(2003/3/4)

ブッシュ大統領の2004年度予算:概要(その4)

ワシントン事務所
2003年3月4日

2004年度予算案の作成過程において、ブッシュ政権は、2003年度予算提案と同様に、連邦各省庁や各プログラムの実績評価を行なっている。但し、今回の予算案では、連邦各省庁の現状を @人材の戦略的管理;A競争による調達;B財政管理;Ce-政府;D予算と実績の統合、というイニシアティブ毎に、「緑 (success)」「黄 (mixed)」「赤 (unsatisfactory)」で評価するだけでなく、その進捗状況をも同様の方法で評価している。2001年8月に発表された「大統領の行政管理アジェンダ (Presidentユs Management Agenda)」は、目的が明確で管理状況が良く、かつ効率的なプログラムには予算面で報いる一方、管理状況や効率の悪いプログラム、または、意義のないプログラムの予算は削減または廃止するというブッシュ予算哲学に欠くことの出来ないものとなっており、2004年度の大統領予算案では、このアプローチがフルスケールで施行されている。

「大統領の行政管理アジェンダ」の中でも特に、予算と実績の統合は、成果に基づく予算策定を重視するブッシュ予算哲学の要とも言えるイニシアティブである。ブッシュ政権は2004年度予算案で、連邦政府各プログラムの効率を判断する手段として、プログラム評価採点ツール (Program Assessment Rating Tool = PART) を提示し、これによって政府プログラムの約5分の1にあたる234のプログラムを評価採点している。

『ブッシュ大統領の2004年度予算:概要』の最終号である本レポートでは、『実績と管理評価 (Performance and Management Assessments)』という別冊で報告されている、連邦各省庁および各プログラムの評価について概説する。

 

I. 連邦政府各省庁の評価

連邦政府各省庁の業績は、行政管理予算局 (Office of Management and Budget = OMB) によって四半期毎に評価される。OMBでは、イニシアティブ毎に設定された「成功基準 (standards of success)」に照らし合わせて各省庁の達成状況を評価するほか、2004年度予算案では、「成功基準」の達成に向けた進捗状況も採点している。

@ 「成功基準」

イニシアティブ毎に設定された「成功基準」の内容は、各イニシアティブにより異なるため、ここでは、財政管理、および、予算と実績の統合の二つを例として紹介する。

財政管理イニシアティブ

● 財政管理システムは連邦政府財政管理システム義務要件、および、適応される連邦政府の会計・処理業務基準を満たしている。

● 正確でタイムリーな財政情報

● 日々の活動を支援する、総合的な財政・実績管理システムである。

● 年次財政報告書に関する徹底的でタイムリーな検査官の見解報告を受けている;省内管理に重大な欠陥がない。

● 核心クライテリアの幾つかを達成していること

● 「赤」が一つもないこと

● 財政管理システムが連邦政府財政管理システム義務要件、および、適応される連邦政府の会計・処理業務基準を満たしていない。

● Anti-Deficiency Act(注1)の度重なる違反、または、深刻な違反

● 省庁の最高責任者が、財政管理・会計・行政上の監督システムに関して、絶対的な確約証明書を提出できない。

● 検査官により、法規の重大な未遵守事項や内部管理の重大欠陥が指摘されている;又は、年次財政報告書に対する検査官の見解表明が不可能である。

予算と実績の統合イニシアティブ

● 企画/評価担当者と予算担当者がプログラムマネージャーと協力して、総合的な予算プランを策定し、その実施を監視・評価している。

● 各省庁の合理的で明確かつ総合的な予算プランは、最終目標や具体的成果目標値、および、過去の実績に基づいた財政要求を提示している。

● 予算費目、スタッフ、プログラム活動が、プログラムの成果目標達成を支援するものになっている。

● 経費全額が該当するミッションの費目と活動に請求されている。予算要求と実行計画において、プログラムのコストが実績と統合されている。

● プログラムの効率が実証されている。当該省庁では、体系的に業績を予算に適合し、予算決定にプログラムの成果が如何に利用されたかを実証することが出来る。

● 核心クライテリアの幾つかを達成していること

● 「赤」が一つもないこと

● プログラムの企画と予算策定の間に協力関係が殆ど見られない。省内組織の異なるレベル間でコミュニケーションが欠落している。個々の利用目的への予算要求が中心となっている。

● 財的資源と成果を結びつける努力、又は、予算専門家以外とのコミュニケーションが殆ど見られない在来型の予算要求である。

● 費目数の過多、歴史的例外、非論理的な予算費目を含む。共通点の殆どない複数プログラムを支援している。

● コストを適切な活動へ請求するどころか、適切な部局に請求する配慮も殆ど見られない。省庁レベル・部局レベルで、かなりのコストが「ごちゃ混ぜに」なっている。プログラムマネージャーが資源に対する権限を持っていない。

● 善行(good cause)への予算確保が重視され、逸話によって正当化されている。最終目標が殆ど考慮されていない。

A 達成状況スコアの意味

  • 緑 … 当該省庁が「成功基準」の核心クライテリアを全て満たしている
  • 黄 … 当該省庁が、核心クライテリアの幾つかを達成しており、「赤」が一つもない
  • 赤 … 当該省庁が、列挙された欠陥の内の一つを持っている

B 進捗状況スコアの意味

  • 緑 … 当該省庁の合意した計画に従って、実施作業が進んでいる
  • 黄 … 実施日程や成果物の質、その他の問題でつまずいており、イニシアティブのタイムリーな達成の為には当該省庁による調整が必要である
  • 赤 …イニシアティブが深刻な危機に陥っている。大規模な行政管理干渉が無ければ、目標の実現は有り得ない

C 連邦省庁の評価と評価例

連邦各省庁がイニシアティブの進捗状況評価で、主として「緑」の採点を受けていることから明らかなように、全体的に見ると、連邦省庁は「成功基準」の達成に向けて大きく前進していると言える。ただし、「成功基準」の達成状況に目を転じると、各省庁がかなりの改善を見せたにも拘わらず、「緑」の獲得者は昨年同様に、全米科学財団 (National Science Foundation = NSF)(注2) だけであり、連邦省庁による一層の努力が必要であることも明白になっている。

NSFでは、例年行なわれるグラント提案の99%以上を電子媒体で受領しており、グラントの状況と成果をいつでもモニターすることが出来るようになっている。OMBはこれを評価し、財政管理とe-政府の2つのイニシアティブでNSFに「緑」を授与している。一方、米航空宇宙局 (NASA) は、人材の戦略的管理、および、予算と業績の統合で「黄↑」の評価を受けており、この2つのイニシアティブにおいては連邦政府のリーダー格となっている。また、エネルギー省(DOE) が「大統領の行政管理アジェンダ」に格段のコミットメントを示し、業績改善を担当する行政管理委員会を省内に設立して、大統領アジェンダの実施を図っていることは特筆に価する。毎月1回開催されるDOEの行政管理委員会は、(i) 各イニシアティブの進捗状況をモニターし;(ii) 最良慣行 (best practice) に関する情報を交換し;(iii) 重要な行政管理決定を行なうフォーラムの役目を果たすもので、DOEのこうした努力の結果は進捗状況の評価に如述に現れている。

今回の連邦省庁評価によって、イニシアティブ別では、政府全体として改善が最も進んだのがe-政府イニシアティブである一方、競争による調達イニシアティブが多くの省庁にとっての最大課題となっていることが判明したという。

NSF

DOE

イニシアティブ

達成状況

進捗状況

人材の戦略的管理

競争による調達

財政管理

e-政府

予算と実績の統合

イニシアティブ

達成状況

進捗状況

人材の戦略的管理

競争による調達

財政管理

e-政府

予算と実績の統合

II. 連邦政府プログラムの評価方法

ブッシュ政権が2004年度予算案策定過程で連邦政府プログラムの効率を判定するために使用したプログラム評価採点ツール (Program Assessment Rating Tool = PART) は、各プログラムを@プログラムの目的と設計;A戦略的プラニング;Bプログラム管理;Cプログラムの成果とアカウンタビリティという4項目から評価するもので、項目毎の一連の質問は、プログラムの業績に関する特定の情報を引き出すよう工夫されたものとなっている。連邦省庁の各プログラム担当者は、@からBの項目に対してYes/No形式で回答を行ない、Cに対しては、Yes、Large Extent (概ね)、Small Extent (幾分)、または、Noという形式で回答を行なう。OMBでは、この回答と提出された補助資料を基にして、各項目に0から100点までの得点をつけ、プログラムを「効果的 (effective)」「まあまあ効果的 (moderately effective)」「適切 (adequate)」「非効率的 (ineffective)」または「成果不明 (Results Not Demonstrated)」と評価している。

@ 各項目の主要な質問は下記の通り:

(A) プログラムの目的と設計

(a) プログラムの目的は明白か?
(b) プログラムは、特定の関心事、問題、必要性を取り扱っているか?
(c) プログラムは、上記(b)に、重要な影響をもたらすように設計されているか?
(d) プログラムは、上記(b)に、独特な貢献をするよう工夫されているか?
(e) プログラムは、国家利益、問題、必要性を取り扱う上で、最適な設計となっているか?

(B) 戦略的プラニング

(a) プログラムは、プログラムの目的を十分に反映し、成果を重視する、野心的な長期業績目標を盛り込んでいるか?
(b) 長期目標達成に向けた進捗状況を明示する証拠となる、年間業績目標を盛り込んでいるか?
(c) プログラム関与者は、年間目標や長期目標にコミットすることで、プログラムのプラニングを支援しているか?
(d) プログラムは、類似の目標や目的を持つ関連プログラムと効率的に協調しているか?
(e) プログラムの効率査定・改善推進のために、第3者による評価を定期的、または、必要に応じて行っているか?
(f) プログラム予算は、プログラムの目標と合致しているか?
(g) プログラムは、戦略的プラニングの欠陥に対処するため、意義ある処置をとっているか?

(C) プログラムの管理

(a) 当該省庁は、タイムリーで確かな業績情報を定期的に収集しているか?
(b) 連邦政府マネジャーとプログラム参加者は、コストやスケジュール、及び、成果について責任を負っているか?
(c) プログラム予算はタイムリーに施行され、予定された目的の為に使用されているか?
(d) プログラムには、プログラムやコストの実行効率を向上させるインセンティブや手順が盛り込まれているか?

(D) プログラムの成果とアカウンタビリティ

(a) プログラムは、長期的業績目標の達成に向けて十分な進展を見せているか?
(b) プログラムは、年間業績目標を達成しているか?
(c) プログラムの効率およびコスト効率は毎年改善しているか?
(d) プログラムの業績は、類似の目的・目標を持つ他のプログラムと比べ、優れているか?
(e) 第3者による査定評価は、プログラムが効率的で成果を上げていると判定しているか?

A プログラムの評価と評価例

PARTという新ツールを利用したプログラム評価は今回が始めてであり、連邦省庁から提出された情報が不十分であった為、OMBによって評価されたプログラム234件の内の半数以上が「成果不明」と判定されている。「効果的」と評価されたのは、国防省の基礎研究計画やNASAの火星探査計画を始めとする僅か15プログラム (約6%) であり、「まあまあ効果的」「適切」なプログラムが89件で全体の38.5%であった。また、国防省の化学兵器ストックパイル処理計画、DOEの天然ガス探査生産計画および石油探査生産計画等12プログラム (約5.1%) は「非効率的」という評価を受けている。

項目別では、国防省の基礎研究計画やNSFの研究ツール計画等が「プログラムの目的と設計」で100点;DOEの国家核安全保障局 (National Nuclear Security Administration) の施設・基盤プログラムが「戦略的プラニング」で100点;商務省の先端技術計画 (Advanced Technology Program = ATP) や運輸省の高速道路基盤整備計画等が「プログラムの管理」で100点満点;NASAの火星探査計画が「プログラムの成果とアカウンタビリティ」で89点という高得点を獲得している。全体的には、グラント・プログラムの得点が平均以下となっており、グラント受給者のアカウンタビリティを一層改善する必要のあることを示唆している。

図1:商務省のATP

図2:DOEの水素技術プログラム

OMBによると、プログラム総合評価に占める各項目の比重は、「目的」が20%、「戦略的プラニング」が10%、「管理」が20%、「成果とアカウンタビリティ」が50%であるという。しかしながら、いずれも「適切」いう評価を受けた、商務省のATPとDOEの水素技術プログラムを比較してみると、PARTによるプログラムの採点評価と予算の関係は、必ずしも厳格な方程式になっていないことが判る。

例えば、商務省のATP (図1参照) は、「管理」で100点・「戦略的プラニング」で86点という高得点を獲得し、「成果とアカウンタビリティ」でも67点を取っているものの、OMBからは、目的の欠如という根本的な欠陥があると指摘され、「目的」では20点という厳しい採点を受けている。ブッシュ政権は、ATPグラント受給者が行なう研究に類似した研究は既に民間部門で行なわれていると主張し、2003年度予算提案に続いて、2004年度予算案でもATPの廃止を要求している。一方、同じく「適切」という評価を受けているDOEの水素技術プログラム (図2参照) の方は、「戦略的プラニング」が89点、「管理」が70点。「成果とアカウンタビリティ」は42点で、同項目におけるATPの得点をかなり下回っているものの、「目的」では100点を授かっている。これは、ブッシュ大統領が水素技術研究開発を重視していることを反映するもので、同プログラムの2004年度予算は前年度の約4,000万ドルから8,800万ドルまで引き上げられている。このように、ブッシュ政権では、高スコアが自動的な予算増額に繋がるわけではないように、低スコアが必ずしも予算減少を意味するわけでもないと付言している。

ブッシュ政権は、現在のPARTが完璧なものでないことを認める一方で、経済状況・国家的ニーズ・政策関心事等が詰まった予算策定者の道具箱に、実績アカウンタビリティ測定ツールが追加されたことは、2004年度予算作成過程にとって有用であったと主張している。PARTの質問に対する回答は、OMB評価担当者による判定を必要とするため、幾分かの主観が入り、回答の解釈に一貫性の見られないことが折々発生する。OMBでは、来年度予算作成過程が始まる前に、こうしたPARTの問題点に対応していく意向であるという。


注1:政府の高官や職員が、予算歳出法で計上されている以上の金額を支出したり、認可したりすることを禁じる法律。

注2:2003年度大統領予算要求案において、NSFは財政管理イニシアティブで「緑」を獲得していた。


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