NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2011年

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

2月3日号

オバマ大統領、商業ビルの省エネ化を目標とする「ビルディング改善イニシアティブ」を発表

オバマ大統領は2月3日、訪問先のペンシルバニア州立大学で、ビルディングの省エネ化はコスト削減;公害対策;国内雇用創出を達成する最も迅速かつ簡単で経済的な施策の一つであると語り、商業ビルのエネルギー効率改善を目標とする「ビルディング改善イニシアティブ(Better Building Initiative)」を発表した。

新イニシアティブの狙いは、一連のインセンティブを介して、事務所・商店・病院・学校他市営ビル等に対する民間投資を刺激することにより、2020年までに商業ビルのエネルギー消費を20%削減することで、ホワイトハウスでは年間400億ドルのエネルギーコスト節減が可能性であると推定している。 「ビルディング改善イニシアティブ」の概要は下記の通り:

  • 省エネビル向けの新たな優遇税制

    商業ビル改築に対する現行の課税控除(tax deduction)(注:1)を見直し、課税控除を税額控除(tax credit)(注:2)に変更するよう議会に要請。この税制変更によって、税控除額がより寛大となり、ビルの所有者や不動産投資信託(REIT)によるビルの改築が推進され、商業ビルの改築率が10倍に増え、雇用を創出する投資にてこ入れすることになる。

  • 商業ビル改築のための融資拡大

    資金繰りが、ビル改築への投資拡大にとって大きな障壁となっている。このギャップに対応するため、中小企業局(SBA)では金融業者と協力して、新規の中小企業向け省エネ改築ローン(energy efficiency retrofit loan)を推進している。2012年度大統領予算案では更に、病院・学校・商業ビルのエネルギー効率向上を目的とするDOEのローン保証パイロットプログラムを提案予定。

  • 「Race to Green」

    商業ビルの省エネ化に関連する条例や規制及び性能基準を変更する権限は概して、州政府や地方政府の所管となっている。2012年度大統領予算案では、規制を合理化し、改装を奨励し、民間投資を誘致する州政府や地方政府に付与する競争グラント「Race to Green」を新たに提案予定。

  • ビルディング改善チャレンジ(Better Building Challenge)

    CEOや学長に対して、企業や大学をエネルギー節減でのリーダーにすることを要求。同チャレンジに参加するパートナーは所有施設を省エネルギー化する一連の行動にコミットする代償として、世間のリコグニション(認知)・技術支援・ベストプラクティスといったベネフィットを受けることになる。

  • 次世代商業ビル技術者の養成

    エネルギー効率性能のトランスペアレンシー(透明性)の向上、成功を収めている商務省の製造技術普及パートナーシップ(Manufacturing Extension Partnership =MEP)を手本とする「ビルディング建築技術普及パートナーシップ(Building Construction Technology Extension Partnership)」の開始、省エネ診断や建築工事といった分野における労働者の養成、といった幾つかの改革実行に向けて準備中。


大統領の新イニシアティブは、不動産円卓会議(Real Estate Roundtable)、全米アパート協会(National Apartment Association)、米国グリーンビルディング評議会から早々に高い評価を獲得したほか、Jeanne Shaheen上院議員(民主党、ニューハンプシャー州)を始めとする議会の主要なエネルギー指導者からの支持も得ている。一方で、共和党指導者の中には、同イニシアティブが政府の新たなフリーギブアウェイにすぎないとの見方を表明している者もいる。(CQ Today, February 3, 2011; White House Press Release, February 3, 2011; E&E News PM, February 3, 2011)

 

IBMのリチウム-空気電池研究

著名コンピューター会社であるIBMがこの2年半ほど、ガソリン自動車と電気自動車との間のギャップを解消する可能性を持つリチウム-空気(Lithium-air)電池の研究に携わっている。IBMは2009年に、高リスクなリチウム-空気電池研究を助成するエネルギー省(DOE)ARPA-Eのグラントに応募したが、ARPA-Eが選定したのはIBMプロジェクト以外の2件(注:3)であった。

IBMの研究継続という選択により、同社は、大きなリスクを厭わない大企業という希有なカテゴリー入りをすることになる。IBMチームの目標はARPA-Eに劣らぬ、1回の充電で500マイル走行する電気自動車であり、IBM科学者はリチウム-空気電池に潜む基礎科学の難問を克服するために、新材料を作り、スーパーコンピューターを起動させ、プロトタイプを設計している。

IBMのアルマデン研究所(カリフォルニア州)のナノ科学技術マネジャーであるWinfried Wilcke氏によると、リチウム-空気電池を再充電可能にすることが難しいながら、ここ6ヶ月間の進歩からして、同技術の実現に対してこれまでよりも遥かに楽観的になっているという。同氏はIBMが同研究にどれだけの資金と人材を注いでいるのかには言及しなかったものの、向こう3年以内に実験室レベルでの実証を期待していると語った。(ClimateWire, February 3, 2011)

 


注釈:

1:課税控除とは、課税所得から差し引く控除のこと。現行の課税控除の対象は、室内照明;冷暖房空調設備や温水装置;建物外面(building envelope)を改善・改築したコストで、1平方フィートあたり最高$1.80となっている。

2:税額控除とは、課税所得に税率を掛けて算出された税額から差し引く税控除のこと。

3:選定されたのは、PolyPlus Battery社とCorning社の共同プロジェクト、及び、ミズーリ科学技術大学のプロジェクトの2件で、グラント額は前者が約500万ドル、後者が100万ドル。


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