ブッシュ大統領の2007年度予算:概要(その3)

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2006年3月1日

 

このレポートでは、34億2,300万ドルという研究開発(R&D)予算増額の約66.8%を受ける国防省、月有人飛行がブッシュ大統領の最優先プログラムの一つとなっているにも拘わらず、自由裁量予算は前年度レベルより僅か1%の微増に甘んずる米航空宇宙局(NASA)、ブッシュ大統領の提案した「米国競争力イニシアティブ」の一環として数学・科学教育の改善・推進に挑む一方で、42ものプログラム廃止に直面する教育省、および、環境保護庁、内務省、そして、省庁間プログラムの予算について概説する。

 

VII. 国防省

国防省の2007年度自由裁量予算は、2006年度予算(4,108億ドル)を285億ドル(6.9%)上回る4,393億ドル。2007年度予算は前年度に引き続き、同省の重点を、冷戦時代の大規模な核報復を念頭に置いた固定的な(static)軍隊や準備態勢から、ならず者国家やテロネットワークに対応可能な機動部隊や侵攻軍、および、21世紀以降に必要となる戦闘能力へと移行していく努力を反映した予算策定となっている。このため、予算案では、特別作戦部隊(Special Operations Forces = SOF)の大隊33%増員、特別偵察を行う海兵隊特別作戦部門の新設、海軍SEAL(特殊部隊)の増員、特別作戦部隊や情報部隊のための言語トレーニング、更には、無人飛行機(Unmanned Aerial Vehicles = UAVs)の導入拡大、小型核兵器・ミサイル防衛・攻撃防衛能力を支えるインフラストラクチャーという新しい3本柱(New Triad)の開発と精緻化、等も提案している。

ブッシュ大統領は、就任以来毎年数十億ドルの増額を要求した国防省の研究開発(R&D)予算を、昨年の2006年度予算案では2005年度比0.6%(4億1,700万ドル)という微増要求に留めたが、2007年度予算要求では、前年度予算の719億4,600万ドルを22億8,800万ドル(3.2%)上回る742億3,400万ドルを提案している。軍別では、陸軍と海軍のR&D予算が各々1.5%と9.7%の削減となる一方で、空軍のR&D予算は12.6%の増額、および、防衛先端研究局(Defense Advanced Research Projects Agency = DARPA)を始めとする国防関連機関のR&D予算も6.4%の増額となる。基礎研究と応用研究の予算は4年連続の減額要求で、各々、前年度比3.3%と13.4%の削減(注:1)となる一方、開発予算は30億9,400万ドル(4.7%)増の683億1,500万ドルまで引き上げられる。国防省の施設・設備予算は2006年度予算を6,700万ドル(77.9%)下回る1,900万ドルという要求で、2005年度予算の約8分の1まで縮減となる。国防省R&D予算の内訳は下記の通り:         

(単位:100万ドル)

2005年度

2006年度要求

2006年度推定

2007年度要求
2007年度 対 2006年度

基礎研究

1,513

1,319

1,470

1,422

48減 (3.3%減)

応用研究

4,851

4,139

5,169

4,478

691減 (13.4%減)

開発

63,903

65,331

65,221

68,315

3,094増 (4.7%増)

施設・設備

155

50

86

19

67減 (77.9%減)

合 計

70,422

70,839

71,946

74,234

2,288増 (3.2%増)

国防省予算のハイライト:

  • DARPAの予算は、2006年度には2005年度とほぼ同額の29億7,800万ドル(注:2)に留まったが、ブッシュ大統領は2007年度予算案でこれを3億1,600万ドル(10.6%)増額して32億9,400万ドルまで引き上げることを提案している。基礎研究を支援する防衛研究科学(Defense Research Sciences)予算は、2005年度・2006年度と2年連続の削減を被ったが、2007年度には前年度を1,740万ドル上回る1億5,070万ドル(注:3)と、増額に転じている。応用研究予算と先端技術開発予算は昨年度同様に増額で、応用研究は前年度比8.7%増の15億3100万ドル、先端技術開発は12.4%増の15億8,960万ドルとなる。応用研究では、(1)情報通信技術;(2)認知(cognitive)コンピューティングシステム;(3)戦術的技術(Tactical Technology);(4)材料技術とバイオ技術;(5)情報通信技術が全て前年度よりも増額となる一方、生物兵器防衛の予算だけが2年連続の削減(前年度比24.2%減)要求となっている。先端技術開発では、2006年度に倍増された陸上戦技術(Land Warfare Technology)が2007年度には60.9%減の4,900万ドルまで削減、前年度に7.6%の増額を受けたDARPA機密プログラムの予算が5.4%の削減となる以外は、センサー技術、宇宙プログラム技術、先進エレクトロニクス技術他全てが増額される。
  • 陸海空軍の大学研究イニシアティブ総予算として、米国議会は2006年度に大統領予算要求額(2億4,800万ドル)より2,400万ドル多い2億7,200万ドルを認可したが、2007年度大統領案はこれを約2,200万ドル(8.5%)下回る2億5,000万ドルを提案。
  • 連邦政府の研究所や優良センター、大学付属研究センターを活用して民間部門の研究にてこいれする産学研究センターの予算は昨年に続く減額要求で、前年度より1,410万ドル(11%)少ない8,640万ドル。
  • 国家防衛にとっての重要分野で、米国高等教育機関の研究能力および科学者やエンジニア育成能力の向上を支援する防衛EPSCoR計画予算は、2006年度大統領要求額とほぼ同額ながら、議会認可予算よりは23.4%少ない950万ドル。
  • 2007年度の無人飛行機(UAVs)・無人車両(UGVs)の開発および調達予算は19億ドル。この内の16億8,700万ドルはUAVの開発・調達(注:4)予算。
  • 陸軍と海軍のインハウス研究予算は各々8.6%と8.4%の削減で、総額は3,860万ドルから3,530万ドルに減少。
  • 次世代戦闘機(Joint Strike Fighter)の2007年度予算は、前年度比12.1%増の52億9,000万ドルまで増額される一方、空軍のF-22A戦闘機開発予算は昨年度に続く縮減で、42億1,500万ドルから27億8,200万ドルまで削減となる。
  • 陸軍の未来戦闘システム(Future Combat System)の2007年度予算は、前年度比6億2,200万ドル増の37億4,600万ドル。
  • 2006年度に大幅増額(注:5)を享受した化学・生物兵器防衛計画(Chemical and Biological Defense Program)の2007年度予算は、9,000万ドル(8.6%)減の9億5,900万ドル。
  • ブッシュ政権の最優先プロジェクトの一つでありながら、2006年度予算案で意外にも削減が提案されたミサイル防衛R&Dは、2007年度予算案では前年度より16億6,300ドルの増額要求で104億200万ドル。
  • 海軍の材料・エレクトロニクス・コンピュータ技術、空軍の軍民両用(Dual Use)科学技術プログラム、および、大学と産業界、又は、大学と政府研究所の共同研究を促進する政府・産業界の大学研究共同スポンサーシップ(Government/Industry Cosponsorship of University Research)等が廃止となる。
  • 国家ナノテクノロジー・イニシアティブに対する国防省投資は、前年度より9,100万ドル(20.9%)少ない3億4,500万ドル。

 

VIII. 米航空宇宙局

ブッシュ大統領が火星探査への足掛かりとして月への有人飛行再開構想を打ち出したことは、同政権が米航空宇宙局(NASA)を優先視していることを示すものであるにも拘わらず、2007年度のNASA全体予算は168億ドルで、前年度比より僅か1%(2億ドル)増額されているに過ぎない。幸いにも、スペースシャトルのR&D以外の予算が7億2,100万ドル減少する見通しのため、その節減分が同局のR&Dに回され、R&D予算は前年度レベルを8億5,100万ドル(7.5%)上回る122億4,500万ドルまで増額となる。しかしながら、この予算増額分は、スペースシャトルに代わる有人宇宙船を遅くとも2014年までに開発するというNASA計画によってそっくりと食い尽くされるため、同局のその他R&D予算は減少を被ることになる。2007年度には、開発費が30.6%という大幅増額を受ける反面、基礎研究、応用研究、施設・設備は軒並み削減となる。NASA R&D予算の内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2006年度推定

2007年度要求

2007年度 対 2006年度

基礎研究

2,305

2,226

79減 (3.4%減)

応用研究

1,759

1,118

641減 (36.4%減)

開発

5,174

6,755

1,581増 (30.6%増)

施設・設備

2,156

2,146

10減 (0.5%減)

合 計

11,394

12,245

851増 (7.5%増)

                                                

NASA予算のハイライト:

  • 科学ミッション部門(Science Mission Directorate)の2007年度要求額は2006年度レベルを7,630万ドル(1.5%)上回る53億3,000万ドルとなっているものの、2006年度の大統領要求額よりは1億4,600万ドル、2005年度レベルよりは約2億ドル少ない計上となっている。同部門は下記の3つのテーマに分けられる:
    1. 「太陽系探査」の予算は前年度比1.8%増の16億1,020万ドル。2009年に打ち上げ予定の火星科学ラボ(Mars Science Laboratory)の予算として3億4,790万ドル、土星軌道を回るカッシニー宇宙船、水星へのMessengerミッション、冥王星とカイパーベルトへのNew Horizonsミッションの予算として1億1,950万ドルを要求。
    2. 「宇宙(The Universe)」の2007年度予算は、昨年の削減要求から増額に転じ、前年度より130万ドル多い15億920万ドル。ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡には前年度比21.7%増の4億4,310万ドル、ハッブル宇宙望遠鏡の作動とデータ分析および2008年度初旬予定のスペースシャトルによる望遠鏡保守ミッションの準備費として前年度比25.4%増の3億3,670万ドルを要求。
    3. 2006年度に削減を受けた「地球-太陽系」は、2007年度予算案では前年度レベル2.2%(4,710万ドル)増の22億1,060万ドル。NASAの天候・気候・自然災害・宇宙気象予報能力を改善する地球-太陽研究の予算は前年度比0.4%減の8億7,840万ドル、炭素観測衛星(Orbiting Carbon Observatory)ミッションへの投資は6,820万ドル、アクエリアスの最終設計と初期テスト予算が6,550万ドル。
  • 探査システムミッション部門(Exploration Systems Mission Directorate)の2007年度予算は、前年度比30.4%(9億2,820万ドル)増の39億7,830万ドル。同部門は下記の3テーマに分けられる:
    1. 月や火星を超えた有人探査を可能にするシステムの開発・実証・配備を行う「コンスタレーションシステム(Constellation Systems)」では、有人宇宙探査船(Crew Exploration Vehicle)や打ち上げロケット(Crew Launch Vehicle)プロジェクトの開発活動を支援するため、2007年度予算として前年度比76.4%(13億2,400万ドル)増の30億5,760万ドルを要求。
    2. 「探査システム研究・技術」は6.7%(4,640万ドル)の削減で6億4,6100万ドル。2006年度に予算のつかなかった百周年チャレンジ(Centennial Challenges)計画を復活(1,000万ドル)させるほか、ロボット月探査計画の予算を2億7,270万ドルに倍増する。プロメテウス原子力システム技術の開発計画の予算は前年度比87.6%削減の940万ドル、有人およびロボット探査ミッションを手頃で効率的かつ安全で持続可能に行う為の重要技術を開発する探査技術開発計画の予算は前年度比26.6%削減の3億5,400万ドル。
    3. 太陽系を探査する人間の生存に必要不可欠な知識や技術を開発する「人間系研究・技術(Human Systems Research and Technology)」は2007年度予算案で、前年度比56%という大幅削減を受け、予算要求額は2億7,460万ドルまで引き下げ。 
  • 航空学研究ミッション部門(Aeronautics Research Mission Directorate)の2007年度予算は前年度レベルを1億5,970万ドル(18.1%)下回る7億2,440万ドル。航空機の安全技術向上を目的とする航空安全(Aviation Safety)予算は4,630万ドル削減で1億220万ドル、混雑する米国空域のために革新的な解決策を研究開発する空域システム(Airspace Systems)の予算は30.9%減の1億2,000万ドル。
  • 宇宙活動ミッション部門(Space Operations Mission Directorate)の予算要求額は、2007年度レベル比9.2%(6億3,530万ドル)減の62億3,440万ドル。下記の3つのテーマに分けられる:
    1. 「国際宇宙基地(ISS)」の予算は、前年度3.3%増の18億1,130万ドル。
    2. スペースシャトルの予算は7億2,080万ドル削減(注:6)されて40億5,670万ドル。
    3. 宇宙通信・打上事業・ロケット推進実験・乗組員の健康安全を含む「宇宙・フライト支援」は、前年度比8.2%増の3億6,650万ドル。ロケット推進実験の予算として6.4%増の6,810万ドル、乗組員の健康安全に4%増の1,040万ドルが要求されている。
  • 省内支援プログラム部門(Cross-Agency Support Programs)は、進行中の幾つかの活動を重視し、同局独特の施設を管理する改良型モデルを確立するために新設された部門で、2007年度の予算要求額は4億9,170万ドル。同部門は4テーマに分けられるが、その内の「教育」と「革新的パートナーシップ計画(Innovative Partnership Program)」という2テーマの概要は下記の通り:
    1. 「教育」テーマは理工系数学分野の高等教育を学生に奨励する努力を継続するもので、2007年度予算は前年度比5.6%減の1億5,330万ドル。小中高等学校の教育(4,720万ドル)、高等教育(5,400万ドル)、電子教育(900万ドル)、インフォーマル教育(250万ドル)、および、マイノリティ対象の大学研究・教育(4,060万ドル)を支援する。
    2. 「革新的パートナーシップ計画」は、産業界や学界、または、政府省庁や国立研究所等とのパートナーシップを通じて、NASAミッションやプロジェクトに代替テクノロジーを提供することを目的とするもので、2007年度予算は前年度より7.9%(1,690万ドル)少ない1億9,790万ドル。中小企業革新研究(SBIR)予算として1億260万ドル、中小企業技術移転計画(STTR)予算として1,230万ドル、技術移転に3,590万ドル、宇宙用の製品開発に1,450万ドル、エンタープライズ機動力(Enterprise Engine)に1,230万ドルを要求している。

  

IX. 環境保護庁

環境保護庁(EPA)の2007年度自由歳出予算は、前年度より3億ドル(4.1%)少ない73億ドル。同庁のR&D予算は、2006年度比4,300万ドル(7.2%)減の5億5,700万ドルで、基礎研究、応用研究、開発、全ての予算が削減となっている。但し、この予算削減の大半は、米国議会が2006年度予算でEPAに指定交付したプログラムの廃止に起因するものであって、2006年度の大統領要求と比較すると、2007年度要求額は僅か800万ドル(1.4%)の削減となる。EPAのR&D予算内訳は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2006年度要求
2006年度推定
2007年度要求
2007年度 対 2006年度

基礎研究

70

101

94

7減 (6.9%減)

応用研究

386

387

359

28減 (7.2%減)

開発

113

112

104

8減 (7.1%減)

合 計

569

600

557

43減 (7.2%減)

EPA予算のハイライト:

  • 005年包括エネルギー政策法の定めるEPAの新たな優先事項を支援するため、約1億ドルを計上。主な内訳は、@新たなディーゼル排出削減プログラムに5,000万ドル;A地下貯蔵タンクからの漏れを防ぐ、地下貯蔵タンクグラント予算に3,760万ドル(2006年度比1,180万ドル増額);B再生可能燃料使用基準(renewable fuel standard)の策定・実施に1,100万ドル;C五大湖の浄化・保護予算として7,000万ドル(2,000万ドル増);Dチェサピーク湾とその支流の保護・水質向上・回復を目的とするチェサピーク湾プログラムに2,600万ドル(400万ドル増)となっている。
  • EPAの国土安全保障活動予算は前年度より5,500万ドル(42.6%)多い1億8,400万ドル。主な内訳は下記の通り:
    1. テロ攻撃から飲料水を守るプログラムに3,300万ドル … これには、飲料水処理場の汚染を早期に警報する「水資源監視官(Water Sentinel)」というパイロットプログラムの増設も含まれる。
    2. 環境関連研究所の対応準備と即時対応能力を確立するプログラムに1,000万ドル。
    3. テロ攻撃で汚染された環境の除染、および、同活動に関連する研究開発に1,000万ドル
  • 人造ナノ材料がヒトの健康や環境に及ぼす影響、および、ナノテクノロジー有効利用の調査に、2007年度予算として総額860万ドル(前年度比400万ドル増)を計上。
  • 州政府・地方政府への大気質管理グラントは2億2,030万ドルから1億8,520万ドルまで削減、クリーンなスクールバス・イニシアティブ(注:7)は廃止。  
  • 省庁間イニシアティブである気候変動科学プログラム(CCSP)への予算は、2006年度の1,860万ドルから1,750万ドルに減少。
  • STAR(Science to Achieve Results)プログラムやGRO(Greater Research Opportunity)大学院/学士奨学金等を支援するフェローシップグラントは330万ドル削減されて840万ドル。
  • スーパーファンド予算は、2006年度を1,690万ドル上回る12億5,800万ドルで、2007年度には40ヶ所の浄化・修復作業を完了する予定。
  • 放棄された工業用地を再開発するブラウンフィールド計画の予算は前年度比0.5%増の8,900万ドルで、EPAは約1,000ヶ所の用地を査定評価する予定。

 

X. 内務省

内務省の2007年度自由裁量予算は、前年度比3%減の105億2,600万ドル。同予算を戦略ミッション別に見ると、@国家のエネルギー安全保障強化を目的とする資源利用(Resource Use)に15億ドル;A景観や河川流域の改善、文化遺産・自然遺産の保護を目的とする資源保護(Resource Protection)に26億ドル;Bリクリエーション(Recreation)に2億ドル;Cコミュニティサービス(Serving Communities)に50億ドルの配分となっている。同省のR&D予算は3年連続の削減要求で、2007年度要求額は前年度レベル(6億3,700万ドル)を3,700万ドル下回る6億ドルに引き下げられている。内訳では、基礎研究と応用研究の予算が各々2%と6.4%削減される一方、開発費は前年度と同額となっている。

内務省予算のハイライト:

  • 内務省予算に盛り込まれたエネルギー計画予算の総計は前年度より約4,350万ドル多い4億6,750万ドル。主要なプログラムは下記の通り:
    1. 大陸棚(Offshore Continental Shelf)における石油・天然ガス開発の助長に、鉱物資源管理部(Minerals Management Services = MMS)予算で210万ドルを配分。
    2. オフショアでの斬新かつ革新的な再生可能エネルギー開発を管理する包括的プログラムの確立に、MMS予算で650万ドルを計上。
    3. オイルシェール(油頁岩)の開発に、土地管理局(Bureau of Land Management = BLM)予算で430万ドル(前年度比330万ドル増)、米国地質調査局(US Geological Survey = USGS)予算で50万ドルの、計480万ドルを計上。
    4. ガスハイドレートの研究開発に、MMS予算で100万ドル、USGS予算で50万ドル、BLM予算で43万ドルの、計193万ドルを計上。
    5. 米国議会が2006年に北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge = ANWR)掘削解禁法案を成立させ、2008年に第一回リース販売、2010年に第二回目のリース販売が行われることを想定し、2007年度予算案では80億ドルのボーナス収入を見込んでいる。このため、2007年度のBLM予算にはANWRリースプログラムの準備・実施支援費として1,240万ドルが盛り込まれている。
  • MMS管轄の重油漏れ研究(Oil Spill Research)プログラムの2007年度予算は前年度より10万ドル少ない700万ドル。
  • 内務省の主要科学機関であるUSGSの2007年度R&D予算は2年連続の削減で、前年度(5億6,100万ドル)より2,400万ドル(4.3%)少ない5億3,700万ドル。
    1. USGSのマッピング・遠隔センサー探査・地理学調査(Mapping、Remote Sensing, and Geographical Investigations)の予算は、予算再編成によって、地形マッピング(注:8)(Topographic Mapping)が同費目から事業情報(Enterprise Information)へと移管されたため、5,270万ドル減の7,660万ドル。
    2. 地質学活動予算は昨年に続く減額要求で、2006年度より1,790万ドル少ない2億1,740万ドル。
    3. (3) 省庁間プログラムであるCCSPへの予算は、100万ドル(3.7%)削減で2,600万ドル。

 

XI. 教育省

教育省の2007年度予算は544億1,000万ドルで、2006年度比5.5%(31億4,000万ドル)の削減となっている。年頭教書演説でイノベーションの推進と競争力の強化のためには有能な科学者やエンジニアの育成が必至であると訴えたブッシュ大統領は、2007年度予算案で、自我自賛する「落ちこぼれゼロ運動(No Child Left Behind)」予算を前年度比4.6%増の244億ドルに増額するほか、高等学校改革イニシアティブ(High School Reform Initiative)に14億7,500万ドルを計上している。一方で、新イニシアティブや最優先プログラムの予算を捻出するために、42のプログラムを廃止して35億ドルの節減を行うことも提案している。重複または不採算として廃止対象となっている主なプログラムは下記の通り:

  • テクノロジーを授業に融合する「教育テクノロジー州政府グラント(Education Technology State Grants)」 … 2億7,200万ドル
  • 低所得家庭の小中高生の早期大学進学準備活動を支援する「GEAR UP(Gaining Early Awareness and Readiness for Undergraduate Programs)」計画 … 3億300万ドル
  • 安全で麻薬のない学校およびコミュニティ州政府グラント … 3億4,700万ドル
  • 通信教育プロジェクトへの競争グラントを支援する「Star Schools」プログラム … 1億500万ドル
  • 恵まれない若者の高校卒業およびそれ以後の高等教育(postsecondary education)入学を奨励するカレッジに競争グラントを提供する「TRIO Talent Search」計画 … 1億4,500万ドル
  • 恵まれない若者向けの集中講座を支援するカレッジに競争グラントを提供する「TRIO Upward Bound」計画 … 3億1,100万ドル。
  • 「高等学校職業教育州政府グラント(High School Vocational Education State Grants)」 … 11億8,200万ドル。

教育省予算のハイライト:

  • 米国競争力イニシアティブの一環として、小中高等学校の数学・科学教育の向上を図るプログラムに3億8,000万ドルを拠出。同プログラムの内訳は下記の通り:
    1. 幼稚園から7年生(注:9)(K-7)までの生徒を、後年のより難しい授業に備えさせる「Math Now for Elementary School Students」イニシアティブに1億2,500万ドル、中高等学校の生徒(注:10)を対象とする「Math Now for Middle School Students」イニシアティブに1億2,500万ドル。
    2. Math Now プログラムの実施を指導するため、重要な数学の課題と教育原則を確認する「国家数学委員会(National Mathematics Panel)」の新設に1,000万ドル。
    3. 数学と科学で最大の効果をあげている連邦政府の教育プログラムを判定する「数学・科学プログラムの評価(Evaluation of Mathematics and Science Programs)」に500万ドル。
    4. アドバンス・プレースメント(Advanced Placement = AP)や国際バカロレア(International Baccaluareate = IB)の数学・科学・外国語を教える教師を5年間で7万人増数し、AP-IBテストに合格する学生の増数を目的とする「アドバンスト・プレースメント(AP)」プログラムに9,000万ドル。
    5. 専門家が高等学校で数学・科学中心のクラスを教えることを奨励する「非常勤講師団(Adjunct Teacher Corps)」の創設に2,500万ドル。
  • 大統領提案の「高等学校改革イニシアティブ」に14億7,500万ドル。
  • 大統領が提案した他省庁参加プログラムである、「国家安全保障の為の言語習得イニシアティブ(National Security Language Initiative)(注:11)」に対する教育省の予算は3,500万ドル。米国の国家安全保障に不可欠な言語として特に、アラビア語・中国語・ペルシャ語・ヒンドゥー語・日本語・韓国語・ロシア語・ウルドゥー語を重視している。

 

XII. 省庁間プログラム

A. ネットワーキング・情報技術R&D(Networking and Information Technology R&D = NITRD)

ブッシュ大統領のネットワーキング・情報R&D(NITRD)に対する2007年度予算要求額は3億8,900万ドルで、2006年度の2.4%(7,200万ドル)増となっている。米国議会が認可した2006年度NITRD予算は、商務省とEPAが大統領要求とほぼ同額であったのを除くと、他の省庁は全て要求額以上の増額を享受している。2007年度大統領予算案では、NITRDへの最大拠出者であり、活動調整のリーダー役を務めるNSFの予算を前年度より11.6%増額する一方で、国防省と厚生省のNITRD予算を各々、9.8%と1.8%削減している。また、エネルギー省、NASA、商務省の予算も僅かなりとも増額され、EPAは前年度並みとなっている。2007年度大統領予算案では更に、サイバーセキュリティと情報保証(information assurance)の研究の必要性を答申した大統領情報技術諮問委員会(President's Information Technology Advisory Committee)の提言に従い、NSFのサイバーセキュリティと情報保証予算を28%、国土安全保障省(DHS)のそれを43%、国立標準規格技術研究所(NIST)の予算を11%増額している。NITRDに参加する連邦各省庁の拠出額は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2005年度実績
2006年度推定
2007年度要求
2007年度 対 2006年度

全米科学財団(NSF)

811

810

904

94増 (11.6%増)

国防省

775

1,128

1,018

110減 (9.8%減)

厚生省(NIH)

571

551

541

10減 (1.8%減)

エネルギー省

377

384

473

89増 (23.2%増)

NASA

163

78

4増 (5.1%増)

4増 (5.1%増)

商務省

60

60

65

5増 (8.3%増)

環境保護庁(EPA)

4

6

6

±0

合 計

2,761

3,017

3,089

72増 (2.4%増)

B. 国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(National Nanotechnology Initiative = NNI)

2007年度のNNI予算要求額は、前年度予算を2,400万ドル(1.8%)下回る12億7,500万ドル(注:12)であるものの、2006年度予算要求額(10億5,400万ドル)と比較すると、2億2,100万ドル(21%)の増額となる。NNIは、@最先端研究への投資;A学際的な優良センターの創設;B重要研究インフラの構築によって、ナノテクノロジーの基礎研究および応用研究を支援しているほか、ナノテクノロジーの社会的影響 …倫理法律上の問題や、ヒトの健康面・環境面の問題等… を取り上げる活動をも支援している。2007年度予算では、ナノテクノロジーがヒトの健康や環境に及ぼす影響、および、潜在的リスクの管理方法に関する研究予算をEPAがほぼ倍増するほか、NSF・厚生省・NIST・国防省・農務省もこの分野の研究に資金を提供している。昨年はまた、大統領の科学技術諮問委員会(President's Council of Advisors on Science and Technology = PCAST)が策定した報告書(注:13)の提言に応じて、新たに、労働省と教育省がNNIを管理する省庁間グループに加入するという進展もあった。NNIに参加する連邦10省庁(注:14)の拠出額は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2005年度実績
2006年度推定
2007年度要求
2007年度 対 2006年度

NSF

335

344

373

29増 (8.4%増)

エネルギー省

208

207

258

51増 (24.6%増)

国防省

352

435

345

90減 (10.5%減)

厚生省(NIH)

168

175

173

2減 (1.1%減)

商務省(NIST

79

76

86

10増 (13.2%増)

NASA

45

50

25

25減 (50.0%減)

農務省

3

5

5

±0

環境保護庁(EPA)

7

5

9

4増 (80.0%増)

DHS

1

1

±0

司法省

2

1

1

±0

合 計

1,200

1,299

1,275

24減 (1.8%減)

太字は「21世紀ナノテクノロジー研究開発法」の予算配分対象である5省庁を示す。)

C. 気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program = CCSP)

「1990年気候変動研究法」の認可する米国グローバルチェンジ研究プログラム(U.S. Global Change Research Program)と大統領の気候変動研究イニシアティブ(President's Climate Change Research Initiative)を統合した包括的プログラムが、気候変動科学プログラム(CCSP)である。CCSPでは、気候変動科学に関する意思決定に役立つ、科学に基づいた重要な情報を迅速に提供するため、@エアロゾル-雲-気候;A総合的な地球システム分析能力の開発;B水循環の観測、研究、および、モデリングの統合;Cランドサットのグローバルデータ;D北米炭素プログラムの統合;E気候の変化・変動がエコシステムの生産性や生物多様性に及ぼす影響;F旱魃への対応;G国際極観測年(International Polar Year);H総合海洋観測システムという優先9分野に焦点をあてている。2007年度のCCSP予算要求額は17億1,700万ドルで、2006年度レベルを僅か400万ドル(0.2%)上回るだけの微増となっている。2007年度には、商務省のNOAAとNSFの予算が各々、14%(2,300万ドル)と4%(800万ドル)の増額となるが、他の全てのCCSP参加省庁の予算は削減または前年度同額になる。昨年同様に、CCSP予算の約90%が、NASA、NSF、NOAA、および、エネルギー省の4省庁に配分されている。CCSP参加各省庁の予算は下記の通り:

(単位:100万ドル)

2005年度実績
2006年度推定
2007年度要求
2007年度 対 2006年度

NASA

1,237

1,043

1,025

18減 (1.71%減)

NSF

198

197

205

8増 (4.1%増)

商務省(NOAA)

124

163

186

23増 (14.1%増)

エネルギー省

127

131

126

5減 (3.8%減)

農務省

62

62

61

1減 (1.6%減)

NIH

57

57

57

±0

内務省(USGC)

27

27

26

1減 (3.7%減)

EPA

20

19

17

2減 (10.5%減)

スミソニアン協会

6

6

6

±0

国際開発局(USAID)

6

6

6

±0

運輸省

3

2

2

±0

国務省

1

合 計

1,868

1,713

1,717

4増 (0.2%増)


注釈:

1:米国議会が2006年度予算として、基礎研究に大統領要求額を1億5,100万ドル上回る14億7,000万ドル、応用研究に10億3,000万ドル多い51億6,900万ドルを認可した為に前年度と比べ削減となっているが、2006年度大統領要求額と比較すると各々1億300万ドルと3億3,900万ドルの増額になる。

2:ブッシュ大統領は2006年度予算として30億8,400万ドルを提案したが、米国議会の認可予算は2005年度とほぼ同額となった。

3:但し、2005年度予算と比較すると、1,440万ドルの縮減。

4:2007年度から2011年度までに322機のUAVを調達する計画で、予算総額は116億ドル。

5:ブッシュ大統領の2006年度要求額は前年度比25.6%増の8億9,800万ドルであったが、米国議会はこれを更に増額し、10億4,900万ドルまで引き上げている。従って、2007年度要求額は2006年度大統領要求と比較すると6,100万ドルの増額となる。

6:2006年度ハリケーン補正予算に盛り込まれたシャトル関連施設修復費を除くと、前年度比8.4%(3億7,100万ドル)の削減

7:2006年度予算は690万ドル。

8:2006年度予算は6,890万ドル。

9:日本の中学校1年生にあたる。

10:日本の中学校2年生から高校3年生までの生徒。

11:同イニシアティブの2007年度予算は1億1,400万ドル。教育省の他、国務省と国防省が関与しているが、同イニシアティブに対する各省の予算は明らかでない。

12:「21世紀ナノテクノロジー研究開発法(21st Century Nanotechnology Research and Development Act)」の認可する2007年度NNI予算は、NSFの4億4,900万ドル;エネルギー省の3億8,000万ドル;NASAの4,000万ドル;NISTの8,000万ドル;EPAの641万ドルで計9億5,541万ドルであるが、ブッシュ大統領の同5省庁に対する2007年度要求総額は同法認可額を2億441万ドル下回る7億5,100万ドルに留まっている。

13:PCASTが2005年5月18日に発表した『国家ナノテクノロジー・イニシアティブの5年間:国家ナノテクノロジー諮問委員会による評価および提言(The National Nanotechnology Initiative at Five Years: Assessment and Recommendations of the National Nanotechnology Advisory Panel)』という報告書。

14:2004年に参加した米国特許商標局と消費者製品安全委員会、および、新参の労働省と教育省のNNIへの拠出額については、2007年度予算案の省庁別詳細表に記述がないため、これまで通りに10省庁の予算を比較する。


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