2008年大統領選候補者のエネルギー政策観

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2007年10月31日

 

U.S. News and World Reportと米国化学工業協会(American Chemistry Council)が10月24日に首都ワシントンで、大統領選挙陣営の代表者を集め、各候補者のエネルギー政策に対する見解を問うパネル討論会を共催した。パネル討論会に出席したのは、@Barack Obama上院議員(民主党、イリノイ州)を代表するTom Daschle元上院院内総務(サウスダコタ州);AJohn Edwards元上院議員(民主党、サウスカロライナ州)の代表としてDavid Bonior元下院議員(民主党、ミシガン州);BRudy Giuliani元ニューヨーク市長(共和党)陣営からはレーガン大統領時にエネルギー長官であったJohn Herrington元長官;CJohn McCain上院議員(共和党、アリゾナ州)を代表してDouglas Holtz-Eakin元議会予算局(Congressional Budget Office)局長の4名で、Hillary Clinton上院議員(民主党、ニューヨーク州)とMitt Romney元マサチューセッツ州知事(共和党)の選挙陣営は参加しなかった。

ここでは、NEDOワシントン事務所リサーチャーNicholas Rekstenのメモに基づき、U.S. News and World Report誌のBrain Kelly編集長の司会で行われたパネル討論会について報告する。


<パネル討論会>

1.  米国はエネルギー危機に直面しているか?エネルギー問題は重要事項のどの辺りに位置するか?

Herrington元DOE長官(Giuliani元市長の代表)
エネルギー危機にあるとは思わないが、エネルギー問題を国家安全保障に続く重要事項と考えている。

Daschle元上院議員(Obama上院議員の代表)
エネルギー危機であるとは思わないが、エネルギーと気候変動問題を組み合わせた場合に、この問題は次期大統領の最重要課題の一つになると考えている。

Bonior元下院議員(Edwards元上院議員の代表)
Edwards元上院議員は、エネルギー危機であって、迅速な行動が必要であると見ている。エネルギー問題はイラク戦争とヘルスケアに続く重要問題であると考えている。

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain上院議員の代表)
我が国のエネルギー問題を表現するのに危機という言葉は使わないものの、石油輸入依存による国家安全保障の観点から、非常に重要な問題であると考えている。

2.  エネルギー問題がワシントンの政策マシーンにはまり込み、抜け出せなくなってしまうのは何故か?

Daschle元上院議員(Obama)
エネルギー政策には、政府、産業界、環境保護団体といった多くの異なる利害関係者が絡むほか、各地で天然資源が異なるために地域別の利益も絡んでくるからである。こうした要素が、今日のワシントンを麻痺状態に陥れている。

3.  この膠着状態をどうすれば打開可能か?

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
膠着打開には次期大統領の実効的リーダーシップが必要である。McCainは我が国のエネルギー問題を国家安全保障問題の一環とみなし、気候変動を現実の脅威と見ている。再生可能や原子力等の代替エネルギーへのインセンティブ提供を助長するために、温室効果ガス(GHG)のcap-and-trade型制度を採用してこそ、エネルギー問題には解決の可能性が生まれる。こうした点で、McCainは適任のリーダーである。

4.  Edwards元上院議員は、エネルギー問題の解決および気候変動への対応には、個々人の犠牲が必要であるという考えをほのめかしているが、こうした考えを表明して選挙に勝つことは可能か?

Bonior元下院議員(Edwards)
米国人は気候変動に対する大胆な行動にオープンであると信じる。気候変動問題は我が国に新たな切迫感をもたらしている。多くの気候学者の答申に従うと、2050年までに炭素排出を80%削減する必要があるが、この解決策が代替エネルギー資源への大型投資である。Edwardsは、米国人にはある程度の犠牲を払う用意があると信じている。

 

5.  各候補者の原子力発電に関する見解は如何か?

Bonior元下院議員(Edwards)
原子力発電所の安全性保証には規制面で多くの複雑な手順が必要であり、原子力発電所建設には長い時間がかかる。その桁外れの建設費を考えると、再生可能エネルギー研究へ投資したほうが有効である。

Daschle元上院議員(Obama)
原子力発電を一つの選択肢と考えるべきであるが、先ず第一に、安全性や貯蔵問題や拡散に関する問題の検討が必要である。また、原子力発電について、米国を始めとする数ヶ国は利用できても、中東を始めとする他諸国の利用を認めないというダブルスタンダードには不快感を感じる。

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
原子力発電の利用を支持する。運輸部門を石油から電気利用のプラグインハイブリッドへと移行して、石油依存を軽減するために、原子力発電は不可欠である。核廃棄物は適切に処理してYucca Mountainに貯蔵すべきである。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
Yucca Mountainの廃棄物処理場建設を妨害することは論理的でない。運輸部門に関しては、電気よりも天然ガスが大きな役割を担うべきであって、原子力発電は米国の主要な発電源となるべきである。

6. エタノールの有望性は誇張されていると思うか?

Daschle元上院議員(Obama)
トウモロコシ原料のエタノールは、バイオ燃料の第一歩以上のものではない。エタノールには将来利用される余地が絶対的にあるが、15年後の業界は、セルロース系エタノールが前途有望であって、かなり異なったものとなろう。エタノールが食品価格に及ぼす影響に対する懸念は誇張されすぎている。

Bonior元下院議員(Edwards)
米国は2025年までに、650億ガロンのエタノールを容易に生産できる。Edwards候補は、全国のガソリンスタンドの25%をE-85販売用とし、2015年以降製造される全ての新型車をフレックス燃料車とすることを目指す。ブラジルのエタノール利用を手本として、米国も同のことを実施すべきである。また、電気自動車の増産を奨励するインセンティブも提供する。

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
ワシントンは技術の勝ち負けを決めるべきではない。市場の力に任せるべきである。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
エタノールは将来の市場で重要な一役を担うことになる。Giuliani候補はエタノールを支持するが、エタノールは過大に強調されすぎていると思う。多くの都市では天然ガスのバスが利用されているが、これは政府イニシアティブ無しで達成された。最終的には、乗用車も同様に、エタノールへと移行していくと思う。

7.  個々人の省エネ努力についてどう考えるか?

Bonior元下院議員(Edwards)
Edwards候補は、全国各地でコミュニティの省エネ努力を指導するボランティア計画を設置した。家々の耐候化、および、高効率の照明や家電製品の利用も同じく重要である。従って、Energy Starプログラムの拡張、および、DOEの耐候化プログラム拡大を支持する。また、政府省庁のエネルギー消費20%削減、ホワイトハウスの炭素ニュートラル化も目指す。

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
個々人の省エネ努力は疑いもなく必要である。価格はエネルギー消費削減の重要なインセンティブである。炭素排出価格を設定すれば、人々はエネルギー消費削減や省エネ製品利用で努力することになる。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
省エネを支持する。Edwards候補のボランティア計画も良いが、彼らが行う事を電力会社が実施するようにインセンティブを提供する方が良策である。

Daschle元上院議員(Obama)
省エネは過去10年間、口先ばかりで実際には殆ど何も達成されず、国内の石油消費は20%も拡大した。Obama候補は、エネルギー問題と気候変動問題は一対になるべきと考えており、エネルギー効率化 …スマートグリッド技術の導入、自動車燃費の改善、ビルのエネルギー使用合理化等…が、両問題の重要な解決策となる。

8.  国内石油増産のため、北極圏野生生物保護区域(ANWR)での掘削解禁や海洋掘削をどう考えるか?

Bonior元下院議員(Edwards)
Edwards候補は、海洋掘削とANWRでの掘削の双方に反対する。国内石油増産ではなく、省エネと再生可能エネルギー資源への投資拡大が解決策であると信じている。米国はエネルギーの無駄使いを止め、新技術を活用しなければならない。これによって、2025年までに国内総電力の25%を再生可能資源で賄うという目的の達成を試みるべきである。

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
環境被害を考えると、ANWRで期待される少量の石油は全く価値がないため、ANWRでの掘削に反対である。結局は、環境に優しく、かつ効率の優れた新技術の開発が必須であり、cap-and-trade型制度のような市場ベースのインセンティブによって、こうした技術に到達することが可能だと考える。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
国家安全保障の強化には、利用可能な全ての国内資源を環境に責任をもった方法で開発する必要があり、これにはANWRも含まれることになる。しかしながら、アラスカのパイプラインのキャパシティでは、一日の追加供給量は100万バレルが最高であるため、全体的なエネルギー事情にはたいした影響をもたらさない。世界の石油埋蔵量は減少している。増える一方の需要を満足させることは不可能となる。従って、新たなエネルギー資源の開発が必要不可欠である。

Daschle元上院議員(Obama)
石油生産は既に頂点に達した。需要の急増は、インドと中国の成長によって増幅されている。原油増産回収も問題解決には殆ど役立たない。政府政策と市場は、再生可能資源への投資および省エネ推進の目標達成に向けて協力すべきである。

9.  Cap-and-trade型制度についての見解は?

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
問題は原油であることを念頭に置くことが重要だ。石油依存の受益者は、ロシアのプーチン大統領やベネズエラのチャベス大統領やアルケ−ダである。Cap-and-trade型制度は石油依存症に対する有効な対応策である。原子力発電が主力となり、運輸部門が電気化されれば、石油問題は解決される。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
Cap-and-trade型制度に対する姿勢を未だ決めていないものの、それよりは、石炭と炭素隔離技術が発電に果たす重要な役割を評価した市場志向型の解決策を望んでいる。

Daschle元上院議員(Obama)
Cap-and-trade型制度は省エネと並び、解決策の礎である。民主・共和両党がこの考えにオープンであるため、将来おそらく採用されることになろう。Cap-and-trade型制度では、排出クレジットを100%オークションするべきであり、Obama候補は先頃Lieberman上院議員とWarner上院議員が提案した上院第2191号議案を有望とみている。

10. Capを設定するか?

Daschle元上院議員(Obama)
1990年水準をベースとし、2050年までに80%の排出削減を目標とする。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
Cap-and-trade型制度の影響についての情報が集まるまで、これについての意思決定に慎重である。現時点では未だ同制度に懐疑的であり、慌てて決定する理由はないと考えている。

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
McCain上院議員が提出した上院第280号議案は、経済成長推進を保証する「安全弁(safety valve)」条項を盛り込んでいる。他の候補者達は、国際的な気候変動構造を迅速に構築できると考えているが、これは間違いである。

Bonior元下院議員(Edwards)
Edwards候補はcap設定を支持している。また、多諸国との通商条約に気候変動要件を含めることも支持している。

11. エネルギー政策を変える上で、大統領に出来る最も重要なことは何か?

Holtz-Eakin元CBO局長(McCain)
エネルギー問題を広い視野で考え、多くの行動オプションを検討することである。

Bonior元下院議員(Edwards)
新たなエネルギー経済を築くことである。Edwards候補は、同問題での行動を促進するために必要な熱意を持っている。

Herrington元DOE長官(Giuliani)
幅広いアプローチが必要である。新しいエンジン技術、原子力発電、クリーンコールの活用は、石油消費削減に有用である。新エネルギー技術の迅速な商品化も必要である。

Daschle元上院議員(Obama)
最も重要なのは指導力である。大統領は、政府と市場のパートナーシップ構築を支援するため、目標を設定し、手本を示すべきである。

 


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