(2003/1/30)

米国におけるバイオ燃料としてのエタノール利用を巡る現状

2003年1月30日
NEDOワシントン事務所

1.はじめに

一般にバイオ燃料として扱われているものは、エタノールとバイオディーゼルに大別できる。バイオディーゼル油は、植物油、動物脂、あるいはリサイクルされた料理油等から製造されているが、エタノールはトウモロコシのような炭水化物に富んだバイオマス を発酵させることによって生産される。

エタノールは、それ自身純粋に燃料として利用できるが、バイオ燃料としてのエタノールの利用を巡る議論の多くは、既存のガソリンに添加物として混合する場合(改質ガソリン)に関するものである。このエタノール混合物は、都市部においてスモッグ関連の環境問題を低減させつつ、ガソリン効率を向上させるために使われる。

また、バイオディーゼル油もエタノール同様、そのまま自動車燃料や発電のために使われたり、排気汚染源を減らすためにディーゼル油に加えられることがある。

ここでは、米国における燃料添加物として利用されるエタノールとして、連邦、州政府の規制及び導入促進・優遇策を中心として、最近の状況を概観する。

 

2.改質ガソリンに関する規制

(1)連邦政府の改質ガソリンに関する規制

改質ガソリン( RFG ;Re-formulated Gasoline)は、大気の清浄度を向上させることを目的とし、ガソリンに混合物を混ぜ合わせたもので、自動車の排気ガスを減少させる清浄なガソリンと位置づけられている。 RFG は、最も汚染のひどい都市を擁する17州及びワシントンDCで利用されており、全体の米国ガソリン消費量のおよそ32パーセント(1日250万バレルあるいは1日1億ガロン)に達している。

1990年に改正された大気清浄法Section211(k)では、EPAに対し、オゾン発生及び揮発性有機化合物( VOC )排出を削減するため、ガソリン改質を義務付ける規則を制定するよう求めている。酸化化合物は、精製事業者が高いオクタン価と燃料性能を維持しつつ大気汚染を削減できることから、連邦議会は RFG について、重量比で最低2%の酸素を含むように義務付けている。

連邦政府の改質ガソリン( RFG )プログラムは2つの段階に分かれており、第1段階は1995年から1999年まで、第2段階は2000年からとなっている。

また、EPAは、RFG を有していない地域において供給されるガソリンの品質が悪化しないよう「反ダンピングプログラム」を導入している。このプログラムは、精製業者が RFG から分離された「汚い」組成物を通常のガソリンに混入することを禁ずるものである。第2段階は第1段階 に類似したものであるが、より大幅な排気削減をもたらすよう設定されている。もちろん、国内のオゾン破壊のひどい地域ではRFG利用は義務化されているが、他のエリアであっても自主的に参加することが出来る。

RFG はこれまでのところ、比較的成功していると言われている。酸化化合物業界団体である“酸化化合物燃料協会(Oxygenated Fuels Association)”によれば、RFG は、17%以上オゾン排気を減らし、ベンゼンの排出は43%低減し、 有害物質全体では22%減少したと言われている。

RFG で使われる酸化化合物は、主にメチル Tertiary ブチルエーテル( MTBE )であり、全ガソリン販売量の約3割から5割のガソリンにおいて、何らかのレベルでMTBEが混合されていると言われている。RFG のために用いられる添加物としては、MTBEが約87%で、2番目にエタノールが用いられている。

(2)MTBE-エタノールを巡る議論

MTBE は水溶性であり、90年代後半の米国地質調査によって、RFG が使われている地域の約2割において地下水にMTBEの痕跡が見られたという報告があった。これは、非 RFG 地域の2%というレベルに比してきわめて大きなものとなっている。

これらMTBEの地下水への混入は、貯蔵タンクやパイプラインからの漏洩によって起きているが、ほとんどの場合EPAの設定した基準を下回り、健康へのリスクは問題ない状況にある。これに関しEPAは、RFGの利用拡大によって大気清浄度は大幅に向上したものの、それはMTBEを用いることなく、国の水資源の質を損なうことなく維持可能であるとしている。

クリントン政権下において、Browner EPA長官は、専門家の独立したパネルを設け“ガソリンへの酸化化合物の混合とその健康影響”について調査を行い、1999年にその報告を発表した。その報告は、議会とEPAが RFGの 酸素含有率の義務付けを廃止することにより、ガソリンへのMTBEの大幅な利用削減及びMTBE によって汚染されたサイトの浄化を勧告した。EPAはこの委員会の勧告を踏まえ、地下貯蔵タンク、安全な飲料水、改善策および研究プログラムを強化しているところである。

前第107議会において、MTBE 問題を解決するための法律が通過しなかったことから、EPAは、MTBEを規制するために、(それ自身数年要するかもしれないが、)有害物資管理法(TCSA)に基づく規制を行おうとする動きもある。

 

3.エタノールの利用の現状と連邦レベルでの議論

2001年における米国のエタノール利用状況を見ると、@連邦政府が定める改質ガソリン(主にシカゴとミルウォーキーにおいて)として約4億5千万ガロン、A連邦政府の冬期酸化物燃料プログラムとして2億5千万ガロン、Bミネソタ州の州で定められた酸化物燃料プログラムのため2億5千万ガロン、そしてC従来のガソリンのマーケットで8億2千万ガロンとなっている。 EPAによれば、エタノールの約20%が連邦が定める一酸化炭素が問題となる地域における冬期酸化物燃料プログラムにおいて使用されていると言われている。そして、残りの50%は米国の周辺国において、オクタン価を高めたり燃料供給量を増やすために使われている。

2001年5月に出されたブッシュ大統領の国家エネルギー計画においては、議会に対してエタノールへの消費税免除に対して賛同するように勧告している。 エタノール生産者のための連邦のクレジットは、1ガロン当たり$0.3926から$0.60まで幅がある。ブッシュ政権は、エタノールは農産物の追加的付加価値であると考えており、経済的価値も併せ持った環境向上策として推進している。

ブッシュ政権及び議員、特に中西部あるいは農村部においては、それが農業に依存する州経済を拡大するものとして支援されている。 しかし、エタノール代替の義務付けに反対する法律家からは、エタノールの価格急騰や供給不足が発生するのではないかとして反対を表明している。さらに、彼らはエタノール利用義務化されれば、カリフォルニア州の税金を用いて中西部の農民へ補助金を出すだけであるという見方をしている。

環境・公衆衛生関連の連合、州政府の役人、石油精製業者、農業団体及び再生可能燃料製造業者は、連邦政府のMTBE利用禁止、改質ガソリンに対する酸化物要求規定の削除、大気保全の促進、再生可能エネルギー基準(RPS)に対して圧力をかけている。

第107議会で可決された上院の包括エネルギー法案で導入された RFS規定が、仮に法律として成立していれば、エタノールやバイオディーゼルといった再生可能な燃料は、米国全体で2004年に23億ガロンのものが、次第に増加し、2012年では50億ガロンにまで達する見込だと言われている。

上下両院の法案を統合し包括的エネルギー法案をとりまとめるために設けられた両院協議会において、下院側から上院側 に修正規定を提出することが決定された。下院から出された提案は上院を通過した規定に対し多くの変更を提案するものであり、それはMTBE 使用禁止規定を否定し、2005年までの1年間RFS 実施を延期し、50億ガロンという RFS の完全実施を2年間延期するものとなっていた。

しかしながら、第107議会においては、他の主要条項に関する際立った両党間の意見の相違から、エネルギー法案は通過しなかった。

今年に入り、第108議会が始まったが、早くも農業に対しエタノールを含むバイオ燃料の生産、輸送、貯蔵に関する投資を支援するため政府保証融資制度を設ける等の規定を含む法案が提出されている。

 

4.各州における議論と利用促進に向けた優遇策

(1)カリフォルニア州

1999年3月25日に、デイビスカリフォルニア州知事は、政令D - 5-99を発表した。 この政令は、ガソリンへのMTBE混合を2002年12月31日までに撤廃することを求めたものである。 また、この政令は、カリフォルニア・エネルギー委員会( CEC )に対して、“カリフォルニアにおける廃棄物及び他の Biomass エタノール産業の可能性を評価し報告する”ように指示するとともに、“もしエタノールが MTBE に代替可能であるということが明確になったら、カリフォルニアにおける廃棄物及び他の Biomass エタノールの開発促進に向けて、次に何を行うべきかを明確にする”ことも求めている。

しかしながら、CECによって行われた研究では、非常にわずかな供給不足でも価格が大きく変動するなどこの数年間のガソリン価格の不安定さは拡大しており、2002年の MTBE 廃止が結果として、5.5〜10万バレル/日での供給不足に到るかもしれないという内容になった。このような供給不足が起これば、需要と供給が均衡する以前に価格が倍増してしまう可能性があり、供給不足は南カリフォルニアに多大な影響を与える可能性が高いとしている。

デイビス知事は、2002年3月15日、元来設定されていた期限( 2002年12月31日)までに切替を実施するとすれば、価格面や供給不足という面で多大な影響をもたらすという観点から、MTBE のエタノール切替期限を1年間延期するという新しい政令D - 52-02を発表した。この新たな政令によると、このような 切替えにより供給不足あるいは価格上昇をもたらさないように、製油所は2003年12月までにエタノールへの移行を完了すればよいこととなっている。

Chevron Texaco 社は、2003年1月〜5月の間に南カリフォルニアで 販売するガソリンの添加物をMTBE からエタノールに転換する予定であると発表した。Chevron Texaco 社の発表は、Conoco Phillips 、BPシェル及び Exxon Mobilも合わせ、カリフォルニアのガソリン供給の80パーセント以上がエタノール混合となることを意味している。

(2)各州における利用促進に向けた優遇策

多くの州においては、エタノール生産に対する生産者へのインセンティブとして、消費税免除のかたちの種々の優遇措置が導入されている。 直接的にエタノールに対するインセンティブは提供しないものの、代替エネルギー産業に対する優遇措置をもっており、エタノール産業もその中に含まれることとなっている州もある。

中西部の州とハワイは、エタノールのために最も手厚いインセンティブを提供している。 イリノイ、アイオワとサウスダコタの各州では、エタノール混合割合10%に対して2セントの減税措置があり、 また、ミネソタ州では E85 燃料(85%エタノール混合)に対して免税措置が講じられている。

再生可能燃料協会によれば、中西部の6つの州では、生産者クレジットを導入している。具体的には、ミネソタ、サウスダコタとウィスコンシンでは、1ガロン当たり20セントのクレジットが生産者に対して与えられるものとなっている。また、 カンザス州では、2001年7月1日以前に生産を開始している事業者に対してはガロン当たり5セントのクレジットが、また、新規のあるいは生産能力増加分に対してはガロン当たり7.5セントのクレジット(1千5百万ガロン / 年が限度)が与えられる事となっている。

なお、各州毎の優遇措置について表2に示している。

(3)都市部における利用拡大の可能性

都市部の汚染低減の観点からエタノールは有益であると利害関係者は指摘している。エタノール業界団体である再生可能燃料協会( RFA )によれば、エタノールを使うことによって、大気の清浄度が規定を満たさない40地域のうち27地域で一酸化炭素(CO)汚染の削減に成功したと言われている。独自にエタノールを混合した RFG を使うことによりシカゴ近隣地域及びミルウォーキー地域は、大気の清浄度向上を実現しており、非達成地域という位置付けから達成地域への変更を求めている。

エタノール生産のために穀物を用いることは農産物に付加価値が付く、つまり農民が穀物から得る収入が増えることから、中西部の農業州はエタノール利用強化に強く賛成している。また、RFA は、カリフォルニア、ニューヨーク、ニュージャージー、オハイオ、オレゴン、ノースカロライナ、テキサス、メリーランド、ワシントン及びペンシルベニア州においても、木材廃棄物、都市廃棄物、残余飼料及び他の革新的なセルロース飼料を用いるエタノール産業が発展して行くと見ている。

 

(作成;NEDOワシントン事務所 中西、エネルギー担当リサーチャー Mario Farrugia)

表 1. 2001 State Ethanol Production Capacity in million gallons per year source

イリノイ
726
アイオワ
661.5
ネブラスカ
409
ミネソタ
342.6
サウスダコタ
170
インディアナ
85
カンザス
64.5
テネシー
60
ウィスコンシン
59.7
ミズーリ
41
ミシガン
40
ノースダコタ
33.5
ニューメキシコ
15
カリフォルニア
アイダホ
ワイオミング
ケンタッキー
フロリダ
コロラド
1.5
ワシントン
0.7
出典:再生可能燃料協会 アウトルック2002

(出典)

California Energy Commission "Energy Commission MTBE Study"
http://www.energy.ca.gov/mtbe

Council of State Governments, Midwestern Office
http://www.csgmidwest.org/member_services/QuestionMonth/2002/May02_Question_Month.htm

Database of State Incentives for Renewable Energy (DSIRE)
http://www.dsireusa.org

Executive Order D-52-02 by the Governor for the State of California,
http://www.energy.ca.gov/releases/2002_releases/2002003-15_order_D-52-02.htm

EPA Office of Transportation and Air Quality (OTAQ)
http://www.epa.gov/otaq/consumer/fuels/mtbe/f00010.htm

Oxygenated Fuels Association "MTBE's Role in Reformulated Gasoline"
http://www.ofa.net/mtbes-role-in-reformulated-gasoline.htm

Renewable Fuels Association "Ethanol Industry Outlook 2002 - Growing Homeland Energy Security"
http://www.ethanolrfa.org/outlook2002.html

Renewable Fuels Association "House Proposal To Senate On Fuels Agreement Embraces 5 Billion Gallon RFS" September 26, 2002.

Renewable Fuels Association "Last Of Major California Refiners Announces A Switch From MTBE To Ethanol" January 9, 2003.

State of South Dakota SB 133 February 1, 2002.


(別紙)

表 2. Ethanol Incentives by State

Source: www.dsireusa.org 2002

State
Incentive
Amount
Expiration

Alaska

Motor Fuel Tax Credit on Ethanol Sales Tax Exemption.

$0.06/gallon to$0.08/gallon.

6/30/2004

Alabama

Interest subsidies on loans for equipment for biomass fuel storage, preparation, and transport, as well as equipment (such as pollution controls) incidental to the production of biomass fuels.

Maximum limit of $75,000

Arkansas

Credit for the cost of buildings, equipment and intellectual property necessary to produce advanced biofuels such as ethanol or methanol and/or their derivatives.

30 percent credit.

Colorado

Tax credits are available for the purchase of an alternative fuel vehicle, for a motor vehicle converted to use alternative fuel for commercial or personal use.

Hawaii

Ethanol investment tax credit subject to investment amount and facility size thresholds.

100 percent tax credit on an equity investment in a qualified high tech business (QHTB). Renewable alternative fuels qualify as a QHTB.

Reduced fuel tax rate for ethanol to reflect the energy content of alternative fuels.

Investment tax credit of 30 percent of each $1 million per 1 million gallons ethanol per year capacity (i.e. $0.30 per gallon). Maximum tax credits is $4.5 million.

$0.01 per gallon for ethanol fuel.

Illinois

Biofuels sales tax exemption.

Grant program funds capital projects of any renewable energy technology--including biofuels.

2 percent of sales tax.

Up to 100 percent with a grant limit of $1 million.

Indiana

Grants for businesses and institutions to acquire alternative fuel vehicles and make use of alternative transportation fuels.

Grants for r&d and production of biomass energy systems.

$2,000 - $10,000.

 

Up to $20,000.

Iowa

Producer refund for the difference between taxes on motor fuel purchased to produce ethanol blended gasoline and the tax due on the ethanol blended gasoline.

Tax credit to retail service stations at which more than 60 percent of the total gasoline sold is ethanol-blended.

Competitive grants for energy research including renewable fuels.

State Loan Program for biomass and renewable transportation fuels projects.

$0.01 per gallon.

$0.025 per gallon

Varies

Maximum amount per project - $400K. 20 % of the money awarded to a project is in the form of a grant and 80 % in the form of a low interest loan

Kansas

Ethanol Production Incentive.

$0.05 to $0.075/gallon sold up to 15Mill gallons and others.

7/1/2011

Massachusetts

orporate and personal income tax deductions for any income received from the sale of or royalty income from a patent deemed beneficial for energy conservation or alternative energy development.

100 percent deduction.

Minnesota

Ethanol Production Incentive.

Incentive for electricity generated using closed-loop biomass in a cogeneration facility at an ethanol plant.

$0.11 to $0.20 /gallon for up to 15,000,000 gallons/ year.

1.5 cents/kWh

6/30/2010

Mississippi

Low interest loans for energy projects including ethanol.

$300,000 maximum loan

Nebraska

Ethanol production tax credit

Low interest loans for energy efficiency investments including alternative fuel vehicle purchase.

$0.18 /gallon; $0.075/ gallon for expansions.

New York

Grants for renewables R&D including alternative fuels.

Up to 50 percent of project - $200,00 maximum.

Ohio

Corporate and personal ethanol investment tax credits.

50 % of sum invested with a maximum $5,000 per taxpayer per certified ethanol plant .

2012-3

Oregon

Business Energy Tax Credit for investments in energy conservation including alternative transportation fuels.

35 percent of project costs with a maximum limit of $10,000,000 per project.

Pennsylvania

A grant program to cover partial project costs for Purchasing alternative fuel vehicles or converting existing vehicles to run on alternative fuels including ethanol.

Grants and loan programs for businesses involved in renewable energy, including alternative fuels.

20 percent of costs.

South Dakota

State excise tax exemption for 10 percent ethanol blends.

$0.20/gallon.

Washington

State corporate excise tax exemption for qualifying high technology manufacturers which includes renewable energy.

100 percent exemption.

2004

Wisconsin

Ethanol producer credit.

State grants for feasibility studies regarding the production of renewable-energy-derived transportation fuels.

$0.20/gallon up to 15 mill gallons / year for plants producing at least 10 mill gallons /year.

Maximum of 50 percent of project costs or $15,000.

Wyoming

Corporate Tax Credits for Ethanol Producers.

$0.40 per gallon with a maximum limit of 2Mill/year.

7/1/2003


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