NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2007年7月後半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

7月30日号

国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の研究チーム、シリコンナノ結晶で量子効果を確認

エネルギー省傘下の国立再生可能エネルギー研究所(Renewable Energy Laboratory = NREL)の研究者等がInnovalight社との協力によって、複数エキサイトン生成(multiple exciton generation = MEG)と呼ばれる重要現象がシリコンナノ結晶で効率的に起こることを確認した。

太陽電池では、太陽光に含まれるフォトン(光子)がナノ結晶(量子ドットとも呼ばれる)に当たることによって生じた電子を取り出し、それら(電子)を外部回路を通すことで電気を発生させる。しかしながら、現行の太陽電池では吸収された光の約50% が熱として失われてしまう。

MEGは、吸収される1個のフォトンから1個以上の電子を生成するという現象で、MEGが起こると、これまで熱として失われていたエネルギーの一部が電気に変換されて発電量が増大するため、太陽電池の効率が高まることになる。NREL研究者がInnovalight社製ナノ結晶を使って行なった実験では、波長420ナノメートル以下の太陽光を照射した際に、1個のフォトンから複数の電子を生成することが出来たという。

今回の発見に至るまでは、MEG現象の発生は、現在の商用太陽電池では使用されていない半導体材料のナノ結晶のみで報告されていたが、半導体ナノ結晶には、鉛を始めとする環境面で有害な化学物質が含まれているという問題があった。

科学者等はさらなる研究によってこの現象の理解を深めることにより、太陽電池の効率向上と、他の発電方法に劣らないコストを実現させることを期待しているという。(RenewableEnergyAccess.com、July 27, 2007)


デラウェア大学率いるコンソーシアム、太陽電池の変換効率で42.8%を達成

2005年11月に、高効率太陽電池(Very High Efficiency Solar Cell = VHESC)プログラムの第1フェーズとして、国防省の防衛先端研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency = DARPA)から1,300万ドルのグラントを受領したデラウェア大学率いるコンソーシアムが、高性能結晶シリコン太陽電池プラットフォームに複数のイノベーションを追加する刷新的技術を用いて、太陽電池の変換効率で42.8%という新記録を達成した。この変換効率は、DARPA目標である変換効率50%へ向かう上での重要なマイルストーンに達したことを明示している。

同コンソーシアムの技術実績の結果として、DARPAは7月23日に、VHESCプログラムの第2フェーズ …実験室規模の作業をプロトタイプの工学・製造モデル作りへと移行… に着手することを発表した。DARPAはこの3ヵ年計画(注:1) の一環として、デュポン社とデラウェア大学が中心となって新たに形成するコンソーシアム(注:2) に1,220万ドルを給付する。新コンソーシアムの目標は、新型太陽電池の変換効率を50%まで引き上げることで、デラウェア大学のAllen Barnett博士によると、DARPAからの新グラントと新コンソーシアムの協力で、2010年までには新型高効率太陽電池の生産が可能になる見通しであるという。

この高効率太陽電池では、太陽光スペクトルを網羅するために、太陽光を高中低の3つの異なるエネルギー波に分け、異なる(高中低の)エネルギー波を光感度の異なるセルへと導く、ラテラル光学集光システム(lateral optical concentrating system)を使用する。また、新型太陽電池の集光装置は、大量の太陽光を捕獲する広い許容入射角度を持つ光学システムを備えた固定装置であって、複雑な光追尾装置の必要性を撤廃した設計となっている。

現在の太陽電池システムは、太陽光の集光に依存するため、昨年12月に40.7%という当時の最高記録を達成した装置の集光レンズは30センチ以上もの厚みがあったが、新コンソーシアムの装置は将来、厚さが1センチ未満となる可能性があるという。米軍兵士は現在、100ポンド近い荷物を背中に担ぐが、その重量の20% は3日分の電池である。軽量で現在以上の電力を兵士に提供できれば、戦場における先進エレクトロニクス技術の可用性とモビリティが向上することになるため、VHESCにはハイテク軍事用途への迅速な応用が期待されている。(University of Delaware UDaily, July 23, 2007)


注釈:

1:産業界とのコスト分担で行われるこの3ヵ年計画は、最高1億ドルに達すると見積もられている。

2:7月23日にデラウェア大学が発表したニュースリリースには、新たなデュポン-デラウェア大学VHESCコンソーシアムは、産業界パートナーや国立研究所、および、他の大学で形成されると記載されている。


7月24日号

ニュージャージー工科大学の研究者、柔軟なプラスチック材に太陽電池を印刷する方法を開発

ニュージャージー工科大学(New Jersey Institute of Technology = NJIT)の研究チームが、柔軟なプラスチック材に印刷または塗装を施した廉価の太陽電池を開発した。このプロジェクトの主任研究員であるSomenath Mitra博士は、このプロセスを使えば、住宅所有者がいずれは家庭のインクジェットプリンターを用いて太陽電池のシートを印刷でき、こうして印刷した太陽電池シートを壁や屋根、ビルボードなどに吊るせば、ソーラー発電ステーションができると予測している。

この新型太陽電池の鍵となるのはナノチューブである。炭素ナノチューブは円筒状で、その太さは毛髪の約50,000 分の一ほとであるにも拘わらず、1本のナノチューブの導電性は、一般的な銅線を含め、従来のどのような電線よりも優れている。

NJITの研究チームは、このナノチューブにバッキーボールあるいはフラーレンと呼ばれる炭素構造を組み合わせて、蛇のような巻線構造を形成した。バッキーボールは電子を流すことはできないが、電子を捕らえることができる。研究チームによると、日光をあててポリマーを励磁させ、バッキーボールが電子を捕獲し、その電子を銅線のように作用するナノチューブを使って流すことが可能であるという。(RenewableEnergyAccess, July 20, 2007)


北米3ヶ国のエネルギー相、エネルギー安全保障と環境問題で更なる協力

カナダ、米国、メキシコのエネルギー相が、カナダのブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで会合し、エネルギー科学・技術、エネルギー効率、クリーン・エネルギー技術の普及やその他協力プロジェクトに関する行動計画などについて発表した。

この会合は、Gary Lunnカナダ天然資源相がメキシコのGeorgina Kesselエネルギー長官とSamuel Bodman米エネルギー長官を招聘して主催したもので、3名の大臣は、3ヶ国においてイノベーションを刺激し、キャパシティの共有・増強支援を謳った、エネルギー科学・技術に関する三ヶ国合意に署名した。

3ヶ国のエネルギー相はまた、家電その他の消費財に関するエネルギー効率基準を調和させるというコミットメントを再確認した。これまでの取り組みで3国では冷蔵庫、エアコン、大型の電動式モーターに関する省エネ基準が調整されている。

カナダのLunn天然資源相は、カナダ政府が、電子機器の待機モード時の消費電力の上限を定める基準を策定する予定であると発表した。CDプレーヤー、コンピューター、電子レンジなどの電子機器は電源がオフになっていても、設定や内蔵クロックが維持されるような場合は電気が消費されている。このような場合に消費される電力は、1器あたりでは非常に小さく1〜20ワットであるが、消費者はこのような電力を常時消費するデバイスを多数使っている傾向があり、この種のエネルギー使用が家庭で使用される電力の約10%を占めるという推測もある。

カナダ政府はこのような待機時消費電力を1ワットに限定することを検討しているという。これによって、40万件の家庭に必要な電力、あるいは1つの大型石炭火力発電所を撤去できるに相当するほどの電力を節電できると見られている。この「1ワット・イニシアティブ(1−Watt Initiative)」は国際エネルギー機関(International Energy Agency)が推進しており、2005年にスコットランドのグレンイーグルズで開催されたG-8 首脳会談で承認されている。

3名の大臣は、電子機器の待機電力に関する基準設定での協力方法を探るため、今年9月にメキシコシティーでワークショップを開催する予定であることを発表した。(DOE News Release, July 23, 2007; Natural Resources Canada News Release, July 23, 2007)


7月20日号

癌細胞と正常細胞を区別できるシリカ製ナノ粒

特定細胞を標的とする多機能ナノ粒子を作成する容易かつ万能な(versatile)方法を研究しているノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームが、交互吸着自己組織化(layer-by-layer self-assembly)というプロセスを用いて、癌用複合イメージングの為のハイブリッド型ナノ粒子を開発した。

交互吸着自己組織化というプロセスでは、ナノ粒子の帯電した様々な化学的コンポーネントが、プラスとマイナス電荷の相互作用を最大化する方法で自己組織化する。このため、ナノ粒子に統合させたい造影分子(imaging molecule)を破壊する心配なく、多機能ナノ粒子を作ることが可能となる。

Wenbin Lin博士率いる研究チームは今回の実験で、蛍光染料とMRI造影剤という2種類の造影剤を含むシリカ製のナノ粒子を作成し、同ナノ粒子の表面にRGDと呼ばれる腫瘍を標的とするペプチドを加えたところ、このナノ粒子には人体の結腸癌細胞と正常細胞を区別する能力があることが観察されたという。これとは対照的に、癌細胞を結合しないペプチドでコーティングしたナノ粒子は、癌細胞の特異性を示さなかったという。

国立癌研究所(national Cancer Institute)の癌治療におけるナノテクノロジー同盟(Alliance for Nanotechnology in Cancer)の支援で実施された同研究の結果は、「癌用複合イメージングの為の自己組織化ハイブリッド型ナノ粒子(Self-assembled hydrid nanoparticles for cancer-specific multimodal imaging)」という論文に詳述されている。(National Cancer Institute, July 2007)


オンタリオ州政府、石炭火力発電所の2014年閉鎖を誓約

選挙を今年10月にひかえ、カナダのオンタリオ州政府(多数党は自由党)が7月18日に、温室効果ガス(GHG)排出目標を遵守するため、石炭火力発電所 …同州の電力の25%を供給… を2014年までに完全閉鎖する計画であると発表した。自由党は2003年の州選挙で、石炭火力発電所の2007年閉鎖を選挙要綱の一つに掲げていたが、オンタリオ州政府は昨年、この閉鎖計画の延期を表明していた。

Dalton McGuinty知事(自民党)は、この発電所閉鎖によって、GHG排出を1990年レベル比6%減まで削減することが可能であると指摘し、同計画がカナダ連邦政府の排出削減計画よりも遥かに積極的であると称賛している。また、10月の選挙で自由党が同州議会の多数議席を獲得した場合には、GHG排出を2020年までに1990年レベル比15%減、2050年までに1990年レベル比80%減まで削減する意向であるとも語った。

一方、保守派のLaurie Scott女史は、石炭火力発電所にスクラバーを設置するという代替案を提示し、これにより、2020年までに1990年レベルの10%減までGHG排出を削減出来ると反論している。環境保護者はというと、自由党はこの発電所閉鎖のみならず、自動車やトラックの排出削減計画を策定する必要があると指摘している。(Greenwire, June 19, 2007)


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