「エネルギー安全保障と気候変動に関する主要排出国会議」についてのブリーフィング

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2007年11月7日

 

「エネルギー安全保障と気候変動に関する主要排出国会議」が米国務省の主催で2007年9月27日と28日の二日間にわたって開催されたが、この会議についてのブリーフィングがUnited States Energy Associationの主催で10月31日に首都ワシントンにて開催された。James Connaughtonホワイトハウス環境問題委員会(CEQ)議長、Daniel Price国家安全保障会議国際経済問題担当アドバイザー、Paula Dobriansky国務省民主主義・地球問題担当次官、および、Karen Harbertエネルギー省(DOE)政策・国際問題担当次官補の4名が、このブリーフィングに出席し、主要排出国会議の模様を概説した。ここでは、各発表者の発言の概要、および、質疑応答を報告する。


発言概要

A. Connaughton議長の発言

米国の温室効果ガス(GHG)排出削減努力、直面するチャレンジの規模、進展が必要となる要素(element)をスライドを使って説明。

  • 米国連邦政府は2001年以来、気候変動に350億ドルの予算を投入。パートナーシップ、義務命令(マンデート)、インセンティブ、および、テクノロジーという国家政策分野を総合して考えると、米国は他諸国に勝っている。
  • 米国の今年の新イニシアティブ:連邦政府のエネルギー使用効率を30%向上させるという大統領命令;米国議会による自動車燃費基準強化や再生可能燃料使用新基準の採択努力等。
  • 米国は2001年以来、メタンや水素、核融合や原子力、再生可能エネルギーや省エネ、炭素隔離やゼロエミッション石炭火力発電所等、多分野における国際技術パートナーシップに従事。
  • 現行路線でいけば、先進国の排出量はいずれ横ばいとなる一方、途上国の排出量は激増する。中国は排出量で既に米国を抜いており、主要途上国全体の総排出量が先進国以上となるのは間近い。
  • 主要排出国からのエネルギーCO2排出量は2005年に22ギガトン(Gt)。中国とインド等の主要途上国の増加率を控えめに年間5%と見積もっても、2050年には排出量が年間37Gtまで増大。2050年までに現行レベル比50%削減を達成するには、26Gt(70%)の削減が必要となる。
  • 年間1ギガトン(Gt)のCO2相殺とは?
    • 273の500MW級ゼロエミッション石炭火力発電所に相当
    • ノルウェーのSleipnerプロジェクト級の地中隔離1,000箇所
    • 136基の1GW級原子力発電所
    • 燃費が1ガロンあたり40マイル(1リッターあたり14キロ)の新車2.73億台
    • 世界全体の現行風力発電容量(74GW)の14倍の設備容量
    • 世界全体の現行太陽光発電の273倍にあたる設備容量
    • 英国の面積の約2倍にあたる不毛地帯をバイオマス燃料の原料作物栽培地に転換
    • ドイツとフランスの総面積以上の不毛地帯をCO2貯留の為の森林に転換
  • 2050年までに2005年水準の50%削減を達成するために必要な、主要先進国と主要途上国のエネルギーCO2排出を示したグラフ
    • 2050年のレファレンスケースでは主要先進国からの排出量は年間16.7Gt。一方、主要途上国の排出量は20.4Gt。先進国が先ず排出削減を実行し、その後に途上国が参加するという提案があるが、それでは世界全体で2050年までに50%削減を達成することは不可能。


B. Priceアドバイザーの発言

  • 「Doing nothing」がポスト京都枠組の選択肢にはならないことでMEM参加者の意見が一致。
  • GHG排出削減は先進国だけの任務であって、途上国は何もしなくて良いという考えには、米国は同意できない。仮に先進国が灯りを消したとしても、途上国が何もしないのでは、目標の達成は不可能。各諸国が何がしかの努力をする必要あり。
  • ポスト京都枠組の6要素
    • GHG排出削減の長期世界目標を設定することに合意 (MEM参加国で、長期世界目標が国際的な拘束力をもったものであるべきことを示唆する諸国は一国もなかった。)
    • 長期世界目標を進めるため、各国は自国の中期目標を設定 …GHG排出削減またはGHG原単位削減、強制的または自発的といった一連の国家政策を、国内事情を鑑みて自由に選定。
    • 主要部門の技術開発と導入
    • GHG排出削減の正確な測定・報告システム
    • 既存技術の導入を推進する資金調達メカニズム
    • 一連のアダプテーション計画 (特に、森林に重点)
  • 上記6要素が、2008年にワルシャワで開催される締約国会議(COP)での討議・交渉へ貢献することを期待。


C. Dobriansky国務次官の発言

  • 2007年9月に開かれた国連総会では、そのキックオフとして、@緩和(Mitigation);A適応(Adaptation);Bテクノロジー;C融資(Financing)に関する高官レベル会合を開催。Rice国務長官はテクノロジー会合で発言し、3つのコアメッセージを発信:
    • UNFCCCに対する米国コミットメントの拡充
    • 抜本的な技術進化(evolution)の必要性
    • 適応(Adaptation)の重要性検討に対するコミットメント
  • 今年12月に開催されるバリ会合に備え、インドネシアのボゴールで10月24日から閣僚級準備会合が開催された。列席した35ヶ国は、@緩和;A適応;B融資;Cテクノロジーの4要素を受け入れたほか、(i)経済成長;(ii)エネルギー安全保障;(iii)環境責任という3つの重要問題が三位一体であるという考えも受け入れた。また、全参加国が、ポスト京都枠組交渉の為のロードマップをバリ会合で完成させることの重要性、および、2009年には枠組を実際に制定するというタイムテーブルで合意。更には、MEMやG-8がUNFCCCプロセスの進展を助長することを確認した。
  • ポスト京都枠組は、世界全諸国を対象とし、各国の多様な事情や努力を理解し、気候関連活動を持続可能な開発に関するバリ枠組に統合し、途上国の経済成長ニーズを理解する、包括的なものでなければならない。


D. Harbertエネルギー次官補の発言

  • エネルギー需要は今後30年で50%増、電力需要は100%増。また、GHG排出の80%はエネルギーおよびエネルギー関連由来になるという背景を説明。
  • MEM努力は下記の点で、その他の努力と異なる。
    • トレードオフやエネルギー安全保障の犠牲を求めてはいるのではなく、@エネルギー安全保障の達成;A気候変動の緩和;B経済成長の持続を可能にする施策を提案している。但し、全てに万能な解決策は存在しない。
    • MEMの重点は、気候変動の程度問題ではなく、解決策の討議へと移行。16の主要排出国とEUは、テクノロジーが解決策の柱であることで意見が一致。
    • 政策立案者だけでなく、民間部門や金融機関も取り込んだ、新パートナーシップの形成。
  • 米国が自らの責任を担うために実施している様々な措置:
    • 2001年に気候変動技術プログラム(Climate Change Technology Program)に着手。
    • 2001年以来、米国は気候変動技術に180億ドルを投資。世界の先進技術研究開発投資の80%は日米の拠出。他諸国は自らの責任を担って、解決策であるテクノロジーに投資する必要あり。
    • 法律・財政・規制上の枠組みが布かれている。(例)2005年包括エネルギー政策法に盛り込まれた、消費者や業界に先進エネルギー技術や省エネ電化製品の利用を奨励する120億ドルの優遇税制。
    • 現政権は有望技術の商品化を加速させるため、2008年度予算で最有望テクノロジーの研究開発に26%の増額を要求。
  • 米国が他諸国を引っ張っている。他の先進国や途上国は先進エネルギー技術への関税引下げにより、負担を分かちあわねばならない。中国が毎週1ヶ所のペースで石炭火力発電所を建設し、自動車走行台数が今後20年間で3,000万台から3億台に増えることを考えると、先進技術研究機関への支援は必須である。こうした解決策(=テクノロジー)への投資は米国の関心事であるのみならず、他諸国の関心事でもある。


E. Connaughton議長の補足発言

  • Priceアドバイザーは6つの要素を概説したが、この6要素は過去2〜3年間の討議(近いところでは、G8宣言やAPEC宣言、US-EUサミット宣言等)の蓄積であって、米国が考案したものではない。MEMでは新らしく考案するのではなく、多くの共通点(コモングラウンド)を整理統合した。MEM参加諸国は、@石炭;A運輸部門;B森林破壊が三大課題であり、この三大課題に全世界をあげて取り組むことが必要であるということで意見が一致。
  • 各国の事情に合わせた国家プランについては、米国・カナダ・EU・オーストラリアは既に2012年以降のプランを持ち、追加プランを策定中。中国・インド・日本はポスト京都の国家戦略策定プロセスに着手したばかりであり、一方、韓国・ブラジル・メキシコ・南アフリカの活動は不明である。こうした諸国による野心的な目標・戦略の策定を育むような環境を構築する必要がある。
  • 最後に一言。日本と米国がテクノロジー解決策の費用を出しているが、他諸国は出していない。国際エネルギー機関(IEA)の推定によると、テクノロジー投資は年間200億ドル必要であるという。現在は米国が年間40億ドル(必要額の20%)、日本が40億ドル(20%)を拠出。他諸国による投資拡大が不可欠である。

 

質疑応答

[Q]アジア太平洋パートナーシップ(APP)に見られるように、ブッシュ政権はセクター別アプローチを推進しており、MEMでも特定部門を概説している。セクター別アプローチは国家プランとどのように関連するのか?セクター別アプローチはポスト京都枠組で特別な位置を占めるのか?

[A](Connaughton)セクター別アプローチは国家プランとポスト京都枠組の双方に関連。国家プランは概してセクターベースであるため、セクター別戦略は国際的な進展を加速することになると考えている。


[Q]英国がエネルギー技術投資を発表。企業および英国政府予算で2億ドルを調達するという。米国DOEは、資源の共有で、英国のエネルギー技術研究機関と協力する可能性があるか?

[A](Harbert)DOEは英国と積極的な協力関係にある。今から2週間後に英国を訪問し、これを含めた様々な議題を話し合う予定となっている。クリーンエネルギー技術導入に利用可能な融資の欠如が指摘されている。我々は、各国のプロジェクトに利用できる基金に投資することを検討している。


[Q]バリ会合とワルシャワ会合の関係は?

[A](Dobriansky)ボゴール閣僚級準備会合は、バリ会合を成功させる為の基盤を築くもので、緩和;適応;融資;テクノロジーの4要素がポスト京都枠組の重要要素であることに合意したほか、2009年というタイムテーブルでも合意した。質問のワルシャワ会合はこの中間点に当り、2009年のデンマークの前となる。

ポスト京都枠組へ向けたプロセスは、2トラック過程をとっている。一つは、バリ会合で枠組交渉のロードマップ完成。もう一つは、MEMでの実践的議論、および、MEMで示唆された中間目標である国家プランをワルシャワ会合に持ち込み、議論。


[Q]長期世界目標が拘束力を持たず、その目標達成のメカニズムを加味した国際条約の概念が各国の自己申告による中期目標の集積であるのに、それを効果的と言えるのか?

[A](Price)拘束力という部分は国内法に見出される。この質問に質問で答えると、目標を達成できなかった諸国に貿易制裁をかすとしたら、我々は中国の合意を得られるであろうか?インドの合意を得られるであろうか?


[Q]テクノロジーが解決策の主軸であるという見解は正しい。しかし、最も経済的なGHG排出削減方法は、cap-and-tradeであれ税であれ、炭素価格であり、炭素価格はテクノロジー普及を補完する上で必須である。EUはcap-and-trade型制度を経済全体ではなく、一部セクターに採用したが、これは経済全体であるべきだった。セクター別アプローチだけに焦点をあてるのは、長期的には米国経済にとって賢明ではない。セクター別アプローチだけ採用し、経済全体アプローチを退けるのは、肝心の要点を見落としている。

[A](Connaughton)原油は今や1バレルあたり100ドル、天然ガスは15ドル、石炭も2001年の2〜3倍となっているが、GHG排出は減っていない。価格設定をするだけで、手頃な価格の技術やその市場化体系を欠いていたのでは、好ましい結果は生まれない。セクター別アプローチを選択したのは、その方が交渉が容易であるという理論に基づいている。経済全体の戦略が必要であることには皆が合意している。問題は、経済全体cap-and-trade型システムが、唯一の経済全体戦略であるのか、ということだ。


[Q]森林破壊問題がバリ会合の主要議題の一つであるというが、米国は世銀のForest Carbon Facilityに最小限の寄与をしているにすぎない。米国はバリ会合で同問題に対するコミットメントをどのように示すつもりか?また、違法伐採に関する討議への支援を拡大するつもりか?

[A](Dobriansky)GHGの20%が森林破壊や不適切な土地管理に起因する。米国は森林破壊問題に積極的にコミットしている。世銀イニシアティブに対しては未だ検討中であり、米国の対応を早まって判断するべきでない。ボゴール閣僚級準備会合では、違法伐採も含めた国境問題が討議された。特に、違法伐採に対抗するキャパシティ・ビルディングに関して途上国から強いアピールがあった。


[Q]MEMについての報道は、よくてニュートラル、殆どが否定的である。いつになったら、これがまあまあ(moderate)の反応に変わると思うか?

[A](Price)ヨーロッパのモデルに対する支持傾向は減少している。会議場の外のムードはあまり変わっていないように見えるかもしれないが、中のムードは変わっている。
   (Harbert)MEM会合に、各国のエネルギー、財務、環境保護、天然資源、農業、税理、外交問題、その他の多様な省庁が参加したことは意義がある。自国においてもこれら省庁がこの問題を一緒に協議することがない。各国における討議の拡大が、解決策(テクノロジー)ベースの積極的討議へと発展する可能性がある。


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