NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2007年12月後半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

12月19日号

FutureGen Alliance、世界初のFutureGen施設建設用地としてイリノイ州のMattoonを選定

FutureGen Allianceが12月18日、イリノイ州Mattoonを炭素回収隔離技術を実証する世界初の石炭火力発電所用地に選定したと発表した。但し、エネルギー省(DOE)が用地の決定記録(record of decision)を発表するまでは、今回の選定は暫定的な決定であるということを指摘している。発電所建設費用の74%を負担することになっているDOEが発表会見に同席しなかったこと、DOEは先頃の書簡で、FutureGen AllianceとFutureGenプロジェクトに関して自省が次に何をすべきかを査定評価中であるといった不明瞭な発言をしていることから、FutureGen AllianceとDOEとの間には不可解な権力闘争が起きているのではないかという噂がたっている。

275メガワットの最新式石炭火力発電所プロジェクトの設計・建設・運営コストは当初10億ドルと推定されていたが、今では激増して、FutureGen Allianceでは約15億ドル、DOEでは約17.6億ドルという見積もりを出している。ホワイトハウス環境問題委員会(Council on Environmental Quality)のJames Connaughton議長によると、昨今の鉄鋼・コンクリート・発電所部品の価格高騰が原因であるという。

FutureGen施設の用地最終候補には、イリノイ州のTuscola、テキサス州のJewett、同じくテキサス州のOdessaもあがっていた。FutureGen AllianceのMike Mudd理事長は、今回の用地最終決定には政治は絡んでおらず、政治家のロビー活動も検討対象にはならなかったと強調している。(Greenwire, December 18, 2007; New York Times, December 18, 2007)


下院本会議、エネルギー法案を314対100で可決

下院は12月18日に、上院本会議が再生可能エネルギー発電基準(Renewable Electricity Standard)条項と税制条項を削除して12月13日に86対8で可決したエネルギー法案を、下院本会議で314対100で可決(注:1) した。

同法案では、企業平均燃費(CAFE)基準を2020年までに1ガロンあたり35マイルまで引き上げるほか、燃料効率の優れた自動車や部品の製造メーカーにグラントや借入保証を提供することになる。今回のCAFE基準引上げによって、2020年には一日の石油消費量が110万バレルの削減になると推定されている。

エネルギー法案のもう一つの柱と言われる再生可能燃料使用基準(Renewable Fuel Standard)は、2022年までに360億ガロン(現在の生産量の約5倍)まで拡大されるが、この内の210億ガロンをトウモロコシ以外の資源で生産されることになる。

同法案には、一連の省エネルギー施策が盛り込まれている。その中でも特に注目に値するのが2014年までに白熱電球を段階的に廃止する条項で、非営利団体のエネルギー節約同盟(Alliance to Save Energy)では、2020年までに消費者は電気代を年間130億ドル節約し、中規模の火力発電所約60基が不要になると推定しているほか、この条項を過去30年で最も重要な省エネ施策であると評価している。また、米国エネルギー合理化経済評議会(American Council for an Energy-Efficient Economy)によると、皿洗い機から電気モーター、エアコンに至る多種の電化製品の省エネ新基準を始めとする省エネ施策によって、今から2030年までの間に消費者やビジネスは4,000億ドル以上を節約できるほか、米国の温室効果ガス排出量も現行レベルより9%減少するという。

この他、再生可能エネルギー業界や省エネ業界の職業訓練プログラムや、ソーラー・地熱・潮力・エネルギー貯蔵技術・炭素回収隔離の研究開発プログラム等も同法案に盛り込まれている。(E&E News PM, December 18, 2007)


注釈:

1:ブッシュ大統領は12月19日に同法案に署名し、新しいエネルギー法令が成立した。 


12月17日号

米国科学技術研究同盟、14項目のイノベーション行動計画提言を盛り込んだ報告書を発表

米国科学技術研究同盟(Alliance for Science and Technology Research in America = ASTRA)が2007年12月11日に、14項目のイノベーション行動計画(14-Point Innovation Action Agenda)を提言する報告書 『上昇気運に乗って:米国の競争力と繁栄の為の21世紀戦略(Riding the Rising Tide: A 21st Century Strategy for U.S. Competitiveness and Prosperity)』 を発表した。

ASTRAの理事長であるMary Good博士は同報告書の序文で、工学・物理学・数学分野の連邦研究開発(R&D)予算は過去数年間沈滞または減少傾向にあったが、中国やインド等の途上国が米国の科学技術リーダーシップに拮抗しつつあるという認識によって、これら分野の研究予算増額の必要性が近年強調されるようになったと述べている。また、ここ数年間で発表された米国競争力に関する研究報告書(注:1) は全て、イノベーションが米国の競争力と将来の繁栄の鍵であることを明言しており、連邦研究予算の大幅増額とイノベーションのインセンティブといった提言は、米国議会が今年可決した「America COMPETES法」に盛り込まれることとなった。しかしながら、現時点では同法令で認可する予算が議会で未だ可決されていないと指摘している。

Good博士によると、ASTRAの報告書では、世界的な競争力争奪戦における米国の現行ポジションのスナップショットを提供し、イノベーションを興隆させるR&Dや人材育成、その他要素の役割を明らかにしているという。ASTRAが提言した14項目のイノベーション行動計画は下記の通り:

  • 連邦R&D予算に占める防衛予算と民生予算を均衡化する。
  • 連邦政府の物理科学と工学研究予算を増額する。…米国議会と現政権は、米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative)のR&Dコミットメントを実現させるべきである。
  • 応用研究予算を増額、安定させる。…連邦政府は応用研究、および、技術イノベーションプログラム(TIP)(注:2) を始めとする経済ポテンシャルのある有望な高リスク技術の支援予算を増額し、安定化させるべきである。
  • R&Dの焦点を最前線の科学技術にあてる。…連邦政府は、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー、高性能コンピューティングといった、革命的な影響が期待できる分野にR&D投資の重点を置くべきである。
  • サービス部門を支援するR&Dを拡大する。
  • 学際的(interdisciplinary)および分野横断的(multi-disciplinary)な研究、新形態のコラボレーション、ポテンシャルがありながら十分活用されていない地域におけるイノベーティブ・キャパシティの育成、を更に重視する。
  • 連邦R&Dのベネフィットを米国内に留める為のインセンティブを提供する。
  • 米国人の技能水準がイノベーション経済にとって十分であるかどうかを検討する。
  • 科学技術工学数学(STEM)に従事する米国人に関する統計情報およびキャリア情報を改善する。
  • 科学者やエンジニアや情報技術専門家が、グローバルな認識や文化的認識、コミュニケーション能力、および、ビジネスや管理能力を身に着けられるよう、高等教育を改善する。
  • 外国人の学生やSTEM専門家の関心を引き付ける努力を強化する。優秀人材の米国移住を妨げる障壁を除去する。
  • 次期ホワイトハウスは、イノベーションのビジネス環境に関係する米国の法令・規制・政策を総合的に見直すイニシアティブに着手する。イノベーションの阻害要因に対応する。
  • 米国のイノベーション政策や戦略を導くために、一連のイノベーション指標(innovation indicator)を策定する。
  • 米国内および外国のイノベーション制度を分析し、連邦政府のイノベーション政策や投資アジェンダを立案する能力を持った組織を連邦政府内に設置し、それに十分な財政支援を提供する。

(Riding the Rising Tide Pre-publication Copy, December 2007)

 
米国外国貿易評議会、Lieberman-Warner法案とエネルギー法案がWTO違反となる可能性を警告

米国外国貿易評議会(National Foreign Trade Council)が、Lieberman-Warner法案(上院第2191号議案)と米国議会で審議中のエネルギー法案(下院第6号議案)(注:3) の一部条項が、世界貿易機関(World Trade Organization = WTO)規定に従っておらず、訴訟を引き起こす可能性があるという分析レポートを発表した。『WTO - 米国気候変動政策の整合性(WTO - Compatibility of Four Categories of U.S. Climate Change Policy)』の主要な分析結果は下記の通り:

  • Lieberman-Warner法案(上院第2191号議案)に盛り込まれた国家温室効果ガス(GHG)排出cap-and-trade型プログラムには、海外企業との排出クレジット取引が含まれている。排出クレジットは、WTO規定の対象となる「商品」でも「サービス」でもなく、理論的には、排出権取引はWTOに最も適合する政策手段の一つであるが、実際には、WTO整合性の懸念を提起する基準や規制、エコ・ラベりングや補助金、その他の施策を伴っている。特に問題となるのは、米国の海外製品輸入業者のために、個別の排出権割当てを準備するという条項で、これは事実上、クリーンな生産過程・方法を利用しないWTOメンバーからの輸入品に課税することとなるため、GATTの第3条項に違反する可能性がある。
  • 米国議会で審議中のエネルギー法案(下院第6号議案)にある、再生可能燃料使用基準(renewable fuel standard)のような義務付けや基準は、内国民待遇(national treatment)に関するGATTの第3条項に違反する可能性がある。事実、1990年代に米国政府が採択した同様の施策は、WTOで異議申し立てされ、違反と判定された。
  • 下院第6号議案に盛り込まれた政府管理のエコ・ラベリング制度は、WTOのTBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade)第2条項違反の可能性がある。
  • 再生可能エネルギーへの補助金は、WTOの補助金協定(Agreement on Subsidies and Countervailing Measures)に違反となる恐れがある。例えば、下院第6号議案にある再生可能燃料施設に対する借入保証は、特定産業や特定商品生産物を対象とする財政貢献であり、世界バイオ燃料市場における米国シェアを拡大する一方で、米国の在来型燃料市場における諸外国のシェアを削減することになりかねない。米国産の気候調和型製品の輸出実績に影響を及ぼす補助金は、WTO規定で禁じられる可能性がある。

(E&E Daily, December 11, 2007; National Foreign Trade Council Analysis Paper, December 2007)


注釈:

1:影響力が特に大きかった報告書は、競争力協議会(Council on Competitiveness)の『イノベート・アメリカ(Innovate America)』と、全米科学アカデミー(National Academies of Science)発表の『Rising Above the Gathering Storm』。

2:TIPの前身である先端技術計画(Advanced Technology Program)はブッシュ政権下で毎年、大幅削減、廃止の対象であった。

3:エネルギー法案は12月18日に、下院本会議で314対100で可決された。


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