NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2006年7月前半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

7月14日号

ナノサイズのディーゼル燃料添加物に関する許可申請を検討する環境保護庁

英国のナノ材料メーカーであるOxonica社は昨年、ディーゼルの燃料効率改善と排出削減に役立つ人造ナノ材料燃料添加物の市販化について環境保護庁(EPA)に許可申請を提出した。ナノサイズの酸化セリウム材料を含有するOxonica社のディーゼル添加物は最終的にはエンジン排気で消散されるため、この許可申請は、人造ナノ材料を含有する「密閉型(captive)」構造ではなく、ナノ材料の「散布型(dispersive)」利用に対するEPAの回答を知る初めてのテストになると観測筋は期待している。

EPAの広報担当はOxonica社提出の申請に関するコメントは避けたものの、新しい燃料添加物の登録はクリーンエア法の第211項(b)(2)と第211項(e)に基づいて設定された規定に従わなければならないという1994年のEPA規制を言及している。現に、EPAが昨年末に発表した「白書」では、第211項の義務要件がナノスケールの燃料添加物に適用されることを認め、EPAの大気担当室がナノサイズの酸化セリウム燃料添加物に関する申請書を吟味中であることに触れている。

許可申請で提出が必要となる情報は、@添加物の具体的組成;A物質の濃度;B年間の全生産量であるが、こうした基礎データが登録済み燃料や添加物の申請時に既に提出されている場合、メーカーは情報の再提出が不要ということになっている。しかしながら、Oxonica社の申請は他の酸化セリウム材料とは著しく異なる特性を有する人造ナノ材料に関する許可申請であるため、EPAは燃料添加物承認手続き案に基づき、申請者のOxonica社に添加物の毒性に関する文献調査や排出燃焼試験等を義務付けている。産業界や環境保護者、および、その他観測筋によると、将来のナノテク規制に関する論議は有毒物質規制法(Toxic Substances Control Act)が如何に人造ナノ材料へ適用されるかということに集中するため、この許可申請に対するEPAの対応は大きな意義を持つことになるという。あるオブザーバーは、EPAの対応が如何なるものであっても興味深いことだと指摘している。(Inside EPA, July 14, 2006)

ヒトの毛嚢から隔離された多能性の成人幹細胞源

ペンシルバニア大学医学部の研究チームが、数種の異なる細胞に分化する能力を有する新しい成人幹細胞源を隔離したと発表した。毛嚢(hair follicle)は成人幹細胞源として良く知られている。研究チームはヒト胎性幹細胞の培養条件下で、国立衛生研究所(NIH)から入手した頭皮細胞から新たな多能性(multipotent)成人幹細胞を隔離し、これを異なる増殖因子で培養して神経細胞や筋肉細胞およびメラニン細胞等に分化させたという。ペンシルバニア大学の研究チームは、2週間の試験期間の結果を下記のように報告している。

  • 幹細胞の約10% が神経細胞に分化
  • 幹細胞の20〜40% がメラニン細胞に分化
  • 幹細胞の約80% が平滑筋細胞に分化

American Journal of Pathology誌の6月号に掲載されている『ヒトの毛嚢から隔離した新たな多能性成人幹細胞(Isolation of a Novel Population of Multipotent Adult Stem Cells from Human Air Follicles)』という研究論文の主要著者であるXiaowei Xu博士は、この研究結果はヒトの毛嚢が身近な幹細胞源を提供する可能性を示唆するものであり、末梢神経疾患やパーキンソン病、脊髄損傷といった多くの疾患治療に必要な細胞をいつの日か提供することが可能になるであろうと語っている。(AScribe, July 12, 2006)


7月10日号

Bodmanエネルギー長官、国立再生エネルギー研究所で新設の科学技術施設をオープン

Samuel Bodmanエネルギー省(DOE)長官を初めとするエネルギー省の高官等が、国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory = NREL)に建設された71,000平方フィートの科学技術施設(Science and Technology Facility = S&TF)の落成式を執り行った。建設費2,260万ドルというこの最新鋭施設の目的は、有望視されている再生可能エネルギー技術 …特に、ソーラー、水素、および、ビルディング関連エネルギー技術… の開発と商業化を推進することにある。

同施設の呼び物といえるのが、11,500平方フィートの面積を誇る工程開発・統合実験室(Process Development and Integration Laboratory)で、NREL研究者はここで、産業界との連携をとりながら、革新技術の商業化に要する時間を短縮する新しい革新的な製造工程を開発していくことになる。具体的には、太陽電池、水素燃料電池、および、分散型発電装置といった次世代再生可能エネルギー技術に関連する複雑な製造上の問題が取り上げられる見込みである。

この落成式に出席したDavid Garman DOE次官によると、S&TFで実施される先進研究はブッシュ大統領提案のソーラー・アメリカ・イニシアティブの目標達成に大きく貢献することになるという。(DOE Press Release, July 7, 2006)

Ehrlichメリーランド州知事、幹細胞研究に関する州政府委員会のメンバーを発表

Robert Ehrlichメリーランド州知事(共和党)は7月6日、幹細胞研究に対する今年度グラント1,500万ドルの授与を担当する州政府委員会のメンバーを発表し、これによって委員会が正式に発足した。14名から成るこの委員会は、宗教的な生物医学倫理学者2名を初め、ジョンズホプキンズ大学およびメリーランド大学の科学者、州内のバイオテク産業の代表、州司法長官補、および、幹細胞研究に起因する治療法が期待される疾病を抱える患者数名を含む幅広い背景の人物をメンバーとしている。

この委員会は、胚芽幹細胞研究に圧倒的に支持的な人選となっているが、いくらかバランスのとれた討議を行うために、同委員会には「異なる見解」も取り入れられた。ワシントンDCのカトリック大学の倫理学教授Joseph Capizzi博士は、委員会メンバーへの指名が発表された直後、「研究のために胚芽を破壊することに反対の立場」であるとの自己見解を明示している。(Baltimore Sun, July 7, 2006)


7月7日号

Bodmanエネルギー長官、ソーラーエネルギー技術のプロジェクト公募を発表

Samuel Bodmanエネルギー省(DOE)長官が、ソーラーエネルギー技術の推進を目的とするコスト分担型官民パートナーシップでプロジェクトを募集すると発表した。ブッシュ大統領のソーラー・アメリカ・イニシアティブ(Solar America Initiative)の一環として行なわれるこの提案公募の目標は、現在キロワット時あたり13〜22セントするPVコストを2010年までに9〜18セントに引き下げることで、DOEは同プロジェクトに3ヵ年で1億7,000万ドルの拠出を予定している。

PVシステム研究開発技術パスウェイ・パートナーシップ(Photovoltaic Systems R&D Technology Pathway Partnership)は、新型のPV部品・装置、および、製造機器の開発・試験・実証・認証・導入に重点をおくもので、今回の提案公募では、PVシステムや部品のデザイン・統合・設置面での総合的な技術改良を取り上げる大型プロジェクト(プロジェクト当たりの年間最高助成額は2,000万ドル)を4〜10件、特定の部品や製造装置の技術開発に焦点をあてる小型プロジェクト(年間最高800万ドル)を10〜15件選定する予定であるという。対象は業界先導チームで、大学、国立研究所、および、非政府機関の参加も認められる。(DOE News Release, June 28, 2006)

カナダ政府、アルバータ州の太陽光発電モデルプロジェクトに最高35万ドルを提供

カナダ政府は6月29日、アルバータ州政府所有ビルに太陽光発電装置を取り付ける2ヵ年プロジェクトに最高35万ドルを提供すると発表した。カナダ政府は、グリーン市政基金(Green Municipal Fund:大気質・水質・土壌の改善や気候保護における官民パートナーシップの形成支援、および、官民資金調達のてこ入れを目的とする基金)の創設・管理で地方自治体連合(Federation of Canadian Municipalities = FCM)に5億5,000万ドルを付与しているが、アルバータのプロジェクトは同基金から資金提供を受けることになる。

このプロジェクトは、エドモントン、カルガリー、ジャスパーといった地方自治体の市営ビルに1キロワット級の太陽光発電装置を20基設置するというもので、系統連系型太陽光発電装置の技術的実現性を同州の自宅所有者やビジネスに実証する好機となるほか、参加する各地方自治体に太陽光発電装置に関するトレーニングを提供することにもなると期待されている。(FCM Press Release, June 29, 2006)

地球温暖化問題について調査中の政府責任説明局(GAO)

政府責任説明局(Government Accountability Office = GAO)では、民主・共和両党議員からの依頼によって、地球温暖化が国有地や保険業界に及ぼす影響を精査している。GAOが現在実施してい調査は下記の通り:

  • 気候変動が国立公園や森林、および、野生生物保護区域にもたらす影響についての分析調査:要請者はJohn McCain上院議員(共和党、アリゾナ州)とJohn Kerry上院議員(民主党、マサチューセッツ州)。
  • 地球温暖化が連邦政府の食料・穀物保護計画、および、保険業界に及ぼす影響についての調査:要請者はSusan Collins上院議員(共和党、メイン州)とJoe Lieberman上院議員(民主党、コネチカット州)。
  • 気候変動学者が研究結果を共有する際に使用する基準(科学者の財務資料を含む)についての調査:要請者は下院科学委員会のJoe Barton委員長(共和党、テキサス州)。

GAO環境・資源部のJohn Stephensonによると、調査は未だ早期段階にあり、その内の2本に関しては発表は早くても2007年春になるという。(Greenwire, June 29, 2006)

エネルギー専門家、「エネルギー自立」は感情的に引き込まれるスローガンにすぎないと批判

民主党と共和党の議員は昨今、エネルギー自立の必要性を声高に主張しているが、シンクタンクのエネルギー専門家等は世界石油市場の相互関連性を考慮すると、「エネルギー自立」という目標は夢想と経済的不可能性との間のいずこかにあるものだとして、政治家の「エネルギー自立」宣言を批判している。

国家エネルギー政策委員会(National Commission on Energy Policy = NCEP)(注:1)のJason Grumet専務理事は、エネルギー自立は感情的に動かされる概念ではあるものの、もはや存在しない[かつての]世界の名残にすぎないと指摘し、政治家はエネルギー自立という用語を放棄して、エネルギー使用合理化による石油消費の削減に焦点を当てるべきであると指摘する。また、国際経済研究所(Institute for International Economics)のC. Fred Bergsten所長は、「エネルギー自立」はばかげた概念であると批判し、米国はエネルギー需要を抑制する一方で中国等の石油大量消費国と協力関係を築くことにより、「健全な相互依存関係(healthy interdependence)」の構築に向けて努力すべきであると主張している。(The Wall Street, Journal, July 6, 2006)

注釈:

1:超党派の非営利団体。DOE次官補で気候変動技術プログラム(CCTP)のディレクターであったDavid Conover氏はDOEを辞任後、NCEPの顧問に着任している。


7月5日号

フォードとVeraSun、米国初のエタノール回廊構築計画を発表

フォード・モーター社とVeraSun 社が6月29日、米国初のエタノール回廊(ethanol corridor)を構築すると発表した。中西部エタノール回廊(Midwest Ethanol Corridor)の目的は、E-85の可用性を促進し、フレキシブル燃料車の運転者の燃料選択肢を拡大することにある。フォード・モーター社とVeraSun社では同プログラムの第一段階として、イリノイ州の州間道路55号線とミズーリ州の州間道路70号線沿いに一定間隔で少なくとも50基のE-85燃料ポンプを設置する予定であり、これによってシカゴからカンザスシティーまでを完全にE-85燃料だけで走行することが可能になるという。

フォード・モーター社は現在4種類のフレキシブル燃料車を販売しており、今年は最高25万台の生産を予定しているほか、米国内で生産するバイオ燃料走行車を2010年までに倍増すると約束している。米国内を現在、約500万台のフレキシブル燃料車が走行しているにも拘わらず、E-85を販売するガス・ステーションは全国18万以上の小売ステーションの内、750ヶ所未満にすぎない。この発表会見でVeraSun社のDan Endres会長は、E-85の可用性拡大だけでなく、フレキシブル燃料車の所有やE-85利用に関する消費者の認識向上が非常に重要であると指摘し、今回のエタノール回廊がこの二つの目的を達成する良い例になるものと期待していると語った。(Ford Motor Company News Release, June 29, 2006)

海洋動物サルパの糞が大気浄化に一役かっているという報告

ウッズ・ホール海洋学研究所(Woods Hole Oceanographic Institution)とコネチカット大学の研究者が行った研究によると、サルパ(salpa aspera)と呼ばれるヒトの親指ほどの透明なゼリー状の動物が、大気から二酸化炭素を取り除く上で重要な役割を果たしているという。サルパは、空気と水から二酸化炭素を吸収する植物プランクトンを食べた後で、二酸化炭素を封じ込めた高密度の糞石を排泄する。排泄された糞石は直ちに海底に沈み、二酸化炭素が大気中に再び入ることはないという。

ウッズ・ホール海洋学研究所のLaurence Madin海洋生物学者とコネチカット大学のPatricia Kremer女史を中心とする研究グループは、ニューイングランド沖でsalpa aspera 種の大繁殖が過去30年間に4回観測されたという事例を挙げている。Deep Sea Researchの5月号に掲載された『米国ニューイングランド沖で周期的に発生するSalpa Asperaの大繁殖(Periodic swarms of the salp Salpa Aspera in the slope water off the NE United States: Biovolume, vertical migration, grazing, and vertical flux)』という研究論文では、2002年に遭遇した約38,600平方マイル(インディアナ州の面積より大きい)を覆うサルパ大群について言及し、この大群が推定で一日あたり最高4,000トンの二酸化炭素を海底に沈めている可能性があると結論づけている。スポーツ多目的車(SUV)の排出する二酸化炭素は一日あたり約7トンであるため、4,000トンの二酸化炭素はSUV約571 台分の二酸化炭素排出量に匹敵することになる。(Woods Hole Oceanographic Institution Research News, June 30, 2006)


7月3日号

上院歳出委員会、クリーンな開発と気候に関するアジア-太平洋パートナーシップ(APP)の予算を概ね承認

上院歳出委員会が6月29日、クリーンな開発と気候に関するアジア-太平洋パートナーシップ(Asia-Pacific Partnership on Clean Development and Climate = APP)予算を含む3本の歳出予算法案を審議し、ブッシュ政権の要求額である5,200万ドルを概ね承認している。本日承認されたAPP予算は下記の通り:

  • 「2007年度国防省および対外活動歳出予算法案」で、国務省に2,600万ドルを計上。
  • 「2007年度内務省および関連省庁歳出予算法案」で、環境保護庁に100万ドル(大統領要求額は500万ドル)を計上。
  • 「2007年度エネルギー・水資源および関連省庁歳出予算法案」では、エネルギー省(DOE)にAPP用の新予算をつけないものの、既存の費目から大統領要求額である1,500万ドルをAPPに充当することを容認。

ブッシュ政権ではこの他に、商務省のAPP予算として600万ドルを要求しているが、商務省予算を含む「2007年度商務省・司法省および科学歳出予算法案」は7月13日の週に上院歳出委員会で審議・マークアップされる(注:1)見通しである。(Greenwire, June 29, 2006)

Springer社、民間大手出版社として初のナノテクノロジー専門誌を発行予定

ドイツの出版社Springer社と非営利団体のナノ研究協会(Nano Research Society)が先頃、新しい国際的なナノテクノロジー専門誌、「ナノスケール・リサーチ・レターズ」の出版に向けて提携することを発表した。同誌が他の学術専門誌と異なる点は、民間の大手出版社から出版される初のナノテクノロジー専門誌であり、誰でも無料で記事にアクセスできる点である。同誌では、物理学・材料科学・生物学・化学・エンジニアリングという学際的分野においてナノ構造の根本的なサイエンスや性質を探る研究を中心的に取り上げ、ナノスケールでの物質加工や利用における科学的・技術的進歩についてオープンに意見交換をするための学際的フォーラムを提供することになる。創刊号は2006年7月に発行される予定である。(WebWire, June 9, 2006)

注釈:

1:上院歳出委員会は7月13日に、大統領予算要求額を13億8,000万ドル上回る総額512億ドルの「2007年度商務省・司法省および科学歳出予算法案」を可決した。しかしながら、上院歳出委員会発表のプレスリリース、および、Richard Shelby上院議員(共和党、アラバマ州)が提出した同法案にも商務省のAPP予算に関する記述がなく、APP予算600万ドルがとうなったのか不明。これを確認すべく、Shelby上院議員の事務所および上院歳出委員会に現在問い合わせ中。


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