NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2006年5月前半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

5月12日号

腎臓透析の不要な腎不全治療

ハーバード大学研究チームの新たな研究により、骨髄幹細胞には、透析に代わる腎不全の治療法となる可能性があることが明らかになったという。ハーバード大の生物学者Raghu Kalluri氏等は、この方法が、アルポート症候群と呼ばれる遺伝性腎疾患の患者に特に有効だと考えている。

研究チームは、 IV型コラーゲン変異のマウスに骨髄移植を行い、移植細胞に蛍光マーカーを取り込ませたところ、13週間後に次のような結論に達している:

  • 健康でない腎臓の細胞の10%が蛍光を示した … 但し実際に、骨髄幹細胞がIV型コラーゲンを生成すると考えられている有足細胞(prodocyte)の 一部となったのか、または、古い有足細胞に融合しただけであるのかは不明。
  • 尿タンパクが70〜80% 下がった。
  • 有害な血中尿素が検出された割合は、対照群のマウスに比べて86%低かった。

”Bone-marrow-derived stem cells repair basement membrane collagen defects and reverse genetic kidney disease”という研究論文は、オンラインの『全米科学アカデミー会報(Proceedings of the National Academy of Sciences)』 4月28日号に掲載される。(Science Magazine Online, April 25, 2006)

下院歳出委員会が承認した温室効果ガス排出決議案に対する反応

下院歳出委員会が5月10日に、温室効果ガス排出の強制的上限設定を支持する修正法案を可決した。次のステップは、下院本会議において早ければ来週にも始まる2007年度内務省・環境保護庁歳出予算法案の審議であるが、共和・民主両党のスタッフによると、同修正決議案が下院本会議で同歳出予算法案から削除(注1)される可能性は十分にあるという。

現に、下院歳出委員会における発声投票の際にも、共和党の歳出委員会メンバー数名が「NO」と叫び、点呼投票(roll call)を要求したが、この要請はJerry Lewis下院歳出委員長(共和党、カリフォルニア州)により却下されるという一幕があった。また、下院エネルギー・商業委員会のJoe Barton委員長(共和党、テキサス州)やJoe Knollenberg下院議員(共和党、ミシガン州)、Jo Ann Emerson下院議員(共和党、ミズーリ州)を始めとする下院議員数名が既に、同修正決議案に対する反対を表明している。

上院においても、共和党議員の意見は分裂している。地球温暖化に関する科学の辛辣な批評家である環境・公共事業委員会のJames Inhofe委員長(共和党、オクラホマ州)とConrad Burns上院議員(共和党、モンタナ州)が、同決議案は米国の気候変動国際交渉参加を禁止した1997年の投票と同様の結果に終わると主張しているのに対し、Lindsey Graham上院議員(共和党、ノースカロライナ州)や上院エネルギー・天然資源委員会のPete Domenici委員長(共和党、ニューメキシコ州)は、地球温暖化討議の流れが変わり、同問題に責任をもって対応しようとする関心が米国議会内で大きくなっているという重要な指標であると、これを歓迎している。

一方、産業界ロビイストは、ブッシュ政権が既に気候変動に関して(強制的という文言を含まない)同様の規制を打ち出していることを考慮すると、下院歳出委員会のこの決議案が現実的にもたらす影響は殆どないと発言している。(Environment and Energy Daily, May 11, 2006; Environment and Energy Daily, May 12, 2006)

注釈:

1:同修正決議案は歳出関連案件というよりはむしろ政策関連問題であるため、下院規定委員会には同決議案を議事進行上の問題(point of order)を理由とする修正条項除去要求から守るかどうかを決定する権限がある。下院規定委員会が同修正決議案を保護しない場合には、下院議員は本会議審議の場で同条項の削除を求めることが可能となる。もう一つの手段は、同条項を削除する修正法案を下院本会議で提出することである。


5月10日特別号

下院歳出委員会、温室効果ガス排出上限設定の必要性を認める修正決議案を承認

「2007年度内務省・環境保護庁歳出予算法案」のマークアップを行なっている下院歳出委員会(注:1)は、Norm Dicks下院議員(民主党、ワシントン州)が同法案への修正法案として提出した、温室効果ガス排出の上限設定を推奨する非拘束的な気候変動修正案を5月10日午後、発生投票で承認した。

Dicks下院議員の修正案の文言は、昨年夏に上院が採択した決議案(注:2)の文言そのもので、概要は下記の通り:

  • 議会は下記の事項を認めるものである:
    • 大気中に蓄積する温室効果ガスは自然の可変性以上の速度で平均気温を上昇させ、海面上昇のリスク;気流・海流パターンの変化;洪水や旱魃の発生頻度の増加や被害規模の拡大を引き起こしている。
    • 人間の活動が大気中の温室効果ガス蓄積の重大原因であるという科学的コンセンサスが固まりつつある。
    • 大気中の温室効果ガス蓄積増加に歯止めをかける為には強制的施策が必要である。
  • 米国経済に深刻な打撃を与えることのない方法で、温室効果ガス排出の増加を失速、抑制または逆転させる、強制的な市場本位の制限(market-based limits)およびインセンティブを含む包括的かつ有効な国家プログラムが制定されるべきであるというのが、議会見解である。
  • [米国の]重要な貿易相手国で、温室効果ガス排出国でもある他諸国にも同程度の行動を奨励する。

世界気候変動に関するピューセンター(Pew Center on Global Climate Change)のEileen Claussen所長は、上院に続き下院が地球温暖化への対応の必要性を公式に認めたことは、米国が同問題に真剣であるというシグナルを世界に送るものであるとして、これを歓迎している。一方、民主党のSteny Hoyer下院院内幹事(メリーランド州)は、この修正案は「重要な声明」ではあるものの、採択した法案を上下両院協議会の席で捨て去ることは容易であるため、共和党が今後の立法過程でこの修正案を同法案から削除したとしても驚きはしないと発言している。 (Greenwire, Mary 10, 2006; Amendment to Interior and Environment Appropriations Bill, 2007 offered by Mr. Dicks of Washington)

注釈:

1:下院歳出委員会の構成は、共和党議員が37名で、民主党議員が29名。

2:上院本会議が昨年、「2005年エネルギー政策法案」を審議した際に可決したBingaman上院議員(民主党、ニューメキシコ州)提案の修正法案(上院第866号決議案)を指す。


5月9日号

カナダの風力エネルギー業界、2006年4月時点で既に2005年の年間成長率を更新 

カナダ風力エネルギー協会(Canadian Wind Energy Association = CWEA)の発表 によれば、カナダの風力発電業界は2006年4月の段階で、2005年に打ち立てた年間成長率記録をすでに塗り替えたという。カナダは2005年の一年間で239MWの風力発電能力 を整備したのに対し、2006年1月から4月の期間には260 MWを新規に整備している。CWEAでは、2006年にはカナダの風力発電設備容量が70%以上増大するものと予測している。

CWEAは、風力発電設備容量がこのように大幅に増えた主な理由は、政府の奨励策にあると説明している。連邦政府が風力発電生産インセンティブ(Wind Power Production Incentive)を提供しているほか、州政府も、再生可能エネルギー調達などのプログラムを通して、風力その他の再生可能エネルギーへの投資を奨励している。カナダの現行の風力発電能力は943 MWであるが、カナダ政府は2015年までに8,500 MWの風力発電能力を整備する目標を掲げている。(CWEA News Release, April 12, 2006)

Griffin米航空宇宙局長、次世代有人飛行船の開発には科学研究費の削減も余儀なしと発言

Michael Griffin米航空宇宙局(NASA)局長は、次世代スペースシャトルの開発を前倒しするために、NASAの科学研究費を大幅に削る計画であることを、4月25日の上院商業・科学・運輸委員会科学宇宙小委員会の公聴会で証言した。

Griffin長官は、シャトルが退役する2010年と、2014年の有人宇宙探査船(Crew Exploration Vehicle)の打ち上げ予定までの4年間の溝がもたらす長期的影響に民主・共和両党から懸念が示されていることを認めた。このため、NASAでは有人宇宙探査船の開発を1年から2年前倒しする方法を検討しているという。Griffin長官は、問題は資金であり、有人宇宙探査船の開発に必要な資金の大部分は、向こう数年間科学プログラムの増額を抑えることによって賄うしか方法がないと述べている。Griffin長官は、科学プログラムの増額抑制でおよそ30億ドルの節減が生まれると予測している。(New York Times, April 26, 2006)

米国の10州政府、軽トラック用の新燃費基準で米国高速道路交通安全局を提訴

カリフォルニア州を始めとする計10州他のの9州はコネチカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、および、バーモント州… とコロンビア特別区、および、ニューヨーク州は5月2日、米国高速道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration = NHTSA)が先月発表した軽トラックおよびスポーツ多目的車(SUV)用の燃費基準は大気質と温室効果ガス排出の問題を十分に取り上げていないとして、NHTSAを相手に提訴する予定である。

連邦政府の現行乗用車燃費基準が27.5マイル/ガロン(mpg)であるのに対し、軽トラックの燃費基準は21.6 mpg。NHTSAが先月発表した軽トラック(重量8,500〜10,000ポンド)の新燃費基準は現行基準より0.6マイル引き上げられて22.2 mpgとなるものの、カリフォルニア州他9州の温室効果ガス排出規制 2012年の販売車両の二酸化炭素排出量を現行車両の22%減とし、温室効果ガス排出量を2016年までに30%減とすることを義務付け… に準拠する燃費基準よりは遥かに緩和なものとなる。原告側州政府の司法長官達は、ガソリン危機に直面している現在ですら、ブッシュ政権は石油業界や自動車業界の執筆と思える燃費基準を推進し、新技術や節減を促進する機会を逃していると批判している。(Greenwire, May 2, 2006)


5月8日号

太陽光発電システムと燃料電池システムの導入税額控除を延長する法案、議会に提出される

太陽光発電システムや適格燃料電池システムの導入に関する税額控除を延長する法案が下院と上院に提出された。J. D. Hayworth下院議員(共和党、アリゾナ州)が4月26日に提出した『2006年米国エネルギー自立保証法案(Securing America's Energy Independence Act of 2006:下院第5206号議案)』は、Gordon Smith上院議員(共和党、オレゴン州)が4月27日に提出した『米国エネルギー自立保証法案(Securing America's Energy Independence Act:上院第2677号議案)』と同内容となっている。両法案の概要は下記の通り:

  • 住宅用システムの税額控除 … 住宅用の太陽熱利用温水器や太陽光発電システム、および、燃料電池システム購入に対する30%の税控除を2015年12月31日まで延長する。太陽発電システムに対する最大税控除をキロワットあたり2,000ドル、燃料電池システムの最大税控除をキロワットあたり1,000ドルとし、太陽熱利用温水器の税控除を最高2,000ドルとする。
  • 事業用システムの税額控除 … 事業用の燃料電池発電装置や太陽光発電システムへの投資に対する30%の税控除を2015年12月31日まで延長する。

同法案に支持を表明している太陽エネルギー産業協会(Solar Energy Industries Association)の推定によると、提案されている長期税額控除は2015年までに約55,000の新雇用を創出し、天然ガス消費量を4兆立法フィート削減することになるという。

5月5日時点では、Hayworth下院議員提出の下院第5206号議案には38名の共同スポンサー、上院第2677号議案には9名の共同スポンサーがついているものの、同法案が修正無しで現形のまま可決される可能性は低い見通しである。(SEIA News Release, April 28, 2006; RenewableEnergyAccess,com, April 27, 2006; H.R. 5206; S.2677)


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