(2003/1/29)

UC Berkerley Haas Business School Dr. Cole氏

先端技術立国としての日本の復活はあるか

2003年1月29日
NEDOワシントン事務所

1.日本の置かれた状況

日本の過去の競争力は、ハードウェアの強さと低価格かつ高品質をベースとしたもの。他の国もいまやこのモデルを達成してきており、日本はいわば、挟み撃ちにあっている。中国へのOutsource、拠点移転で日本は麻痺状態。

技術の陳腐化は早く、先端的技術の把握・評価はますます困難になっており、将来の技術の見通しは一層不透明に。一方で、知識の源泉は世界的に広がりつつあり、ノウハウやVCに対する世界的市場が拡大する状況にある。そこで、世界的な情報の流れについて行けるように国際的ネットワークに入り込まなければ取り残されてしまう。しかし、日本は世界の情報の流れにフックできていない。

一見、日本の企業は良いところに位置しているように見えるが、@優れた技術の創造や新たな可能性を求め挑戦する起業家の役割が極めて低く置かれた環境も悪い(例:バイオ分野におけるSpin-offの少なさ)、A日本は最先端分野におけるクリティカルな情報の流れから次第に取り残されつつある(例;シリコンバレーにおける日本企業の投資低迷)といった問題がある。

日本には、新たな技術の予兆、方向性を取上げ評価することのできるような、企業・大学・政府の内部あるいは横断的な新たなネットワーク??が求められる。

 

2.なぜ日本は国際的な情報の流れにアクセスできないのか?

日本の社会がリスク回避的で組織の構造上の問題があり意思決定が遅いことが一番の問題。そして、外からは、そのようなところを相手にしても得られるものが少ないし、タイミングが合わないと認識されているのが現状。

また、海外で勉強する若い技術専攻の日本人学生がほとんどいないことには危機感を覚える。例えば、米国大学の電子工学科に在籍する外国人の内訳を見ると、UCバークレイ校では日本人5人、韓国人14人、台湾出身25人、中国人45人の割合、また、スタンフォード大でも日本人が24人なのに対して、韓国が70人、台湾、中国人はそれ以上という話である。

海外にいる企業派遣の日本人研究者の多くは、これまでの業績に対するRewardとして送られた中高年が中心で、間違った人間が海外に送られているのではないか。

そして、知識の源であるべき大学についても、レベルが低く、組織・制度は硬直的であるし、研究予算が少なく、大学と市場の結びつきが弱いと見ている。何よりも問題なのは、大学を中心としたネットワークが貧弱である点。日本人研究者の英語能力の不足や、先端分野の研究者を引き付けることができない日本の環境にあることも大きな問題。

 

3.製造業におけるソフトウェアの重要性

今後の競争力の源泉は、ビジネスにどのようにソフトウエアを用いるかにかかっている。サービス産業がより高い生産性を達成するためにはソフトウエアの革新的活用が重要であるが、米国では、ローテクである家具製造業や衣料品業界もソフトウエアには多大な関心を持っており、誰もがクリテイカルな要素だと認識している。

この10年、米国の製造業では、Manufacturing部門におけるソフトウエアの高度な利用により6σ等の生産管理が徹底され品質が向上(欠陥率が低下)し生産性が大きく向上したが、これとて高度なソフトウエアが安価に利用できたから。また、これに加えて、マーケティング、ソリューション、ビジネスモデルがうまく機能したこともあり、米国製造業の競争力は向上したと言える。

ソフトウエアによる解決策は多くの場合、コスト、柔軟性に優れているが、日本企業はハードウエアに対する思い入れが強く、ソフトによるソリューションに関しては遅れている。今やハードウエアのみで存在する製品は無く、ソフトウエアの質がハードの能力を決定するような状況になっている。しかし、IT以外のセクターに属する日本企業はイノベーティブなソフトの利用に遅れをとっている。勿論、米国でも、大企業による本格的なITの導入は自発的なものではなく、スタートアップ企業から刺激を受けてのものであった。ビジネス部門における固定資本形成に占めるソフトとハードに対する投資の割合について日米比較すると、米国ではソフト投資が15%、ハード投資が18%、他方、日本の場合、それぞれ4%、13%という状況で、ソフトウエア投資が大幅に低い。

 

4.パッケージソフト導入にリラクタントな日本企業とその背景

現在、自分が関心を持っているのは、日米のパッケージソフトに対するスタンスの違い。米国ではパッケージソフトが主流であるが、日本ではその導入が中々進みにくいと聞いている。オラクルは現在、日本のユーザーを取り込みつつあるが、日本企業では反対派が多いと聞いている。これ自身は、個別企業の話だが、その背景を考えると日本社会の問題点も見えてくる。

つまり、テーラーメードのソフトは、既存の業務、ビジネスプロトコルを機械に代行させるという意味では良いが、それでは生産性を大幅に向上させるというところまで行かない。パッケージソフトは、業務の基本的進め方を変える、人間の仕事を変えることであることから、人員削減につながるので(生産性の大幅な向上につながるのに)反対が強いという。

また、ソフトは一発で完成版が出来るわけではなく、アップグレードは必要で、そのコストが巨額になりビジネスの変化についていけない状況にも至る。米国はその点、パッケージソフトの競争力は強いし、それをうまく活用した企業の力も伸びている(アップグレードのための蓄積も共有可能)。

先日、経団連のR&Dマネージメンとの人達と会ったが、ビジネスに関連するソフトウエアに対して全く関心がないことには驚いた。この数年、米国の製造業がうまく行ったのも、ソフトの利用に起因する面が大きい。日本でもセブンイレブンの話は聞くがそれ以外の動きは無いのではないか。間違いなく成功するという確信がないと、利用しないということでは時代に取り残されてしまう。日本の企業はもっとExperimentをするべき。

また、日本の製造業部門でのソフトウエア活用はまだまだ不十分ではないか。例えば、東芝等においては、ソフトの利用はかなり進んでおり、個別事業所単位では最適化が図られているが、会社全体としてみた場合の資源配分の最適化が行われていない状況にある。本社レベルでは、そのようなソフトが導入されればそのような調整を行っているホワイトカラーが余ってしまうことから、導入にネガティブであるということである。他方、ORACLEなどのソフトは会社全体での最適化を図ろうとするものであり、うまく利用できれば会社全体での利益が確保される仕組みになっている。

 

5.ネットワークモデルを通じ連携する新しい専門化会社システムへの乗り遅れ

成功体験を有する組織が失敗する根源的理由は、構成員の人的能力も含め、その成功の秘訣に根ざしていることが多い。つまり、過去に上手く行ったことを繰り返すことによって新たな困難に出会うパターンである。日本企業においては、選別と昇進が遅いことから、なお更、このような事態に陥る危険性が高い。既存の事業を進んで打ち崩すことが必要。

他方、多くの日本の競争相手は、競争的状況に対応するために、敏速で効率的な専門化した会社の水平的・垂直的ネットワーク形成に向けて進みつつある。しかし、日本はゆっくりとしか進んでいない。

製品やサービスの価値はネットワークの規模に依存するといわれているが、ネットワークに入ることが出来れば、それが大々的なものでなくとも多大なチャンスをもたらす。

イノベーションのコストとリスクが増大したことから、企業はより専門化の方向にある。他方、ITの浸透により、アウトソースのコストは低下し、会社外部の組織との共同作業が容易になってきている。このような中で、Modularシステムの導入は、専門化した企業にとって望ましい環境をもたらしている。現在、半導体と医薬分野を対象に分析中である。

専門化した製造事業者は、絞込とスピードを達成。これに加え、連携とパートナーシップの拡大に伴い、専門化した企業が競争力を獲得し、総合企業と競合することが可能となってきている。

 

6.今後の日本の進むべき方向

日本企業は、既存の製品からあえて撤退し、新たな製品を持って新たな市場に進出するべき。特に、製造業については、将来性のあるサービスの軸を開拓し追及していかないと先細りなのは明らか。その際、硬直的な対応しか出来ないハードウエアによるソリューションを追求するのではなく、ソフトウエアによるソリューションを追及するべき。

このためにも、ソフトウエアに対するR&D投資を拡大すると共に、当該分野における人材の育成を行う必要がある。

また、社会としてもっと、若いイノベーティブな人材や外部の人材を積極的に登用し、責任を持たせるべきである。そのさに、リスク・テイクに対する新たなインセンティブ構築もあわせて行う必要があろう。そして、スピード化を可能とするように新たな組織構造、新規起業やSpin-offに対する環境の整備が重要である。

新事業として専門化会社モデルの活用を追及するべき、しかし、それらに完全な自由を与えることが必要である。


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