NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2009年

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

11月5日号

サイバーセキュリティに関する行政府および議会の動き

オバマ大統領が10月を「国家サイバーセキュリティ啓蒙月間(National Cybersecurity Awareness Month)」に指定し、米政府内でサイバーセキュリティの努力が改めて重視されている中、国土安全保障省(Department of Homeland Security =DHS)がバージニア州に、サイバー攻撃への政府対応を調整する国家サイバーセキュリティ・通信統合センター(National Cybersecurity and Communications Integration Center)を開設したほか、空軍が新たなサイバー戦争センター(cyberwarfare center)をテキサス州サンアントニオ市のラックランド空軍基地に設置することを決定している。

米議会においてはDHS委員会のJoe Lieberman委員長(無所属、コネチカット州)が、DHSは発電所やその他重要インフラストラクチャーの弱点を確認する必要があると主張し、連邦省庁や民間企業にサイバー脅威に関する情報の共有を義務付けるほか、ホワイトハウスに新設するサイバーセキュリティ調整官の職に上院の承認を義務付ける法案を草案中である。DHSや空軍によるセンター開設や議会における将来の法案審議は、サイバーセキュリティを優先事項とするオバマ大統領の見解と合致するといえる。

オバマ大統領は、「サイバー調整官(Cyber coordinator)」職(注:1)を新設すること、及び、初代調整官を直々に指名することを今年5月に発表してから、数名の専門家や幹部に打診はしたものの、全て辞退されている。サイバーセキュリティへの対応努力で官民間調整の重要性を認識するTech America社は、サイバーセキュリティ監督者の迅速な指名を要請する書面を大統領に送っているが、エキスパート等は一概に、サイバー調整官という職を埋めることは不可能であると見ている。

興味深いのは、サイバーセキュリティに関する米政府のイニシアティブが、スマートグリッド・テクノロジー拡張を目指す昨今の努力に一致する部分があることである。電力網とインターネットの連結が増加するにつれ、こうしたスマートグリッドのセキュリティに関する懸念が浮上しているうえ、ブラジルで発生したハッカーによる電力系統の停止事件や、スマートメーターの脆弱性を明示したテスト結果(注:2)がこうした懸念を更に煽る結果となっている。

エネルギー省(DOE)は、スマートグリッドのセキュリティ問題はコントロールされているという立場を維持している。DOEによると、スマートグリッドのグラント申請者にはサイバーセキュリティ計画を提案に盛り込むことを義務付けているほか、国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology)の新基準への適応に関する計画案の提出も義務付けているという。また、各申請書は、最低でも2名のサイバーセキュリティや相互運用(interoperability)の専門家によって精査されているという。

しかしながら、ブッシュ前大統領のサイバーセキュリティ特別顧問であったRichard Clarke氏は、スマートグリッド提案に関しては、国家機密保全庁(National Security Administration)やDHSのサイバーセンターのような機関が不在であるため、DOEがセキュリテイ問題を真剣に受け取っていると考える根拠が全くないと、懸念を表明している。(White House News Release, October 1, 2009; Washington Post, November 2, 2009; New York Time, November 1, 2009; The Associated Press, November 1, 2009; The Hill News, November 2, 2009; WIRED.com, October 28, 2009)


メルケル独首相が米議会で気候変動対応の努力を促したにも拘わらず、共和党は上院委員会で気候変動法案審議のボイコットを継続

ワシントンDCを訪問中のアンゲラ・メルケル独首相は11月3日、米国上下両院の合同会議で演説を行った。メルケル首相は、気候変動問題に対するオバマ政権と連邦議会議員の努力を称賛しつつも、一刻の猶予もならない気候変動問題への対応努力を更に速める必要があることを示唆した。

メルケル首相は、来月コペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の第15回契約国会議で生まれる合意には中国やインドによる拘束力あるコミットメントが盛り込まれないであろうという米国議員の懸念を緩和することにつとめ、これら新興途上国は、先進国指導者が拘束力あるコミットメントを採択する用意があることを明白にした時点で始めて本格的な排出削減を行うことになると言及した。

メルケル首相の演説に対する米国議員の反応は党派ラインで明確に二分し、温室効果ガス排出制限がイノベーティブな職業の創出に拍車をかけることになるという首相の発言にも、民主党議員が総立ちで拍手喝采したのとは対照的に、共和党議員(浮動票と見られているインディアナ州のRichard Lugar共和党上議議員も含め)は全員が着席のままという応対であった。

同11月3日には上院環境・公共事業(EPW)委員会で気候変動法案(上院第1733号議案)のマークアップ作業が始まっている。民主党議員は12名全員が出席したのに対し、共和党からはGeorge Voinovich上院議員(オハイオ州)が唯一出席し、環境保護庁(EPA)による法案分析が終了するまで、同委員会の審議手続きを中断するよう要請したのみであった。翌日の11月4日にはJames Inhofe上院議員(共和党、オクラホマ州)が同委員会に立ち寄ったものの、前日のVoinobich議員の要求を繰り返したのみで、共和党議員によるマークアップ審議ボイコットが続いた。

EPW委員会のBarbara Boxer委員長(民主党、カリフォルニア州)は妥協点を見いだすべく、修正法案の受領締め切りを延期し、EPAによる法案分析のブリーフィングを受けるためにEPAの議会リエゾンDavid McIntosh氏を委員会に招待する一方で、共和党委員の参加がない(注:3)ままにマークアップ作業を継続(注:4)するという策にでている。民主党は、EPW委員会において共和党委員のボイコットを踏み潰すことにより、共和党側の更なる遅延戦術を誘発し、上院本会議での60票獲得を危うくするリスクがある。(Washington Post, November 4, 2009; EE News, November 3, 2009; EE News, November 4, 2009)

 


注釈:

1:国家安全保障会議(National Security Council)と国家経済会議(National Economic Council)に席を有する閣僚レベルのポストとなる。

2:米国ワシントン州のコンピュータ・セキュリティ会社IOActive社が2009年初めに行ったテストで、模擬攻撃によって、家庭の電気を妨げるコンピュータ・ウイルスをスマートメーターからスマートメーターへとまき散らし、24時間で1.5万件の家庭に影響を与えたという。

3:少数党から委員会議員が最低2名出席することが、委員会の慣習となっている。

4:上院環境・公共事業委員会(構成は、民主党議員12名、共和党議員7名)は11月5日、Boxer-Kerry法案を11対1で可決した。委員会採決で唯一反対票を投じたのは、Max Baucus上院議員(民主党、モンタナ州)であった。

 


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