NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2007年7月前半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

7月12日号

燃料電池の向上に一役買うと期待される、立方晶ジルコニアのナノ結晶

カリフォルニア大学デイビス校の Zuhair Munir 博士が、より効率的な水素燃料電池をより安価に生産するための鍵になると思われる、立方晶ジルコニアのナノ結晶を作る方法を開発した。

水素燃料と空気中の酸素を化合させてエネルギーを生じさせ、廃棄物としては水しか残さない燃料電池は、自動車その他用途の代替電源として期待されるものの、華氏1500〜1800度(815〜982℃)という高い稼動温度がその使用普及の主な障害となっている。現行の燃料電池では、こうした高温の稼動温度に達するまでに多くのエネルギーを消費するほか、金属、プラスチック、およびセラミック製の部品の劣化が早まる。このため、現在の一般的な燃料電池デザインにはプラチナ触媒が必要であり、非常に高額となっている。

Munir 博士を中心とするカリフォルニア大学デイビス校の研究チームが考案したのは、大きさが約15ナノメートルという、微粒の立方晶ジルコニア等の酸化物を作る方法で、ナノテク分野に最も影響を与えそうな技術を称えるNanotech Briefs 誌のNano50賞を先頃受賞している。この結晶は、電気を極めてよく伝えるため、華氏122 〜 212 度(50〜100℃)というより現実的な温度で燃料電池を稼動することが可能と見られている。(AzoNano.com, July 10, 2007)


エネルギー省の内部報告書、二酸化炭素回収技術の有効性を疑問視

エネルギー省(DOE)から漏れた未発表の報告書は、石炭火力発電所で発生する炭素を回収するプロセスに革命をもたらすと期待されていた技術が、実はそれほど効果的でない可能性があると指摘している。

この技術は、排煙から二酸化炭素(CO2)を除去するために冷却アンモニアを利用するというものであるが、ペンシルバニア州ピッツバーグにあるDOEの国立エネルギー技術研究所(NETL)が同技術を550メガワットの発電所で実験したところ、冷却アンモニアプロセスによるCO2捕獲は、アミン洗浄プロセスを使う現行技術と比べて殆ど改善が見られなかったことが明らかになったという。NETLの高官によれば、この報告書は、DOEが同技術へ追加投資をするか否かを判断するための適格審査として実施されたものであって、公開する意図はなかったという。DOEの意向とは裏腹に、『二酸化炭素の燃焼後回収のための冷却アンモニアを用いた湿式洗浄(Chilled Ammonia-based Wet Scrubbing for Post-Combustion CO2 Capture)』 と題された報告書は外部に漏洩し、政治・財政面での重要な意味合いを予測する利害関係者の間に波紋を巻き起こしている。

報告書の著者であるNETLアナリストのJared Ciferno氏は、2006年後半に実施した分析では大きな利益なしという結果となったことを認めたものの、昨年後半の分析以降、同技術には数々の改善がなされたことを指摘し、その実用性について最終結論を下す前に、更なる試験と分析が必要であると述べている。

これまでのところ冷却アンモニア・プロセスに関する研究の殆どは、米国電力研究所(Electric Power Research Institute = EPRI)とフランス複合企業であるアルストム社(注:1) によって実施されていたが、アルストム社は、EPRI 、石炭火力発電所であるWe Energies 社とAmerican Electric Power (AEP)社とともに、現在3件のパイロットプロジェクトに共同出資している。

AEP社の計画は、冷却アンモニア技術の「有効性確認試験(validation study)」をウェストバージニア州とオクラホマ州の発電所で個別に実施するというもので、最初の試験では、ウエストバージニア州ニューヘイブンにある30メガワット級発電ユニットから冷却アンモニアを使ってCO2素捕獲を試みることになる。2008年に開始されるこの実験が成功すれば、この技術はオクラホマ州オンロガにある450メガワットの石炭火力発電所で本格的に試験される予定である。AEPのスポークスマンは、「当社は、何かの報告書を根拠にするよりも、実証試験と有効性確認試験から得られたデータを基にコストと効率について判断したいと考えている。」と述べている。(Greenwire, July 11, 2007)


注釈:

1:世界屈指の発電所汚染管理システム・メーカーで、実用化の有望な技術として冷却アンモニアに大きく投資している。同社の米国拠点はテネシー州ノックスビル。


7月10日号

Gay & Robinson社とPacific West Energy社、ハワイ州に第一号のエタノール工場を建設予定

Gay & Robinson 社とPacific West Energy 社が7月9日、サトウキビを使って発電とエタノール燃料生産を行う米国初の工場をハワイに建設するパートナーシップについて発表した。

この工場は年間1,200万ガロンのエタノール燃料を生産する予定で、設備投資の第一段階では8,000万ドルをかけて、新しいバイオマス・ボイラーと再生可能電力を効率的に発電するタービン発電機を設置することになる。設計とエンジニアリングの作業がすでに開始されており、クリーンエア法に基づくエタノール工場の大気質許可も確保している。将来のビジネス計画では、バイオディーゼルの生産、メタン回収システム、一般ごみの処理、水力発電、バイオマスの液体燃料転換、ソーラー発電等、様々なエネルギー生産段階の追加を検討しているという。

このパートナーシップは、再生可能原料を使った発電およびエタノール生産によって、ハワイの非常に高いエネルギーコストの引き下げに一役かうほか、サトウキビ栽培の拡大と、バイオマスを最大化する栽培・収穫技法の導入に新たな投資をもたらすものと期待されている。また、ハワイ州で消費されるガソリンの85%に、10%のエタノール含有を義務付けている同州の法令順守にも役立つことが期待されている。

工場の建設は今年末に開始され、約一年後に竣工すると予想されている。この工場ができれば、ハワイでも最古に数えられるGay & Robinson社所有のサトウキビ・プランテーションの存続が確実となるほか、約230の雇用が維持され、カワイ島西部の広大な地域が持続可能な農業用地として保持されることになる。(Forbes.com, July 9, 2007)


タービン不足で遅延する、米国の風力発電プロジェクト

ここ数年、技術改善で風車の大型化・効率化が可能になったこと、および、再生可能エネルギーに対する政治的支援が強まったことによって、風力タービンの需要が激増しているが、メーカーは部品不足の為にタービンの注文に追い付けなくなっている。

米国内で計画されている風力発電プロジェクトの多くがタービン不足で立ち往生している一方、米国内のこの行き詰まりは欧州の再生可能エネルギー企業に絶好の機会を提供している。この20年ほど風力発電がブームとなっている欧州では、風力タービン不足を予想した企業がタービン確保の為にメーカーと大型の受発注契約を結んでいる。こうした欧州の電力会社は自らのタービン購買力に物を言わせて、タービンを入手出来ずにいる米国の小規模発電所を買い占めている。一例が、スペインの電力大手イベルドロラ社(Iberdrola)である。同社は、タービンを入手出来ず数年間の遅延に直面していたペンシルバニア州のCommunity Energy社を買収し、その2ヵ月後には停滞していたペンシルバニア州Locust Ridgeの風力プロジェクトにタービンを設置して発電を開始している。また、同様の状況下にあったアイオワ州とバージニア州の小規模風力発電開発事業2社を買収したほか、メイン州ポートランドの公益会社Energy Eastも先頃買収したところである。

アイオワ、ペンシルバニア、ミネソタ、オレゴン等の各州は、外国のタービンメーカー誘致に躍起となっており、Gamesa社がペンシルバニア州で3つのタービン工場を操業しているほか、Suzlonがミネソタ州に、Siemens WindとスペインのAcciona Energia社がアイオワ州にタービン工場の建設を決定している。数年後にはこうした新設工場が、現在のボトルネック解消に役立つと期待されるものの、短期的には、供給不足が米国内の風力発電エコノミクスをぐらつかせることになろう。(Wall Street Journal, July 9, 2007)


7月6日号

25x'25シナリオ下では、テキサス州が再生可能エネルギー発電で全米をリードする見通

25x'25テキサス州同盟(Texas State 25x'25 Alliance)が6月27日に、25x'25全米同盟(注:1) の掲げる25x'25再生可能エネルギーシナリオ下では、2025年までにテキサス州が、バイオ燃料や風力やソーラーといった資源で1.27 quad (1quad = 1015 BTU)のエネルギーを増産し、再生可能エネルギー生産量において全米一位の座につくであろうと発表した。

この発言は、テネシー大学が25x'25全米同盟の委託を受けて作成した 『2025年までの国家再生可能エネルギー目標25%:州別の農業・経済影響(25% Renewable Energy for the United States by 2025: State Agricultural and Economic Impact)』 という報告書の分析に基づくもので、報告書の主要な調査結果は下記の通りとなっている:

  • 原料生産及び原料のエネルギー変換が国家にもたらす経済影響は2025年に年間7,000億ドルを超え、新規雇用は(主として農村部で)510万件以上と推定される。再生可能エネルギー部門開発から経済的恩恵を受けるトップ5州は、イリノイ州(401億ドル);アイオワ州(359億ドル);ミズーリ州(313億ドル);ネブラスカ州(283億ドル);テキサス州(228億ドル)。
  • 2025年の農家収入は、農務省推定ベースラインよりも370億ドル増大する。トップ5州は、イリノイ州(32億ドル);ミズーリ州(29億ドル);ネブラスカ州(26億ドル);カンザス州(21億ドル);ケンタッキー州とテキサス州(19億ドル)。
  • 国内の農場・牧場・森林資源利用で、2025年には860億ガロンのエタノールと12億ガロンのバイオディーゼルが生産され、ガソリン消費を590億ガロン削減する見込みがある。
  • 再生可能資源からのエネルギー増産では、テキサス州が1.27 quadでトップ。2位がネブラスカ州の1.16 quadで、これに、カンザス州、アイオワ州、ノースダコタ州、ミネソタ州、イリノイ州等が続く。
  • テキサス州には2025年までに、37.9億ガロンのバイオ燃料と1,457億キロワット時(2004年比2,130パーセント増)の再生可能電力を生産する能力がある。

(National 25x'25 Alliance Press Release June 27, 2007; AP Texas News, July 4, 2007)


米国初の商業規模セルロース系エタノール工場、建設開始間近

Range Fuels 社は、ジョージア州の豊富な森林廃棄物を原料とするセルロース系エタノール工場(年間生産量は1億ガロン)の建設許可をジョージア州から取得したと発表した。同社の創設者Vinod Kohsla氏 …Sun Microsystems社の共同創設者… によると、米国初の商業規模セルロース系エタノール工場の着工式を今年夏、ジョージア州ソペルトンで行う計画であるという。同社は、このプロジェクトの第一フェーズとして、年間2,000万ガロンのエタノール生産能力を持つ施設を2008年に完成させる予定である。

Range fuels社では、年間最高20億ガロンのエタノール生産を持続可能なジョージア州の豊かな森林資源、および、同州の森林地帯管理と環境面での気配りが優れていることに着目して、ジョージア州を第一号工場の立地場所に選定したという。

Range Fuels 社が利用する技術は、K2システムと呼ばれる熱化学変換プロセスで、木材チップ、農業廃棄物、草、トウモロコシの茎、豚糞、一般ごみ、おがくず、製紙用パルプなど30種以上の原料をエタノールに変換することが可能である。このシステムでは、まずバイオマスを合成ガスに変換し、それ後に合成ガスをエタノールに変換するという2段階プロセスを使用する。

Range Fuels社の工場建設は、米国はもとより、おそらくは世界における商業的なセルロース系エタノール産業の幕開けを意味する。セルロース系エタノール技術はごく最近まで商業実用化が数年先であると言われていたが、そういった多くの人々の予想よりも早く登場することになった。(Renewable Energy Access, July 5, 2007; Greenwire, July 3, 2007)


注釈:

1:2025年までに米国のエネルギー使用量の25%を再生可能エネルギーで賄うべきであると唱道する同盟。


7月2日号

環境保護庁、ナノテクノロジー安全性研究でオレゴン州立大学に60万ドルのグラントを授与

環境保護庁(EPA)は6月22日、人造ナノ材料が人体に有毒であるか否かを査定評価する調査で、オレゴン州立大学に2件のグラント(総額60万ドル)を授与すると発表した。人造ナノ材料は現在、化粧品や衣料やパーソナルケア製品といった数百もの消費者製品に使用されている。EPA第10支部のElin Miller支部長は、こうした材料の利用が更に一般的になるにつれ、予期していなかった影響を人造ナノ材料がヒトや環境にもたらすことのないよう確認することが重要であると主張している。今回発表された2件のグラントの概要は下記の通り。

  1. 様々な 一般的人造ナノ材料をスクリーニングして、人造ナノ材料と生物過程との反応を判定するプロジェクト:研究チームは、悪影響ありと判定されたナノ材料の細胞内標的(cellular target)や遺伝的標的(genetic target)を確認し、粒子を組成別および影響別に分類する。EPAグラントは40万ドル。
  2. 人造ナノ材料がどのようにして細胞に損傷を与えたり、細胞を破壊したりするのかを調査するプロジェクト:形体や構造といったナノ粒子の特性と、それがもたらす細胞への影響との関係を調査する。細胞機能にとって最も危険な形体や構造が確認できれば、工場や環境のナノ材料被ばくに関する安全性ガイドラインの策定に繋がるものと期待されている。EPAのグラントは約20万ドル。

(EPA Press Release, June 22, 2007)


米国エネルギー省、スウェーデンとのエネルギー協定を拡大

米国エネルギー省(DOE)のAlexander Karsnerエネルギー効率化・再生可能エネルギー担当次官補とスウェーデンのMaud Olofsson副首相は6月28日に、「米国-スウェーデン科学技術協定」(注:1) の第一歩として、再生可能エネルギー技術と自動車技術に関する協力を拡大し、更には、将来のプロジェクトを検討する二国間作業部会を設置する実施協定(implementing agreement)に調印した。

今回の実施協定に基づき、DOEとVolvo社の子会社であるMack Tracks社は、環境に優しい業務用自動車技術の開発で協力することになる。DOEとVolvoが契約条件を現在交渉しているコスト分担型プロジェクトは二段階から成るもので、第一段階では、長距離トラックの燃料効率を改善して排出削減を図るために、異なるバイオ燃料がディーゼルエンジンに与える影響を分析し、第二段階では、廃熱回収装置付きのハイブリッド技術を大型車向けに開発することになる。(Department of Energy News Release, June 28, 2007)


注釈:

1:2006年6月に調印された同協定の正式名は、「再生可能エネルギーの研究開発、新技術、新製品、及び、資源基盤拡大に関する協力の実施協定(Implementing Arrangement on Cooperation on Research and Development, New Technologies, New Products, and Enhanced Resource Base for Renewable Energy)」で、再生可能エネルギーのコスト削減やエネルギー効率の改善、輸送・自動車技術やバイオマス生産における協力を目的としている。

 


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