米国エネルギー法案を巡る最近の動き

2003年11月19日
NEDOワシントン

上下両院協議会において、調整が進められてきたエネルギー法案については、11月17日、最終報告が採択された。これを受け、18日にはさっそく下院において審議が行われ、報告書通り議決されたところであるが、今後、今週中にも上院において審議が行われる予定。そこで、エネルギー法案の概要及び今後の上院における議論の見通しについてまとめてみた。

1.エネルギー法案の概要

(1) 電力関連

両院協議会がこの夏に検討を開始して初めて共和党サイドから提出された内容であったが、報告案に含まれた電力関連条項で特に注目を引く内容は含まれていない。主要な項目としては、以下のとおり。

  1. FERCから監督を受ける独立電力信頼性機関(EOR;Electric reliability organization)により設定され管理される電気事業者に対する信頼性基準導入の義務付けを導入。

    ● EROは、民間部門から出される提案の中からFERCによって選定される。しかし、FERCは、現在、自主的に信頼性基準システムを監督している産業界主導のNERCをEROとして選定するものと考えられている。
    ● EROは、FERCが承認した信頼性基準に適合しないような会社に対して罰金を課すことが出来るようになる。EROは、RTOやISOなどの地域の機関に執行権限を付与することができる。

    議会は、信頼性や地域における連携を進めるための最善の策であるとして、RTOの構築を進めるべきであるという決議を出しているものの、個別の電力会社のRTOへの参加は義務ではなく自主的判断にゆだねられる規定となっている。

  2. なお、関係者間で予想されていた通り、法案はFERCによる標準市場設計(SMD)についての最終ルール策定を2007年1月1日まで延長することを規定している。これは、議会がFERCの電力卸売市場への介入を阻止しようとする意図があるものと言われている。
    法案では、FERCに対し、国家的見地から見て重要であるとみなされる送電線建設で問題が生じ州規制当局では解決できない際、FERCにEminent Domainの権限を認めるとともに、連邦政府の土地である場合にはDOEに送電線に関する審査・承認の円滑化を進めさせることが出来ることとなっている。

  3. 協議会の報告書は、電力会社をポートフォリオとする持株会社を規制するPUCHAを廃止する内容も盛り込まれている。これは、産業界が長い間、当該規定は発電部門における投資を不必要に妨げることとなり問題であるとして廃止を支援してきた背景がある。また、人為的な電力売買を禁止すると共に、電力から卸売り電力価格についての情報を収集し、電子情報媒体を用いて一般に公開する権限をFERCに付与している。この規定は、下院エネルギー・大気浄化委員会議長のBarton議員(R-Tx)の要望により付加されたものである。

なお、RTO及びSMD関連の条項の内容は、南東部各州の共和党議員を満足させるものとなっている(南部は連邦の権限を否定、各州の独立性を重んじる傾向にある)。アラバマ州上院議員のShelby議員とミシシッピー上院議員のLott議員のリードにより、この法案では、SMDの導入を遅らせること(2007年1月1日まで延期)及びRTOへの参加を自主的なものにすることについての条項が含まれることとなった。これらは、Southern社及びEntergy社を始めとする電力会社やそれらの州規制当局によって支持されている。

一方、北東州及び中西部の電力会社、州規制当局や発電運営会社は、RTOやSMDの遅延をもたらす電力関連条項について批判的な見方をしている。例えば、Electric Power Supply Associationは、この法案を、卸売市場の競争と言う観点からは“明らかに後退である”と指摘している。しかし、法案の条項は北東州や中西部州におけるRTO構築の努力を阻害するものではく、RTOの構築を進めようとしている電力会社は引き続き自由にそれが行える訳である。

(2)  国内原油、天然ガス生産

同報告には、ANWRにおける原油/天然ガスの開発許可及びアラスカ天然ガスパイプラインについての税制措置は含まれていない。このパイプラインに対する価格支援と同等の効果を有する税制措置は下院共和党が協力に支援してきた条項であるが、WHと上院の反対により最終案から除外された。

他に最終案に含まれなかったものとして、下院エネルギー委員会議長のTauzen議員(R-Louisiana)が提案し支持する米国沿岸地域における全石油・天然ガス貯留層に対するインセンティブを提供する条項があった。しかし、上院民主党及び主要な共和党員は、将来、当該地域における石油・天然ガス開発の突破口になるとして、当該条項案について反対し当該条項は含まれないこととなった。

(3) 原子力発電

DOEのIdaho National Engineering and Environment Laboratoryにおける水素製造コジェネ型原子力発電炉の建設資金として$1billionを充当。大方の予想通り、新規原子力発電所建設のための債務保証や電力購入規定は含まれていない。

しかし、法案では、2021年までの間、新規原子力発電所については_1.86/kWhの発電量ベースの税額控除が導入。

(4) エタノール条項

共和・民主両党の中西部出身議員の強力なサポートにより、協議会報告にはガソリン添加物としてのエタノール利用倍増(50億ガロン)が含まれている。また、最終報告にはMTBEガソリン添加物の製造業者の免責を認める条項が含まれている。これは、両院協議会の共和党上院議員が共和党下院議員の要求を黙認し、入ることとなった。

しかし、この免責条項が含まれたこと及び2015年までのMTBE利用全面禁止条項が含まれなかったことが、民主党上院議員から広く批判されているのが現状。

(5) 税制等財政支援措置

本法案に含まれる減税措置、財政的支援、研究開発等の合計は、今後10年間で減税措置額$23.5Billion及び直接的財政支出$5Billionを含み、合計$31.1Billionに上るものと試算されている(Congressional Budget Office)。
これは、ブッシュ政権の唱える$8Billionや今年に入ってからの協議で議論されていた$16Billionを大きく超えるものとなっている。この結果、民主党議員たちも地元への裨益が大きく、当該法案の拒否に二の足を踏む要因になっているとも言われている。

(6) その他

水素エネルギー関連では、法律成立後、半年以内に研究等の計画を議会に提出。2020年まで水素インフラを整備すること等を記載。
また、CAFE強化については全く言及なし。

 

2.両院協議会における議論と今後の見通し

11月17日に、両院協議会において報告案が承認されたことから、当該法案は下院及び上院においてそれぞれ採否が決されることとなった。下院においては、早速18日に当該報告が採択された。また、今週中にも上院における審議が行われるものと見られているが、民主党がFilibusterに出て、廃案となる可能性も依然残っている。

11月17日に開かれた両院協議会では、一時、@電力における10%の再生可能エネルギー利用義務付け、A電力市場における人為的価格操作からの消費者の保護、Bエタノール利用に関する助成の3点について、両院協議会報告案の修正に成功したものの、結局、下院共和党サイドからの反対で原案通りで投票が行われ、8-5で採択されている。ここで、エタノールの主要生産州であるNorth Dakota出身のDorgan上院議員は民主党でありながら賛成に回ったことは、民主党のジレンマを示すものとして、最終的な上院における採否を占う上で注意を要する。

勿論、民主党議員のSchumer上院議員(D-NY)及びBoxter上院議員(D-CA)はMTBE条項が問題であるとして、Filibusterをちらつかせている。しかし、一方でエタノール条項は農家の支持が強く、民主党代表のTom Daschel上院議員(D-SD)を初めトウモロコシ主要生産州選出の民主党議員は、エタノール条項により地元が裨益することから、当該エネルギー法案に反対し難い状況に置かれている。

このように、民主党議員の間では、当該エネルギー法案に対する不満も大きいが、エタノール条項及び地元への財政面での利益を考えると、上院において民主党がFilibusterに出るかどうかは、依然、不透明な状況にあると見られている。


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