Bodmanエネルギー長官、水素・燃料電池技術諮問委員会のメンバーを発表

 

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2006年6月30日

Samuel Bodmanエネルギー省(DOE)長官は6月20日、水素・燃料電池技術開発に係わる問題に関してDOE長官に率直な助言を行う、水素・燃料電池技術諮問委員会(Hydrogen and Fuel Cell Technical Advisory Committee = HTAC)のメンバーを発表した。HTACの創設は、2005年8月8日に成立した『2005年エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)』の第8条(注:1)第807項に定められているもので、DOEのエネルギー効率化・再生可能エネルギー部(EERE)では、多方面からバランスのとれたメンバーを選定するため、昨年11月23日の連邦政府官報にHTACメンバーの推薦を求める公示を掲載、2006年1月23日まで候補者を募集していた。Bodman長官が発表した25名は、100名以上の候補者の中から選ばれたもので、産業界、学界、専門職団体、政府機関、金融機関、環境保護団体、水素安全問題専門家といった各部門を代表するメンバーとなっている。

産業界

 Larry Bawden氏

Jadoo Power Systems社 社長(兼)最高経営責任者

 Mark Chernoby氏

ダイムラー・クライスラー社 先進自動車技術担当副社長

 Uma Chowdhry女史

デュポン 技術工学部長

 John Hofmeister氏

シェル石油 社長

 Art Katsaros氏

Air Products & Chemicals社 開発・技術担当部長

 Dan Keuter氏

Entergy Nuclear社 副社長

 Bryon McCormick氏

ゼネラルモーターズ 燃料電池活動担当理事

 Ian Purtle氏

Cargill社 本社副社長

 Micael Ramage氏

エクソン・モービル社 行政顧問

 James Reinsch

氏 ベクテル電力 上級副社長

 Roger Saillant氏

Plug Power社 社長(兼)最高経営責任者

 Kathleen Taylor女史

ゼネラルモーターズの材料プロセス研究所 元所長

 Jan van Dokkum氏

UTC Power社 社長

 John Wootten氏

ピーボディ・エネルギー社 環境技術担当元副社長

学界

 Millie Dresselhaus博士

マサチューセッツ工科大学 教授

 Gerry Richmond博士 オレゴン大学

Noyes(ノーイズ基金受賞)化学教授

政府機関

 John Bresland氏

米化学物質安全性委員会(U.S. Chemical Safety Board) 委員

 Alan Lloyd博士

カリフォルニア環境保護庁 元長官

 Rand Napoli氏  

フロリダ州消防隊本部(Florida State Fire Marshal) 部長

専門職団体

 Mike Mudd氏

FutureGen Industrial Alliance 最高経営責任者

金融機関

 Robert Shaw氏

Arete社 社長

 J. Craig Venter氏

J. Craig Benter Institute 創設者(兼)社長

 Gregory Vesey氏

シェブロン・テクノロジー・ベンチャー 社長

非営利環境団体

 David Friedman氏

憂慮する科学者同盟(UCS) クリーン自動車研究担当部長

ロビー団体

 Robert Walker氏

Wexler & Walker公共政策アソシエーツ 会長

(DOEのプレスリリースをもとにNEDOワシントン事務所作成)

水素の研究・開発・普及は、ブッシュ大統領の先進エネルギー・イニシアティブ(Advanced Energy Initiative = AEI)の柱であり、大統領はこのプログラムに2007年度予算案で2006年度比55%増の2億1,500万ドルを要求している。DOEの長期エネルギー安全保障戦略の鍵でもある水素に関し、そのプログラムや活動、および、安全面・経済面・環境面での問題についてDOE長官に助言を行う技術諮問委員会が設置されたのは、今回が初めてのことではない。

1990年には、米国の水素研究開発5ヵ年計画を明示すると共に、水素技術諮問委員会(Hydrogen Technical Advisory Panel = HTAP)の創設を定める『1990年スパーク・M・マツナガ水素研究開発実証法(Spark M. Matsunaga Hydrogen, Research, Development and Demonstration Act of 1990 :以下、「1990年マツナガ水素法」)』が制定された。HTAPは1992年の発足以来、@国家エネルギーアジェンダの重要要素として水素の認知度を上げること;ADOEに水素の研究開発(R&D)活動で助言することを二大目標として掲げ、1995年には水素プログラムの20年プランを概説する『グリーン水素レポート(Green Hydrogen Report)』を発表している。HTAPは1996年に成立した『水素将来法(Hydrogen Future Act)』で再認可され、2002年までは活動を続けたものの、「1990年マツナガ水素法」を更に5年間再認可するという 『2001年ロバート・ウォーカーおよびジョージ・ブラウン水素エネルギー法案(Robert S. Walker and George E. Brown, Jr. Hydrogen Energy Act of 2001:以下、「2001年ウォーカー&ブラウン水素法案」)』(注:2)の可決がならず、HTAPは2002年以降、事実上消滅してしまった。

この「2001年ウォーカー&ブラウン水素法案」の第2209項(諮問委員会に関する条項)(注:3)を読むと、HTAPの機能を見直す動きは2001年に既に起こっていたのではないかという印象を受ける。HTAPに対してプログラム面での支援を2001〜2002年に提供したChristopher Bordeaux氏によると、同条項がHTAPの単なる再認可ではなく、全米アカデミーに新たな諮問委員会の創設を求める条文となった背景には、@ブッシュ新大統領就任(2001年1月)によって水素R&Dの目的や範囲が新たな見地で評価されるようになったこと;ADOE水素R&Dプログラムを査定評価していた全米科学アカデミーが批判的見解を出し、プログラム全体の再評価を開始した(注:4)こと、があったという。

Bodman長官によるメンバー指名で正式に発足するHTACは、その前身にあたるHTAPが水素R&Dプログラムのみを対象としていたのに対し、水素と密接な関連がある燃料電池技術をも取り上げることになる。このため、HTACメンバーは、HTAP時代(注:5)よりも増えて、『2005年エネルギー政策法』第8条が認める最大定員の25名構成となっている。Christopher Bordeaux氏は、HTACとHTAPのメンバー構成に見られる最大の違いは、HTACがエネルギー供給会社や燃料電池メーカーの代表を含んでいることだと指摘する。

HTACメンバーは年二回、首都ワシントンで全体会合を行う見通しであるが、具体的な議題項目を取り上げる小委員会はそれよりも頻繁に開催される可能性があるという。HTACはここ数ヶ月の内に第一回会合を開催して議長を選出することになるが、どの分野からの代表がHTACの初代議長に選出される(注:6)のか、関心をそそられるところである。

 

<参考文献>

"Hydrogen Technical Advisory Panel 1992-2001: Analysis of a Past Chairman" by Dave Nahmias in the NHA News: Autumn 2001.

"Developments in Hydrogen Production, Technology and Use Under the Energy Policy Act of 2005" by Michael J. Connolly: November 15, 2005.

 

<付録>

EPACT第8条第807項 「技術諮問委員会(Technical Advisory Committee)」

(a) 第8条の定めるプログラムや活動(注:7)に関してDOE長官に助言を行うため、水素・燃料電池技術諮問委員会(Hydrogen Technical and Fuel Cell Advisory Committee)を創設する。

(b) メンバーシップ

(1) 技術諮問委員会は、12名以上25名以下のメンバーで構成されるものとする。DOE長官は、技術諮問委員会メンバーに必要であるとDOEが考える専門知識他の条件、および、諮問委員会のニーズに基づき、産業界、学界、専門職団体、政府機関、連邦研究所、過去の諮問委員会、金融機関、環境保護団体、その他の適切な組織を代表するメンバーを指名するものとする。

(2)技術諮問委員会メンバーの任期は3年以内とする。DOE長官は、技術諮問委員会の機能が断続的とならぬよう、メンバーの任期が一定間隔をあけて交互に満期となるように設定(注:8)する。DOE長官は、任期が満期終了となったHTACメンバーを再指名することが出来る。

(3)HTACは、メンバーの中から議長を1名選出するものとする。

(c) HTACは、(i)第8条第807項の定めるプログラムと活動の実施;(ii)水素エネルギーの生産・送配・貯蔵・使用技術、および、燃料電池の安全面・経済面・環境面での影響;(iii)第804項の定めるプラン、を見直して、DOE長官に提言するものとする。

(d) DOE長官は、技術諮問委員会の提言を検討するものの、これを必ずしも採用する必要はないものとする。DOE長官は2年毎に、技術諮問委員会の提言を詳述する報告書を議会に提出する。報告書では、DOE長官がどのように提言を実施中または実施予定であるのかを説明し、更に、実施されない提言に関してはその理由を説明するものとする。報告書は大統領予算提案と一緒に提出する。

(e) DOE長官は、技術諮問委員会が第8条の定める責務を実行するために必要な資源を、長官の判断で提供するものとする。


注釈:

1:同第8条は、『2005年スパーク・M・マツナガ水素法(Spark M. Matsunaga Hydrogen Act of 2005)』とも呼ばれる。

2:「2001年ウォーカー&ブラウン水素法案」は2001年6月14日に、Ken Calvert下院議員(共和党、カリフォルニア州)によって提出されたもので、最終的には第107議会に提出された他の18本のエネルギー法案と一括され、『北極圏野生生物保護区域法案(Arctic National Wildlife Refuge bill:下院第4号議案)』にとりまとめられた。2002年には上院と下院がエネルギー法案をすり合わせるべく、上下両院協議会を数回開催したが、妥協に至ることが出来ず、「2001年ウォーカー&ブラウン水素法案」を含んだ包括エネルギー法案は自然消滅した。

3:同第2209項は、「DOE長官は、同法令(1990年マツナガ水素法)の定めるプログラムや活動の進捗状況に関して評価と助言を行うため、全米科学アカデミーおよび全米工学アカデミー(National Academies of Science and Engineering)と適切な合意を締結して、産業界、学界、政府研究所、金融機関、環境保護団体、その他機関の専門家で構成された諮問委員会を創設すべきである。」と定めている。

4:全米科学アカデミーの行った再評価の結果はその後、『水素経済:機会、コスト、課題、および、研究開発ニーズ(Hydrogen Economy: Opportunities, Costs, Barriers, and R&D Needs)』という報告書にまとめられ、2004年2月に発表された。

5:HTAPで第二代目の議長を務めたハワイ大学のPatrick Takahashi教授によると、HTAPのメンバーは12名であったという。

6:因みに、HTAPの議長は、初代が電力研究所(Electric Power Research Institute = EPRI)のJames Birk博士、第二代がハワイ大学のPatrick Takahashi博士、第三代が当時カリフォルニア州大気資源局(CARB)の共同議長であったAlan Lloyd博士、第四代がDave Nahmias & Associates社のDave Nahmias氏、第五代がEPRIのJohn O'Sullivan博士。

7:第8条第803項では、(1)多様なエネルギー源からの水素製造;(2)業務用・産業用・家庭用発電への水素利用;(3)水素または水素担体燃料の安全な配送;(4)先進自動車技術;(5)水素または水素担体燃料の貯蔵;(6)安全で耐久性があり、価格が手頃で効率の優れた燃料電池の開発;(7)民間部門との協議後、水素・水素担体燃料・関連製品の製造・配送・貯蔵・使用のために必要な規格や安全対策、に取り組むプログラム、と定めている。

8:2006年6月20日のDOEプレスリリースによると、HTACメンバーの任期は1年から3年で、他の候補者にも各々の専門知識を提供し、HTACメンバーとして貢献する機会を与えるため、毎年、メンバーの約3分の1を交代させる予定であるという。


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