NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2006年8月前半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

8月14日号

Patakiニューヨーク州知事、意欲的な国家エネルギー計画を発表

2008年大統領選挙への出馬が噂されるGeorge Patakiニューヨーク州知事(共和党)が8月7日、首都ワシントンのナショナルプレスクラブにおいて、米国の輸入原油依存度を大幅に縮減する野心的な国家エネルギー計画を発表した。Pataki州知事のエネルギー計画は、@代替燃料の生産・利用拡大;Aエネルギー使用合理化の推進;B国内エネルギーの増産によって、米国の石油消費量を今後10年間で約25%削減 …これは日間約550万バレルで、OPEC諸国からの輸入量にほぼ相当… するというもので、下記の3つの戦略を柱とする:

  1. エネルギー 使用合理化、および、非石油系燃料の利用拡大を推進する新インセンティブ
    • 米国は、企業平均燃費(CAFE)を1ガロンあたり21マイルから34マイルに引き上げることで、日間約550万バレルの輸入原油を削減することが可能である。この実現に向けて、自動車の燃費向上に比例して税控除額を引き上げるスライド式の石油消費削減インセンティブ(Petroleum Reduction Incentive)を設置する。
  2. 非石油系燃料の生産拡大:下記の施策によって、輸送用石油代替燃料の市場構築を促進する。
    • 代替燃料や代替燃料車の分野でのブレークスルーに向けて民間の研究開発にてこ入れするため、代替燃料・代替燃料車技術国立優良センターを設置 する。
    • バイオ精製施設他の代替燃料生産施設建設に伴なう前払い費用やリスクを大幅に削減するため、企業がプロジェクトに即時出資することを認可する。
    • 輸送用燃料生産者に、再生可能燃料やクリーンな石油代替燃料向け連邦生産税控除を提供する。
    • 代替燃料施設開発者のリスクを更に削減して融資を助長するため、連邦政府ローン保証プログラムを拡大する。
    • 連邦政府の持つ膨大な調達力を活用する: 今後10年間で、連邦政府所有車両全てを代替燃料車とし、連邦所有ビルでの使用エネルギーを全て代替エネルギーで賄う。
  3. 石油代替燃料補給インフラの拡充
    • ガソリンスタンド経営者が現在直面している障壁の排除。特に、再生可能燃料販売を、燃料配給業者と小売店の間の占有契約(exclusivity agreement)から免除する連邦規制を制定する。
    • 再生可能燃料ポンプ設置を奨励するインセンティブを提供する。

(New York Governor's Office Press Release, August 7, 2006)

細長い鋼管の内壁にカーボンナノチューブを自己形成させたニュージャージー工科大の研究チーム

Somenath Mitra 化学・環境科学教授を中心とするニュージャージー工科大学(New Jersey Institute of Technology = NJIT)の研究チームが、カーボンナノチューブを短時間に大量生成する画期的な方法を開発したと発表した。

研究者達は一般的に粉末のナノチューブを利用しているが、これは大きな表面へ固定させることも、大型デバイスで生成することも不可能であって、生成量も極く微かに限られるという難点があった。

NJIT研究チームは、溶解コバルトとモリブデン(molybdenum)から成るエタノール溶液を触媒として使用することで、ナノチューブを毛細管の内壁に粘着させることに成功したのもので、同溶液の吹き付けによって中空鋼管(hollow steel tubing)の内壁に出来たシリカ層が単層カーボンナノチューブ形成に欠かせないものであることが明らかになったという。研究チームによると、この方法を利用することで、20分以内に、長さ10フィートの細い中空鋼管の内壁に単層カーボンナノチューブを生成することが可能であるという。NJIT研究チームの「Selective Self-assembly of Single Walled Carbon Nanotubes in Long Steel Tubing for Chemical Separation」という研究論文は、2006年6月14日号のJournal of Material Chemistryに発表された。(NJIT Press Release, August 3, 2006)


8月11日号

風力エネルギー設備容量でカリフォルニア州を抜き第1位となったテキサス州

米国風力エネルギー協会(American Wind Energy Association = AWEA)の第2四半期市場報告によると、2006年1月から6月までに米国内で増設された風力発電設備容量は822メガワット(MW)で、風力発電の累積設備容量は9,971 MWに達したという。AWEAでは、2006年の年間新設備容量が、これまでの最高記録となった2005年の2,431 MWを遙かに上回る3,000 MW以上になるものと推定している。州別では、2006年前半に375 MWを増設して累積設備容量を2,370 MWまで伸ばしたテキサス州が、過去25年間首位にあったカリフォルニア州 …2006年前半の増設容量は174 MWで、累積設備要領は2,323 MW… を抜いて第1位となっている。第3位は昨年同様にアイオワ州で836 MW、これにミネソタ州の755.7 MWが続いている。

こうした堅調な成長を背景に、AWEA、エネルギ―省(DOE)、および、国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory = NREL)は今年6月に開催されたWINDPOWER 2006会合で、米国の電力需要の最高20%を風力エネルギーで供給することに焦点をあてた行動計画(action plan)の策定を約束した。AWEA、DOE、および、NRELでは、環境保護団体、政策策定者、電力会社、投資家、教育者、地方自治体といった主要な利害関係者から意見を聴取して、来年6月にロサンジェルス市で開催されるWINDOPOWER 2007会合の席で行動計画を発表する予定であるという。(AWEA News Release, July 25, 2006)

エネルギー省と農務省、バイオマス研究開発技術諮問委員会の新メンバーを発表

エネルギー省(DOE)と農務省(USDA)が、バイオマス研究開発技術諮問委員会(Biomass Research and Development Technical Advisory Committee)の新メンバー12名を8月9日に発表した。2000年6月に制定された「2000年バイオマス研究開発法(Biomass Research and Development Act of 2000)」によって創設された同諮問委員会は、DOE長官とUSDA長官に @戦略計画;A提案公募の技術面での重点や指針;B提案の査定・評価手順;C連邦政府、州政府、産業界、および、栽培者の間の協力強化奨励に関して専門的助言を行うことを主要な役目とするもので、バイオ燃料業界や大学、商業組合や州政府といった多様な分野を代表する30名で構成されている。今回指名された12名(任期は2008年11月まで)は下記の通り:

  • David Anton (デュポン社)
  • Thomas Binder (アーチャー・ダニエルス・ミッドランド社)
  • Lou Honary (ノーザン・アイオワ大学)
  • E. Alan Kennett (ゲイ & ロビンソン製糖会社)
  • Mark Maher (ゼネラルモーターズ社)
  • John McKenna (ハミルトン・クラーク社)
  • Ed McClellan (オールストン&バード LLP)
  • Mitchell Peele (ノースカロライナ農業事務所連合)
  • Jeffrey Serfass (テクノロジー・トランジション・コーポレーション)
  • Robert Sharp (モービル・フォレスト・プロダクト社)
  • J. Read Smith (アグリカルチャー・エネルギー作業グループ)
  • Rodney Williamson (アイオワとうもろこし促進委員会)

(DOE News Release, August 9, 2006)


8月10日号

ハーバード大学、MIT、コロンビア大学の研究者チーム、二酸化炭素深海貯留の可能性に言及

ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、および、コロンビア大学の研究者チームが、深海は排出された二酸化炭素(CO2)の恒久的貯留に理想的な場であるという研究報告を 『全米科学アカデミー会報(Proceedings of the National Academy of Science)』 に発表した。「深海堆積物での恒久的な二酸化炭素貯留(Permanent carbon dioxide storage in deep-sea sediments)」という研究論文は、水深3,000メートル以深の海底に温室効果ガスを注入する可能性を高めることになると期待されている。同研究報告の主要点は下記の通り:

  • 水深3,000メートル以深の高圧・低温環境下では、CO2は浮揚性のある流体層の下に留まる。また、ハイドレート氷結晶を形成するため、CO2が岩の間隙孔(rock pore)から海面に逃げ出す心配がない。最終的には、数百万年の歳月をかけてCO2は徐々に周囲の水に溶解する。
  • 米国海岸線から200マイルまでの経済海域内におけるCO2総貯留能力は莫大で、現行排出量にして数千年分に及ぶ。
  • 米国経済海域をの外の深海堆積物の貯留能力は、「基本的に無限」である。
  • CO2を放出する産業発生源からCO2を液状にして輸送するコストが高い為、近い将来の実用化は制限される。

(Greenwire, August 8, 2006)

ナノテク・タスクフォースを創設した食品医薬品局、10月にナノテク製品規制を検討する公聴会を開催

食品医薬品局(Food and Drug Administration = FDA)のAndrew C. von Eschenbach局長代理が8月8日、ナノテク製品の規制方法を検討するため、局内にナノテクノロジー・タスクフォースを設置したと発表した。このタスクフォースでは、FDA規制対象となるナノテク材料使用製品が人体に及ぼし得る影響に焦点をあて、同分野における知識や政策のギャップに対応する方法を提言するという。

FDAの関心事は、@食品(健康補助食品を含む)、食品添加剤、着色添加物、飼料、化粧品、薬品、生物製剤、医療機器といった分野で現在開発されているナノ材料使用新製品の種類;AFDAが注意を払うべき科学的問題の有無;BFDA規制下の製品にナノ材料を使用することに関して、産業界や学界および利害関係者がFDAに教示したい問題点。このため、FDAでは、ナノテク・タスクフォースが議長を務める公聴会を今年10月10日に開催して、様々な利害関係者等から意見を聴取する予定である。FDAの管轄に入るナノテク製品の範囲が広範にわたるため、FDAでは全体会議の後で下記の小セッションを開催することも検討しているという。

  • 食品(健康補助食品を含む)や食品添加剤、着色添加物や飼料
  • 局所的に投与される(topically-administered)薬品・生物製剤・デバイス、および、化粧品
  • その他の薬品・生物製剤・デバイス

(Federal Register, August 8, 2006; Smalltimes, August 9, 2006)

カリフォルニア州議会の上院エネルギー委員会、ソーラールーフ百万件法案を全会一致で可決

カリフォルニア州議会の上院エネルギー委員会は8月8日、Kevin Murray上院議員(民主党、ロサンジェルス)とLloyd Levine下院議員(民主党、シャーマンオークス)が提案したソーラールーフ百万件法案(Million Solar Roofs bill:上院第1号法案)(注:1)を全会一致で可決した。同法案には、2006 年1月にカリフォルニア公共事業委員会が立ち上げたカリフォルニア・ソーラー・イニシアティブ(California Solar Initiative = CSI)を補完するという目的で、下記の3つの主要政策が盛り込まれている:

  • 電力会社の配電網に送出できる太陽光発電余剰電力は現在、電力会社の総負荷電力の0.5%までに制限されているが、このネットメータリングの上限を2.5%まで引き上げ、消費者がネットメータリングで受けられるクレジットを拡大する。
  • 2011年より、住宅購入者が選択できる標準オプションの一つとしてソーラーパネルを提供するよう、住宅建築業者に義務付ける。更に、カリフォルニア州エネルギー委員会に対し、太陽光発電が新築住宅の標準装備になるべきか否か、および、何時から標準装備となるべきかを決定する為の手続きにかかるよう指示する。
  • 州目標として、同州の市営電気事業による太陽光発電リベート制度の導入(導入の総コストは8億ドル)を掲げる。公益事業委員会には市営電気事業を監督する法的権限がないため、州法令で州全体の太陽光発電リベート計画を設置する必要がある。同目標を達成するため、この導入コスト8億ドルを、CSIでPG&E社・エジソン社・SDG&E社の顧客用にと指定交付した32億ドルから捻出する。

同法案はこの2週間の内に州議会の上院本会議で採決にかけられる見通しであるが、法案提案者の一人であるLevine上院議員によると、法案は議会承認に向けて着実に進んでおり、Arnold Schwarzenegger州知事の支持も大いに期待できるという。(RenewableEnergyAccess.com, August 9, 2006)

 

注釈:

1:同法案に類似したソーラールーフ百万件計画(Million Solar Roofs Initiative)が昨年、Kevin Murray上院議員(民主党、ロサンジェルス)とJohn Campbell上院議員(共和党、オレンジ・カウンティ)によって提案されたが、この計画は上院の反対で可決に至らなかった。


8月8日号

ヒトの脂肪細胞から筋肉細胞

カリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)の研究者チームが、ヒトの脂肪から取り出した幹細胞を滑らかな筋肉細胞に変えたと発表した。Larissa Rodriguez博士率いる同研究チームは、脂肪細胞由来の多能性(multipotent)幹細胞を磁養分の多い混合液(増殖因子やヒトの蛋白質の混合液)の中で培養して、これを滑らかな筋肉細胞に変わるよう作為したところ、筋肉細胞に特有の遺伝的表現や蛋白質の発生が観察された。次に、UCLAのBenjamin Wuバイオ工学助教授が開発した特別装置 …細胞を埋め込んだコラーゲンゲルの中に散在するマイクロビーズの動きを追跡する装置… でこの細胞の機能を実験したところ、筋肉細胞のように伸縮することが確認されたという。

滑らかな筋肉細胞は、脳や骨髄にある幹細胞からも作れるものの、脂肪からの方が遥かに容易である。また、患者自身の脂肪から作った筋肉細胞を移植するということは、拒絶反応抑制剤が不要になるということでもある。今回の発見は、心疾患や消化器疾患、および、膀胱機能障害等に新たな治療方法を提供することになると期待されている。UCLAの同研究論文は8月8日号の『全米科学アカデミー会報(Proceedings of the National Academy of Sciences)』に掲載される。(Eurekalert.org Public Release, July 24, 2006; MSNBC.com, July 24, 2006)

Gutierrez商務長官、イノベーション指標作りに向け、諮問委員会と省内作業部会の設置を発表

Carlos Gutierrez商務長官は8月4日、米国の卓越したイノベーションをより正確に測定するため、学界やビジネス界の専門家からなる超一流パネルを招集するほか、商務省内にイノベーション指標化に携わる作業部会を設置すると発表した。

イノベーションが経済に及ぼす影響を理解するにはイノベーションを正確に測定する必要があると指摘したGutierrez長官は、経済評価を行なう通商プロ達の優れた研究成果を大いに活用し、政府職員以外のデー利用者や専門家との協力によって、より良いイノベーション指標を1年以内に提案する意向であると語った。同長官発表の具体策は下記の通り:

  • 学界の専門家や多様な商業部門の代表者計13名から成る、「21世紀経済におけるインベーション指標化諮問委員会(Measuring Innovation in the 21st Century Economy Advisory Committee)」を設置する。
  • 同諮問委員会は今秋開催され、イノベーション指標の改善方法を確認する作業に着手する。委員会は中間報告を2007年初旬、最終報告書を2007年中盤までに作成する。
  • 12名の商務省アナリストとスタッフで構成された省内イノベーション指標化チーム(Departmental innovation measurement team)は、諮問委員会と緊密に協力する。

(Department of Commerce News Release, August 4, 2006)


8月7日号

環境保護庁、環境調和型コンピューターおよびモニターのリストを発表

環境保護庁(EPA)が先頃、環境影響の最少な材料やデザインの使用をコンピューター製造業者に奨励する「電子製品環境査定ツール(Electronic Product Environmental Assessment Tool = EPEAT)」という新プログラムの一環として、グリーン基準を満たすコンピューターとモニターのリストを発表した。

EPEATプログラムの電子製品評価クライテリアは51項あり、その内の23が必須要件、残りの28が随意要件となっている。評価クライテリアは、カドミウム・鉛・水銀といった有毒化学物質の大幅削減に焦点をあてている一方、エネルギー効率、および、部品のリサイクル性をも強調している。電子製品はその環境パーフォーマンスによって下記の3等級に分類される。

  • 「銅」:23の必須要件を全て満たしている製品
  • 「銀」:23の必須要件を全て満たし、更に随意要件の50%以上を満たしている製品
  • 「金」:23の必須要件を全て満たし、更に随意要件の75%以上を満たしている製品

EPAが今回発表したリストでは、デスクトップ型コンピューター20種、ノート型コンピューター23種、モニター24種、そして、デスクトップ型コンピューターとモニターの統合システム2種を評価している。結果は下記の通り:

  • デスクトップ型コンピューター:「銀」が19で、「銅」が1
  • ノート型コンピューター:23全てが「銀」
  • モニター:「銀」が18で、「銅」が6
  • 統合システム:2つとも「銀」

EPAでは、電子機器を大量購入する連邦省庁他の機関が今後5年間、EPEAT基準を満たすエコフレンドリーな機器を購入すれば、下記のような削減に繋がると推定している:

  • 1,300万ポンド(6,500トン)以上の有害廃棄物
  • 300万ポンド(1,500トン)以上の無危害廃棄物
  • 600,000メガワット時を超えるエネルギー

EPEATプログラムの詳細はhttp://www.epaet.netを参照されたし。(EPA News Release, July 24, 2006; sfgate.com, July 22, 2006)

アラスカ南東部の氷河、予想の2倍ものスピードで後退

アラスカ大学フェアバンクス地球物理学研究所の研究チームが、1948年から2000年までの52年間にアラスカ南東部の氷河の高さがどれほど変化したかを分析したところ、アラスカ南東部の氷河は、科学者の推定の2倍ものスピードで後退していることが明らかになった。同研究の主要な調査結果は下記の通り:

  • 氷河に覆われた地域の95%で氷の消失が見られた。
  • 年間平均約14.6立法キロメーターの氷を消失した。これはロサンジェルス市の18年間の水使用量に等しい。
  • アラスカ南東部の氷河の消失で、世界の海面は1948年から2000年までに約2.4ミリメーター上昇した。

この調査研究に携わった科学者等は、アラスカ南東部の氷河がここ2年間、更に急激に後退していることを指摘しており、9月には最新データを用いて同調査のフォローアップを行なう予定であるという。この研究論文は次号の『地球物理学研究誌(Journal of Geophysical Research)』に掲載される見込みである。(Juneau Empire, August 2, 2006)

ラックスリサーチ社、『闘う価値あるナノテク知的財産』という報告書を発表

ラックスリサーチ社が、Foley & Lardner法律事務所との協力で作成した『闘う価値あるナノテク知的財産(Nanotech IP Battles Worth Fighting)』という新報告書を発表した。報告書によると、2005年末までに米国で発行されたナノテク関連特許は総計で5,996件にのぼるものの、ナノテク特許申請の激増に米国特許商標局(US Patent and Trademark Office)の対応が追い付かず、未処理のものが2,714件もあるという。1993年には平均2.5年であった出願期間(申請から発行までの期間)は、今ではほぼ4年であり、2005年には出願中のナノテク特許申請数と特許発行数の比率は3対1であったと報告している。

イノベーションの殺到に一段落ついた時、多くの特許権者は、込み合い重複する分野で自らのイノベーションがどれ程の価値を持つのかと自問することになろうが、これは逆に考えると、ナノテクの重要分野に多くの特許があるということで、新たなライセンシングへの道を開くことになる、とFoley & Lardner法律事務所のStephen Maebius弁護士は語っている。

ラックスリサーチ社とFoley & Lardner法律事務所では、@炭素ナノーチューブ;A金属ナノ粒子;Bエーロゲル(aerogel);Cセラミック系ナノ粒子;Dデンドリマー;E量子ドット;Fフラーレン;Gナノワイヤーという8種類のナノ材料に関して米国で発行された2,738件の特許を分析し、下記の結論に達している:

  • エレクトロニクス分野における炭素ナノチューブと量子ドットの利用は、特許の数や脆弱性から見て法廷争いとなる可能性が高いものの、対応市場が広大であるため、闘う価値が十分にある。
  • ヘルスケアや化粧品への応用分野では、デンドリマー、セラミック系ナノ粒子、金属ナノ粒子のようなナノ材料の特許は非常に込み合い脆弱であるものの、用途の幅広さのために闘う価値がある。
  • 高性能カソードといったセラミック系ナノ粒子のエネルギー応用や、ナノワイヤーのエレクトロニクス応用には、隠れた好機が潜んでいる。

(Lux Research News Release, July 25, 2006)


8月4日号

バイオエネルギー研究センターに2億5,000万ドルを投資するエネルギー省

Samuel Bodmanエネルギー省(DOE)長官は8月2日、セルロース系エタノールやその他バイオ燃料の研究開発を促進するため、バイオエネルギー研究センター(Bioenergy Research Center)の設置・運営に向こう5年間で総額2億5,000万ドルを投じる予定であると発表した。新センターのミッションは、日光を吸収してエネルギーを作るという自然メカニズムの利用を目的として、微生物や植物のシステム生物学(systems biology)を研究することであり、特に、植物繊維やセルロースのエタノール転換率を高める生物プロセス(biological process)を理解することが焦点となる。

同競争グラントでは、エネルギー関連システムや合成生物学(synthetic biology)の統合的研究を行なう学際的な研究開発センターを2件支援する予定で、米国の大学や国立研究所、非営利機関や民間企業が助成対象となる。各センターへの助成額は5年間で最高1億2,500万ドル。DOEでは初年度にセンターのスタートアップ費(ビルディングの建設費には使用できない)として2,500万ドルを給付し、2年目からは運営費として年間最高2,500万ドルを給付する予定であるという。提案の応募締切は2007年2月1日。(DOE News Release, August 2, 2006; Greenwire, August 3, 2006)

クリントン前大統領の気候イニシアティブに世界の大都市22市が加入

ビル・クリントン前大統領は8月1日、実用的かつ測定可能な方法で気候変動に対応する「クリントン気候イニシアティブ(Clinton Climate Initiative = CCI)」(注:1)の第1号プロジェクトとして、大都市気候リーダーシップグループ(Large Cities Climate Leadership Group) …温室効果ガス(GHG)排出削減を公約している世界の22都市(注:2)から成る機関… とのパートナーシップ形成を発表した。

クリントン財団(Clinton Foundation)はこの4年間、エイズの検査や治療薬の効率的な調達・配給システムを構築することによって治療コストの大幅削減を達成し、エイズ対策に大きく貢献したという実績を持っている。CCIでは、参加22都市のGHG排出削減およびエネルギー効率改善を、これ(エイズ対策)と同様のビジネス志向型アプローチで支援していくという。具体的な施策は下記の通り:

  • 参加都市の購買力をプールする購買コンソーシアム(purchasing consortium)を設置する。目的は、@省エネ製品価格を引き下げる交渉力の強化;A省エネの新技術・製品、および、GHG削減の新技術・製品の開発・普及の促進。
  • エネルギー使用合理化やGHGガス排出削減に繋がるプランの策定・実施に関して各都市に技術的アドバイスを提供するため、世界最高の専門家を動員する。
  • 各都市が@GHG排出ベースラインを設定し;AGHG排出削減プログラムの有効性を測定し;Bプログラム効果の有無を他都市とシェアできるよう、共通の測定ツールやインターネットを使った通信システムを作成・配備する。

(Clinton Foundation Press Release, August 1, 2006)

 

注釈:

1:同イニシアティブでは、世界排出量の15〜20%を放出している大都市40都市をターゲットにしている。

2:ベルリン、ブエノス・アイレス、カイロ、カラカス、シカゴ、デリ、ダッカ、イスタンブール、ヨハネスバーグ、ロンドン、ロサンジェルス、マドリッド、メルボルン、メキシコ・シティ、ニューヨーク、パリ、フィラデルフィア、ローマ、サオパウロ、ソール、トロント、ワルシャワの22都市。


8月3日号

国際金融公社(IFC)、中国のエネルギーニーズに対応するため、石炭液化プラントを支援

国際金融公社(International Finance Corporation = IFC)と中国のシンアオ・グループが、石炭をジメチルエーテル燃料に変換する石炭液化プラントに資金を提供するために提携する予定である。ジメチルエーテルは調理用コンロや家庭用暖房設備の燃料として使用でき、輸送用ディーゼルにも代用することができる。シンアオの石炭液化プラントは、世界最大規模の石炭由来ジメチルエーテル生産工場となり、年間40万トンのジメチルエーテルを生産できる予定。プロジェクト用の石炭は中国の内蒙古自治区からほとんどが供給される。IFCのシンアオ・プロジェクトに対する投資総額は約5,000万ドルで、その内訳は直接借款が4,000万ドルで、株式の購入が最高1,000万ドルとなっている。

さらに、シンアオ・グループはIFCの支援を得て、民間貸付機関から最高1億4,000万ドルの融資を確保している。また、IFCはビジネス分析、適正評価、および、環境的・社会的影響の査定も提供した。

シンアオ・グループと IFCはこれまでにも協力した経緯がある。ICFは2006年序盤にジンアオ・ガスの省エネ機器購入のために約1億5,000万ドルを助成し、2004年にはジンアオ・ガスが流通インフラを拡充するための借款と投資を提供している。(IFC Press Release, August 2, 2006)

Schwarzaneggerカリフォルニア州知事とブレア英国首相、環境協定を締結

Arnold Schwarzaneggerカリフォルニア州知事(共和党)はトニー・ブレア英国首相と温室効果ガス排出削減で協力する協定を結んだことを発表した。この発表は両者が7月31日にロングビーチでユーティリティ企業リーダーと私的会合を開いた後に行われた。会合出席者の顔ぶれにブッシュ大統領の主任環境顧問であるJames Connaughton氏が見られなかったのが特に目立った。

速報では、この協定によって米国初の強制的な温室効果ガス排出権取引計画が開設されることを暗示しているものの、現実には、この協定は象徴的意思表示(symbolic gesture)ということであって、合意は以下のような控えめな内容になると見られている:

  • 燃焼のよりクリーンな燃料と技術の研究における協力
  • 将来強制的な温室効果ガス排出削減プログラムを実施すべきか否かについてのさらなる調査
  • 温室効果ガス排出削減プログラムの経済的メリットについての報告

(Los Angeles Times, August 1, 2006)

下院水素・燃料電池コーカス、水素・燃料電池研究予算増額を求める書簡をエネルギー長官に送付

下院水素・燃料電池コーカス(Hydrogen and Fuel Cell Caucus)の議長であるCharles Dent(共和党、ペンシルバニア州)、John Larson(民主党、コネチカット州)、Bob Inglis(共和党、サウスカロライナ州)、および、Albert Wynn(民主党、メリーランド州)の4名の下院議員が、民主・共和両党の77名の下院議員とともに、エネルギー省(DOE)水素プログラムの予算増額を求める書簡をSamuel Bodmanエネルギー長官宛に送付した。

書簡は、水素および燃料電池技術が米国のエネルギー政策および安全保障目標の「不可欠な構成要素」であると指摘し、水素を同国のエネルギー問題の「長期的解決策」に位置づけている。この理由から、議員等は、DOEが2008年度予算案を作成する際に、水素および燃料電池プログラムに優先的に資金拠出することを検討するよう要請している。下院議員等はこの書簡で、具体的な予算額を設置してはいないものの、2005年エネルギー政策法が2008年度の水素・燃料電池予算として7億5,000万ドル以上を認可していることを指摘している。

この書簡についてコメントしたInglis下院議員は、20世紀のアポロ計画やマンハッタン・プロジェクトと同規模のコミットメントで水素および燃料電池に取り組むよう求めた。(Hydrogen and Fuel Cell Caucus News Release, July 31, 2006)


8月2日特別号

上院本会議、連邦管轄大陸棚での石油・天然ガス掘削を認める法案を可決

上院本会議が8月1日、「2006年メキシコ湾エネルギー保障法案(Gulf of Mexico Energy Security Act of 2006:上院第3711号議案)」を71対25で可決した。Pete Domenici上院議員(共和党、ニューメキシコ州)提案の同法案では、メキシコ湾東部の830万エーカーを石油と天然ガスの掘削に開放し、新たにリースされた地域から上がるロイヤリティ収入の37.5%をメキシコ湾岸4州 (アラバマ州、ルイジアナ州、ミシシッピー州、テキサス州)と分配することになる。同法案にはまた、フロリダ州パンハンドルの南125マイルおよびタンパ湾西235マイルの海域を2022年まで掘削禁止地帯とする条項が盛り込まれているが、これは、同法案の環境影響を懸念するフロリダ州選出上院議員 …Mel Mantinez上院議員(共和党)とBill Nelson上院議員(民主党)… の支持を獲得するために、上院共和党指導層が交渉を重ねた妥協の結果である。

一方、下院本会議では既に、Bobby Jindal下院議員(共和党、ルイジアナ州)提案の「2006年深海エネルギー資源法案(Deep Ocean Energy Resources Act of 2006:下院第4761号議案)」が6月29日に232対187で可決されている。下院案は上院案よりも遥かに広範な法案で、沿岸50マイル以内の海域(注:1)は永久に掘削禁止となるものの、50マイルから100マイルまでは州議会や州知事が反対しない限りは解禁、100マイルを越えた海域は掘削に完全開放となっている。また、ロイヤリティ収入の州政府分配も、下院案(注:2)は上院案より遥かに大規模なものとなっている。

上院と下院は今後、上下両院協議会を開催して互いの法案の相違点をすり合わせていくことになる。しかしながら、上院の共和党指導層が指摘するように、上院第3711号議案は上院で[議事妨害の阻止に必要な]60票を獲得できる最大限の法案である。現に、Harry Reid上院民主党院内総務(ネバダ州)は、上下両院協議会で上院案に変更が加わった場合は、上院本会議における両院協議会妥協案の審議で議事妨害を行うと確約している。このため、上下両院協議会での妥協案作りはかなり難航するものと見られている。(Greenwire, August 1, 2006; Greenwire, August 2, 2006)

 

注釈:

1:但し、州政府が特にこれを望んで許可する場合は掘削可能となる。

2:メキシコ湾岸州の沿岸3〜12マイルの海域における新リースからあがるロイヤリティの63.75%が州政府、残りが連邦政府のシェアとなる。3〜12マイル海域での現行リースから上がるロイヤリティに関しては、州政府のシェアを最初の5年間は25%とし、その後約20年で徐々に63.75%まで引き上げる。12マイルから大陸棚の端までの海域における新リースのロイヤリティは42.5%が州政府のシェアとなり、既存リースではロイヤリティの当初4.6%を16年間で次第に42.5%まで引き上げるとしている。


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