(2002/2/12)

ブッシュ大統領の2003年度予算:概要(その2)

ワシントン事務所
2002年2月12日

前回のレポートではエネルギー省の予算概要を紹介した。このレポートでは、非防衛関連R&Dの第2番目の政府スポンサーである米航空宇宙局(NASA)と第4番目のスポンサーである全米科学財団(National Science Foundation)、および、先端技術計画(ATP)の規模縮小や製造技術普及計画(MEP)の廃止に直面している商務省の予算について概説する。

 

米航空宇宙局

米航空宇宙局(NASA)の2003年度予算は、前年度比1.4%増の151億ドルで、その内の約3分の2にあたる100億6,900万ドル(前年度比5.3%増)がR&D予算に向けられている。NASA R&Dを「基礎研究」「応用研究」「開発」「施設・設備」というカテゴリーに分類した予算内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

基礎研究

1,909

2,298

389増(20.4%増)

応用研究

2,766

3,099

333増(12.0%増)

開発

2,582

2,648

66増(2.6%増)

施設・設備

2,303

2,024

279減(12.1%減)

合 計

9,560

10,069

509増(5.3%増)

NASA予算のハイライト:

  • 有人宇宙飛行(Human Space Flight)プログラムの予算は削減されるものの、科学・航空学・技術(Science, Aeronautics and Technology = SAT)向けR&D予算は前年度より10.3%増額され、89億ドルとなる。
  • ブッシュ政権の査定評価で「非効率的」という採点を受けた国際宇宙基地(International Space Station = ISS)計画の2003年度予算は2億3,000万ドル削減され、15億ドル。行政府では、ISSを管理する非政府組織の創設を検討している。
  • 宇宙科学向けの予算は、前年度比13%増の34億1,400万ドル。プルートやエウロパという外惑星計画が廃止されるが、代って、競争提案により有望な惑星ミッションを選定する新フロンティア計画が提案されている。
  • スペースシャトルに代わる新しい打ち上げ技術の開発を目標とする宇宙打ち上げイニシアティブ(Space Launch Initiative)の2003年度予算は7億5,900万ドル(前年度比63%増)に引き上げられている。
  • 学究的プログラム(Academic Programs)の2003年度予算は約50%削減の1億4,300万ドル。2002年度予算には議会によるR&D指定資金交付(earmark)が追加されたが、この殆どの廃止を行政府が要求している。これが、同プログラム予算の大幅削減に繋がっている。

 

全米科学財団

ブッシュ政権からR&D計画の管理で賞賛をうけた全米科学財団(National Science Foundation = NSF)には、前年度より2億ドル多い(5%増)50億3,600万ドルが配分されている。NSFのR&D予算は37億ドルで、2002年度よりも1億2,900万ドル(3.6%)の増額となっている。しかしながら、この増額の内の7,600万ドルは、商務省から移管された全米海洋グラント計画と内務省から移管された水科学(hydrologic science)計画、および、環境保護庁から移管されてきた環境教育計画によるものである。従って、NSFの殆どのR&Dプログラムは小額の増額を受けたにとどまり、内には削減された計画もある。NSFのR&D予算内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

基礎研究

3,093

3,242

149増(4.8%増)

応用研究

192

199

7増(3.6%増)

施設・設備

286

259

27減(9.4%減)

合 計

3,571

3,799

129増(3.6%増)

NSF予算のハイライト:

  • 数学・統計科学において根本的研究を行うため、Mathematical Sciencesの予算が前年度よりも6,000万ドル増額され、1億8,200万ドル計上される。一方で、化学・物理学・天文学といった数学・物理科学(Mathematical and Physical Sciences)のプログラムは予算削減を受ける。
  • 情報技術研究(Information Technology Research)の予算は前年度比9.9%の増額。
  • EPSCoR(Experimental Program to Stimulate Competitive Research)計画予算は、前年度比7%減の7,500万ドル。
  • ナノスケール研究に従事する研究・教育センターに資金を提供する「優良センター・優良ネットワーク(Centers and Networks of Excellence)計画」に、前年度比12%増の3,794万ドルを要求している。
  • 工学研究センター(Engineering Research Centers)予算は2002年度と同レベルの6,232万ドル。また、科学技術センター(Science and Technology Centers)予算も前年度同額の4,500万ドル。

 

商務省

2003年度の商務省予算は、前年度とほぼ同レベルの53億ドル。商務省予算の重点はやはり、国土防衛と経済回復であり、同省の国土防衛活動には4,800万ドルの増額が要求されている。特に、国土防衛情報技術評価計画(Homeland Security Information Technology and Evaluation Program)が新設されることになる輸出管理局(Bureau of Export Administration)の予算が3,300万ドル増額されるほか、特許商標局の予算(注1)も前年度比21.2%増の13億8,000万ドルまで引き上げられることになっている。

商務省の2003年度R&D予算としては、総額11億1,400万ドル…前年度比1,500万ドル増…が要求されている。ここでは、商務省のR&D担当機関である国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology = NIST)と国立大気海洋局(National Oceanic and Atmospheric Administration = NOAA)の予算について概説する。

@ NISTの総予算は、5億7,750万ドルで、2002年度予算より1億ドルの削減となっている。ただし、NISTのR&D予算としては、前年度比2.6%(1,200万ドル)増の4億7,200万ドルが要求されている。NIST R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

基礎研究

52

73

21増 (40.4%増)

応用研究

282

244

38減 (13.5%減)

開発

87

49

38減 (43.7%減)

施設・設備

39

106

67増 (171.8%増)

合 計

460

472

12増 (2.6%増)

NIST予算のハイライト:

  • NIST内研究(intramural)プログラムは、2002年度予算で大幅な増額を受けたが、2003年度予算でも再度重視され、2002年度比7,000万ドル増の4億200万ドルに引き上げられる。
  • 先端技術計画(Advanced Technology Program = ATP):前年度レベルから7,710万ドル削減され、1億790万ドル。新規プロジェクト用の予算は僅か3,500万ドルとなっている。商務省では、5%のロイヤルティー支払いによるATP投資の償還義務等を盛り込んだ一連の変更を提案している。
  • 製造技術普及計画(Manufacturing Extension Partnership = MEP):2002年度レベルより9,360万ドル削減され、僅か1,290万ドルの計上となっている。MEPセンターへの連邦支援は元来6年間と設定されていたが、クリントン前政権と議会は製造業界の競争力強化が国家経済に利益をもたらすという判断で合意し、6年を越えての政府支援を認めていた。しかしながら、ブッシュ政権ではMEPを当初計画へ戻すことを提案し、創設後6年未満のMEPセンター2ヶ所を支援するために1,290万ドルのみを要求している。
  • 建設中の先端計量研究所(Advanced Measurement Laboratory)を完成・稼動させるため、2003年度には3,500万ドルの増額が要求されている。
  • 重要インフラストラクチャーの安全強化、産官パートナーシップの構築、政府情報システムの改善に、500万ドルの予算を提案している。

A 2003年度のNOAA予算要求額は、前年度比1億2,100万ドル減の32億ドル。R&D予算も1,400万ドル(2.2%)減の6億3,000万ドルとなっている。NOAA R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

応用研究

549

542

7減(1.3%減)

開発

58

58

±0

施設・設備

37

30

7減(18.9%減)

合 計

644

630

14減(2.2%減)

NOAA予算のハイライト:

  • NOAA予算の削減は、全米海洋グラント(National Sea Grant)計画(注2)が2003年度から全米科学財団の管轄に移ったことに一因する。
  • 同局担当の殆どの気候変動R&Dに予算を拠出する大気研究局(Office of Atmospheric Research)の全体予算は8,000万ドルの削減を受ける。一方で、ブッシュ政権は、気候モデルの作成・北極の研究といった新プロジェクトを提案し、気候関連サービス(Climate Services)予算を3,620万ドル増額することを提案している。


注1:この増額分は、特許審査官の950名追加、および、人材管理・e-政府といったブッシュ大統領の管理改善施課題の実施に使用される見込みである。

注2:2002年度予算は6,200万ドルであった。


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