NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2006年5月後半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

5月30日号

ニューヨーク州知事の包括エネルギー計画

ニューヨーク州立大学シラキューズ校の環境科学・森林学部の研究所を5月8日に訪問したGeorge Patakiニューヨーク州知事(共和党)は、クリーンな再生可能燃料の生産拡大が如何に重要であるかを強調し、ニューヨーク州議会で採択された「セルロース系エタノールの生産パイロット施設建設プログラム」について語った。現時点では、商業規模でセルロース系エタノールを生産している施設は、世界にたった1社 …カナダのオタワ市にあるIogen社… しかない。ニューヨーク州には、柳やスイッチグラス、農産・林産廃棄物、パルプや製紙工場の廃棄物、トウモロコシの茎等が豊富であるため、これらを活用することで、エタノールの大幅増産が可能になると期待されている。

Pataki州知事は、輸入エネルギーへの依存度を削減し、自州を再生可能エネルギー関連の研究や雇用創出の中心地とすることを狙って、上述のセルロース系エタノール生産パイロット工場建設プログラムを含む包括エネルギー計画を2006年1月16日に発表した。同計画のイニシアティブの大半は同州州議会での審議にかけられ、幾つかは既に採択されている。Pataki州知事の包括エネルギー計画の主なイニシアティブ、および、州議会での審議結果は下記の通り:

A. ニューヨーク州における再生可能燃料の生産・使用を奨励するイニシアティブ

  • E85やB20といった自動車用再生可能燃料に課されている州税 …現在、1ガロンあたり約40セント…を撤廃する。【採択されず】
  • 州内各地に再生可能燃料補給スタンドを新設するイニシアティブ
    • ガソリンスタンドに再生可能燃料(E85やB20)ポンプの設置を促進する新グラント。予算は500万ドル。【採択されず】
    • ニューヨーク州高速道路開発公社(New York State Thruway Authority = NYSERDA)のトラベルプラザ27ヵ所全てに、再生可能燃料ポンプを設置。[NYSERDAが前向きに取り組み中]
  • ニューヨーク州にセルロース系エタノールを生産するパイロット施設を建設。同新規プログラム予算は2,000万ドル。[採択]
  • 先端「クリーンコール(石炭ガス化複合:IGCC)」発電所の推進:州内の建設適地を数ヵ所確認し、二酸化炭素排出削減新技術の研究開発をホストとして受け入れる民間電力業者に総額5,000万ドル提供。[採択]

B. 同州において燃費の良い自動車の利用を推進するイニシアティブ

  • ハイブリッド車や代替燃料車の購入者に対する2,000ドルの税額控除。【採択されず】
  • ハイブリッド車や燃費の良い自動車に有料高速道路使用料の10%割引を提供する「Green E-Zパス」の新設。[採択・発効]

C. 最先端の代替燃料自動車研究所(Alternative Fuel Vehicle Research Lab)新設:サラトガ・テクノロジー・エネルギー・パーク内に最先端研究所を設置。プラグイン・ハイブリッド車や水素自動車、再生可能燃料や分散型発電装置等の研究や実験を行なう。

  • フレキシブル燃料車やプラグイン・ハイブリッド車の生産を推進する新グラント。同プログラムの予算は1,000万ドル。【採択されず】
  • 軽量な部品や水素自動車用高性能バッテリー等、自動車用省エネ先進技術の研究・製造を支援する新プログラム。予算は1,000万ドル。【採択されず】
  • 水素自動車のインフラを整備するプログラム。予算は500万ドル。

D. ニューヨーク州を再生可能エネルギー関連の研究および雇用のメッカとするイニシアティブ

  • Empire Zone税額控除の対象を、ニューヨーク州内に立地していなくとも州内で雇用を創出するクリーンエネルギー会社まで拡大。【採択されず】
  • 再生可能燃料を生産するニューヨーク州の企業を対象とした、再生可能燃料税額控除の新設。

E. 家庭暖房費の高騰を緩和する住宅所有者対象の新支援策

  • 同州に住む65歳以上で年収が7.5万ドル以下の高齢者を対象とする家庭暖房費税額控除の新設。控除額は最高500ドル。
  • 低所得者を対象とする家庭暖房費支援プログラムの予算増額。
  • 高効率の家庭暖房装置を購入・設置する住宅所有者を対象とする税額控除の新設。控除額は500ドル。
  • Energy Star製品購入を奨励する、2週間の消費税免税キャンペーン。【採択されず】

(NY Governor's Press Release, May 8, 2006; NY Governor's Press Release, January 16, 2006)


5月26日号

国際金融公社、省エネ融資で中国を支援

世界銀行の国際金融公社(International Finance Corporation = IFC)のLars Thunell長官が、中国経済の主要三大プレーヤーである公益事業、省エネ装置供給業者、商業銀行を一致団結させて、省エネを推進する新規融資モデルを創設する合意書に署名した。

エネルギー需要の急増と深刻なエネルギー源不足に直面している中国では、省エネを国家優先事項と見なしているものの、(i)省エネ装置マーケティングの経験不足;(ii)ローンへの馴染み不足;(iii)省エネ融資における商業銀行の経験不足のために、同分野への投資は危機的な障壁に直面している。こうした問題に対応するため、中国政府はIFCに、市場本位の省エネ推進解決策の策定で支援を求めることとなった。

中国政府の要請に応えてIFCが設計した新たな省エネ融資モデル(energy efficiency financing model)は、公益事業者を省エネプロジェクトの販売エージェントおよびワンストップ・ショップとして活用すると同時に、リスク管理の新慣行で商業銀行と提携するというもので、下記のような成果が期待されている:

  • 省エネ装置への融資は、温室効果ガス他の汚染物質排出を削減する。温室効果ガスに関しては今後6年間で500〜1,000万トンの削減が見込まれる。
  • 電気・ガス需要家に省エネ・ローンを提供する商業銀行のキャパシティが向上するほか、リスク管理慣行も改善される。
  • 中小企業がエネルギー使用合理化を図る際に必要となる設備投資を促進する。
  • 中国政府の掲げる、5年間でエネルギー消費を20%削減するという目標の達成を支援する。

(IFC Media Release, May 25, 2006)

カナダのAmbrose環境大臣、環境・気候変動に関する保守党政権の新たな指針を発表

カナダでは保守党政権が新しく選出されたばかりであるが、Rona Ambrose環境大臣は5月11日のカナダ下院議会において、京都議定書の目標達成は不可能であることを認め、気候変動および環境問題に対するカナダ保守党政権の新たな指針を概説した。Ambrose大臣の発言概要は下記の通り:

  • 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に本日(5月11日)提出した『カナダの2004年温室効果ガス目録(Canada's 2004 Greenhouse Gas Inventory)』 によると、カナダの排出量は自由党の交渉した京都目標値をほぼ35%上回るという。この京都目標は、自由党が達成計画を持たずして政治的理由で交渉合意したものであり、非現実的で達成不可能である。
  • 保守党政権は、カナダの環境浄化および温室効果ガス排出削減における真の進歩、および、温室効果ガスや汚染を削減する現実的かつ達成可能な目標の策定にコミットしている。
  • カナダ国民の税金は、国際排出クレジット購入の為に海外で使うのではなく、カナダの環境改善の為に国内で使用する。保守党政権のイニシアティブは、カナダ国民を第一に考える。
  • 結果志向型の「Made-in-Canada」解決策を重視する:
    • 公共交通手段の利用を奨励するプログラムに17億ドルを投資
    • 国家再生可能燃料戦略の実施について、各州政府との対話を開始
    • カナダ環境保護法の改訂
    • カナダの「クリーンエア法」策定に向け、州政府および全国の医療機関と協力
    • 国家水資源戦略(National Water Strategy)に関して州政府との対話を開始
    • クリーンな技術の開発・導入によって温室効果ガス問題に対応する制度の確立に向け、大規模放出源と協力
  • カナダの国内政策と国際政策を協調させ、引き続き国際舞台で指導力を発揮する。カナダの国内事情を正確に反映し、国家利益を効果的に守る方法で温室効果ガス排出を削減するメカニズムを検討する。
  • 中国やインドといった大規模放出源が自らの温室効果ガスや汚染の削減にコミットすることを奨励する。

 (Environmnet Canada Ministret Speech, May 11, 2006)

クレムソン大学の化学者等、炭素製の量子ドットを作製

クレムソン大学の化学者等が、炭素を使って、史上初の量子ドットを作製した。炭素製の量子ドットは、重金属製の量子ドットよりも毒性が低く、環境面での影響も少なく、生産コストも安価であるため、生物学的センサー、医療用画像装置、微小発光ダイオード(LED)への利用を始めとする、多様な用途で有望視されている。

クレムソン大学研究チームは、グラファイト・ナノ粒子の両面を特殊ポリマーでコーティングして作製した量子ドットを使い、以下を含む研究を行っている:

  • 炭疽菌のような胞子を量子ドットで標識化し、生物学的センサーとしての使用可能性を判断する研究。顕微鏡下で簡単に確認できる光る胞子が作製できることが判明した。
  • 量子ドットの光ルミネッセンス(光の照射を受けると発光する能力)の効能を検査する研究。研究者等は光がある限り、量子ドットが継続的に発光することを発見した。

"Quantum-sized carbon dots for bright and colorful photoluminescence" という研究論文は、6月7日号の『米国化学会ジャーナル(Journal of the American Chemical Society)』に掲載される。(Nanotechwire, May 25, 2006)


5月24日号

国立標準規格技術研究所(NIST)の先端技術計画(ATP)閉鎖決定に困惑するATP諮問委員会

先端技術計画(Advanced Technology Program = ATP)の段階的閉鎖プランが2005年12月から既に実施されていたことが、5月9日に行なわれたATP諮問委員会の会合で明らかにされた。ATPの段階的廃止は、大統領がATPの2007年度予算打ち切りを議会に求める2ヵ月も前に同プログラムのスタッフに通達されていたということであり、ATP諮問委員会のメンバーは、米国の産業競争力が低下している時に重要なプログラムの廃止に固執するブッシュ政権に苛立ちを隠せずにいる。

Marc Stanley ATP部長によると、これまでにATPスタッフの約25%にあたる21名が辞職または転属(または、その旨を通知)し、段階的閉鎖プランが予定通りに進んでいるという。ATPではまた、ATPの誕生から段階的閉鎖までを記録した報告書を作成中であり、今秋完成の予定の報告書は、@ATPの歴史的変化;Afocused program;B産業界の役割;CATPの模範的な評価システム;Dプロジェクト管理方法等を網羅することになるという。

ATPの遺産が記録され残されることに満足気なStanley部長とは裏腹に、ATP諮問委員会のメンバーは、進行中のプログラム廃止に断固たる反対を表明している。Alan Russell博士(ピッツバーグ大学McGowan再生医学研究所の所長)が、現政権のATP廃止案を拒絶し続けてきた議会が2007年度予算を決定する前に、プログラムの取り壊しを開始して議会に先手を打つという行為は不適当であると批判したほか、同委員会のRoss Armbrecht委員長(デラウェア科学数学教育財団の専務理事)も、米国の貿易相手国が世界一級のプログラムと見なし、その自国版導入を試みるほどに高く評価されているATPを廃止することは、国家的悲劇であると断言している。

同諮問委員会の会合に出席したWilliam Jeffrey国立標準規格技術研究所(National Institute of Standard and Technology = NIST)所長は、ブッシュ政権の最優先事項が(i)連邦財政赤字の半減;(ii)対テロ戦争;(iii)米国競争力イニシアティブに基づくNISTコア研究所の予算増額であることを指摘して、ATP閉鎖要求を擁護したのに対し、Maria Thompson委員は、ATPを失うことは米国の競争力と国土安全保障に打撃を与えることになると反論している。また、Michael Borrus委員(Mohr, Davidow Ventures)も、中国やインド等がATPの実行方法を学ぼうと訪米している時にブッシュ政権がこの閉鎖を提案するとは、全くもって皮肉であると発言している。(Manufacturing & Technology News, May 15, 2006)

Hillary Clinton上院議員、「戦略的エネルギー基金」の設立を提案

Hillary Clinton上院議員(民主党、ニューヨーク州)は5月23日にナショナルプレスクラブで演説し、2025年までに石油輸入量を半減(一日約800万バレル)することを提唱した。この目標を達成するため、クリーンエネルギー技術の研究と投資に活を入れる「戦略的エネルギー基金(Strategic Energy Fund)」を設立する法案を提出する意向であるという。法案では、2000〜2004年利益ベースラインを超える大手石油会社の収益に対して2年間の暫定税を課す(注1)ほか、石油会社が不要と主張する石油会社対象税額控除を廃止し、公有地で掘削する石油会社から公正なロイヤルティを徴収することによって、同基金の為に500億ドルの資金を調達することになる。

Clinton上院議員は、2025年石油輸入量50%削減イニシアティブは経済を弱体化するのではなく経済を活性化するのであり、イノベーションと効率改善でこれを達成できると主張した。同基金は、米国の海外石油依存度を軽減し、温室効果ガス排出を削減するエネルギー技術の研究・開発・導入を支援するもので、主要条項は下記の通り:

  • 2020年までに総電力の20%を再生可能資源で賄うため、風力他の再生可能エネルギーによる発電に対する再生可能資源利用発電税額控除を10年間延長する
  • ハイブリッド車、クリーンディーゼル車、その他の先進自動車を購入する消費者への税額控除を倍増する
  • 業務用車として省エネ車を購入するオーナーを対象とする税制上の優遇装置を新設する
  • 商業的セルロース系エタノール生産の最初の10億ガロンに対して借入保証を提供する
  • セルロース系エタノールの研究に10億ドルを提供する
  • E-85ポンプを設置するガソリンスタンドのオーナーに[設置費]50%の税額控除を提供する
  • 自宅やオフィスのエネルギー使用合理化を図る住宅所有者や事業主を対象とする税制上の優遇措置を延長・拡大する
  • エネルギーの先端研究計画局(Advanced Research Projects Agency for Energy = ARPA-E)に向こう5年間で90億ドルを提供する
  • クリーンコールの潜在力を高めるため、異なる環境において大規模な炭素地中隔離テストを5件実施する。また、国内石油生産を奨励するため、炭素隔離税額控除を提供する。

    (Green Car Congress.com, May 23, 2006; Senator Hillary Clinton News Release, May 23, 2006)

注釈:

1:精製施設の拡張、エタノール生産、または、風力他の再生可能資源による発電に投資する企業は、同基金のための暫定税支払を免除される。


5月19日号

ローレンス・リバモア国研とカリフォルニア大バークレー校の科学者、高効率の炭素ナノチューブろ過膜を開発

ローレンス・リバモア国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校の科学者が、極めて効率の高い炭素ナノチューブろ過膜を開発した。2006年5月19日号の『サイエンス誌』に掲載された「Fast mass transport through sub-2 nanometer carbon nanotubes」という新たな研究論文によると、新たにデザインされた炭素ナノチューブは、海水から大量の塩分を除去する能力を持っているほか、発電所の排出物から二酸化炭素を隔離できる可能性もあるという。この炭素ナノチューブの作成プロセスは下記の通り:

  • シリコンチップの上にカーボン・ナノチューブを配置し、ナノチューブ間の隙間に不浸透性の窒化ケイ素 (Si3N4)セラミック基質を充填。
  • 生成された中空シリンダーの両端を切り落として、ナノチューブの形状とし、1〜2ナノメートル幅のフィルターを作成。

科学者等は、気体と液体が予想よりも圧倒的に速いスピードでこの膜を通過し、しかも、塩のような大きな分子は阻止されていることに気づいたという。研究チームはなぜナノチューブの流量がこれほど大きいのかはっきり理解していないが、非常に滑りやすい表面と関係があると考えている。(Science, May 19, 2006)

新たなエネルギー法案を6月に押し進めるため、戦略固めに忙しい共和党議員

Bill Frist上院共和党院内総務(テネシー州)提案のガソリン税100ドル払戻し案は冷笑をかい、これを柱とした共和党のエネルギー先導策は発進前に崩れさってしまったが、市民のガソリン価格高騰への怒りを痛切に感じている上院共和党議員連合会(Senate Republican Conference)では、メモリアルデー休会明けに上下両院でエネルギー法案を押し進めるため、現在、共和党としての戦略固めを行なっている。

共和党スタッフによると、上院エネルギー作業部会(Senate Energy Working Group)の議長を務めるRick Santorum上院議員(共和党、ペンシルバニア州)と上院エネルギー・天然資源委員会のPete Domenici委員長(共和党、ニューメキシコ州)は、新エネルギー法案をまとめるため、Frist院内総務と毎週会談を行なっているという。共和党案には、@エネルギー国内生産の助長;Aパイプラインや精製所といったインフラの拡張;B省エネやエネルギー効率化の奨励、を狙った施策が盛り込まれる見通しである。

上院ではアイディアは豊富ながら具体的行動に繋がらずにいる一方、下院では、連邦取引委員会(Federal Trade Commission)に石油価格便乗値上げの調査・追訴権限を付与する下院第5253号議案が5月3日に可決されたほか、乗用車の燃費基準強化権限を運輸省に付与する下院第5359号議案の審議も見込まれている。6月には「エネルギーウィーク」が予定されているが、John Boehner下院共和党院内総務(オハイオ州)の報道官であるKevin Madden氏によると、下院の様々な委員会では、この「エネルギーウィーク」の週に下院本会議へ持ち込むための提案を現在策定中であるという。(CQ.com, May 18, 2006)

Lamar Smith下院議員、プラグイン・ハイブリッド法案を提出

下院科学委員会エネルギー小委員会が5月17日に開催した公聴会で、Lamar Smith下院議員(共和党、テキサス州)が、プラグイン・ハイブリッド技術開発の加速化を目的とする「2006年プラグイン・ハイブリッド電気自動車法案(Plug-in Hybrid Electric Vehicle Act of 2006)」の草案を提出した。同小委員会で超党派の支援を獲得している同法案の概要は下記の通り:

  • 州政府や地方政府に、プラグイン・ハイブリッド車購入グラントを提供。
  • 大学や民間企業に、プラグイン・ハイブリッド車の効率を改善する新技術の研究開発を奨励。
  • 2007年〜2016年まで、プラグイン・ハイブリッド車の研究開発に年間2億5,000万ドルを認可。
  • 2007年〜2016年まで、プラグイン・ハイブリッド車普及の為のパイロット計画実施に年間5,000万ドルを認可。

(Environment and Energy Daily, May 18, 2006; Representative Lamar Smith News Release, May 17, 2006)


5月17日号

エネルギー省の水素プログラム年次メリット評価:全体会議の概要

エネルギー省(DOE)が年に一度の水素プログラム・メリット評価を、バージニア州アーリントン市で5月16日から19日まで開催した。今年の評価会では、(i)水素プログラムの2006年度の成果、および、2007年度のDOE水素プロジェクトや産学との協同協定計画を吟味・評価し;(ii)DOE支援の研究開発(R&D)プログラム形成にあたり、技術面での最重要課題への対応を反映させる機会をプログラムのパートナー(水素生成業者や燃料電池製造者等)に提供し;(iii)ナリッジと技術の移転を推進し;(iv)国立研究所、産業界、および、R&Dに携わる学術機関の間の交流を助長することを目標としている。

プロジェクトのメリット評価の前に行われた全体会議では、水素関連プログラムに関与しているDOEの各プログラム・マネージャーが、各プログラムの研究開発の主眼、現在の研究開発状況と達成事項、および取り組むべき課題と今後の計画・活動について簡単に発表したほか、炭素隔離とFutureGenについての概説も行われた。水素関連プログラム・マネジャーの発言概要は下記の通り:

  • Sunitya Satyapal女史(水素貯蔵およびFreedomCAR)… 主にオンボード貯蔵に関する様々なR&DがこれまでDOE内に散在していたが、これ等を一つにまとめて水素貯蔵に重点をあてることとした。水素貯蔵プロジェクトに対する2007年度予算要求額は、エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)予算で3,460万ドル(2006年度は2,660万ドル)、科学部予算で5,000万ドル(2006年度は3,250万ドル)。有望な高容量の新材料が出てきてはいるものの、最適作動温度の分野で大くの課題が残されている。2006年には、単層ナノチューブのプロジェクトについて「go no-go」の重要な決断を行うことになる。
  • Valri Lightner女史(水素・燃料電池部)… 重要課題は、燃料電池の耐久性とコストである。燃料電池コストの約70%が燃料電池スタックのコストで、この70%がスタック内の電極のコストであることを考慮し、DOEではスタックのコストを削減する研究に焦点をあてている。
  • Carl Sink氏(先端原子力研究室の原子力利用水素イニシアティブ)… イニシアティブの目標は、2020年までに原子力エネルギーを利用して商業的に実現可能な水素生成を実証することである。このため、熱化学サイクルや高温電解、システム・インターフェースや技術融合に関連するR&Dが行われている。
  • Mark Paster氏(水素・燃料電池部)… 水素を有望なエネルギー担体とする為には、水素を運搬する技術の開発が必要であるが、2006年度の600万ドルという予算要求額に対し、議会が認可・計上したのが僅か100万ドルであったことからも明白なように、同分野は資金不足に悩んでいる。従って、同プログラムの成果はこの厳しい予算を念頭においてレビューされるべきである。

(DOE/Live Webcast, May 16, 2006;DOE Hydrogen Program 2006 Annual Merit Review Peer Review Plan Final, May 12, 2006)

環境保護団体、ナノ材料含有サンスクリーンのリコールを食品医薬品局に要請

消費者団体および環境保護団体8グループからなる同盟は5月16日、規制上の監視を強化し、ナノ材料を含有する数種のサンスクリーン製品と化粧品をリコールするよう、食品医薬品局(Food and Drug Administration = FDA)に申し立てた。Friends of the Earthは先ごろ、ナノ材料を含有するパーソナルケア製品が増加傾向にあることを示した報告書を発表したばかりであるが、今回の請願はこの報告書発表の直後に行われた。

グリーンピース、Friends of the Earth、および、国際技術アセスメント・センター(International Center for Technology Assessment)は、二酸化チタンと酸化亜鉛のナノ粒子を含むこれらの製品は、人体に害をもたらす恐れがあると論じている。

FDAのスポークスマンはFDAがこのリコール請願について審査する意向であると述べているものの、同時に、「規制方針を変更させるような安全についての懸念は見つけられていない」と指摘している。FDAは6カ月後にこの請願について正式に回答する予定である。(Associated Press, May 16, 2006)


5月17日特別号(一部訂正)

上院の民主党議員、米国のエネルギー自立と環境問題対応を狙ったエネルギー政策を発表

Dick Durbin上院議員(民主党、イリノイ州)を始めとする上院議員数名は5月17日、米国のエネルギー自立へのロードマップ、および、地球温暖化問題対応への重要な一歩となるエネルギー政策を発表した。「2006年成長経済に対応するクリーンエネルギー開発法案(Clean Energy Development for a Growing Economy (EDGE) Act of 2006)」では、2020年までに石油輸入量(注:1)を40%(日間600万バレル)削減するという国家目標を掲げている。同法案の主要条項は下記の通り:

  • 2010年までに米国で販売される新車の25%をエタノール、バイオディーゼル、又は他の代替燃料で走行するフレキシブル燃料車とし、2020年までには新車の50%をフレキシブル燃料車とする。
  • 2015年までに、石油大企業の所有する全ての燃料補給所に代替燃料の販売を義務付ける。
  • 石油価格便乗値上げを連邦犯罪にすることで消費者を保護し、石油や天然ガス会社が価格吊上げの為に供給操作をすることを禁じる。
  • 2020年までに、米国内電力の10%を再生可能資源で発電するよう義務付ける国家再生可能エネルギー使用基準(renewable portfolio standard)を設定する。
  • 連邦政府の石油消費量を2020年までに40%削減し、2013年までに連邦政府が消費する総電力の10%を再生可能資源で賄うよう義務付ける。
  • 石油大企業に対する過度の税額控除を撤廃する。
  • 暖房費支援受給資格を持つ低所得家庭への税額控除等、低所得者に新たな支援を提供する。
  • 代替燃料車の購入者に対する既存インセンティブ、および、ハイブリッド他の先端自動車技術のメーカーに対するインセンティブを拡充する。
  • 国内で販売される全ての新車に、年間温室効果ガス排出量を記したラベル表示を義務付ける。
  • 州政府や地方政府が、石油消費量や温室効果ガス排出の削減を目的とするプロジェクトや代替燃料開発を目的とするプロジェクトを実施するために公債を発行する権限を拡大する。

(Environment and Energy Daily, May 17, 2006; Senator Dick Durbin News Release, May 17, 2006)

注釈:

1:エネルギー情報局(EIA)発表の『2006年エネルギー年次見通し』によると、2020年の推定石油輸入量は日間1,442万バレル。


5月15日号

ラックスリサーチ社、ナノテクノロジーのリファレンスガイド『ナノテクレポート第4版』を発表

ラックスリサーチ社(Lux Research)が5月8日に発表した『ナノテクレポート第4版(The Nanotech Report, 4th Edition)』によると、ナノテクノロジーの商業化は世界各国で加速しているという。同社のPeter Hebert最高経営責任者は、急変するナノテクノロジー分野の全体像を企業幹部や投資者に提供するため、この新報告書をゼロから作成し直したと語っている。同報告書の結論の中で、特に注記すべきものは下記の通り:

  • 2005年には、ナノテクを取り入れた製品が世界で320億ドル以上も販売された。これは2004年の数値の倍以上にあたる。我が社は、2014年には世界の製造業総生産高の約15%にあたる2.6兆ドルの製品にナノテクが取り入れられることになると推定する。
  • 2005年のナノテク研究開発費の世界総額は96億ドルで、2004年から10%増加した。この内訳は、政府の拠出額46億ドル(2004年から3%増)、民間企業の研究開発費45億ドル(同18%増)、ベンチャーキャピタル投資額4億9,700万ドル(同17%増)となっている。
  • 1985年以来発行された米国のナノテク特許の総数は3,966件。企業は、量子ドットや炭素ナノチューブのような激戦分野において重複が必至と思われる特許請求に関し、訴訟やライセンス取引の準備を行っている。特許戦争が起こりかけている。
  • マスコミがナノスケール科学工学に言及する回数が急増するにつれ、ナノテクノロジーに対する一般市民の認識が増している。ナノテクノロジーに言及した英語のマスコミ記事は2004年から40%増え、2005年には18,039件あった。
  • 今日市場に出ている抗菌冷蔵庫のようなナノ利用製品は、同等の在来型製品と比べ、平均11%の価格プレミアムがついている。
  • ナノテクを取り入れた製品の市場参入は部門により異なることが明白になっている。合成物や塗料といった製造業や材料への用途は一番早く開始されたものの、普及には長い時間かかっている。一方、先端メモリーチップやディスプレーのようなエレクトロニクスや情報技術への用途は着手は遅れたものの、急速に普及すると見られている。ナノ構造医療装置やナノ療法のようなヘルスケアや生命科学への応用は、同部門特有の規制のために市場化までの時間が一番長い。

(Lux Research News Release, May 8, 2006; Genetic Engineering News, May 8, 2006)

Carper上院議員、複数汚染物質の排出抑制を目的とする超党派法案を提出

Tom Carper上院議員(民主党、デラウェア州)が5月3日、第108議会(2003〜2004年)に自ら提出した複数汚染物質排出抑制法案の改訂版にあたる「2006年クリーンエア設計法案(Clean Air Planning Act of 2006)」を新たに提出した。この法案では、2015年までの排出削減目標として、@水銀排出量の90%削減;A二酸化硫黄(SO2)排出量の82%削減;B窒素酸化物(NOx)排出量の68%削減を掲げている。

新法案では、NOxとSO2に関しては、米国を東部地域と西部地域に二分し、各地域内で排出権取引を行うことを認めるものの、水銀に関しては排出権取引を認めないとしている。また、発電所の放出する二酸化炭素(CO2)排出量の上限を2010年まで2006年水準と設定し、以降2015年までに2001年水準まで削減することを義務付けている。新法案には、発電所が目標値達成の目的で他業界からCO2クレジットを購入することができるよう、上限設置取引型(cap-and-trade)制度を設置する規定も含まれている。同法案の共同スポンサーとして、民主党のDianne Feinstein上院議員(カリフォルニア州)のほか、共和党のLincoln Chafee上院議員(ロードアイランド州)、Judd Gregg上院議員(ニューハンプシャー州)、および、Lamar Alexander上院議員(テネシー州)も名を連ねている(CQ Today, May 3, 2006; Environment and Energy Daily, May 2, 2006)

Craig Thomas上院議員、国内エネルギー増産に焦点をあてたエネルギー法案を提出

連邦議会では、ガソリン価格高騰と米国の石油輸入依存問題に関して民主・共和の党派ラインでの論争が続いている。ホワイトハウスはエネルギー問題へのコミットメントを示す独自の戦略を思案中であり、上院と下院も次の策を練っている最中の5月5日、Craig Thomas上院議員(共和党、ワイオミング州)がエネルギー生産に焦点をあてた新たな政策を提案した。「2006年エネルギー価格法案(Energy PRICE Act of 2006)」は、エネルギーの生産、精製、インフラ、省エネ、エネルギー効率の向上を目的とするもので、その主要な条文は下記の通り:

  • 北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge = ANWR)を石油探査に解禁し、日間100万バレルを生産
  • 二酸化炭素注入を活用した原油の二次回収に対してインセンティブを提供
  • 国防省に石炭液化燃料購入の長期契約を締結する権限を付与
  • 精製所建設の許可手続を迅速化
  • ブティック燃料の種類を削減
  • Fischer-Tropsch燃料の研究開発プログラムを設置
  • 送電およびパイプラインのインフラ整備に融資する免税債の発行を認可
  • 乗用車の燃費基準を改善
  • 環境保護庁(EPA)に、石油・天然ガス業界のメタン排出削減のための助成金を提供する権限を付与
  • EPAに、州政府当局者を対象とするメタン排出削減テクニックに関するワークショップ開催を義務付け

(Greenwire, May 8, 2006; Senator Craig Thomas Press Release, May 5, 2006)


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