米国製造業支援戦略公表後のブッシュ政権の製造業関連の動き

2004年3月17日
NEDOワシントン 中西

ブッシュ大統領は、この1月16日、米国製造業の雇用拡大に向け“米国製造業の課題克服に向けた包括的戦略”を公表したところである。しかし、その後、製造業関係者から期待されていたMEP(製造技術普及パトナー)予算に対する不満、商務省製造・サービス担当次官補候補者指名取消しを巡る失態等必ずしも円滑に進んでおらず、ブッシュ政権の製造業支援は腰の定まらないものとの指摘が聞こえてきている。

一方で、米国景気は回復基調にあるものの、依然Jobless Recoveryで国内雇用問題に対する国民の関心は高いと言われており、大統領選挙の年を迎え、民主党サイドは選挙戦の一つの争点として製造業の空洞化問題を取り上げはじめており、政治的な駆け引きを含め目が離せない状況になりつつある。

 

1.MEP等政府関連予算を巡る議論

Corporate Welfareであるとして企業に対する政府R&D予算支出に対してブッシュ政権は従来から否定的である。特に、MEPやATP(先端技術計画)予算については、大統領予算要求においては基本的に“0”に近く、それに対して議会側が最後はそれなりの予算をつけるという対応の繰り返しであった。

MEP、ATP予算に関する大統領予算案と議会承認額 (単位:ドル)

2001年
2002年
2003年
2004年
2005年

MEP予算

大統領案

1.1億

1.1億

1,300万

1,300万

3,900万

議会承認額

1.1億

1.1億

1.1億

3,900万

N/A

ATP予算

大統領案

1.5億

0

7,900万

1,000万

0

議会承認額

1.2億

1.5億

1.5億

1.5億

N/A

出典: "AAAS Congressional Action on R&D in the FY 2002, 2003, 2004, and 2005 Budget."

しかし、2005年予算については、製造業分野におけるR&Dの重視やMEPの再編を含む“イノベーションへの投資”という項目も入った製造業支援戦略が打出された直後でもあり、これら予算の拡充に関心と期待が持たれていた。ところが、さすがにMEP予算は“0”ではなかったものの、2004年議会がつけた予算と同規模となっており、製造業関係者からは、“ブッシュの製造業支援はかけ声ばかり”と疑問の声が出されている。

このような状況を受け、2月24日には、ホワイトハウスからSBRIやSTTRプログラムを有する省庁に対して、製造業関連の研究開発のプライオリティーを高めることを求めた大統領指令が出された。そして、26日にはDOCから、従来は自然災害や資源に依存する経済が打撃を受けた場合にコミュニティー等に対し出される助成金である経済調整助成金(EDA助成金)をMEP関係組織が受給する資格があるとの発表が行われた。

しかし、前者については具体的な目標、予算規模等についての言及は無く、また、EDA助成金についても予算額は40百万ウだがすでに半分は支出決定済みであり、あまりにも少ない支援であるとの声が製造業界からあがっている。そして、政権のこのような中小製造業者への仕打ちは、本件の政治問題化を避けられないものにしているとの非難が出てきている。

なお、ATP予算は、IT、電子機器、材料、製造技術を始め製造業関連への配分も7割を超え、また、件数でその6割以上が中小企業に支出されており産業界からは関心が持たれているプログラムではあるものの、イデオロギーの面からブッシュ政権は強くその存在を否定しており、2005年大統領予算では再び“0”要求となっている。

 

2.商務省製造業担当次官の指名

昨年9月、ブッシュ大統領が製造業担当次官を商務省に置くというアナウンスをして、半年を過ぎようとしている。しかし、未だもって、その指名すら行われていないのが現状である。

実は、候補者選定に関し先週ひと悶着あっている。ホワイトハウスは、3月11日、ネブラスカにてBehlenという金属加工業の社長を務めるラモンド氏を指名する予定で、発表のプレス会見を予定。しかし、会見を行うというアナウンスの1時間後には、スケジュール上の問題として発表がキャンセルされてしまった。この背景には、ラモンド氏の会社が2002年中国に工場を建設すると決定した後に、国内で75人の解雇を行った事実があり、これを大統領選挙の攻撃材料にされることを避けるためである(事実、ケリー候補は直後にこの事実についてのニュースリリースを行っている)といった指摘や、ネブラスカ選出の共和党Hegel上院議員がホワイトハウスからではなくプレスからこの指名の話しを聞かされたことに激怒したからであるとも言われている。

結局、本件はラモンド氏が辞退することで白紙に戻っているが、引き続き、製造担当次官候補者不在は続いている。

 

3.ケリー候補、民主党の動き

一方、昨年秋、民主党大統領候補のケリー上院議員は、@MEP予算を2005年に2億ドル、2014年には7.5億ドルに、また、ATP予算を4億ドルに拡大する“国内製造業及び労働者支援強化法”やA雇用創出税控除の導入を謳う“製造業雇用創出法”そして、B小規模製造事業者に対する貸付金拡充、就業者の訓練のためのグラント創設を中心とする“製造業支援・発展・教育推進法”を提出するなど、製造業支援には前向きな姿勢を打ち出している。

また、民主党側は、5月27日に“製造業サミット”をワシントンで開催する予定であるとしているのをはじめ、クリントン上院議員も、単に担当次官補の任命というブッシュ政権の取組みでは不十分であり、DARPAのような優れた技術開発プログラムを中心とする製造業研究開発局の設置を含む新たな法律を策定中であるとも言われている。大統領選挙の年を迎え、民主党サイドは選挙戦の一つの争点として製造業の空洞化問題を取り上げはじめており、政治的な駆け引きを含め目が離せない状況になりつつある。


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