NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2009年

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

12月8日号

環境保護庁、二酸化炭素を含む6種の温室効果ガスを危険物質に分類

環境保護庁(EPA)のLisa Jackson長官は12月7日の記者会見で、二酸化炭素(CO2)を含む6種(注:1)の温室効果ガス(GHG)は公衆の健康福祉を脅かす危険な汚染物資であると判定したことを発表した。

危険状況調査結果(Endangerment Finding)は、クリーンエア法の下に化石燃料に由来するGHG排出を規制するという連邦政府の義務要件の引き金となるもので、議会の新規法案を必要とせずにGHG排出の規制が可能となる。米国企業は議会審議される法案には影響を及ぼすことが出来るものの、行政府の規制作成に影響を及ぼす機会は稀となるため、EPAによる規制は主要産業や多くの連邦議員にとっては悪夢のシナリオとなる。

コペンハーゲンにおいては、今回のEPA発表は、米国がGHG排出削減に真剣であることを世界に示すことになり、気候変動交渉の結果に影響をもたらす可能性もある。更には、米国議会における気候変動法案の審議に新たなプレッシャーをかけることとなり、上院における気候変動法案とりまとめに弾みをつける可能性もある。

EPAは今回の発表に伴い、Endangerment and Cause or Contribute Findings for Greenhouse Gases under Section 202(a) of the Clean Air Act というテクニカル・サポート資料を公表している。その概要は下記の通り:

 観測された温室効果ガス(GHG)の傾向と濃度

  • GHGは一度放出されると、大気中に数十年も数百年もとどまる可能性があるため、(1)排出の出所に関係なく、世界全体の大気に混じり;(2)長期にわたって気候に影響を及ぼすことになる。
  • 2007年の米国GHG排出量は、CO2換算で7,150兆グラム(teragram)。放出量が最大のガスはCO2で、その殆どは化石燃料燃焼に起因するものであった。
  • クリーンエア法第202条の定める米国運輸排出源(乗用車、軽トラック他トラック、バス、オートバイ等)からの放出量は2005年には米国GUG排出量の4.3%相当であったが、2007年には23%(CO2換算で1,649兆グラム)まで上昇。
  • 米国における硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)・微粒子・オゾン先駆物質の排出量は、規制措置や技術改善のお蔭で、ここ数十年間減少傾向にある。
  • 2009年の地球全体における大気中CO2濃度は、産業化以前と比べ約38%上昇しており、増加分のほぼ全ては人為的放出に起因する。
  • 歴史的データから、大気中で寿命の長いCO2とメタンは過去65万年に比べ、その大気中濃度が通常の範囲を遥かに超えていることが明確。

 世界的に高いGHG濃度とかかわりを持つ観測結果

  • 現在の大気中CO2その他GHG濃度は、呼吸器疾患のような直接的健康障害を引き起こすとされる公開の被ばく閾値より遥かに低いレベルを維持している。
  • 地球の大気・海洋平均温度の上昇、広範囲に及ぶ氷雪の溶解、及び世界的な海面上昇から明らかなように、気候システムの温暖化は疑いようがない。
  • 20世紀半ば以降に観測されている地球平均温度の上昇は、その大半が人為的GHG濃度の上昇に起因する可能性が非常に高い。米国の気温も、20世紀始めよりは華氏で約1.3度上昇している。
  • 米国48州(アラスカとハワイを除く)の年間降雨量は1901年から2008年までに6.1%増加。降水の量や強度(intensity)、頻度や形態に変化が見られる。
  • 20世紀には世界的な海面上昇の強い証拠が見られ、現在は更なる速さで上昇している。
  • 人工衛星のデータによると、北極の海氷面積は1979年以来、10年毎に4.1%の割合で縮小している。
  • 過去50年間、世界各地(米国を含む)で超低温・超高温に変化が見られ、寒い日や寒い夜、霜の頻度が減り、暑い日や暑い夜、猛暑の頻度が増えている。
  • CO2の海中吸収によって、海水のpHレベルが1750年以来、約0.1低下し、酸性度が高まっている。
  • 気候変動が現在、米国の物理系・生体系に大きな影響を与えていることが観測されている。

 GHG濃度が継続的に上昇した場合の将来気候変動予測

  • [現在施行されている以外には]GHG緩和措置を取らないという将来シナリオでは、100年間で世界のGHG排出およびGHG濃度が上昇する。
  • 排出量が抑制されるシナリオでモデリングしても、21世紀の間に起こる温暖化は20世紀に観測された温暖化以上になる可能性が高い。
  • 21世紀には米国全土が温暖化傾向となり、米国ほぼ全域で世界平均以上に温暖化する。
  • 猛暑の頻度と強度が高まり、しかも長く続く一方で、寒い日は大幅に減少する。
  • 高緯度では降水量が増える一方、亜熱帯地方と米国南西部では降水量が減る。
  • 米国を含む世界各地で降水強度が強まり、洪水のリスクが高まる。
  • ハリケーンの強度が増す。
  • IPCCの予測によると、21世紀末までに世界の海面は、1990年頃と比較して平均7.1〜23インチ(18〜59センチ)上昇する。
  • 海氷面積は、IPCCの排出シナリオのどれを使っても、縮小となる。

 将来の気候変動に関連して予測されるリスクと影響

  • 気候変動の速度と程度が増すにつれ、社会や生態系、多くの地球天然現象に対するリスクが増加する。温暖化は、グリーンランドの氷床や南極の西部氷床の崩壊といった、大規模で急激な地域的気候イベントの可能性を増やすことになる。
  • CCSPの報告によると、気候変動で予測される保健面の影響は主として貧困層や老齢者、身体障害者や無保険者に降りかかるため、気候変動は米国ヘルスケア制度に見られる格差を倍加させる可能性がある。
  • 米国の一部では猛暑が更に厳しくなり、特に、老齢者や幼児や病弱者の死亡率や疾病率が増加する可能性がある。
  • 米国を含む世界の都市では、高温および空気循環弱化のために、地域的にオゾン汚染が増加するものと予想され、呼吸器疾患や早死のリスクが増えると考えられる。
  • CCSPは、CO2増加と気温上昇で、穀類作物と油料種子作物(oilseed crop)のライフサイクル(種まき・収穫の循環)が短縮すると結論づけている。しかしながら、気温の上昇につれ、これら穀物が不作となる可能性も高くなる。
  • 一部の地方では、高温のために夏季の家畜生産が減少するものの、この損害を冬季の温暖な気温によって一部相殺する可能性が高い。
  • 冷水性魚類の漁獲量には悪影響があるものの、温水性魚類の漁獲量には一般的に恩恵をもたらす。
  • 気候変動は、米国の内西部や南西部、及びアラスカ州における山火事や害虫勃発や林木枯死の頻度や規模を増大する可能性が高い。
  • 米国の沿岸コミュニティや沿岸生息地では、海面上昇や高潮洪水といった気候変動の影響が非常に深刻となる。
  • 気候変動は、米国内の一部地域で既に問題となっている水資源に更なる圧迫を加え、農業・都市・産業・生態用の間の競争を激化することになる。
  • 水温の上昇、降水強度の激化、低流量期間の長期化により、水質汚染が悪化する。
  • 海の酸性化が続く見通しで、その結果、珊瑚等の石灰質を持つ海洋生物の生物学的生産が減少することになる。
  • 気候変動は、米国のエネルギー消費やエネルギー生産、及び、物理的・組織的なインフラストラクチャー(特に、水資源のインフラ)に影響を与えることになる。
  • 気候変動により、21世紀には種(species)の北上や高緯度移動が起こり、米国の生態系は根本から変わることになる。
  • 気候変動の影響は、米国の異なる地域においてその性格と程度が異なる:
    • 北東部や南東部、南西部や中西部では夏の気温が高く、大気質が悪化すると予測される。
    • アラスカ州では、海氷の喪失、氷河の後退、永久凍土の融解、海岸侵食が続く。
    • 北東部や北西部、及びアラスカ州では、夏季の旱魃の可能性が高まり、南東部やグレートプレインズ、及び南西部では深刻な旱魃や水不足が予想される。
    • 南西部、中西部、及び北西部では土砂降りの頻度が増え、大洪水のリスクが高まると予想される。
    • 南東部、中西部、グレートプレインズ、南西部、北西部及びアラスカ州では、在来種の分布に変化が起き、外来種が増えるものと予測される。
  • 世界の一定地域における気候変動の影響は、米国にとって人道上・貿易上・国家安全保障上の課題を引き起こす問題を悪化させる可能性がある。

(CongressNow, December 7, 2009; Endangerment and Cause or Contribute Findings for Greenhouse Gases under Section 202(a) of the Clean Air Act, December 7, 2009)

 


注釈:

1:二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄の6種ガス 


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