(2003/2/10)

ブッシュ大統領の2004年度予算:概要(その2)

ワシントン事務所
2003年2月10日

防衛関連R&D予算の56億4,800万ドル (9.1%) 増額、そして、非防衛関連R&D予算の20億8,800万ドル (3.9%) 増額を要求する2004年度大統領予算案には、前年度予算案以上に防衛関連R&Dを重視するブッシュ政権の姿勢が明白に示されている。このレポートでは、77億3,600万ドルというR&D予算増額の約3分の2を享受する国防省、非防衛関連R&Dの政府最大スポンサーである厚生省の国立衛生研究所 (National Institutes of Health)、先端技術計画 (ATP) と製造技術普及計画 (MEP) の廃止に再度直面している商務省、および、内務省と環境保護庁の予算について概説する。

 

II. 国防省

国防省の2004年度予算は、2003年度予算(注1)を153億ドル (4%) 上回る3,799億ドル。国防省の研究開発 (R&D) 予算は、前年度予算 (574億9,800万ドル) を52億5,500万ドル (9.1%増) 上回る総額627億5,300万ドルとなっている。2003年度予算に続き2004年度予算でも、完成近い兵器の開発・実験が重要視され、前年度比12%増 の576億2,500万ドルの要求となっているのに対し、基礎研究予算と応用研究予算は各々、7.7%と14.4%という削減を受けている。同省R&D予算における勝者はミサイル防衛R&Dで、前年度比22%増の83億ドル。これに、次世代戦闘機 (Joint Strike Fighter) 開発の44億ドル (28%増) が続いている。国防省R&D予算の内訳は下記の通り:         

(単位:100万ドル)

2003年度
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

1,417

1,309

108減 (7.7%減)

応用研究

4,289

3,670

619減 (14.4%減)

開発

51,677

57,625

5,948増 (11.5%増)

施設・設備

115

149

34増 (29.6%増)

合 計

57,498

62,753

5,255増 (9.1%増)

国防省予算のハイライト:

  • 防衛先端研究計画局 (Defense Advanced Research Projects Agency = DARPA) の2004年度予算は、29億5,300万ドルで、前年度より2億6,400万ドル (9.8%増) 増額となっている。前年度はDARPAの基礎研究・応用研究・先端技術開発という全費目が増額されたが、2004年度予算では、先端技術開発が2億7,130万ドル増の14億8,600万ドル、応用研究が3,760万ドル増の12億7,150万ドルとなっている一方、基礎研究を支援する防衛研究科学 (Defense Research Sciences) の予算は4,800万ドル削減の1億5,100万ドルに引き下げられている。
  • 大学研究イニシアティブの予算は、2003年度より1,280万ドル増額され、2億4,750万ドル。
  • 防衛EPSCoR計画予算は、前年度比41%減の970万ドル。
  • 軍民両用の科学技術計画(注2)は、空軍が前年度とほぼ同額の1,060万ドルを要求している。

 

III. 商務省

2004年度の商務省全体予算は54億ドルで、前年度推定予算 (51億ドル) より3億ドル (4%) の増額となっている。しかしながら、同省のR&D予算は1億1,400万ドル (8.7%) 減の11億9,000万ドルという要求であり、テクノロジー志向型業界にとって重要なプログラムの幾つかが、かなりの予算変動を受けている。商務省R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

359

412

53増 (14.8%増)

応用研究

660

592

68減 (10.3%減)

開発

78

43

35減 (44.9%減)

施設・設備

207

143

64減 (30.9%減)

合 計

1,304

1,190

114減 (8.7%減)

ここでは、国立標準規格技術研究所 (National Institute of Standards and Technology = NIST) と国立大気海洋局 (National Oceanic and Atmospheric Administration = NOAA) の予算について概説する。

@ NISTの総予算は4億9,682万ドルで、2003年度推定レベルより6,629万ドル削減されている。NIST予算は下記の通り、(I) 科学的・技術的研究事業 (Scientific and Technical Research and Services = STRS);(ii) 産業技術事業 (Industrial Technology Services = ITS);(iii) 研究施設建設 (Construction of Research Facilities = CRF) の3費目に分けられる。

(単位:1,000ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

STRS
 NIST研究所
 マルコム・ボルドリッジ賞

389,291
383,810
5,481

387,621
381,838
5,783

1,630減 (0.4%減)
1,972減 (0.5%減)
481増 (8.8%増)

ITS
 先端技術計画 (ATP)
 製造技術普及計画 (MEP)

119,607
107,007
12,600

39,607
27,007
12,600

80,000減 (67%減)
80,000減 (75%減)
±0

CRF

54,212

69,590

15,378増 (28%増)

合 計

563,110

496,818

66,292減 (11.8%減)

NIST予算のハイライト:

  • R&D予算は前年度比11.8% (5,500万ドル) 減の4億1,100万ドル。基礎研究予算は7,900万ドルで、前年度比700万ドルの増額となっているが、応用研究 (7.5%減の2億2,200万ドル)、開発 (64.9%減の1,700万ドル)、施設・装備 (12.3%減の9,300万ドル) は全て大幅削減を受けている。
  • NIST研究所の予算には、国土安全保障関連R&D活動への1,030万ドルの増額、および、米国経済強化への大きな貢献が期待される @ナノテクノロジー (520万ドル増);A量子情報科学 (300万ドル増);B医療品質保証 (100万ドル増)プログラムへの増額が盛り込まれている。
  • ブッシュ政権は、先端技術計画 (Advanced Technology Program = ATP) が効果的に運営されていることは認めているものの、目的に欠け、企業補助に近いものになっているとして、同計画の廃止を提示。プログラム終了の為の予算として2,700万ドルを要求している。
  • 製造技術普及計画 (Manufacturing Extension Program = MEP) の運営・企画は合格点ながら、十分な目的とニーズを持っていないと批判するブッシュ政権は、前年度同様、同計画の段階的廃止を求めている。2004年度の予算要求額は前年度と同額の1,260万ドル。
  • CRF予算は前年度比1,540万ドルの増額。但し、この増額分の殆どは、NISTのBoulder研究施設 (コロラド州) とGaithersburg研究施設 (メリーランド州) の改修に充てられる。

A 2004年度のNOAA総予算は、前年度推定レベルを1億9,000万ドル上回る33億2,600万ドルであるが、R&D予算の方は前年度比6.4%減の7億6,400万ドルとなっている。NOAA R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

285

333

48増 (16.8%増)

応用研究

410

360

50減 (12.2%減)

開発

21

22

1増 (4.8%増)

施設・設備

100

49

51減 (51.0%減)

合 計

816

764

52減 (6.4%減)

NOAA予算のハイライト:

  • 省庁間イニシアティブである気候変動科学プログラム (Climate Change Science Program = CCSP) に対し、前年度よりも1,800万ドル多い1億3,600万ドルを拠出する。また、CCSPの事務局がNOAAに設置される。
  • 前年度予算で全米科学財団の管轄に移された全米海洋グラント (National Sea Grant) 計画が、2004年度ではNOAA海洋大気研究 (Oceanic and Atmospheric Research) のプログラムとして復活している。 

 

IV. 厚生省の国立衛生研究所

厚生省の2004年度予算は、前年度推定レベルを16億ドル (3%増) 上回る662億ドルで、その約42%にあたる280万ドルがR&D予算に充てられる。予算倍増5ヵ年計画に沿って2003年度まで大幅な増額を享受していた国立衛生研究所 (National Institutes of Health = NIH) の2004年度予算は、前年度比2%増の278億9,300万ドルであり、NIH R&D予算 (269億6,100万ドル) の伸び率も2%に抑えられている。NIHのR&D予算内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

14,301

14,980

679増 (4.7%増)

応用研究

11,284

11,892

608増 (5.4%増)

施設・設備

859

89

770減 (89.6%減)

合 計

26,444

26,961

517増 (2.0%増)

                                                                  

NIH予算のハイライト:

  • バイオ防衛研究 (biodefense research) の2004年度予算は倍増され、16億2,500万ドルまで引き上げられ、国立アレルギー・伝染病研究所 (National Institute of Allergy and Infectious Diseases = NIAID) が、同研究分野で指導的役目を担う。
  • 施設・設備の2004年度予算は、前年度の8億5,900万ドルから8,900万ドルへと大幅に削減されているが、これは2003年度予算に、NIST研究所の安全強化・バイオテロリズム研究用施設の新設といった一回限りの予算が含まれていたためで、同削減分を除くと、NIHのR&D予算は4.3%拡大したことになる。
  • 中小企業革新研究と中小企業技術移転研究 (Small Business Innovation Research/Small Business Technology Transfer Research = SBIR/STTR) に、前年度比8.9%増の6億220万ドル。
  • 2004年度大統領予算案では、バイオ防衛研究、癌研究、エイズ研究、糖尿病研究、ポストゲノム研究をNIH研究の優先事項としてあげている。

 

V. 内務省

内務省の2004年度予算は106億ドルで、前年度推定レベル比の僅か0.3% (3億5,400万ドル) 増であるが、内務省R&D予算の方は、前年度を5,800万ドル (10.1%) 上回る6億3,300万ドルに増額されている。2002年度・2003年度と引き続き予算削減を受けた、内務省の主要科学機関である米国地質調査局 (US Geological Survey = USGS) の2004年度R&D予算は、4.5%増額され、5億4,500万ドルまで引き上げられている。

内務省予算のハイライト:

  • 水資源調査 (1億7,800万ドル → 2億ドル)、および、生物研究 (1億6,000万ドル → 1億6,900万ドル) が予算増額を受ける一方、遠隔センター探査・マッピング、および、地質学上の危険調査の予算は若干削減される。
  • コミュニティー・ベースのコスト分担型省資源プロジェクトに対するマッチング基金として、1億1,300万ドル (前年度比300万ドル増) を要求している。
  • 土地や水資源の保全を推奨する水陸保全基金 (Land Water Conservation Fund) に9億ドルの予算要求を行なっている。

 

VI. 環境保護庁

2004年度の環境保護庁 (EPA) 総予算は、2003年度推定予算とほぼ同額の76億2,700万ドル。一方、EPAのR&D予算は5億5,600万ドルで、大幅に削減 (7,100万ドル減) されたかに見える。しかしながら、これは、バイオテロの攻撃を受けたビルディングの浄化技術を開発するため、2003年度に一回限りの7,500万ドルという予算がEPAに計上されたためであって、この特別予算を除くと、2004年度R&D予算は前年度とほぼ同レベルになっている。EPAのR&D予算内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

100

101

1増 (1.0%増)

応用研究

355

356

1増 (0.3%増)

開発

172

99

73減 (42.4%減)

合 計

627

556

71減 (11.3%減)

EPA予算のハイライト:

  • 国土安全保障と密接な関係をもつ、@通信・情報予算は382万ドル (前年度は48万ドル)、A重要インフラストラクチャー計画は3,850万ドル (前年度比49.4%増) と増額されたのに対し、B非常事態への対応準備・即時対応・復興の予算は8,760万ドルから6,030万ドルへ削減されている。
  • 発電所からの大気汚染を70%削減することを目指すクリアスカイ・イニシアティブに770万ドルを要求。
  • 気候変動プログラム予算は、前年度とほぼ同額の1億3,000万ドル。省庁間イニシアティブのCCSPへの予算は2,150万ドルで、ほぼ前年度並み。その他の自主プログラム予算も全て前年度とほぼ同レベルである。
  • 有毒物質モニタリング助成プログラムの予算として、前年度を700万ドル上回る1,650万ドルを要求。
  • スーパーファンド浄化予算に、前年度比1,500万ドル増の13億9,000万ドル。2004年度には新たに10〜15ヵ所の浄化活動を開始する。
  • 放棄された工業用地を再開発するブラウンフィールド計画の予算は、前年度予算を110万ドル上回る2億1,070万ドル。


注1:昨年10月に法令化された2003年度国防省歳出予算は、推定ではなく、議会承認の実際の予算を示す。

注2:海軍と陸軍は軍民両用科学技術計画への出資を2003年度から中止している。


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