトン上回ることになる。

(Natural Resources Canada "Canada's Energy Outlook" Executive Summary, October 2006)

米国30州の代表、排出レジストリー構築を検討中

米国30州の代表が、温室効果ガス排出の管理と削減を目標とする複数州の気候行動レジストリー(climate action registry)の設置を検討している。カリフォルニア州気候行動レジストリー(California Climate Action Registry)、東部気候レジストリー、西部地区大気パートナーシップ(Western Regional Air Partnership)、ミシガン湖地域大気質管理責任者コンソーシアム(Lake Michigan Air Directors Consortium = LMADC)の代表を含むこのグループは、各団体の取り組みを結集することによって、以下のような大きなメリットが得られると考えている。

  • 企業および州政府による温室効果ガス排出削減への参加が促進される。
  • 乏しい資源が最大に活かされるよう有効利用される。
  • 各州の技術革新の取り組みが推進される。
  • 排出量実績とベースライン見積排出量の測定の均一化をもたらす「共通通貨」が設定される。

(Greenwire, October 4, 2006)

テキサス・インスツルメント社他、ナノエレクトロニクス計画に3,000万ドルを投資

テキサス・インスツルメント(Texas Instruments = TI)社を初めとするテクノロジー企業数社と、テキサス州政府およびテキサス大学が、Southwest Academy of Nanoelectronics(SWAN)と呼ばれる新しいナノエレクトロニクス計画に3,000万ドルを投資する予定である。この計画は今週のはじめにダラスで開かれたナノTX06会議で発表されたもので、下記が主要目的であるという:

  • 半導体素子に集積されるトランジスタの数(コンピュータの全般的処理能力を決める要素)は18ヶ月で倍増するというムーアの法則が、物理的制約によって10年後に限界に突き当たるのを回避する方法の発見。TIのスポークスマンは、その方法の一つとして、シリコン上で製作するよりも小さな回路を作る必要があることに言及している。
  • エネルギー、医療、防衛など多数の分野におけるナノエレクトロニクス技術の短期実用化

(Dallas Morning News, September 28, 2006)


10月6日特別号

ウッドローウィルソン国際センター、食品医薬品局のナノテク製品規制能力に関する報告書を発表

ウッドローウィルソン国際センター(Woodrow Wilson International Center)の振興ナノテクノロジー・プロジェクト(Project on Emerging Nanotechnologies)は2006年10月5日、食品医薬品局(Food and Drug Administration = FDA)元政策担当副局長のMichael Taylor氏に委託して作成した『ナノテクノロジー製品の規制:FDAは規制に必要なツールを有しているか?(Regulating the Products of Nanotechnology: Does FDA Have the Tools It Needs?)』(注:1)という報告書を発表した。

同報告書は、FDAの管轄下に入るナノテクノロジー利用製品(注:2)に関し、そうした製品の潜在的危険から米国民を守るFDAの能力を分析したもので、著者のTaylor氏は、現行法の定めるFDAの法的権限のギャップとして下記を指摘している:

  • 化粧品に関して、市場導入前の監視ツールを持たない。
  • FDAには、ナノテクノロジー製品の初期開発段階で情報を入手する能力がないため、適切に規制を整えることが出来ない。
  • 市場流通後の有害事象の報告に関して、十分な権限を有していない。

報告書では、米国議会が長期的にはFDAの法的権限および資源面(注:3)でのギャップに対応する必要があることを指摘する一方で、市販のナノテクノロジー製品または市場化間近と見られるナノテクノロジー製品に対応するため、FDAが現行法の下で現在講じることの出来る対策として下記を提言している:

<短期的活動>

  • 法律面・規制面・安全面の目的から、ナノ材料に「新規」のカテゴリーを設定する。
  • 市販のサンスクリーン基準にある「微粉末化(Micronized)」という用語の意味を性格に定義する。
  • 化粧品会社に、安全性を裏付ける立証データ(substantiation data)の提出を要求する。
  • 化粧品会社に対し、何が十分な立証データであるのかについての指針を提供する。
  • ナノ材料が人体の構造や機能に影響をもたらす場合には、その製品は医薬品に分類されるため、どの時点で人造ナノ材料の使用が化粧品を医薬品へと変えるのかについての指針を提供する。
  • 食品業界との協力により、ナノテクノロジーの食品利用に関するデータの自発的提出を求める。

<法的権限>

  • FDAは、自己の管轄に入る振興技術および新規製品に関する特定情報の提出を求める職務権限を有するべきである。
  • 振興技術に対応するため、暫定的な市場導入前通告メカニズム(pre-market notification mechanism)を設定する権限をFDAに付与するべきである。
  • FDAの検査権限を拡大し、安全性の立証データやその他の安全情報へのアクセスを確立すべきである。
  • 製品の長期安全性を保証するため、FDAは必要に応じて、市場流通後のモニターや調査を義務付ける権限を有するべきである。
  • 有害事象報告を義務付けるシステムを立案する広範な権限をFDAに付与するべきである。

<資源面のニーズ>

  • 米国議会は、FDAによる初期兆候(early warning)の情報収集活動への予算計上を検討すべきである。
  • FDAの毒性試験プロトコルおよび製品レビューや市場流通後調査といった、FDAの規制関連研究予算の増額が必要である。
  • FDAがナノテクノロジー製品を科学に基づいて監視できるよう、米国議会はFDAに、専門知識を有する科学スタッフおよび規制担当スタッフを雇用するための予算を計上すべきである。

(Woodrow Wilson International Center for Scholars News Release, October 5, 2006; "Regulating the Products of Nanotechnology: Does FDA Have the Tools It Needs?")

 

注釈:

1:同報告書の全文は、www.wilsoncenter.orgのホームページから入手可能。
2:これは、@化粧品成分と化粧品;A食品;B栄養補助食品;C一般に安全と認められる食品成分(food ingredient);D食品添加物(food additive);E食品包装;F医療機器;G市販薬;H新薬、という9つのカテゴリーに分類される。
3:Taylor氏は、1996年度段階でのFDA業務、および、それ以降にFDAに付託された活動を実行するためには、2006年度には現行水準の49%増の予算が必要であり、2007年度には大統領提案の56%増の予算が必要であると指摘している。


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