(2003/2/6)

ブッシュ大統領の2004年度予算:概要(その1)

ワシントン事務所
2003年2月6日

ブッシュ政権が2003年2月3日に発表した2004年度大統領予算教書は、2003年度大統領予算要求提案の延長線上にあるもので、@対テロ戦争での勝利;A国土安全保障;B長期的経済成長という国家三大優先事項を念頭において策定されている。2004年度の予算要求総額は、2兆1,400億ドルという2003年度推定予算(注1)を4% (約900億ドル) 上回る2兆2,300億ドル。この内の1兆4,480億ドルが社会保障費・国債費・退職年金といった義務的経費 (mandatory spending) への予算で、残りの7,820億ドル(注2)が裁量的経費 (discretionary spending) 予算となっている。300億ドルという裁量的予算増額の大半は、国防省と新設された国土安全保障省 (Department of Homeland Security = DHS) に配分されているため、その他省庁の予算は、国土安全保障に関連するプログラムでない限り、殆どが前年度並か微増、もしくは、削減となっている。

ブッシュ大統領はまた、2004年度の研究開発 (R&D) 予算として、前年度予算1,150億ドルを6.7% (77億ドル) 上回る1,227億ドルという記録的なレベルを要求している。クリントン前政権時代に、ほぼ均等なバランスに達した防衛関連R&D予算と非防衛関連R&D予算は、ブッシュ政権になって明らかに防衛R&Dへと傾き、2004年度のR&D予算では、防衛R&D(注3)に674億ドル (R&D予算全体の55%)、非防衛R&Dに553億ドル (45%)を配分している。このように防衛R&Dが重視される状況下で、全米科学財団 (National Science Foundation = NSF) の予算は10%、米航空宇宙局 (NASA) 予算は9%、そして、エネルギー省予算は6%という比較的大幅な増額を受けている一方、前年度40億ドル (15%) という大幅増額を享受した国立衛生研究所 (National Institutes of Health = NIH) の予算は2%増に抑えられている。また、対テロ戦争や国土安全保障という国家優先事項が、実施されるR&Dの種類や投資レベル、および、R&Dの成果利用方法に大きな影響を及ぼすことになるため、R&Dに携わる連邦省庁の殆どが、自らのR&Dプログラムの重点を再検討し、国土安全保障や対テロ戦争に役立つR&Dへと方向転換を図っている。   

大統領が2004年度予算案で要求している予算増率は4%という比較的謙虚な数値ではあるものの、米国経済の停滞、大型減税、配当課税撤廃、および、対テロ戦争の強化により、2004年度には3,070億ドルの財政赤字が見込まれている。また、触発寸前のイラク戦争が始まることになれば、米国の財政赤字が激増(注4)することは必至である。

2004年度大統領予算教書では、下記の事項も予算ハイライトとしてあげている:

  1. 国防省予算の153億ドル (4%) 増額
  2. 世界規模の対テロリズム戦争への対外支援金として23億ドル
  3. ミサイル防衛計画に91億ドル
  4. 22の省庁とプログラムを統合して創設されたDHSの予算として362億ドル
  5. 全ての国土安全保障関連プログラム (非防衛関係) に350億ドル
  6. バイオ・テロリズム対応策の一環であるProject BioShieldに8億9,000万ドル
  7. 減税 (9,200万人の米国納税者に平均1,083ドルの返済) や配当課税撤廃、および、中小企業の投資課税控除額引き上げによる経済刺激策
  8. 失業手当配付期間の5ヶ月延長
  9. 水素イニシアティブに向こう5年間で15億ドル
  10. 国際エイズ資金に150億ドル

ブッシュ大統領は2003年度予算案で、@人材の戦略的管理;A競争による調達;B財政管理;Ce-政府;D予算と実績の統合、という5つのクライテリアに基づいて連邦各省庁および各プログラムを評価する「実績評価に基づく予算策定」に着手して、注目を集めたが、2004年度予算教書では、このアプローチをフルスケールで実行している。2004年度の予算策定過程においては、各プログラムや連邦各省庁の評価に、上述5つのクライテリアとプロラム評価採点ツール (Program Assessment Rating Tool = PART)(注5) が併用され、予算増減の明確な根拠が提示されている。この詳細な分析評価結果は『実績と管理評価 (Performance and Management Assessments)』という別冊にまとめられて、報告されている。               

このレポートでは、エネルギー省の予算概要を報告し、第2レポートで国防省・商務省・厚生省・内務省・環境保護庁を、第3レポートで国土安全保障省・全米科学財団・米航空宇宙局・運輸省、および、省庁間R&Dプログラムの予算概要を報告する。また、第4レポートでは、別冊の形で発表された大統領の『業績と管理評価』について概説する。

 

I. エネルギー省

2004年度のエネルギー省全体予算は、2003年度予算を13億ドル (5.9%) 上回る234億ドルで、前年度(注6)に受けた以上の大幅増額となっている。但し、2004年度予算増額は昨年同様に防衛と国土安全保障という目的のためであり、核兵器管理や核兵器非拡散活動といった防衛関連の核プログラム予算が約10億ドル (11.7%) の増額を受けているものの、エネルギー関連予算および科学予算は、ほぼ昨年並みの要求となっている。エネルギー省全体の予算内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

国家核安全保障局 (NNSA)

7,909,389

8,834,575

925,186増 (11.7%増)

エネルギー関連

2,445,518

2,454,484

8,966増 (0.4%増)

科学

3,263,876

3,310,935

47,059増 (1.4%増)

環境関連

7,676,272

8,030,145

353,873増 (4.6%増)

その他

768,883

745,065

23,818減 (3.1%減)

合 計

22,063,938

23,375,204

1,311,266増 (5.9%増)

エネルギー関連予算の内訳:: 省エネルギーの8億7,579万ドル (前年度比3.9%減);再生可能エネルギー・エネルギー効率化の4億4,421万ドル(9.1%増);化石エネルギーの7億4,689万ドル (6.6%減);原子力R&Dの3億8,760万ドル (18.6%増) となっている。以下、@省エネルギー;A再生可能エネルギー・エネルギー効率化;B原子力R&D;C化石エネルギーR&Dの各予算につき解説する。

@ 省エネルギー予算は、2003年度予算を約3,586万ドル下回る8億7,579万ドル。2004年度大統領予算案では、前年度予算案で増額要求を行なった、耐候化支援計画予算と連邦エネルギー管理計画予算の削減を提案しているほか、産業技術R&D、バイオマス・バイオ精製R&D、分散型エネルギー源、全米気候変動技術イニシアティブ (National Climate Change Technology Initiative = NCCTI) という費目も軒並みに予算削減されている。但し、大統領が1月28日の一般教書演説で、昨年開始されたFreedomCARイニシアティブを補うために、FreedomFuelという新計画への着手を発表したことを反映し、水素研究関連R&Dの予算は大幅に増額されている。省エルギーR&Dに関する予算内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

FreedomCAR・自動車技術

153,563

157,623

4,060増 (2.6%増)

水素・燃料電池・基盤整備技術

57,500

77,500

20,000増 (34.8%増)

分散型エネルギー源R&D

54,784

51,784

3,000減 (5.5%減)

ビルディング技術R&D

52,563

52,563

(±0)

産業技術R&D

91,477

64,429

27,048減 (29.6%減)

バイオマス・バイオ精製R&D

23,939

8,808

15,131減 (63.2%減)

NCCTI

20,000

9,500

10,500減 (52.5%減)

FreedomCAR・自動車技術プログラムがFreedomCARと21世紀トラックパートナーシップを支援する一方、水素・燃料電池・基盤整備技術プログラムではFreedomFuelとFreedomCARの双方を支援し、燃料電池の研究・開発・実証、および、輸送用や定置型燃料電池で使用する水素の生産・配給・貯蔵技術を行なっていく。また、NCCTIは50%以上の削減を受けているが、これは、同イニシアティブの競争公募予算が、再生可能エネルギーや原子力R&D等と共同負担されるためであって、プログラム自体の大幅縮小を意味するものではない。事実、2004年度の同イニシアティブ(注7)予算として、大統領は総額4,000万ドルを要求している。

A 再生可能エネルギー・エネルギー効率化予算には、前年度比9.1% (3,721万ドル) 増の4億4,421万ドルが要求されている。2001年9月11日の多発テロ事件後、輸入原油への依存度が問題視され、ブッシュ政権はこの打開策の一つとして2003年度予算案で再生可能エネルギーの殆どの費目に増額要求を行なった。しかしながら、2004年度予算では、対テロ戦争の継続や緊迫化するイラク問題等によって中東情勢は相変わらず不安定であるにも拘わらず、ブッシュ大統領は、水素技術研究の予算を大幅増額するのみで、他の再生可能エネルギー費目には前年度レベル維持もしくは予算削減を要求している。再生可能エネルギー・エネルギー効率化の主要な研究開発関連予算の内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

2003年度推定
2004年度要求
2004年度 対 2003年度

水素技術(注8)

39,881

87,982

48,101増 (120.6%増)

ソーラー・エネルギー

79,625

79,693

68増 (0.1%増)

ゼロエネルギー・ビルディング

8,000

4,000

4,000減 (50.0%減)

風力エネルギー

44,000

41,600

2,400減 (5.5%減)

地熱技術

26,500

25,500

1,000減 (3.8%減)

バイオマス・バイオ精製R&D

86,005

69,750

16,255減 (18.9%減)

水力発電

7,489

7,489

(±0%)

NCCTI

15,000

15,000増

(新規)

B 原子力科学技術予算は全体で、前年度予算3億2,687万ドルを6,072万ドル上回る3億8,760万ドルまで引き上げられている。米国の総電力の約20%を供給する原子力発電は、将来のエネルギー需要を満たす上で重要な役割をはたすことになる。ブッシュ政権は、現在よりも低コストで、しかも環境に優しい核燃料サイクルの実現に必要な技術を研究開発するために、先端燃料サイクル・イニシアティブ (Advanced Fuel Cycle Initiative = AFCI) という新プログラムを提案し、2004年度予算として6,303万ドルを要求している。AFCIを含む原子力エネルギー研究開発の2004年度要求予算は、2003年度の8,972万ドルから1億2,703万ドルまで増額されている。一方、核エネルギー研究イニシアティブ (Nuclear Energy Research Initiative = NERI) の予算は、前年度比13%減の1,200万ドルに縮小されている。

C 化石エネルギー計画の全体予算は、2003年度予算比5,311万ドル減の7億4,689万ドルであるが、化石エネルギーR&Dの予算は5億1,930万ドルと、前年度比4,490万ドル (8.3%) 増となっている。ブッシュ大統領は昨年、米国民の消費する総電力の50%以上を賄う石炭火力発電の重要性を強調し、前年度予算案では、既存のクリーンコール・プログラムを一つに統合した「大統領の石炭研究イニシアティブ (Presidentユs Coal Research Initiative)」という新先導策を発表した。2004年度の同イニシアティブ予算は、前年度比490万ドル増の3億2,050万ドル。同イニシアティブの主要な内訳は下記の通り:

  • クリーンコール発電イニシアティブの1億3,000万ドル (前年度比2,000万ドル減)
  • 炭素隔離研究予算の6,200万ドル (前年度比1,800万ドル増)
  • 材料研究や水銀制御研究を含む先端研究プログラム予算の3,750万ドル (580万ドル増)

エネルギー省の科学関連予算: 2004年度のエネルギー省科学関連予算は、前年度予算を僅か1.4% (4,760万ドル) 上回る33億1,094万ドルに留まっている。高エネルギー物理学 (7億3,798万ドル:1,300万ドル増)、生物・環境研究 (4億9,953万ドル:1,530万ドル増)、原子物理学 (3億8,943万ドル:700万ドル増)、先端科学演算研究 (1億7,349万ドル:690万ドル増)といった費目が予算増額を受けるものの、新たなエネルギー技術の研究開発と技術改善、および、国立研究所の維持等を管轄する基礎エネルギー科学の予算は、1,060万ドル削減され10億860万ドルに引き下げられている。基礎エネルギー科学をプログラム別に見ると、核破砕中性子源 (Spallation Neutron Source) プログラムが8,200万ドルの削減を受けている一方、ナノスケール科学プログラムは6,400万ドル増額されている。また、生物・環境研究では、Genomes to Life計画の予算が2,450万ドル増額されたが、この増額分の一部は、ヒトのDNA配列解析予算の1,220万ドル削減によって相殺されている。科学関連予算から計上される連邦省庁間R&Dプログラムについては、「ブッシュ大統領の2004年度予算:概要 (その3)」で説明することとする。


注1:2003年2月3日現在までに法制化された2003年度歳出法案は、「国防省歳出法案」と「軍事建設歳出法案」の2本のみである。このため、2004年度予算教書では比較対照する2003年度予算数値として、議会認可の2002年度予算レベルや2003年度大統領要求額を利用するのではなく、2003年度推定予算を使用している。

注2:これは、2003年度推定予算である7,520億ドル)を300億ドル (4%) 上回る数値である。

注3:国防省のR&D、エネルギー省の防衛関係R&D、および、DHSの防衛関連R&Dを含む。

注4:全米科学振興協会(AAAS)では、イラク戦争の今年のコストを最低1,000億ドルと推定している。

注5:連邦政府の特定プログラムの有効性を計るためにブッシュ政権が考案したツール。同予算提案作成過程では、234の連邦政府プログラムがPARTで評価された。

注6:2003年度大統領予算案では、エネルギー省全体予算の5億8,220万ドル (2.7%) 増額を要求していた。

注7:NCCTIについては、省庁間R&Dプログラムの項で説明。

注8:同予算の一部は、前述のFreedomCARとFreedomFuelイニシアティブに回される。


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