(2003/2/13)

ブッシュ大統領の2004年度予算:概要(その3)

ワシントン事務所
2003年2月13日

このレポートでは、2002年11月25日に法令化され、先月のTom Ridge長官就任によって正式発足した国土安全保障省 (Department of Homeland Security);2月1日のスペースシャトル「コロンビア」の事故以来、メディアの関心が集まっている米航空宇宙局 (NASA);エネルギー省を追い抜き、非防衛関連R&Dの第3番目の政府スポンサーとなった全米科学財団 (National Science Foundation)、および、運輸省と省庁間R&Dプログラムについて概説する。

 

VII. 米航空宇宙局

米航空宇宙局 (NASA) の2004年度予算は154億6,900万ドルで、前年度推定予算より4億6,900万ドルの増額となっている。2月1日のスペースシャトル「コロンビア」の事故以来、過去数年間にわたるNASA予算の縮減が問題視されているが、NASAの再編問題と2004年度予算の3.1%増額はコロンビアの事故以前に既に計画されていたものであって、急遽、予算案に追加変更されたものではない。NASAのR&D予算は総予算の約3分の2にあたる110億900万ドルで、前年度比9.3%の増額を受ける反面、非R&D計画 …主に、スペースシャトル… の方は予算削減を被っている。NASAの2004年度R&D予算はまた、NASAにしか実施できないプロジェクトを重視すべきであるというブッシュ政権の指示を反映し、基礎研究と開発の予算が増えている一方で、応用研究は5%の削減となっている。NASA R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

2,268

2,535

267増(11.8%増)

応用研究

3,101

2,947

154減(5.0%減)

開発

2,630

3,061

431増(16.4%増)

施設・設備

2,072

2,466

394増(19.0%増)

合 計

10,071

11,009

938増(9.3%増)

2004年度予算案では、@惑星「地球」の理解と保護;A宇宙探査と生命探求;B次世代探検家の鼓舞、を目的とする新イニシアティブに、向こう5年間で総額40億ドルの投資を提案し、2004年度予算として総額3億3,700万ドルを要求している。惑星「地球」の理解と保護の下で行なわれるイニシアティブの一つが、二酸化炭素以外の大気汚染物質が気候変動に及ぼす影響を調査・評価するClimate Change Research Accelerationで、2004年度予算として2,600万ドルが配分され;宇宙探査と生命探求のイニシアティブとしては、安全な有人宇宙探査を可能にする為のHuman Research Initiative に3,900万ドル、原子力を動源とする宇宙船第一号を木星の月の軌道にのせるProject Prometheusには2億7,900万ドルが要求されている。また、次世代探検家の鼓舞では、学生の科学工学への関心を高め、トップレベル学生をNASAに勧誘することを目的とするEducation Initiativeに着手していく。同イニシアティブには2,600万ドルが配分される。

NASA予算のその他ハイライト:

  • 科学・航空学・探査 (Science, Aeronautics and Exploration) 費目の予算は前年度より7.9%増額され、76億6,100万ドル。内、宇宙科学R&Dは15.5%増額されて40億700万ドル、生物・物理研究R&Dは6.6%増で9億7,300万ドル、航空学技術事業が1,000万ドル増の9億5,900万ドルとなる。一方、地球科学R&Dは4.4%減の15億5,200万ドルに引き下げられている。
  • ブッシュ政権は2003年度予算案で、国際宇宙基地(International Space Station = ISS)計画を厳しく批判して、予算削減を要求したが、2004年度予算案ではISSを価値ある事業と評価し直し、前年度比2億ドル増の17億700万ドルを要求している。
  • 安全で信頼度が高く、しかも、安価な宇宙輸送を可能にする技術を研究する、宇宙打ち上げイニシアティブ (Space Launch Initiative) の2004年度予算は10億650万ドル。
  • 革新技術移転パートナーシップ (Innovation Technology Transfer Partnerships) の予算は1,400万ドル削減の1億6,900万ドル。この内の1億3,500万ドルは中小企業革新技術研究/中小企業技術移転研究 (SBIR/STTR) に充てられる。
  • NASAの省庁間R&Dプログラム向け予算は、全て前年度レベル以下に削減されている。

 

VIII. 全米科学財団

全米科学財団 (National Science Foundation = NSF) には、前年度レベルを約5億ドル (8.6%増) 上回る54億4,800万ドルが配分されている。前年度予算案で要求した増額が2億ドルであったことを考慮すると、かなりの大幅増額ではあるものの、昨年12月に法令化されたNSF予算倍増5ヵ年認可法の認める64億ドルには程遠い予算となっている。一方、NSFの2004年度R&D予算は40億6,200万ドルで、前年度より3億7,000万ドル増額されている。対テロ戦争と国土安全保障を最優先するブッシュ政権の意向は、科学・工学・技術分野における米国のリーダーシップ維持を第一使命とするNSFの予算にも反映され、@伝染病の生態学 (NIHとの共同プログラム);A微生物ゲノム配列解析 (Microbial Genome Sequencing);B重要インフラストラクチャー防備;C国家安全保障関連の情報技術プログラム、等への予算も盛り込まれている。NSFのR&D予算内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

3,228

3,505

277増 (8.6%増)

応用研究

199

204

5増 (2.5%増)

施設・設備

265

353

88増 (33.2%増)

合 計

3,692

4,062

370増 (10.0%増)

NSF予算のハイライト:

  • 数学・物理学・化学・天文学・材料研究を支援する数学・物理科学 (Mathematical and Physical Sciences) は、前年度よりも約1億ドル増額され、初めて10億ドルを超える予算が同費目に計上されている。特に、数学・統計学の根本的な研究を支援するMathematical Sciencesの予算増額が顕著で、前年度比48.3%増の8,910万ドルにまで引き上げられている。
  • 国家ナノテクノロジー・イニシアティブ (National Nanotechnology Initiative = NNI) のリード機関であるNSFの2004年度NNI予算は、前年度比11.8%増の2億4,899万ドル。「優良センター・優良ネットワーク (Centers and Networks of Excellence) 計画」への予算は、21.2%増の4,600万ドルに増額される。
  • 米国グローバルチェインジ研究計画 (US Global Change Research Program = USGCRP) へのNSF予算は前年度と同額の1億8,830万ドルであるが、気候変動研究イニシアティブ (Climate Change Research Initiative = CCRI) の予算は、前年度比67%増の2,500万ドルに増額。
  • EPSCoR(Experimental Program to Stimulate Competitive Research)計画予算は、前年度と同レベルの1億500万ドル。
  • 工学研究センター (Engineering Research Centers) 予算は2003年度より210万ドル削減され、6,022万ドル。科学技術センター (Science and Technology Centers) は増減なしで4,491万ドル。また、革新パートナーシップ (Partnerships for Innovation) には、前年度予算の2倍にあたる1,000万ドルが要求されている。

 

IX. 国土安全保障省

2002年11月25日にブッシュ大統領の署名を受けて法令化され、第15番目の閣僚レベル組織として動き出した国土安全保障省 (Department of Homeland Security = DHS) の2004年度予算は、2003年度推定予算を25億ドル (7.4%増) 上回る362億ドルとなっている。DHSに統合された主要なプログラムと連邦機関は下記の通り:

  • 農務省の農作物検疫プログラムとプラム島動物疾病センター
  • 商務省の重要インフラストラクチャー保障局
  • 国防省の国家通信システム、および、全米生物兵器分析センター
  • エネルギー省の国家インフラストラクチャー模擬実験・分析センター、および、化学・生物・放射能・核兵器対抗技術プログラム
  • 連邦緊急時管理局 (Federal Emergency Management Agency)
  • 司法省の移民帰化局
  • 運輸省の沿岸警備隊と交通安全局
  • 財務省の税関と秘密検察局

DHSのR&D予算は前年度比31.5%増の10億100万ドルで、R&D活動の殆ど (8億300万ドル) が科学技術部 (Science and Technology Directorate) の管轄となる。但し、この大幅増額は、国土安全保障先端研究計画局 (Homeland Security Advanced Research Projects Agency = HSARPA)(注1) が新設されたことによるもので、2004年度予算としてHSARPAには3億5,000万ドルが計上されている。R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

基礎研究

47

47

±0

応用研究

64

126

62増 (96.9%増)

開発

537

663

126増 (23.5%増)

施設・設備

113

165

52増 (46.0%増)

合 計

761

1,001

240増 (31.5%増)

DHS予算のハイライト:

  • 一般市民や農耕システムに対するバイオ攻撃の可能性と影響を削減する統合システムの開発・導入を目的とする、生物兵器対抗技術 (Biological Countermeasures) R&Dに3億6,500万ドル。
  • 放射能や核兵器の輸入・輸送・爆発を防止する、放射能/核兵器対抗技術 (Radiological/Nuclear Countermeasures) R&Dに1億3,700万ドル。
  • 一般市民を化学兵器の攻撃から守る、化学兵器/爆発物対抗技術 (Chemical/High Explosives Countermeasures) R&Dに6,500万ドル。
  • 学界との戦略的パートナーシップ設立や国土安全保障研究所の創設等を行なう、University Programs, Emerging Threats and Rapid Prototyping Programに6,200万ドルを要求。

 

X. 運輸省

運輸省の2004年度予算は、29億ドル (前年度比6%) 増額の543億ドル。運輸省では、国土安全保障関連活動予算として6億3,220万ドルを要求。内、3億6,500万ドルは連邦航空局 (Federal Aviation Administration) に、9,870万ドルが海上保安プログラム (Maritime Security Program)、4,000万ドルが陸上交通システム防備に配分される。2004年度予算案ではまた、前年度予算案で要求したNew Freedom Initiative (1億4,500万ドル) の着手に必要な法案を検討するよう、再度議会に要請している。

運輸省予算のハイライト:

  • 運輸省R&D予算は前年度比10.5%増の6億9,300万ドル。基礎研究 (131%増の3,700万ドル);応用研究 (9%増の4億1,100万ドル);開発 (5%増の2億2,600万ドル) の予算は増額されたが、施設・設備費は前年度同額になっている。
  • インテリジェント交通システム (Intelligent Transportation System) の研究・作動実験・導入普及の為の予算として1億2,100万ドルを要求。
  • 運輸省R&Dプログラムの改善、および、水素燃料の基盤整備と水素自動車用燃料システム基準の開発のため、研究・特別プログラム局 (Research and Special Programs Administration) に前年度と同額の300万ドルを配分している。
  • 環境イニシアティブ(注2)に総額35億ドルを計上。この他、クリーン燃料バスの研究・調達予算として、5,000万ドルを要求している。
  • 次世代高速鉄道の予算は、前年度と同額の2,300万ドル。

 

XI. 省庁間R&Dプログラム 

1. ネットワーキング・情報技術R&D (Networking and Information Technology R&D = NITRD)

2004年度予算は21億7,900万ドルで、前年度推定予算よりも1億2,200万ドルの増額となる。NASAのNITRD予算が減少し、環境保護庁 (EPA) の予算が同額であることを除くと、他の参加5省庁の予算は全て前年度よりも増額となっている。また、厚生省の予算は4億4,100万ドルで18%という大幅増額となっているが、これは主として同省のバイオインフォマティックスR&Dの増額に因るものである。2004年度の研究では、ネットワークの安全性と信頼度、プライバシー問題、高アシュアランス (high-assurance) なソフトウェアとシステム、センサー技術、革命的なアーキテクチャ、情報技術の社会的・経済的影響に重点をあてる。NITRDに参加する連邦各省庁の拠出額は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

NSF

678

724

46増 (7%増)

国防省

442

461

19増 (4%増)

厚生省

374

441

67増 (18%増)

エネルギー省

310

317

7増 (2%増)

NASA

213

195

18減 (8%減)

商務省

38

39

1増 (3%増)

EPA

2

2

±0

合 計

2,057

2,179

122増 (6%増)

2. 国家ナノテクノロジー・イニシアティブ (National Nanotechnology Initiative = NNI)

ナノテクノロジーの進歩は、医療;製造技術;高性能材料;情報技術;環境技術という多分野の前進に繋がるものと期待されており、ナノテクノロジー市場は向こう10年間で1兆ドルに達する(注3)と推定されている。急成長する有望なナノテクノロジー分野で世界的なリーダーシップを確立するため、NNIでは2004年度予算として、前年度比7%増の7億9,200万ドルを要求している。NNIのリード機関であるNSFの予算は、2億4,700万ドルで、前年度よりも2,600万ドルの増額。また、エネルギー省のNNI予算にいたっては、前年度比48% (6,400万ドル) という大幅な増額になっているが、これは主として、全米5ヶ所に設置されるユーザーセンターの予算を反映している。NNIに参加する連邦10省庁の拠出額は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

NSF

221

247

26増 (12%増)

エネルギー省

133

197

64増 (48%増)

国防省

202

176

26減 (13%減)

厚生省

65

70

5増 (8%増)

商務省

78

53

25減 (32%減)

NASA

33

31

2減 (6%減)

農務省

1

10

9増 (900%増)

EPA

6

5

1減 (17%減)

DHS

2

2

±0

司法省

1

1

±0

合 計

742

792

50増 (7%増)

3. 気候変動R&D

@ 気候変動科学プログラム (Climate Change Science Program = CCSP):2003年度大統領予算案では、政策決定者へのデータ提供を目的として気候変動科学の短期的成果に焦点をあてた気候変動研究イニシアティブ (Climate Change Research Initiative = CCRI)(注4)、および、気候観測システム構築や気候変動の長期的影響を研究する米国グローバルチェインジ研究計画 (US Global Change Research Program = USGCRP)(注5)を、個別の省庁間R&Dプログラムとして提案していた。しかしながら、ブッシュ政権は昨年2月に、連邦政府の気候変動に関する研究を調整・合理化する為、CCRIとUSGCRPをCCSPという一つのプログラムに統合することを発表し、2004年度予算案ではCCSPに17億4,900万ドル (前年度比200万ドル増) を要求している。CCSPへの最大出資者であるNASAの予算が4,400万ドル減少したことを除けば、その他省庁の拠出額は前年度並み、または、若干の増額となっている。CCSP参加各省庁の予算は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

NASA

1,112

1,068

44減 (4%減)

NSF

203

213(注6)

10増 (5%増)

商務省

118

136

18増 (15%増)

エネルギー省

129

133

4増 (3%増)

農務省

66

73

7増 (11%増)

厚生省

59

61

2増 (3%増)

内務省

26

26

±0

EPA

22

22

±0

スミソニアン協会

6

6

±0

国際開発局 (USAID)

6

6

±0

運輸省

0

4

新規

国務省

0

1

新規

合 計

1,747

1,749

2増 (0%)

A 気候変動技術プログラム (Climate Change Technology Program = CCTP) :2004年度大統領予算案では、気候変動技術に焦点をあてる省庁間R&DプログラムであるCCTPの予算を明白にしていないものの、CCTPの優先計画である「国家気候変動技術イニシアティブ (National Climate Change Technology Initiative = NCCTI)」には、前年度と同額の4,000万ドルをDOE予算で要求している。NCCTIは、温暖化ガス排出を削減・回避・隔離する特定技術に対してグラントを授与するプログラムで、競争公募を実施するための準備段階として、関心事項を示した声明書の提出を関係者に求めたばかりである。NCCTIには、DOEの省エネルギー費目から950万ドル、再生可能エネルギーから1,500万ドル、化石エネルギーから1,320万ドル、そして原子力エネルギーから230万ドルが計上される。


注1:国防省の防衛先端研究計画局 (DARPA) をモデルにしている。

注2:環境イニシアティブには、燃料電池をはじめとする革新技術の研究や実験、および、運輸部門から放出される大気汚染物質の削減を目的とする、交通渋滞緩和計画や大気質改善計画等が含まれる。

注3:商務省の推定。

注4:CCRIの2004年度予算は、前年度の4,000万ドルから1億8,200万ドルに増額されている。

注5:USGCRPの2004年度は、前年度より2億4,000万ドル少ない15億6,700万ドル。

注6:NSFのCCRI予算として計上された2,500万ドルの内、450万ドルは、気候変動に関連するリスクの管理・交信・意思決定を支援する学際的センターの設置に充てられる。2004年度予算では3〜5ヵ所のセンター設置が予定されている。


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