(2002/2/7) 

ブッシュ大統領の2003年度予算:概要(その1)

ワシントン事務所
2002年2月7日

2002年2月4日に発表されたブッシュ大統領の2003年度予算要求案は、1月29日の大統領一般教書演説の骨子であった @対テロ戦争;A国土防衛;B経済復興という最優先事項を明確に反映したものとなっている。ブッシュ大統領が要求した2003年度予算総額は2兆1,300億ドル(注1)で、2002年度予算を800億ドル上回る(3.7%増)金額となっている。最大の恩恵に与るのは国防省であり、レーガン政権以来最高の480億ドルという増額を受け、2003年度予算総額は3,790億ドルに達する。更に、大統領予算案では、国土防衛予算として2002年度予算をほぼ倍増した377億ドルも要求している。これ以外で大幅な増額を受ける省庁は昨年同様に国立衛生研究所(NIH)で、総額273億ドル(前年度比40億ドル増)が計上されている。

しかしながら、上述の増額を除くと、その他の政府省庁やプログラム予算は前年度並みに留まっているものが殆どであり、増額されている場合でも、対テロ戦争や国土防衛に関連する計画であるが故の増額であることが多い.。国防省や国土防衛の予算増額、および、減税の実施を約束するブッシュ大統領の予算要求により、2003年度には800億ドルの財政赤字が生じるものと予想されている。

2003年度大統領予算案で特筆に価するのは、実績評価に基づいた予算策定を強調するブッシュ政権が、政府の業績を改善するために、@人材の戦略的管理;A競争による調達;B財政管理;Ce-政府;D予算と実績の統合、という5つのクライテリアを確認し、これに基づいて政府各省庁および各プログラムの評価を行なったことである。各省庁の評価結果は、「緑(success)」「黄(mixed)」「赤(unsatisfactory)」で示され、特定プログラムの評価結果は、「効果的」「不明」「非効率的」で示されている。初年度の省庁業績評価の結果は、全米科学財団が「財政管理」のクライテリアで「緑」を受けた以外は、殆どの省庁が4個以上の「赤」という成績であった。ブッシュ政権では、始めての業績評価であったことが今回の低成績の原因であり、今回の成績は各省庁における改変の出発点となるものであると指摘している。今後は、各省庁の予算が、特定プログラムの実績評価と優先事項に基づいて策定されていくことになる。ブッシュ政権ではまた、主要な研究開発(R&D)省庁において予算配分決定の支援ツールとなるR&D投資クライテリアを現在策定中であり、2004年度予算の策定過程では前述クライテリアと併用されることになっている。

このレポートでは、エネルギー省の予算概要を報告し、第2レポートで商務省・全米科学財団・米航空宇宙局を、第3レポートで国防省・厚生省・環境保護庁・内務省・運輸省、および、省庁間R&Dプログラムの予算概要を報告する。

 

エネルギー省

2003年度のエネルギー省全体予算は、前年度予算を5億8,220万ドル上回る219億ドル。ただし、ブッシュ大統領の前年度予算要求額(注2)と比較すると、この予算レベルは27億ドルの増額となる。昨年、ブッシュ政権が同省予算の5億ドル削減を要求していたことを考慮すると、2003年度エネルギー省予算の増額要求はブッシュ政権内に大きな政策変更が生じたかの印象を与える。しかしながら、根底にあるのは9月11日の多発テロ事件であり、国家安全保障・国土防衛といった重要課題に結びつくエネルギー省の活動…核兵器管理、核廃棄物処理、防衛関連原子力計画、施設の警備、等…が大きな増額を受けるにとどまっている。エネルギー省全体の予算内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

核安全

7,605,518

8,038,734

433,216増 (5.7%増)

エネルギー関連

2,456,955

2,378,661

78,294減 (3.2%減)

科学

3,288,760

3,293,441

4,681増 (0.1%増)

環境関連

7,227,524

7,396,914

169,390増 (2.3%増)

その他

768,238

822,147

53,909増 (7.0%増)

合 計

21,334,811

21,916,977

582,166増 (2.7%増)

エネルギー関連予算の内訳:: 省エネルギーの9億430万ドル(前年度比1%減)・再生可能エネルギーの4億772万ドル(前年度比6%増)、化石エネルギーの8億1,598万ドル(前年度比5.2%減)、および、原子力R&Dの2億5,066万ドル(前年度比14.7%減)となっている。以下、@省エネルギー;A再生可能エネルギー;B原子力R&D;C化石エネルギーR&Dの各予算につき解説する。

@ 省エネルギー予算は、前年度予算を約1,116万ドル下回る9億430万ドル。耐候化支援計画の20%(4,710万ドル)増額と連邦エネルギー管理計画の20%(458万ドル)増を除き、他の費目は殆ど削減されている。エネルギー効率改善R&Dに関する予算内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

建築物効率改善R&D

105,270

92,893

12,377減 (12%減)

産業部門効率改善R&D

148,924

138,359

10,565減 (7%減)

発電部門効率改善R&D

63,846

63,904

58増 (±0%)

輸送部門効率改善R&D

252,715

222,664

30,051減 (12%減)

Spencer Abraham長官が1月9日に発表したFreedom CAR計画の2003年度予算は1億5,030万ドルで、上記の発電部門効率改善R&Dと輸送部門効率改善R&D、および、後述の再生可能エネルギー予算に含まれる水素研究から計上されることになっている。ただし、発電部門・輸送部門・水素研究の各々からFreedom CAR計画へ拠出される具体的金額については明確にされていない。

A 再生可能エネルギー予算は、前年度予算よりも6.6%(2,380万ドル)増額され、4億772万ドルが要求されている。再生可能エネルギー部門は2002年度大統領予算要求で大幅削減(注3)の対象となっていたが、昨年9月11日の多発テロ事件以来、輸入原油への依存度が問題視され、石油代替エネルギー開発の必要性が見直されるようになった。こうした状況を受け、ブッシュ政権の2003年度予算案では再生可能エネルギーの殆どの費目を増額している。特に、同政権が燃料電池と「水素経済」への移行に注目していることを反映し、水素研究予算(注4)は前年度比37%の増額となっている。また、再生可能資源の支援・導入計画予算が前年度よりも74%(1,014万ドル)増額されたことも注目に値する。再生可能エネルギーの研究・導入関連予算の内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

2002年度
2003年度要求
2003年度 対 2002年度

バイオマス・バイオ燃料

88,052

86,005

2,047減 (2%減)

地熱技術開発

27,299

26,500

799減 (3%減)

水素研究

29,183

39,881

10,698増 (37%増)

水力発電

5,018

7,489

2,471増 (49%増)

ソーラー・エネルギー

89,442

87,625

1,817減 (2%減)

風力エネルギー

38,598

44,000

5,402増 (14%増)

電力貯蔵

70,696

70,447

249減 (±0%)

再生可能資源の支援・導入

13,728

23,866

10,138増 (74%増)

B 原子力科学技術予算は全体で、前年度レベルから4,327万ドル削減され、2億5,066万ドルに引き下げられている。2003年度予算案で大幅削減を受けたのは、使用済燃料の高温処理と転換(transmutation)計画で、前年度比76%減となっている。一方、2002年度予算案で大幅な削減対象となった原子力R&D予算の方は、行政府の国家エネルギー政策に盛り込まれた原子力利用拡大提言を十分に支援できるよう、前年度の5,300万ドルから7,150万ドルに増額されている。特に、2010年を目標とする新型原子力発電所の建設・稼動への道を開くために、原子力発電所の認可プロセスの見直しと改正、および、対費用効率の高い先端原子力発電所の設計を積極的に促進していく「原子力発電2010 (Nuclear Power 2010)」という新イニシアティブは注目に値する。

C 化石エネルギー計画の全体予算は、前年度比4,517万ドル減の8億1,598万ドルで、化石エネルギーR&D予算も4億9,416万ドル(前年度比15.8%減)に引き下げられている。低コストのエネルギーは健全な経済にとっては必要不可欠なものであり、米国民の消費する総電力の50%以上を賄っている石炭火力発電所を米国の将来エネルギーに取りこむ必要があることは明らかである。こうした現状から、2003年度大統領予算案では石炭・その他発電システムR&D予算として3億7,510万ドルを要求しており、その内の3億2,560万ドルを「大統領の石炭研究イニシアティブ(Presidentユs Coal Research Initiative」に計上している。この新先導策は、クリーンコール発電イニシアティブ(Clean Coal Power Initiative)(注5)、現行の石炭R&D計画、および、クリーンコール技術実証計画(Clean Coal Demonstration Program)を一つのプログラムに統合したもので、石炭のクリーンな利用を拡大するため、既存発電所から放出される排出を削減する技術的オプションを開発・実証することを目的とする。

エネルギー省の科学関連予算: エネルギー省は、国立衛生研究所および全米科学財団に続く、第3番目の政府基礎研究スポンサーであり、材料科学・生物学・化学・核医学・演算科学といった分野の重要な基礎研究を支援している。同省の科学関連予算は、前年度比468万ドル(0.1%)増の総額32億9,344万ドル。生物・環境研究(Biological and environmental research)プログラム予算が前年度よりも12%削減されたことを除くと、高エネルギー物理学、原子物理学、基礎エネルギー科学といった殆どのプログラムで予算の増額が要求されている。科学関連予算からは、「国家ナノテクノロジー・イニシアティブ」「ネットワーキング・情報技術R&D」「気候変動R&D」といった省庁間R&Dプログラムへの予算が拠出されるが、こうした省庁間R&Dプログラムについては、「ブッシュ大統領の2003年度予算:概要(その3)」で説明することとする。


注1:2002年度大統領予算要求額1兆9,600億ドルと比較すると、1,700億ドル(8.7%増)となっている。

注2:ブッシュ大統領の2002年度要求額は192億ドル。米国議会での予算審議で増額されたことにより、エネルギー省の2002年度予算は213億3000万ドルまで引き上げられた。

注3:ブッシュ大統領は2002年度予算案で、再生可能エネルギー研究・導入関連プログラムに2億1,328万ドルを要求したに過ぎなかった。

注4 :前述の通り、これにはFreedom CAR計画の予算も含まれている。

注5:ブッシュ大統領が昨年提案した10ヵ年総額20億ドルの計画。


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