上院エネルギー・天然資源委員会における
「エネルギー使用合理化」に関する公聴会:概要

 

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2006年6月23日

上院エネルギー・天然資源委員会は、Jeff Bingaman上院議員(民主党、ニューメキシコ州)が2006年5月4日に提案した「2006年エネルギー安全保障強化法案(Enhanced Energy Security Act of 2006:上院第2747号議案)」を検討するため、6月22日に公聴会を開催した。同法案の目的は、@エネルギー効率の向上;A石油と天然ガスの節約で、同法案の共同スポンサーであるEvan Bayh上院議員(民主党、インディアナ州)とNorm Coleman上院議員(共和党、ミネソタ州)、および、エネルギー省(DOE)のエネルギー効率化・再生可能エネルギー担当次官補に着任したばかりのAlexander Karsner次官補、更に、環境保護団体や省エネ団体の代表が証言した。

A.  「2006年エネルギー安全保障強化法案(上院第2747号議案)」:概要

  • 行政管理予算局(Office of Management and Budget = OMB)の局長は、一日あたりの石油消費量を2016年までに平均250万バレル、2026年までに平均700万バレル、2031年までに平均1,000万バレル削減するための行動計画を策定・発表する。
  • 連邦各省庁は2009年10月1日までに、所有車両の石油消費量を最低20%削減する。
  • エネルギー長官は、(1)電気自動車技術の研究・開発・実証・実用化計画を実施し;(2)軽量材料・車両重量軽減の研究開発計画を設置する。
  • エネルギー長官は、運輸部門での石油消費を削減する新技術(セルロース系バイオマス燃料を含む)を推進する。
  • 代替燃料補給基盤整備信託基金(Alternative Fueling Infrastructure Trust Fund)を設置する。
  • 2005年エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)を改正して、(1)燃費の良い自動車を製造する自動車メーカーと供給業者に借入保証を提供し;(2)連邦政府消費電力に占める再生可能エネルギーを2008年までに最低5%、2010年までに7.5%、2013年までに10%と義務付ける。
  • 1978年公益事業規制政策法(Public Utility Regulatory Policy Act of 1978)を改正して、電力会社の発電電力に占める再生可能エネルギー使用基準を、2008年までに2.55%、2012年までに5.05%、2016年までに7.55%、2020年までに10%と設定する。

B. 6月22日の公聴会:概要

Evan Bayh上院議員(民主党、インディアナ州)とNorm Coleman上院議員(共和党、ミネソタ州)の証言は、上院第2747号議案の共同スポンサーとして、同法案の概要を説明し、支持を求めるものであったため、ここでは、DOEのAlexander Karsner EERE次官補の発言と質疑応答、および、環境保護団体や省エネ団体の代表者から出された新提案を概説する。

Alexander Karsner EERE次官補の発言

  • 上院第2747号議案を省庁間レビューにかける時間がなかったため、同法案に対する行政府としての正式見解はないものの、同法案には、昨年(2005年8月に)成立した『2005年エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005 = EPACT)』の条項との重複が幾つか見られることを指摘する。
  • 行政府は、スクールバスのアイドリング削減を目的とする州政府への資金援助、高効率な(省エネ基準以上の)消費者製品の製造業者に対する奨励金プログラム、等を支持する。
  • 石油消費削減スケジュールであるが、この目標は達成出来ないのではないかと懸念する。技術の開発や商用化には不確実な面(uncertainty)が自然と付きまとうものであり、任意設定の結果(arbitrary end-result)を法制化することは軽率である。
  • 連邦所有車両の石油節減義務要件は更に検討する必要がある。
  • 燃費の良い自動車を製造する自動車メーカーと供給業者に対する借入保証は重複であり、その効果は疑わしい。また、石油・天然ガス消費の削減を呼びかける全国メディアキャンペーン(National Media Campaign)は、EPACTの定める条項とほぼ同じ内容である。
  • 再生可能エネルギー使用基準(Renewable Portfolio Standard = RPS)に関する行政府の見解はこれまでと同じで、州政府に委ねるのが最善であると信じる。

<Bingaman上院議員との質疑応答>

  • Bingaman … 同法案の主要条項の一つである石油消費削減目標の設定を、行政府が懸念しているということに、自分は当惑している。明確な目標設定には賛成できないというが、ブッシュ大統領が今年の年頭教書演説で宣言した、中東からの石油輸入を2025年までに75%削減というのは具体的な目標ではないのか? 大統領の同目標発表後、数名の上院議員がこの目標をどのように達成する予定なのかを問う書簡をBodmanエネルギー長官宛てに送付したが、未だに返事がない。
  • Karsner … 大統領の目標は確かに具体的であり、上院第2747号議案よりも野心的であるが、これは「誇張した目標(Stretch Target)」であって、あくまでも目標。我々が異議を唱えているのは、削減目標が法制化されることである。
  • Bingaman … その「誇張した目標」を如何にして達成するのかということが、正に自分の知りたいことである。Bodman長官は回答をとりまとめ、上院に提出すればよいであろう。それから、自動車メーカーと供給業者に対する借入保証に関する懸念とはどういうことなのか?
  • Karsner … EPACTでこうした活動を支援するグラントを認可しているが、これまでのところ、借入保証に関心を示した企業は1〜2社しかない。新たな条例の効果は疑わしい。

<Pete Domenici委員長(共和党、ニューメキシコ州)との質疑応答>

  • Domenici … 電気製品用のエネルギー消費効率基準の設定を進めている努力を評価する。
  • Karsner … 電気製品用基準の設定とEPACT条項の実施は、自分にとって優先事項であり、全ての利害関係者に接触している。
  • Domenici … 先進技術導入自動車製造インセンティブ計画(Advanced Technology Vehicle Manufacturing Incentive Program)の企業平均燃費(CAFE)基準をどう評価しているか?CAFE基準は幾らであるべきか?
  • Karsner … 乗用車のCAFE基準に関しても、軽トラックと同様の権限が行政府に付与されることを希望する。CAFE基準値については具体的に答えられない。

<Lamar Alexander上院議員(共和党、テネシー州)との質疑応答>

  • Alexander … 再生可能資源で発電された電力は総電力の何パーセントか?
  • Karsner … 2%未満である。
  • Alexander … RPSを採用している州の数は?
  • Karsner … 約25州である。
  • Alexander … 州によって再生可能資源の定義が異なる。全国的RPSが必要だと思うか?
  • Karsner … 私の懸念は、全ての州が同じ再生可能資源を持っているわけではないということ。RPSは州政府に委ねるべきだと考える。

<Ken Salazar上院議員(民主党、コロラド州)との質疑応答>

  • Salazer …アイダホ州に商業規模のセルロース系エタノール工場を建設する計画(注:1)が出ているものの、問題に直面している。EPACTの定める借入保証をどう評価しているか?
  • Karsner … EPACTのTitle 17が定める借入保証プログラムで十分と考えている。

Pete Comenici委員長の発言

  • 石油と天然ガス価格の高騰は、革新技術への投資を駆り立ててしかるべきであるが、価格下落への懸念が先進エネルギー技術への投資を躊躇させている。この解決策としてEPACTで、広範なエネルギー技術を対象とする借入保証を設定することを定めたにも拘わらず、プログラム実施方法についてのDOEとOMBの論争で進捗せず、行政府が未だにこれを発表できずにいることは遺憾である。Bodmanエネルギー長官は同件に自ら取り組み、これを進めるべきである。
  • 石油価格高騰は投資への誘因だが、投資は価格の下落という懸念によって打ち消されている。代替エネルギー技術への投資を奨励するため、エネルギー価格の下限(price floor)を設定するというのは、非常に興味深い概念である。

環境保護団体と省エネ団体の提案

  • エネルギー節約同盟(Alliance to Save Energy)のKateri Callahan理事長 …燃費の悪い大型車には割増料金(fee)をかけ、燃費の良い自動車の製造および購入にはリベート(rebate)を提供するという、「feebate(feeとrebateの造語)」を提案。割増料金をリベートの資金源とする。
  • 米国エネルギー合理化経済評議会(American Council for an Energy-Efficient Economy)のSteven Nadel専務理事 … 公益事業者を対象として電気や天然ガスの節減目標を設定すると同時に、市場主導型取引制度で節減目標を達成できるという柔軟性をもたせた「エネルギー合理化資源基準(Energy Efficiency Resource Standard = EERS)」を提案。EERSはRPSに類似するものの、RPSが再生可能資源利用の発電を対象としているのに対し、EERSはエネルギー使用合理化による節減を対象とする。


注釈:

1:オオムギの藁からエタノールを生産する施設をアイダホ州に建設するというIogen社の計画。Iogen社はオオムギの藁を年間40万トン購入することを320名の農業経営者と契約済みであり、2007年秋には工場建設に着工したいと述べている。しかしながら、エネルギー省が、プロジェクトが失敗した際に投資家の損失を償う借入保証プログラムを未だ発表していないため、同プロジェクトは停滞している。


Top Page