NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2007年8月後半分

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

8月31日号

「グリーン」電力供給量の倍増を狙う、オンタリオ州

Dalton McGuinty 州知事(自由党)の率いるオンタリオ州政府が、再生可能資源利用の電力をさらに2,000 メガワット購入するようオンタリオ州電力公社(Ontario Power Authority)に指示した。これによって、同公社が契約購入する再生可能資源利用の電力量は倍増することになる。

再生可能エネルギー業界のアナリスト等が、これを再生可能エネルギー・プロジェクトにとって好ましいステップとみなす一方で、オンタリオ州の再生可能エネルギー・プロジェクト開発業者等は、インフラストラクチャーや政策関連の障壁が各種事業を遅らせ、投資家を遠ざけていることに不満を募らせている。カナダ風力エネルギー協会は、送配電の制約、特に、「オレンジ地帯(orange zone)」と呼ばれるオンタリオ州南西部の広大な地域における制約が、開発業者のプロジェクト進行を妨げていると指摘する。また、送電線のキャパシティが拡大されたとしても、政府は再生可能資源ではなく、原子力発電を優先視すると指摘する観測筋も多い。

オンタリオ州政府の新たなエネルギー調達は段階的に行なわれるもので、先ずは2007年末までに500メガワットが導入される予定となっている。オンタリオ州電力公社が検討対象とするのは、10メガワット以上の再生可能エネルギー・プロジェクトのみとなるが、風力、太陽光、地熱、埋立地ガス、および、水力発電を含む全種の再生可能エネルギーが含まれることになる。

この発表は、州選挙の6週間前に行なわれた。エクスパートによると、この選挙では、有権者等が州政府のエネルギーおよび環境政策に重点を置くことになるという。(Toronto Star, August 28, 2007)


エネルギー省、電力送電網技術研究に5,180万ドルのグラントを給付

エネルギー省(DOE)は、米国電力送電網の改善に最高5,180万ドルの新たな投資を行なうことを発表した。これに伴い、DOEは費用分担型プロジェクトを新たに数件選出した。

ルイジアナ州ニューオリンズでは、研究プロジェクト 兼 同市の復興を支援する試みとして、2ヶ所の変電所間に13.9 キロボルトの超電導ケーブルを敷くために、Southwire社とそのパートナー企業数社が1,330万ドルのグラントを受領した。このプロジェクトのために開発され応用される技術は、銅線よりもエネルギー効率の高い高温超電導体である。Southwire社は華氏 -320 〜-370 度(50 〜77 ケルビン)という比較的高い温度で稼動する超電導体の開発と商品化を目指している。この超電導体は1〜4テスラの磁場で稼動することも条件である。

American Superconductor社、SC Power Systems社、SuperPower社といった企業も、電力送電網の近代化を加速する目的で、連邦政府の費用分担金を受ける企業に選ばれている。また、給電ケーブルの信頼性と効率の向上に重点を置く研究プロジェクト2件にも資金が提供されることになった。最後に、限流器の新技術を開発する目的で、さらに3件のプロジェクトが選ばれた。これらの研究プロジェクトは、DOEの国立エネルギー技術研究所(NTEL)が運営し、DOEの給電・エネルギー信頼性課が監督することになる。(DOE News Release, August 28, 2007 )


オハイオ州知事、新たなエネルギー計画を発表

Ted Strickland オハイオ州知事(民主党)が、自州の電力消費量の最低25%を2025年までに再生可能および先進エネルギー利用の電力でまかなうことを発電所に義務付ける、新たなエネルギー計画を発表した。

発電量に占める再生可能エネルギーの割合を定める再生可能エネルギー使用基準(Renewable Portfolio Standard = RPS)は米国25州とコロンビア特別区が導入しているが、RPSにクリーンコールや原子力などの「先進エネルギー技術」を含めるのはオハイオ州が初めてとなる。この「エネルギー、雇用、及び、進歩(Energy, Jobs, and Progress)」計画では、25%にRPSの少なくとも半分が、バイオマスや風力、太陽光やバイオガス、地熱や水力といった再生可能資源を利用して発電した電力であること、更には、25%のRPSの少なくとも半分をオハイオ州内で発電することを義務付けている。

オハイオ州議会は電力供給業者間の競争を認めて、消費者の電気代を低減することを目標とする、電力業界規制緩和法案を可決し、1999年にこれを法制化したが、結局は、電力会社よりも安価に電力を供給できる業者が現れず、この試みは失敗に終わっている。Strickland州知事が今回発表した計画では、電力料金の規制をオハイオ州公共電力委員会の手に戻すことを要求している。

Strickland州知事は、このエネルギー計画の法制化を今年の年末までに完了することを希望している。しかしながら、民主党州知事が発表した新エネルギー計画に対するオハイオ州議会(共和党主導)の態度はあいまいであり、州議会がこの提案を支援するか否かは明らかではない。(Associated Press, August 30, 2007, RenewableEnergyAccess, August 30, 2007)


8月22日号

薄膜太陽電池製造工場建設で7,700万ドルの投資を受ける、HelioVolt社

薄膜太陽電池メーカーのHelioVolt社が先週、同社の太陽電池技術を市場化する初の工場建設に向けて、Paladin Capital GroupとMasdar Clean Tech Fundから7,700万ドルの出資を受けたことを発表した。

同社の技術は、銅-インジウム-ガリウム-セレン(CIGS)を使用するもので、各種材料に薄膜印刷を施して発電に利用できる。CIGSの最大の利点の一つは、シリコンを使わない点である。太陽電池業界は現在、ほとんどの太陽電池の主原料であるシリコンの不足によるコスト上昇に頭を抱えている。

HelioVolt社によると、同社の薄膜技術は、従来型シリコン太陽電池の100分の1の薄さで同様の性能を達成するという。同社のCIGS製造工程は半導体生産技術を基にするもので、これに代わるCIGS製造方法の10倍の速さで、広面積を扱うことが可能であるという。

最高経営責任者のB. J. Stanbery 氏によると、同社では、独立型の標準的な太陽電池モジュールと、薄膜技術を盛り込んだ建築用材の両方を製造する意向であるという。これによって、建物全体が、建物の使用する電気の一部を発電できる材質で覆われることになる。製造施設の立地場所については、まだ発表されていない。(Greenwire, August 20, 2007)


エネルギー省、軽量な水素貯蔵オプションとしてアンモニアボランの固形ペレットを検討中

マサチューセッツ州ボストン市で開催された米国化学会の会合で、エネルギー省(DOE)傘下にあるパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)の研究者等が、燃料電池用の水素貯蔵策として、小型で軽量なアンモニアボランの固形ペレットに水素を貯蔵する試みについて発表した。

PNNLの研究チームによると、重さ約0.25 グラムのペレットは0.5 リットルの水素を貯蔵する能力を持っているという。いずれは、このペレットが燃料電池車の水素貯蔵を革新的に向上させて、燃料電池車が消費者の期待する走行距離や性能を実現できるようになると期待されている。燃料電池車のほとんどは、現在、気体水素を5,000 〜10,000 psiに圧縮してタンクに貯蔵しているが、このタンクは衝突事故の際に損傷しないよう炭素繊維材で覆われているために、大きくて重いという難点がある。

PNNL研究チームが実験中しているアンモニアボランのペレットには水素が注入されており、これを反応装置に入れると水素が剥離される。放出される水素の量は反応装置の温度か、反応装置にペレットを入れる速度を変えることによって調整できる。放出する水素の量を変更することによって、付属の燃料電池が生産する電気の量を決めることができる。水素が抜き取られると、残りの化合物は、新しいアンモニアボラン・ペレットに合成される原料物質に分解されて、再生利用される。ペレットはガソリンのように発火性のガスを出さず、気体水素のように引火性でもないため、安全面の利点がある。

研究者に残されている大きな課題には、アンモニアボランから水素を剥離する温度を下げること、および、残った材質の再生利用プロセスの向上等があげられる。(Greenwire, August 21, 2007)


再生可能エネルギー専攻の学位を提供する大学が増加

全米で多数の大学が、学生や社会人エンジニアを対象とする再生可能エネルギーの学位を提供し始めている。ほとんどのプログラムは未だやっと形ができ始めたばかりだが、関心は更に高まりつつある。

こうしたプログラムの最新のものが、イリノイ州高等教育委員会の承認を待つイリノイ州立大学のプログラムである。大学は2008年秋期より再生可能エネルギーの理学士号を提供したいと考えており、再生可能エネルギーの技術面または経済学・公共政策面での職務を念頭に置いた2つのコースを予定している。

この種の学位プログラムを開始したのは、オレゴン工科大学が第一号で、同校では再生可能エネルギーの学士号課程を2004年に始めて提供している。このプログラムの第一期卒業生が2008年春に誕生するが、彼らの多くは、すでにフルタイムの仕事に就きながら、継続教育として同プログラムを履修している学生で、平均年齢は29歳となっている。

一方、スタンフォード大学では2004年秋期より、新設の「大気/エネルギー(Atmosphere/Energy)」プログラムという分野で学位の提供を開始している。また、2006年には、サンフランシスコのニュー・カレッジ・オブ・カリフォルニアが持続可能な企業活動の経営管理学修士号、別名「グリーンMBA」を創設している。このプログラムは、ビジネスの基本として、通例の一般的なビジネス技能を指導するほかに、持続可能性と起業家精神にも注力するカリキュラムを組んでいる。

こうした傾向は海外にも見られる。フィンランドのユベスキュレ大学では現在すでに再生可能エネルギー修士号を提供しているほか、英国のエクセター大学も2008年から再生可能エネルギーの学位を提供することになっている。(PlantServices,com, August 21, 2007)


Top Page