(2002/2/14)

ブッシュ大統領の2003年度予算:概要(その3)

ワシントン事務所
2002年2月14日

ブッシュ大統領の2003年度予算案を政府全体のR&D予算という観点から見ても、同政権の対テロ戦争に対する意気込みが明白である。2003年度の防衛関連R&D予算が前年度より47億4,500万ドル(8.8%)増額されたのに対し、非防衛関連R&D予算の伸び率は7.8%(38億2,900万ドル)となっている。非防衛関連R&D予算から、昨年同様に大幅な予算増額を受ける国立衛生研究所を除くと、2003年度予算は僅か(1億400万ドル)ながら減少してさえいる(注1)。このレポートでは、国防省・国立衛生研究所・環境保護庁・内務省・運輸省、そして省庁間R&Dプログラムの予算を概説する。

 

国防省

2003年度の国防省予算は、480億ドル(前年度比13.4%)増額の3,790億ドルが要求されている。国防省のR&D予算は、2002年度より53億7,300万ドル(前年度比10.9%)増額され、総額545億4,400万ドルとなっている。しかしながら、国防省R&D予算の内の約449億ドル(前年度比14.2%増)は、完成近い兵器開発・実験・評価に配分される予定で、基礎研究や包括的な技術開発を含む科学技術(S&T)予算の方は前年度レベルより2億ドル(2%)少ない96億7,700万ドルに削減される。

国防省予算のハイライト:

  • 防衛先端研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency = DARPA)の予算は前年度比19.2%増の27億ドル。DARPAの基礎研究ポートフォリオである防衛研究科学(Defense Research Sciences)の予算は23%増額され、23億ドルに引き上げられている。
  • 大学研究イニシアティブの2003年度予算は、前年度より2,740万ドル削減され、2億2,160万ドル。
  • 防衛EPSCoR計画予算は、690万ドル削減の990万ドル。
  • 軍民両用の科学技術計画については、海軍と陸軍が予算要求を中止(注2)。空軍は2003年度予算として、前年度比31万ドル増の1,063万ドルを要求している。

 

厚生省の国立衛生研究所

国立衛生研究所(National Institute of Health = NIH)の2003年度予算は、37億ドル(前年度比15.7%)増という前例のない大幅増額をうけ、総額273億ドルに拡大する。この増額によって、1998年度から2003年度までにNIH予算を倍増するという約束は実現することになる。NIHのR&D予算は前年度比39億3,300万ドル(17.4%)増の264億7,200万ドルに引き上げられる。

NIH予算のハイライト:

  • バイオテロリズム関連の研究と基盤整備予算として、ブッシュ政権は前年度予算比18.7%増の17億ドルを要求している。
  • バイオテロリズムR&Dを行なうNIHの主要研究所は国立アレルギー・伝染病研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases = NIAID)で、2003年度予算は57.3%増の40億ドルに引き上げられている。
  • ブッシュ政権では、NIHのビルディング・施設予算をも重要視し、2002年度予算のほぼ2倍にあたる6億3,399万ドルの配分を提案している。ビルディング・施設予算の増額分は、NIH研究所の安全強化・バイオテロリズム研究用施設の新設・NIH神経学研究センターの建設完成のために使用される予定である。
  • NIHでは、この大幅増額を利用して、2003年度に3万5,920件の研究グラントを授与する意向である。

 

環境保護庁

2003年度の環境保護庁(EPA)総予算は、前年度より5億ドル少ない(5.5%減)77億ドルとなったが、R&D予算の方は、6億5,000万ドル…前年度比6.2%(3,800万ドル)増…に増額されている。

EPA予算のハイライト:

  • 国家環境技術競争公募(National Environmental Technology Competition)という新計画に、1,000万ドルを要求している。この新計画は、@産官パートナーシップの構築;A競争による技術革新の推進;B新しいコスト効率的技術の開発促進を目標としている。
  • 放棄された工業用地を再開発するブランフィード計画の予算は、前年度比100%増の2億ドルまで引き上げられる。
  • 非常事態や有害物質漏出への対応で特有の専門知識と経験を持ち、テロ事件への備え・対応で重要な役割を果たすことになるEPAには、国土防衛予算として1億2,400万ドルの追加計上が要求されている。この内の7,500万ドルは、バイオテロの攻撃を受けたビルディングの浄化技術開発を支援するために使用される。
  • 全米飲料水システムの弱点評価と対応策策定作業を継続するために2,000万ドルが要求されている。
  • ブッシュ大統領予算案では、クリーンエア法の計画を実施するため、市場ベース規制の利用を拡大すべきであると示唆している。

 

内務省

内務省の2003年度予算は、前年度より1億ドル少ない103億ドルで、R&D予算も3,200万ドル(前年度比4.8%)減の6億2,800万ドルの要求となっている。特に、内務省の主要科学機関である米国地質調査局(US Geological Survey = USGS)のR&D予算は、昨年同様に厳しい削減の対象となり、2003年度予算は前年度比4,100万ドル(7%)減の5億4,200万ドルまで引き下げられている。また、大統領予算案では、北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge = ANWR)の掘削解禁に対するコミットメントを再確認し、石油掘削にリースする最良地の確認でエネルギー省と協力するよう内務省に要請している。一方で、ブッシュ予算案は、内務省の国土管理局(Bureau of Land Management)に対し、水力発電・太陽光発電・風力発電に付随する規制面の障壁を除去するよう努力するべきであると提言している。

 

運輸省

運輸省の2003年度予算は、法律で義務付けらた高速道路向け予算削減を調整すると、前年度よりも8%増額の593億ドルになると説明されている。大統領予算案では、9月11日の多発テロ事件後に新設された交通安全局(Transportation Security Administration = TSA)の2003年度予算として48億ドルを提案しているほか、公共交通機関を障害者が利用しやすいものに改善するNew Freedom Initiativeへ1億4,500万ドルを計上するため、必要な立法権限を認可するよう議会に求めている。 

運輸省R&D予算のハイライト:

  • 2003年度のR&D予算は、前年度レベルより1億4,200万ドル(16.4%)削減され、7億2,500万ドルまで引き下げられている。
  • インテリジェント交通システム(Intelligent Transportation System = ITS)の標準・研究開発には8,200万ドルが要求され、ITSの導入普及には9,100万ドルが提案されている。
  • 連邦交通局(Federal Transit Administration)の全米研究技術計画(National Research and Technology Program)予算は前年度と同額の4,900万ドル。この内の820万ドルが、輸送共同研究(Transit Cooperative Research)、交通渋滞と大気質問題の研究、および、電気-ハイブリッド型バス・燃料電池・バッテリー利用推進システムの開発にあてられる予定である。

 

省庁間R&Dプログラム

ブッシュ大統領の2002年度予算では省庁間R&Dプログラムとして、情報技術R&Dとグローバルチェインジ研究の二つを報告したにとどまっていたが、2003年度予算案では、これ以外に、国家ナノテクノロジー・イニシアティブ、気候変動研究イニシアティブの予算も省庁間R&Dプログラムとして計上・報告している。各プログラムへの参加省庁とその予算については、後日、2003年度R&D予算の分析で概説することとし、ここではプログラム予算を紹介する:

(単位:100万ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

ネットワーキング・情報技術R&D

1,844

1,890

46増(2.5%増)

国家ナノテクノロジー・イニシアティブ

579

679

100増 (17.3%増)

気候変動研究イニシアティブ

0

40

新イニシアティブ

米国グローバルチェインジ研究計画

1,670

1,714

44増(2.6%増)

国家気候変動技術イニシアティブ(注3)

0

40

新イニシアティブ


注1:全米科学振興協会(AAAS)のpreliminary analysisに記載されたデータを利用。防衛関連R&Dには、エネルギー省担当の防衛関連R&D予算も含まれる。

注2:海軍の2002年度予算は1,900万ドル、陸軍の2002年度予算は1,345万ドルであった。

注3:DOE、EPA、農務省で行なわれている気候変動技術研究開発をベースとして活用する新イニシアティブで、大統領が同計画に計上する4,000万ドルという予算はDOE予算の一部として要求されている。


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