ブッシュ大統領の2007年度予算:概要(その1)

 

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2006年2月10日

ブッシュ政権が2006年2月6日、総額2兆7,700億ドル(2006年度比で610億ドル、2.25%の増加)という2007年度大統領予算教書を発表した。予算教書発表に先立って行なわれる大統領の年頭教書演説は、政権の優先事項を明示し、ひいては予算の優先事項を示す指針となるため、ブッシュ大統領が年頭教書演説で発表した4つのイニシアティブの内、「米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative)」と「先進エネルギーイニシアティブ(Advanced Energy Initiative)」という2つのイニシアティブ(注1)が2007年度予算提案でどう具体化されるのか注目されていた。

国民と本土を守ることを最優先事項とし、減税政策が経済拡張に貢献したと自負するブッシュ大統領の2007年度予算提案は、(1)防衛・国土安全保障予算の増額;(2)減税の恒久化というここ数年来のテーマのほかに、莫大な財政赤字(注2)を2009年度までに半減するという確約をまもるため、(3)裁量的支出(discretionary spending)の削減(注3);(4)Medicare(老齢者医療保険)や社会保障(Social Security)他のエンタイトルメント(公的給付金)プログラムの削減(注4)を議会に要求する内容となっている。また、年頭教書演説での発言に違わず、研究実験(Research and Experimentation)税額控除の恒久化、連邦研究開発費の増額(注5)、数学・科学教育向け予算の増額(注6)といった施策を含む「米国競争力イニシアティブ」には106億6,000万ドル、および、米国の海外エネルギー資源依存度軽減そしてクリーンで手頃な価格のエネルギー開発を目的とする「先進エネルギーイニシアティブ」に21億ドル4,600万ドルを提案している。

2007年度予算案からMedicareや社会保障等の義務的支出(総予算の約60%)、および、支払利息(総予算の約9%)を除いた自由裁量予算(discretionary budget)は8,707億ドルで、2006年度予算の8,433億ドルよりも274億ドル(3.2%)の増額となっている。内訳をみると、国防関連予算が2006年度より285億ドル(6.9%)増えて4,393億ドル、国土安全保障関連予算が10億ドル(3.3%)増の331億ドルとなる一方で、防衛・国土安全保障以外の自由裁量予算は2年連続の削減となり、4,004億ドルから3,983億ドルに引き下げられている。

省庁別にみると、国防省と国土安全保障省に加え、国務省や退役軍人省、および、「米国競争力イニシアティブ」によって米航空宇宙局と(NASA)全米科学財団(NSF)が予算増額を享受する一方、農務省、商務省、教育省、厚生省、運輸省等、多数の省庁(注7)の予算が削減となっている。

ブッシュ政権の2007年度研究開発(R&D)予算(注8)は、2006年度予算1,343億5,100万ドルを26億200万ドル(1.9%)上回る1,369億5,300万ドルであるが、インフレ率(推定2.2%)を考慮すると、連邦政府R&D予算は実質的には1996年以来初めての減少(注9)となる。2007年度R&D予算の内、防衛関連R&Dが全体の約57.3%にあたる784億1,900万ドル(2006年度比2.1%増)となるのに対し、非防衛関連R&Dは前年度比1.7%増の585億3,400万ドル(全体の約42.7%)に留まり、ブッシュ大統領の就任以来、防衛関連R&Dと非防衛関連R&Dの格差は広がる一方となっている。基礎研究費は、「米国競争力イニシアティブ」の一環としてNSFと商務省の国立標準規格技術研究所(NIST)、および、DOE科学部が増額を受けることから、2006年度比1.2%増の281億9,700万ドルとなる一方、応用研究は265億4,300万ドル(前年度比7.8%減)、R&D施設・装置も41億8,100万ドル(1.8%減)に削減される。また、開発予算は昨年に続く増額で、2007年度予算は780億3,200万ドル(2006年度比6.2%増)まで引き上げられている。 

省庁別では、国防省のR&D予算が2.2%、NASAが7.5%、DOEが6.9%、NSFが8.3%、商務省のNISTが6.4%の増額となる一方、運輸省が20.9%、農務省が16.5%の削減を受けるほか、昨年大幅増額を享受した国土安全保障省のR&Dも5.6%削減となる。厚生省の国立衛生研究所は前年度とほぼ同額、環境保護庁や商務省の国立海洋大気局、および、教育省は昨年に続き、2007年度でもR&D予算が削減となっている。

このレポートでは、エネルギー省予算の概要を報告し、第2レポートで全米科学財団、商務省、厚生省、運輸省、および、国土安全保障省を、第3レポートで国防省、米航空宇宙局、環境保護庁、内務省、教育省、および、省庁間R&Dプログラムの予算概要を報告する。

I. エネルギー省

2006年1月31日の年頭教書演説で米国の「石油中毒」を指摘したブッシュ大統領は、2025年までに中東からの石油輸入量を75%削減するという目標を示し、発電源と自動車動力源という2つの重要分野においてブレークスルーを加速化させるためにエネルギー省(DOE)のクリーンエネルギー研究予算を22%増大する「先進エネルギーイニシアティブ」を提案した。更に、イノベーションの奨励と米国競争力の強化を狙った「米国競争力イニシアティブ」の一環として、DOE科学部の基礎研究予算を10年間で倍増する計画も提示している。厳しい財政状況下で、これら新イニシアティブの予算をどのように工面するのか注目されていたが、2006年2月6日に発表された2007年度大統領予算教書はDOE予算をほぼ前年度並みで据え置くもので、DOEに困難な選択を迫る(注10)内容となっている。

2007年度のDOE全体予算は、「2006年度エネルギー・水資源歳出予算法」(注11)で認可された2006年度予算を約582万ドル下回る235億5,676万ドル。DOEは、物理科学プログラム予算を倍増するという大統領の意思を汲み、2005年度・2006年度と削減の続いた科学予算を5億532万ドル(前年度比14.1%)増額して41億171万ドルまで引き上げる反面、この増加分を相殺するために、環境関連予算を2年連続で削減する。防衛関係の核プログラム(NNSA)への要求額は2006年度認可額より2億1,132万ドル(2.3%)多い93億1,581万ドルであるが、2006年度認可額は大統領要求額より2億9,275万ドル少なかったため、2006年度大統領要求と比較すると2007年度予算は8,143万ドルの減少となる。また、エネルギー関連は、2006年度には化石エネルギーと原子力科学技術の予算増加で全体的にも増額となったが、2007年度予算は前年度より約1億3,010万ドル(4.8%)少ない25億8,292万ドルとなる。DOE全体の予算内訳は下記の通り:

(単位:1,000ドル)

FY2006要求
FY2006認可
FY2007要求
FY2007 対 FY2006

国家核安全保障局(NNSA)

9,397,241

9,104,491

9,315,811

211,320増 (2.3%増)

エネルギー関連

2,566,750

2,713,020

2,582,923

130,097減 (4.8%減)

科学

3,462,718

3,596,391

4,101,710

505,319増(14.1%増)

環境関連

7,342,550

7,163,062

6,573,528

589,534減 (8.2%減)

マネジメント関連/連邦エネルギー規制委員会

673,331

985,608

982,783

2,825減 (0.3%減)

合 計

23,442,590

23,562,572

23,556,755

5,817減 (0.0%減)

  1. エネルギー関連予算の内訳: DOEに予算を計上する歳出法が、エネルギー・水資源歳出予算法に一本化されたことにより、昨年度までは「省エネルギー」と「再生可能エネルギー・エネルギー効率化」に二分されていたプログラムが、「エネルギー効率化・再生可能エネルギー(Energy Efficiency and Renewable Energy = EERE)」の下に統合されている。また、「送配電(Electric Transmission and Distribution)」は「配電・エネルギー信頼性(Electricity Delivery and Energy Reliability)」へと名称が変更されている。エネルギー関連予算の内訳は、「エネルギー効率化・再生可能エネルギー」が11億7,642万ドル(前年度比0.2%増)、「化石エネルギー」が6億4,888万ドル(22.9%減)、「原子力科学技術」が6億3,270万ドル(18.1%増)、「配電・エネルギー信頼性」が1億2,493万ドル(22.8%減)となっている。以下、(1)エネルギー効率化・再生可能エネルギー;(2)化石エネルギー;(3)原子力科学技術;(4)配電・エネルギー信頼性の各予算を概説する。

    (単位:1,000ドル)

    FY2006要求

    FY2006認可

    FY2007要求

    FY2007 対 FY2006

    エネルギー効率化・再生可能エネルギー

    1,200,414

    1,173,843

    1,176,421

    2,578増 (0.2%増)

    化石エネルギー

    759,956

    841,639

    648,876

    192,763減(22.9%減)

    原子力科学技術

    510,776

    535,660

    632,698

    97,038増(18.1%増)

    配電・エネルギー信頼性

    95,604

    161,878

    124,928

    36,950減(22.8%減)

    合 計

    2,566,750

    2,713,020

    2,582,923

    130,097減 (4.8%減)

    (1)エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)予算は2006年度比0.2%増の11億7,642万ドル。2005年8月8日成立の『包括エネルギー政策法』に合わせ、昨年度は「再生可能エネルギー・エネルギー効率化」に分類されていた水素の製造・運搬・貯蔵技術と「省エネルギー」に分類されていた燃料電池技術が一括され、水素技術という名称になっている。2007年度予算提案では、水素技術が4,017万ドル(2006年度比24.8%)の増額で1億9,580万ドルまで引き上げられるほか、バイオマス・バイオ精製R&D、ソーラーエネルギー、風力エネルギー、および、ビルディング技術の予算が増額となる。一方、2006年度に増額された施設・基盤整備と耐候化・省庁間プログラムが各々2,012万ドル(77.2%)と9,184万ドル(29%)という大幅削減を受けるほか、自動車技術と産業技術の予算も削減される。尚、分散型エネルギー源、地熱技術、および、水力発電の予算要求額がゼロとなっているが、これは、分散型エネルギー源がEEREから配電・エネルギー信頼性プログラムへと移譲され、地熱技術と水力発電は目的を達成したとして廃止が提案されているためである。主要プログラムの予算内訳は下記の通り:

    (単位:1,000ドル)

    FY2006要求
    FY2006認可
    FY2007要求
    FY2007 対 FY2006

    水素技術

    182,694

    155,627

    195,801

    40,174増(25.8%増)

    バイオマス・バイオ精製R&D

    72,164

    90,718

    149,687

    58,969増(65.0%増)

    ソーラーエネルギー

    83,953

    83,113

    148,372

    65,259増(78.5%増)

    風力エネルギー

    44,249

    38,857

    43,819

    4,962増(12.8%増)

    地熱技術

    23,299

    23,066

    0

    23,066減 (100%減)

    水力発電

    500

    495

    0

    495減 (100%減)

    自動車技術

    165,943

    182,104

    166,024

    16,080減 (8.8%減)

    ビルディング技術

    57,966

    69,266

    77,329

    8,063増(11.6%増)

    産業技術

    56,489

    56,855

    45,563

    11,292減(19.9%減)

    分散型エネルギー源

    56,629

    0

    0

    施設・基盤整備

    16,315

    26,052

    5,935

    20,117減(77.2%減)

    耐候化・省庁間プログラム

    310,067

    316,866

    225,031

    91,835減(29.0%減)

    水素技術プログラムは、大統領の水素燃料イニシアティブ(Hydrogen Fuel Initiative)(注12)支援するもので、2007年度の増額分は、燃料電池・水素貯蔵・水素製造のクりティカルパス技術に焦点をあてた研究開発努力、および、水素燃料電池自動車の実験とデータ収集へ充てられる。バイオマス・バイオ精製R&D予算の5,897万ドルという増額は、再生可能資源を利用する国内バイオ燃料生産の拡大を狙ったバイオ燃料イニシアティブ(Biofuels Initiative)が新設されたことを反映している。ソーラーエネルギー分野では、DOEはソーラー・アメリカ・イニシアティブ(Solar America Initiative)(注13)という新プログラムを設置、これを支援するために太陽光発電システムの予算を7,950万ドル増額する一方、太陽熱暖房・照明活動を150万ドル削減する。産業技術プログラムの3年連続予算削減要求は、既存プロジェクトが終結に向かっているためであり、施設・設備プログラムの予算削減は、国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の科学技術施設が2006年に完成することを反映している。

    (2)化石エネルギー計画の全体予算は、2006年度認可額より1億9,276万ドル少ない6億4,888万ドル。内、化石エネルギーR&D予算は4億6,969万ドルで、1億2,233万ドル(20.7%)の削減となる。石油技術、天然ガス技術、先端冶金研究、共同研究開発、輸出入認可プログラムが全て廃止となるばかりか、ブッシュ大統領が年頭教書演説で無公害石炭火力発電所に言及したにも拘わらず、石炭エネルギーも3億3,012万ドルまで引き下げられている。化石エネルギーR&D予算の主な内訳は下記の通り:

    (単位:1,000ドル)

    FY2006要求
    FY2006認可
    FY2007要求
    FY2007 対 Fy2006

    石炭

    351,000

    376,198

    330,119

    46,079減 (12.2%減)

    天然ガス技術

    10,000

    32,670

    0

    32,670減 (100%減)

    石油技術

    10,000

    31,680

    0

    31,680減 (100%減)

    プログラム指針(direction)

    98,941

    105,872

    129,196

    23,324増(22.0%増)

    先端冶金研究

    8,000

    7,920

    0

    7,920減 (100%減)

    共同研究開発

    3,000

    5,940

    0

    5,940減(100%減)

    DOEが2007年度提案で予算を要求しているプログラムは石炭だけであるため、化石エネルギーR&Dは石炭R&Dであるといっても過言ではない。石炭プログラムは、クリーンコール発電イニシアティブ(Clean Coal Power Initiative = CCPI)、FutureGen、および、基幹的石炭研究開発計画を含む大統領のクリーンコール研究イニシアティブ(Clean Coal Research Initiative)と燃料電池の2つから成っている。石炭R&Dの主な内訳は下記の通り:

    • CCPI は前年度より4,450万ドル少ない500万ドル … 同プロジェクトに既に計上されている予算(5億ドル)を効果的に利用するまで新予算の追加を制限。
    • FutureGenの予算は前年度比203.03%(3,618万ドル)増の5,400万ドル … 2007年度は進行中の申請許可や一次設計を引き続き進めるほか、詳細な施設設計や調達活動を支援。
    • 燃料プログラム予算は660万ドル削減され、2,210万ドル … 大統領の水素燃料イニシアティブ支援で、クリーンコールを原料とする低コスト水素生成の研究に焦点をあてる。
    • 先端研究プログラムの予算は5,260万ドルから2,890万ドルに削減 … 2007年度は、高効率かつクリーンな石炭火力発電所の開発を支援するイノベーションや先進コンセプトを狙った活動を重視。石炭利用科学の予算が増額となる以外は、材料研究や石炭バイオプロセシング等全てが減額になる。
    • 大統領の水素燃料イニシアティブの一環である燃料電池R&Dは、6,138万ドルから6,335万ドルに増額 … 第2フェーズにあるSECAの石炭ベース燃料電池プロジェクトで引き続き協力。
    • 炭素隔離R&D予算は760万ドル増額され、7,390万ドル … プログラムの重点は、低コストの二酸化炭素分離・回収技術、モニター・計測・検証技術、および、炭素隔離のシステム開発や実地テスト等。
    • 米中エネルギー・環境センター(U.S./China Energy and Environmental Center)は予定された活動の終了に伴ない、廃止。

    (3)原子力科学技術予算は、2005年度・2006年度に続く3年連続の増額で6億3,270万ドル(前年度比18.1%増)。この予算増額は、今後20年で50%拡大すると推定されているエネルギー需要問題への対応策として、クリーンで信頼性が高く、しかも、既に確立された技術である原子力発電にブッシュ政権が多大な期待をかけていることを明示するものである。研究開発費が1億2,339万ドル(55.1%)増額の3億4,713万ドルとなる一方で、昨年増額を受けた大学原子炉基盤整備・教育支援(University Reactor Infrastructure and Education Assistance)プログラムは廃止となる。原子力科学技術予算の主要内訳は下記の通り:

    • 核不拡散と核廃棄物処理の問題に対応しながら、米国国内および世界各地で原子力発電所普及を奨励する新規プログラム「世界原子力エネルギーパートナーシップ(Global Nuclear Energy Partnership = GNEP)」に2億5,000万ドル。
    • 2006年度に増額された原子力発電2010プログラムは1,130万ドル削減で5,400万ドル … プロジェクト開始予定日延期に伴なう削減。
    • 第四世代原子力システム・イニシアティブ(Generation IV Nuclear Energy Systems Initiative)も前年度の大幅増額から一転し、2007年度は2,310万ドルの削減で3,140万ドル … この削減は、新型原子力発電所や核廃棄物最少化努力といった他のR&D活動へ重点が移ったことを反映している。
    • 原子力利用水素イニシアティブ(Nuclear Hydrogen Initiative)は610万ドル少ない1,870万ドル … 予算削減は、研究室での実験計画が建設段階からテスト段階に移るにつれ、開発コストが減少したことを反映している。

    (4)配電およびエネルギー信頼性の2007年度全体予算は、前年度認可予算(1億6,188万ドル)比22.8%減の1億2,493万ドル(注14)。同プログラムでは、産業界・州政府・大学・国立研究所・利害関係者等とのパートナーシップによる研究、開発、実証、技術移転、啓蒙、アウトリーチ活動等を通して、米国の配電システムを近代化・拡大する国家努力を指導している。2007年度予算提案では研究開発に、前年度認可額を4,065万ドル(29.8%減)下回る9,564万ドルを要求している。主要な研究開発関連予算は下記の通り:

    (単位:1,000ドル)

    FY2006要求
    FY2006認可
    FY2007要求
    FY2007 対 Fy2006

    高温超伝導R&D

    45,000

    49,995

    45,468

    4,527減 (9.1%減)

    送電信頼性R&D

    9,220

    12,870

    12,870減(100%減)

    12,870減(100%減)

    配電近代化R&D

    4,037

    60,059

    0

    60,059減(100%減)

    エネルギー貯蔵R&D

    3,000

    2,970

    0

    2,970減(100%減)

    GridWise

    5,500

    5,445

    0

    5,445減(100%減)

    GridWorks

    5,000

    4,950

    0

    4,950減(100%減)

    可視化と制御

    17,551

    新規

    エネルギー貯蔵とパワーエレクトロニクス

    2,965

    新規

    分散型エネルギー源

    29,652

    新規

     

    • 高温超伝導R&Dは2006年度認可予算比9.1%減の4,547万ドル … 議会指定交付で増額した分を削減し、2007年度予算をほぼ2006年度要求レベルで要求している。
    • 送電信頼性R&D、配電近代化R&D、GridWise、および、GridWorksは、プログラム再編成により、可視化と制御(Visualization and Control)という新プログラムへ移譲。可視化と制御の2007年度予算は1,755万ドル。
    • エネルギー貯蔵はプログラム再編成によって、エネルギー貯蔵・パワーエレクトロニクスという新プログラムへ移譲。新プログラムの予算は300万ドル。
    • 分散型エネルギー源という新プログラムに2,970万ドルを要求 … 同プログラムは、次世代分散型発電装置および統合装置研究に関する主要な開発活動を支援する。エネルギー効率化・再生エネルギー(EERE)の分散型エネルギー源がプログラム再編により、ここへ移譲となった。

     

  2. エネルギー省の科学関連予算の内訳:ブッシュ大統領の「米国競争力イニシアティブ」の一環として、DOE科学部は2007年度に、前年度予算を5億5320万ドル(14.1%)上回る41億171万ドルを要求している。基礎研究予算を10年間で倍増するという大統領イニシアティブに基づき、科学関連予算の中でも特に、基礎エネルギー科学予算の増額(2億8,642万ドル増えて14億2,098万ドル)が目覚ましいものとなっている。高エネルギー物理学、原子物理学、先端科学演算研究、科学研究所基盤整備、核融合エネルギー科学も全て増額となるものの、唯一、生物・環境研究(前年度比12%削減)だけが削減となる。科学関連予算の主要費目の内訳は下記の通り:

    (単位:1,000ドル)

    FY2006要求

    FY2006認可

    FY2007要求

    FY2007 対 FY2006

    高エネルギー物理学

    713,933

    716,694

    775,099

    58,405増 (8.1%増)

    原子物理学

    370,741

    367,034

    454,060

    87,026増(23.7%増)

    生物・環境研究

    455,688

    579,831

    510,263

    69,568減(12.0%減)

    基礎エネルギー科学

    1,146,017

    1,134,557

    286,423増(25.2%増)

    286,423増(25.2%増)

    先端科学演算研究

    207,055

    234,684

    318,654

    83,970増(35.8%増)

    科学研究所基盤整備

    40,105

    41,684

    50,888

    9,204増(22.1%増)

    核融合エネルギー科学

    290,550

    287,644

    318,950

    31,306増(10.9%増)

    科学関連予算のハイライト:

    • 高エネルギー物理学の内、フェルミ研究所の予算は330万ドル増額され、スタンフォード線型加速器センター(SLAC)の予算も50万ドルの増額。大型ハドロン加速器(LHC)プロジェクトは2007年度で終了となるために430万ドルの削減を受けるものの、同施設支援費が420万ドル増額されるため、LHCプロジェクト全体では10万ドルの削減となる。また、国際線型加速器(ILC)の支援予算は倍増され6,000万ドルとなる。
    • 原子物理学予算では、トーマスジェファーソン国立加速器施設(TJHAF)の運営予算が1,080万ドル増額されるほか、ブルックヘイブン国立研究所の相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)の予算が3,030万ドル、ホリフィールド放射性イオンビーム施設(HRIBF)とATLASの予算が770万ドルの増額となる。また、連続電子ビーム加速器施設(Continuous Electron Beam Accelerator Facility = CEBAF)アップグレード予算として700万ドルの増額が要求されている。
    • 生物・環境研究の内、ライフサイエンス分野では、ヒトゲノム予算が前年度より1,170万ドル増えて7,460万ドル、Genomes to Life(GTL)予算は4,980万ドル増の1億3,530万ドルとなる。環境分野では、海洋科学および海洋炭素隔離研究の終結によって気候変動研究関連予算が660万ドル削減されるほか、議会交付指定プログラムである疾病診断・治療ツールを開発する医学的応用・計測学(Medical Applications and Measurement Science)も、プログラムの終了で1,251万ドル削減される。
    • 基礎エネルギー科学の内、材料科学工学の予算は2億6,650万ドル増、化学・地球科学・生物科学は4,790万ドルの増となる。
      • 材料科学工学: ナノスケール科学研究予算が2,420万ドル、ナノスケール科学研究センター(NSRCs)予算が3,550万ドル増額となる。また、大統領の水素イニシアティブへの予算が600万ドルの増額、エネルギー技術関連の基礎研究費も2,250万ドル増額となる一方で、その他研究費は650万ドルの削減となる
      • 化学・地球科学・生物科学: ナノスケール科学研究予算は2,220万ドルの増額で、大統領の水素イニシアティブへの予算は600万ドルの増額となる。エネルギー技術関連の基礎研究予算は2,240万ドル増額されるが、その他の研究支援は320万ドルの削減となる。
    • 先端科学演算研究予算では、Computational Partnershipsの予算が1,190万ドルの増額を受けるほか、オークリッジ国立研究所のリーダーシップ計算施設(Leadership Computing Facility = LCF)運営費が2,630万ドル、アルゴンヌ国立研究所のLCF運営費が2,250万ドル増額される。
    • 核融合エネルギー科学では、国際熱核融合実験炉(ITER)MIEプロジェクト予算が前年度の1,930万ドルから6,000万ドルに増額される。一方、国内の科学プログラムとその他の有効R&D(Enabling R&D)プログラム予算は670万ドル削減され、削減額はITER支援に回される。

     

  3. 先進エネルギーイニシアティブ

    ブッシュ大統領が年頭教書演説で華々しく発表した「先進エネルギーイニシアティブ」は、発電用エネルギー源の多様化、および、ガソリンやディーゼル燃料に代わる国産燃料開発の推進を2本柱とするもので、2007年度予算として21億ドル4,600万ドルを要求している。ソーラー・アメリカ・イニシアティブ(Solar America Initiative)(注15)や世界原子力エネルギーパートナーシップ(Global Nuclear Energy Partnership = GNEP)(注16)という新規プログラムが提案されてはいるものの、基本的には、DOEのEERE予算の内の7億7,100万ドル、化石エネルギーの4億4,400万ドル、原子力科学技術の3億2,900万ドル、それに科学部の5億3,900万ドルを加えた総額に、「先進エネルギーイニシアティブ」という新ラベルを付したに過ぎないという印象を抱かずにはいられない。事実、環境団体や事業者団体、宗教団体等60団体の連合は、持続可能なエネルギー研究開発への政府投資を削減するブッシュ大統領提案は不合理かつ無責任で、とんでもない戦略ミスであると批判し、議会に同予算要求案を拒絶するよう求める書簡を下院と上院の歳出委員会メンバーに送付したという。ブッシュ政権が「先進エネルギーイニシアティブ」と呼ぶ先導策の予算内訳は下記の通りである。

(単位:100万ドル)

FY2006認可

FY2007要求

FY2007 対 FY2006

EEREプログラム
 水素技術
 燃料電池技術
 自動車技術
 バイオマス
 ソーラー
風力
 地熱
 プログラム管理
EERE小計


80
75
182
91
83
39
23
58
632


114
82
166
150
148
44
0
67
771


34増 (42%増)
7増  (9%増)
16減  (9%減)
59増 (65%増)
65増 (78%増)
5増 (13%増)
23減(100%減)
9増  (0%増)
139増(22%増)

化石エネルギープログラム
 クリーンコール研究イニシアティブ
 その他発電システム/定置型燃料電池
 プログラム管理
化石エネルギー小計


314
62
86
461


281
64
99
444


33減 (11%減)
2増  (3%増)
14増 (16%増)
17減 (4%減)

原子力エネルギープログラム
 GNEP/先端燃料サイクルイニシアティブ
 第四世代原子力システム
 原子力発電2010
 原子力利用水素イニシアティブ
 プログラム管理
原子力エネルギー小計


79
54
65
25
28
251


250
31
54
19
38
392


171増(216%増)
23減 (43%減)
11減 (17%減)
6減  (24%減)
10増 (34%増)
141増(56%増)

科学プログラム
 ITER核融合プロジェクト
 核融合(ITER以外)
 ソーラー
 バイオマス
 水素
 プログラム管理
科学プログラム小計


25
263
28
28
58
19
421


60
259
62
35
101
22
539


35増 (140%増)
4減  (2%減)
34増 (121%増)
7増  (25%増)
43増 (74%増)
4増  (21%増)
119増(28%増)

先進エネルギーイニシアティブ合計

1,765

2,146

381増(22%増)

 

 


注釈:

1:他の2つは、「世界をリードする強いアメリカ」と「手頃で便利なヘルスケア」というイニシアティブ。

2:2006年度の推定財政赤字は4,230億ドルでこれまでの最大。但し、これには補正予算で要求される予定の対テロ戦争費(700億ドル)やハリケーン被害復興費(180億ドル)が含まれていない為、2006年度の財政赤字が更に膨れあがるのは必至と見られている。一方、2007年度の財政赤字は3,540億ドルと推定されている。

3: ブッシュ大統領によると、2006年度予算で廃止または大幅縮減を提言した154のプログラムの内の89提言を議会が受け入れたことで、65億ドルの節減を達成したという。2007年度予算提案では、91プログラムの廃止と50プログラムの大幅縮減が提言されている。廃止対象にあげられているのは、Even Start識字教育事業や高等学校職業教育州政府グラント等教育省の計42プログラム、商務省の先端技術計画(ATP)、エネルギー省の地熱技術・石油技術・天然ガス技術プログラムや大学原子炉基盤整備プログラム、内務省の水陸保全基金(Land and Water Conservation Fund)、厚生省のコミュニテイーサービス交付金プログラム、主にマイノリティーや女性オーナーを対象とする中小企業庁の小口貸付(Microloan)プログラムおよび小口貸付技術支援プログラム等。大幅縮減の対象は、エネルギー省の耐候化支援グラント、商務省の製造技術普及計画(MEP)、教育省の身体教育、労働省の州政府への職業訓練グラント、住宅都市開発省のコミュニティー開発交付金プログラム等。ブッシュ政権はこれによって2007年度に150億ドルの予算節減が可能であるとしている。

4:ブッシュ政権は、2007年から2011年までの5年間で650億ドルの削減を提案している。

5:具体的には、全米科学財団、エネルギー省の科学部、商務省の国立標準規格技術研究所を通して実施される基礎研究予算を10年間で倍増するというもの。この達成には、年間7%づつの増額が必要となる。

6:同施策の一環として、ブッシュ政権は教育省の数学・科学教育プログラムの新規予算として3億8,000万ドルを提案している。

7:先進エネルギーイニシアティブで増額確実かと期待されたDOE予算も、僅かとはいえ、減少となる。

8:連邦政府R&D予算については、全米科学振興協会(AAAS)が行政管理予算局(OMB)のデータ、各省庁の予算部の情報および予算説明に基づいて算出しているAAAS Preliminary Analysis of R&D in the FY 2007 Budgetの数値を使用。

9:米国議会が2006年度R&D予算として、ブッシュ大統領要求額(1,323億400万ドル)より20億4,700万ドル多い1,343億5,100万ドルを計上認可したため、2006年度R&D予算は実質でも増額となった。

10:E&E News PMによると、Samuel Bodmanエネルギー長官は予算教書発表後の記者会見で、水素技術とバイオマス研究が他の再生可能エネルギー・エネルギー効率化プログラムを犠牲にして選ばれたものであると語ったという。DOEの地熱研究プログラムは廃止となるが、これは地熱が有効なエネルギー資源でないということではなく、追求する必要がないということでもない。限られた予算をどこに傾注するか、最終的には大統領判断で決定したと説明したという。

11:米国議会はDOE予算を、エネルギー・水資源歳出法と内務省歳出法の2本立てで計上してきたが、昨年から全てのDOEプログラムがエネルギー・水資源歳出法の下で計上されることになった。2006年度の同歳出予算法は2005年11月19日に大統領の署名をもって法制化されている。

12:水素燃料電池自動車や基盤技術の開発促進により米国の石油対外依存を軽減しようという5ヵ年計画で、総予算は12億ドル。DOEの科学部、化石エネルギー部、原子力科学技術部、更には、運輸省も参加している。

13:2015年までに系統連系型太陽光発電の5〜10ギガワット増設を促進するイニシアティブ。

14:ブッシュ大統領の2006年度要求額は9,564万ドルであったため、前年度要求額よりは2,929万ドルの増額となる。

15:新規予算で6,500万ドルの要求。

16:昨年度までの先端燃料サイクル・イニシアティブを統合したもので、2007年度予算はこの新名称の下で総額2億5,000万ドルを要求。


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