NEDO ワシントン事務所:デイリーレポート

2013年

■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった

10月21日号

米国最高裁判所、固定排出源に対する環境保護庁の温室効果ガス規制を審理すると発表

米国最高裁判所は2013年10月15日、クリーンエア法(Clean Air Act =CAA)の下で自動車の温室効果ガス(GHG)排出を規制するということは自動的に、GHGを放出する固定発生源の許認可要件(注:1)を誘発する(trigger)ことになるとした環境保護庁(EPA)の判断が、法律の許容範囲内であったかどうかを審理すると発表した。

一方で最高裁判所は、パシフィック・リーガル財団(Pacific Legal Foundation)、責任ある規制同盟(Coalition for Responsible Regulation)、及びバージニア州政府他から提出された(i)「マサチューセッツ州 対 EPA」訴訟の判決(注:2)に対する異議申し立て;(ii)『危険状況調査結果(Endangerment Finding)』(注:3)に対する異議申し立て;(iii)Tailoring Rule(調整規則)(注:4)に対する異議申し立てを却下したほか、移動発生源(自動車・軽トラック)から放出されるGHGの排出規制に対する異議申し立てについても審理を拒否した。

GHGは基準汚染物質(criteria pollutant)に含まれていないことからEPAにはGHGを規制する法的権限がないと主張する業界団体等申立人は、「マサチューセッツ州 対 EPA」の審理が却下されたことは遺憾ながら、最高裁判所における「誘発」ルールの審理には大きな意義があるとして、これを歓迎している。

一方、殆どの環境保護団体は、最高裁判所が審理内容を「誘発」ルールのみに絞ったことから、仮に原告側に有利な裁定が出されたとしてもEPAのGHG排出規制にもたらす影響は極めて限られたものであり、発電所その他固定発生源からの二酸化炭素(CO2)排出を規制するEPAの能力(注:5)には影響がないと語っている。 Thomas Lorenzen元司法省環境天然資源担当次席やStuntz, Davis & Staffier法律事務所のLinda Stuntzエネルギー専門弁護士によると、最高裁判所がEPAに対して発生源別(注:6)の危険状況調査を実施するよう義務付ける可能性はあるという。

最高裁判所では来年早々に法廷審問を行ない、来年7月までに裁定を下す見込みである。

(Greenwire, October 15, 2013; The Hill, October 15, 2013; ClimateWire, October 16, 2013)

 

 

Wellinghoff連邦エネルギー規制委員長の退任後の行き先は、エネルギー問題を扱う法律事務所

連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission =FERC)のJon Wellinghoff委員長は、約7年務めたFERC委員長職を離れた後、オレゴン州ポートランドに本拠を置くStoel Rives法律事務所に加わり、サンフランシスコ事務所とワシントンDC事務所で業務につく予定であると発表した。

Stoel Rivesは、米国7州11事務所に約400名の弁護士(内、約100名がエネルギー分野の弁護士)を抱えるエネルギー関連の訴訟で有名な法律事務所で、顧客には金融機関や開発業者、公益企業や民間公益企業、エネルギー会社や再生可能エネルギー会社、製造業者や小売り業者が含まれている。

Wellinghoff委員長は今年5月にFERCからの引退を表明したものの、オバマ大統領が後任に指名したRon Binz元コロラド州公益委員長の上院での承認手続きがこう着状態となりBinz氏がFERC委員長指名を辞退する結果となったため、今のところWellinghoff委員長の退任の日は不明となっている。

(Greenwire, October 21, 2013)

 

 

 


注釈:

1: 『1977年クリーンエア法修正法(1977 Clean Air Act Amendments)』の一環である「新規発生源査定(New Source Review =NSR)」で定められた建設前(preconstruction)の許認可プログラム。NSRの基準汚染物質(criteria pollutant)は、鉛、一酸化炭素、窒素酸化物、オゾン、粒状物質等。NSRは、基準値達成地域(attainment area)で新規固定発生源や大改修を行う既存固定発生源に対しては環境悪化防止(Prevention of Significant Deterioration =PSD)許可証の取得、未達成地域(non-attainment area)で新規固定発生源や大改修を行う既存固定発生源に対しては未達成NSR許可書の取得、 PSD許可証と未達成NSR許可証を必要としない固定発生源に対しては小規模発生源(Minor Source)許可証の取得を義務付けている。NSRの基準汚染物質は(criteria pollutant)は、オゾン、一酸化炭素、粒状物質、二酸化硫黄、鉛、及び窒素酸化物の6種類で、GHGは基準汚染物質に入っていない。

2: 気候変動問題への対応に消極的であったブッシュ政権のRobert Fabricant EPA法務顧問が2003年に、EPAには気候変動対応の目的でGHGを規制する権限がないとして、EPAによるGHG規制を禁止したが、これを不服とするマサチューセッツ州他がEPAを相手取って2006年に起こした訴訟。2007年4月2日に最高裁は5対4で、EPAにはクリーンエア法の下でGHGを規制する権限があるという判決を下した。

3: 2009年12月7日にLisa Jackson EPA長官が発表した、二酸化炭素を含む6種類のGHGは公衆の健康と福祉を脅かす危険な汚染物質であると結論づけた報告書。

4: 発電所その他大規模固定発生源に対し、GHG排出許可証の取得を義務付ける三段階式の制度。

5: EPAが2013年9月20日に発表した石炭火力発電所と天然ガス発電所のCO2排出基準最終案、及び現在策定中の既存発電所のCO2排出基準案は、PSD計画ではなく、CAAの新規発生源業績基準(New Source Performance Standard)の下で規制されているため、今回の訴訟での対象とはなっていない。

6: PSD計画では、Fossil-fuel fired steam electric plants for more than 250 million Btu per hour heat input; Coal cleaning plants; Iron and steel mill plants等、28の発生源を特定している。

 


Top Page