NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2011年

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

6月2日号

見直される炭素税

当面はcap-and-trade制度が政治的に不可能な状態となっている中、排出源から放出される二酸化炭素(CO2)に税を課す炭素税がエコノミストやアナリストの間で見直されている。

2011年5月には、Peter G. Peterson基金が、保守派シンクタンクであるヘリテージ財団とAmerican Enterprise Institute、超党派のBipartisan Policy Center、リベラル派のCenter for American ProgressとEconomic Policy InstituteおよびRoosevelt Campus Networkという6グループが作成した米国財政課題への対応プランをまとめた報告書『ソリューションズ・イニシアティブ(Solutions Initiative)』 を発表した。Center for American Progressが炭素税の設立を提案していることは驚くにあたらないものの、保守派シンクタンクであるAmerican Enterprise Instituteが歳入面からのアプローチとして炭素税を提案していることは注目に値する。

このAmerican Enterprise Institute(AEI)が6月1日に、炭素税が気候変動政策の次のフロンティアとなるべきかどうかを討議する「炭素税はどうなるのか? (Whither the Carbon Tax?)」という円卓会議を開催した。円卓会議に参加したパネルメンバーの炭素税に対する意見は賛否両論であり、へリテージ財団のDavid Kreutzer氏から、エネルギー費が収入に占める割合は貧しいほど高くなるため、課税は逆累進的であり、エネルギーコストの増加に繋がるという批判がでたのに対し、Resources for the FutureのRobertson Williams氏からは炭素税には、投資が税金回避という利益を生むのだという確実性を与えることによって企業の排出削減を促す可能性があるという反論がなされた。

第112議会は間もなく資金面の難しい選択に直面するが、国家債務が14.3兆ドルで、1970年以来の平均国庫収入が18.1%未満であることを考慮すると、支出削減だけでは均衡予算を達成することは出来ないため、 新たな資金源が必要となる。Williams氏によると、これに、環境保護庁(EPA)の温室効果ガス(GHG)排出削減規制が迫っていることを勘案すると、炭素税は債務削減に役立つと同時に産業界にとっては遵守し易い代替案になるという。

多くのエコノミストは、米国議会の現在の焦点は支出削減であるが、負債に関する議論はゆくゆくは新たな資金源の発見へと変わるとみている。また、エコノミストの中には、炭素税と引き換えに法人税率を引き下げるという「税のスワップ(tax swap)」が共和党と民主党の双方にとって魅力的ではないかと考えている者もいる。

AEI円卓会議の司会を務めたKevin Hassett氏(AEI)は、法人税率の低減と炭素税というパッケージ取引であれば、気候変動のもたらす被害を疑うものの減税にはひどくこだわる共和党員もこれに同意を示し、そこから保守派とリベラル派の同盟が形成される可能性はあると述べた。

(Peter G. Peterson Foundation News Release, May 27, 2011; E&E News PM, June 1, 2011; ClimateWire, June 2, 2011)

 

*Peter G. Peterson財団が発表した報告書にある6グループの政策案の一部を比較した表はこちら

 


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