ブッシュ大統領の2008年度予算:概要(その1)

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2007年2月10日

 

ブッシュ政権が2007年2月5日に、総額2兆9,000億ドル(2007年度大統領予算要求比で1,300億ドル、4.7%の増額)という2008年度予算教書を発表した。予算教書では、要求年度とその前年度の予算を比較するのが通例であるが、2007年度(2006年10月1日〜2007年9月30日)予算は国防省と国土安全保障省の予算を除き、その他省庁は現在も未成立のまま2006年度予算水準で運営(注:1)されているために、2008年度要求額を2007年度議会認可額と比較することがかなわない。このため、2008年度予算教書では、2008年度要求額を2007年度大統領要求額と比較することによって増減を示している。

ブッシュ大統領は今年1月10日に、イラク戦争を成功させるためには現時点での米軍撤兵案はありえないと主張し、新戦略として約2.1万名の米軍増派を提案したことから、2008年度予算案での軍事費増額が確実視されていたが、予算教書では2008年度国防省予算として前年度予算比12.1%(518億ドル)増の4,814億ドルを要求しているほか、イラク戦争を含む対テロ予算として新たに2,448億ドル(2008年度予算として1,452億ドル、2007年度末までの追加予算として996億)も要求している。2008年度大統領予算案は軍事予算増額とブッシュ大統領就任以来のテーマである減税(注:2)を優先する一方で、財政赤字(注:3)の2012年解消を狙い、Medicare(老齢者医療保険)やMedicaid(低所得者医療扶助)他のエンタイトルメント(公的給付金)プログラムの大幅削減(注:4)、国内プログラムの現行レベル凍結(注:5)、91プログラムの廃止と50プログラムの大幅縮減(注:6)を求める内容となっている。

2008年度予算案からMedicare、Medicaid、社会保障等の義務的支出、および、支払利息を除いた自由裁量予算(discretionary budget)は9,298億ドルで、2007年度要求額よりも570億ドル(6.5%)の増額(注:7)となる。しかしながら、増額分の内の545億ドルは防衛関係への計上で、非防衛関係の増額は僅か36億ドル(1.0%未満)に抑制されているため、米国政府の自由裁量予算に占める防衛関係(5,539億ドル)と非防衛関係(3,759億ドル)の予算格差は更に広がっている。2008年度の省庁別予算要求を2007年度要求額と比較すると、運輸省と環境保護庁の予算が8.3%、1.4%の削減となる以外は、国防省(12.1%増)と国土安全保障省(7.2%増)(注:8)を始めとして、その他全省庁の予算が各々1億〜1.7億程度の増額となっている。但し、2008年要求額を2006年度予算(注:9)と比較すると事情は変わり、農務省、教育省、内務省、司法省、労働省、そして工兵隊の予算が削減に転じる。

ブッシュ政権の2008年度研究開発(R&D)予算は、2007年度大統領要求(1,372億400万ドル)を54億5,100万ドル(4.0%)上回る1,426億5,500万ドル。但し、開発向け予算がこの増額の81.1%にあたる44億2,300万ドルを吸収するため、基礎研究と応用研究向けの予算は0.4%、2.0%という微増(注:10))に留まっている。一方で、施設・設備向けの予算は3億7,200万ドル(8.5%)増額されている。分野別では、昨年同様に、@防衛関連開発;A宇宙探査;B基礎物理科学研究という現政権の優先R&D事項が大幅増額を享受する反面、その他R&D予算は前年度並み、または、かなりの削減を被ることになる。2007年度予算で鳴物入りで発表された「米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative = ACI)」(注:11)が2007年度要求額を7億6,000万ドル(7.2%)上回る114億2,200万ドルまで増額され、宇宙関連R&Dが新規宇宙船開発予算の増額によって120億ドルまで引き上げられる一方、通常は増額側となるヘルス(衛生)関係R&Dが1.0%減で301億ドル(注:12)に、昨今関心が高まっている気候変動(注:13)への現政権対応策である気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program)予算は7.4%削減の15億ドルに引き下げられている。

省庁別では、国防省のR&D予算が2007年度要求額比で6.2%、NSFが7.3%、NASAが1.5%と増額を受けるほか、昨年大幅な削減対象となった運輸省と内務省、および、国土安全保障省のR&D予算が増額要求に転じている。DOE、厚生省の国立衛生研究所、農務省、および、環境保護庁のR&D予算は前年とほぼ同額(注:14)で、商務省の国立海洋大気局は昨年に続き、5.9%の削減要求となっている。

このレポートでは、エネルギー省予算の概要を報告し、第2レポートで全米科学財団、厚生省、商務省、および、内務省を、第3レポートで国防省、米航空宇宙局、国土安全保障省、運輸省、環境保護庁、教育省、および、省庁間R&Dプログラムの予算概要を報告する。

 

■ I. エネルギー省

ブッシュ大統領は、昨年の年頭教書演説で2025年までに中東からの石油輸入量を75%削減することを提言したのに続き、今年1月23日の年頭教書演説では新たに、今後10年間でガソリン消費を20%削減するという目標(「Twenty in Ten」と呼ぶ)を示した。ブッシュ政権は、2017年までに年間350億ガロンの再生可能燃料・代替燃料使用の義務付け(これにより、2017年の推定ガソリン消費15%減少)と、乗用車向け企業平均燃費(CAFE)基準の改革と引き上げ(ガソリン消費5%減少)によって、この新目標を達成する意向であるという。しかしながら、ブッシュ政権の2008年度エネルギー省(DOE)予算案を見ると、大幅な増額を享受するのは、ACIの恩恵を受ける科学部の他には、石炭と原子力エネルギーであり、エネルギーの自立や再生可能エネルギー開発、省エネ促進や環境改善の目標とは矛盾するのではないかと、首をかしげざるを得ない。

2008年度DOE全体予算は2007年度要求(235億5,400万ドル)を7億500万ドル(3.0%)上回る242億5,900万ドル。科学部予算がACIの一環として2億9,600万ドル(前年度要求額比7.2%)増額となる反面、環境関連予算は、この増加分相殺のために再度の削減に直面している。一方、2008年度のエネルギー関連予算は前年度要求額より19.6%の増額になるものの、下院議会が1月31日に可決した第四号継続共同決議案に盛り込まれたエネルギー効率化・再生可能エネルギー予算増額を勘案すると、2007年度推定予算比では一桁台の増加に留まるものと推定される。DOE全体の予算内訳は下記の通り:

1. エネルギー関連予算の内訳: エネルギー関連予算は、2007年度要求比19.6%増の30億8,900万ドル。予算内訳は、「エネルギー効率化・再生可能エネルギー」が12億3,600万ドル(2007年度要求比5.1%増)(注:15)、「配電・エネルギー信頼性」が1億1,500万ドル(8.0%減)、「化石エネルギー」が8億6,300万ドル(33.0%増)、「原子力科学技術」が8億7,500万ドル(38.2%増)となっている。以下、@エネルギー効率化・再生可能エネルギー;A配電・エネルギー信頼性;B化石エネルギー;C原子力科学技術の各予算を概説する。

C エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)予算は2007年度要求比5.1%増の12億3,620万ドル。EEREプログラムの大半は「先進エネルギーイニシアティブ(Advanced Energy Initiative = AEI)」の不可欠要素であり、10年間でガソリン消費20%削減という新目標の達成においても重要な役割を担うことになるため、2008年度予算案では、水素技術(燃料電池開発を含む);バイオマス(セルロース系エタノール研究を含む);自動車効率化技術;ビルディング技術を増額している。半面、風力エネルギーは375万ドル削減され、昨年新設されたばかりのソーラー・アメリカ・イニシアティブも僅か(6.8万ドル)とはいえ削減されている。昨年度に続き、地熱技術と水力発電の廃止が提案されているほか、耐候化支援プログラムが再度の大幅削減に直面している。主要プログラムの予算内訳は下記の通り:

  • 水素燃料イニシアティブ(Hydrogen Fuel Initiative)(注:16)の最終年度となる2008年度予算では、水素技術プログラムに前年度要求を1,720万ドル上回る2億1,300万ドルを要求。2008年度増額分は、水素製造(+320万ドル);水素貯蔵(+930万ドル);燃料電池スタックコンポーネント(+590万ドル);安全性と規格基準(+220万ドル);製造R&D(+300万ドル)等に充てられる。一方、水素燃料電池自動車とインフラの実証プロジェクトは960万ドルの削減となる。
  • バイオマス・バイオ精製R&Dの2,960万ドルという増額には、セルロース系エタノールの逆オークション・プログラム設置用の新規予算500万ドル、合成ガスやバイオ油の改良研究拡大とセルロース系エタノール製造に利用可能な原料の増量支援(+890万ドル)が含まれている。
  • 風力エネルギー予算は2007年度要求から370万ドル削減の4,010万ドル。分散型風力技術への支援が840万ドル増額される一方、低風速技術の利用を推進する短期的活動予算が1,330万ドルの削減となる。
  • ビルディング技術の910万ドルという増額は、建築基準プログラム(+370万ドル)、Energy Star拡大(+100万ドル)、ネット・ゼロ・ビルディング計画(+230万ドル)等に充てられる。
  • 政府間プログラム予算には、2008年度のクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)予算750万ドル(注:17)が含まれている。 
     

C 配電およびエネルギー信頼性の2008年度全体予算は、2007年度要求より1,000万ドル少ない1億1,490万ドル。送配電システムの近代化;エネルギー信頼性・エネルギー効率・システム効率の改善;インフラ安全確保を目的とする多様なプログラムを支援する同プログラムは、研究開発、および、オペレーションと分析に焦点を当てている。2008年度予算では研究開発に8,594万ドル(前年度要求より960万ドル減)を要求している。主要な研究開発関連予算は下記の通り:

  • 高温超伝導R&Dでは、2Gワイヤーの幾つかの代替加工処理方法を中止。このため、2008年度予算は2007年度要求額より1,730万ドル(38.0%)少ない2,820万ドルに減額。
  • 広域モニター用の先進安全性視覚化(safety visualization)ツールの開発と立証を支援する可視化と制御(Visualization and Controls)の予算は780万ドル増額で2,330万ドル。
  • エネルギー貯蔵・パワーエレクトロニクスの予算は前年度要求比380万ドル増の680万ドル。高圧電子装置の開発支援予算が430万ドル増となる一方、先進貯蔵システム関連の活動終了に伴う50万ドル削減で増額分の一部が相殺される。
  • EEREから移譲となった分散型エネルギー源の予算は、分散型発電装置と再生可能資源の統合に関する実証活動の一部終了により400万ドル削減されて2,570万ドル。
     

C 化石エネルギー計画の全体予算ブッシュ大統領就任以来の最大規模で、2007年度要求を2億1,416万ドル上回る8億5,304万ドル(注:18)。大統領が今年の年頭教書演説で再生可能・代替燃料の使用量を2017年までに350億ガロンにするという目標を発表したことから、現政権は石炭液化燃料の拡大を見込んでいるものと推察されている。輸出エネルギー依存度の軽減を掲げる現政権が国内の豊富な(埋蔵量世界第一の)資源である石炭の利用拡大を狙うのは理解に難くないことであり、化石エネルギーR&D予算は9,712万ドル(20.7%)増の5億6,680万ドルに引き上げられている。昨年同様、化石エネルギー費目で予算が要求されているプログラムは石炭のみであり、DOEは再度、石油技術、天然ガス技術、先端冶金研究、共同研究開発、輸出入認可プログラムの廃止を提案している。また、年頭教書演説で大統領が2027年までに戦略石油備蓄(SPR)の倍増計画を提案したことを反映し、SPR予算は15億5,430万ドルから33億1,609万ドルに増額されている。化石エネルギーR&D予算の主な内訳は下記の通り:

石炭R&Dの主な内訳は下記の通り:

  • クリーンコール発電イニシアティブ(CCPI)では、進行中のCCPI第1・第2ラウンドおよび発電所改善プロジェクトを継続し、2008年に実施予定のCCPI第3ラウンド公募(注:19)を支援するため、前年度要求比1,372.7%増(2007年度は既存予算を効果的に利用するまで新予算の追加を制限し、僅か496万ドルの要求であった)の7,300万ドルを要求。
  • FutureGenの予算は2007年度要求額の二倍で1億800万ドル。進行中の申請許可や一次設計を引き続き進めるほか、2012年運転開始に向けて詳細な施設設計や調達活動を支援。
  • 燃料・発電システム予算は2,560万ドル削減され、2億4,560万ドル。
    • 既存の在来型発電所改良技術の開発を支援する既存発電所イノベーションは廃止。
    • 石炭ガス化複合発電(IGCC)予算は前年度要求から400万ドル削減で5,000万ドル。
    • FutureGenに代表される無公害IGCC発電所の設計を可能にする高効率・超低公害タービンのための技術基盤を構築する先進タービンプログラムは2,200万ドル(+920万ドル)。
    • 炭素隔離R&D予算は510万ドル増額され、7,910万ドル。低コストの二酸化炭素分離・回収技術、モニター・計測・検証技術、および、炭素隔離のシステム開発や実地テスト等を含む温室効果ガス抑制技術が中心。
    • 燃料プログラムは2007年度要求比54.8%減の1,000万ドル。大統領の水素燃料イニシアティブ支援として、クリーンコールを原料とする低コスト水素生成の研究に焦点をあてる。一方、代替天然ガスの副産や水素液体キャリアの生産・配給といったR&D活動の予算は要求されていない。
    • 先端研究プログラムの予算は2年連続の削減(640万ドル減)要求で2,250万ドル。2008年度は、高効率かつクリーンな石炭火力発電所の開発を支援するイノベーションや先進コンセプトを狙った活動を重視。減額は、先端発電研究(Advanced Power Research)の終了、石炭のバイオ処理研究の中止、汚染物質の環境影響分析問題の研究中止を反映したもの。
    • 発電所や産業・商業市場で利用可能な低コストのマルチ燃料対応燃料電池システムの開発を目的とする燃料電池R&Dは、130万ドル削減されて6,200万ドル。第2フェーズにあるSECAの石炭ベース燃料電池プロジェクトで引き続き協力。


C 原子力科学技術の2008年度予算は、4年連続の増額要求で8億7,4650万ドル(前年度要求比38.2%増)。ブッシュ政権がエネルギー需要問題および気候変動への対応策として原子力発電を重視している(注:20)ことから、原子力科学技術の予算は2002年度(3億6,289万ドル)以来141%もの増額となっている。2008年度に最大の増額を享受するのは研究開発費で、2億2,061万ドル(63.6%)増の5億6,775万ドルまで引き上げられる。一方、大学原子炉基盤整備・教育支援(University Reactor Infrastructure and Education Assistance)プログラムは再度、廃止が提案されている。原子力科学技術予算の主要内訳は下記の通り:

  • 昨年新設された「世界原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)」の先進燃料サイクル・イニシアティブ(Advanced Fuel Cycle Initiative)の2008年度予算は前年度要求の2億4,300万ドル(注:21)から3億9,500万ドルに引き上げられる。
  • 2007年度予算では、プロジェクト開始予定日の延期に伴い17.3%の減額要求となった原子力発電2010プログラムは、6,000万ドル(111%)増額で1億1,400万ドル。
  • 第四世代原子力システム・イニシアティブ(Generation IV Nuclear Energy Systems Initiative)は3,610万ドル(+470万ドル)まで引き上げられるものの、2007年度予算で42.4%の削減を受けているため、2006年度予算比では33.8%の減額となる。2008年度の増額分は、原子炉燃料の開発、および、次世代原子力発電所許認可戦略の完成に向けたR&D活動に充てられる。
  • 原子力利用水素イニシアティブ(Nuclear Hydrogen Initiative)は2007年度要求よりも390万ドル多い2,260万ドル。増額分は、熱化学製造方法や高温電解製造方法のパイロット実験を設計する活動等に充当される。

 

2. エネルギー省の科学関連予算の内訳: 基礎研究予算を10年間で倍増するというブッシュ大統領の「米国競争力イニシアティブ」の一環として、2007年度に5億5,320万ドル(14.1%)という大幅な増額をうけたDOE科学部の2008年度予算は、前年度要求を2億9,617万ドル上回る43億9,788万ドルとなっている。昨年は削減対象となった生物・環境研究も2008年度予算では2,160万ドル(4.2%)増額となり、高エネルギー物理学(7.1%増)、原子物理学(17.3%増)、基礎エネルギー科学(77.5%増)、先端科学演算研究(6.8%増)、科学研究所基盤整備(55.2%増)、核融合エネルギー科学(34.1%増)も全て増額されている。科学関連予算の主要費目の内訳は下記の通り:

科学関連予算のハイライト:

  • 高エネルギー物理学の内、フェルミ研究所の運営・整備予算は2007年度要求額を50万ドル上回る2億1,620万ドル。大型ハドロン加速器(LHC)プロジェクト予算は、施設支援費(+520万ドル)が増額されるものの、2007年度にLHC検出器への出資が終了(−320万ドル)するため、LHCプロジェクト全体では200万ドルの増額となる。地下・地上・宇宙の施設を用いた非加速器物理学(Non-Accelerator Physics)への2008年度予算は7,240万ドル(+1,310万ドル)、超電導高周波技術を支援する先端技術R&Dは1億8,340万ドル(+2,400万ドル)となる一方で、スタンフォード線型加速器センター(SLAC)の予算はセンターのB-工場の管轄が基礎エネルギー科学へ移譲されるため、3,710万ドルの削減となる。また、中小企業革新研究(SBIR)/中小企業技術移転研究(STTR)計画他の活動予算は200万ドル減で3,030万ドルとなっている。
  • 原子物理学では、トーマスジェファーソン国立加速器施設(TJNAF)、ブルックヘイブン国立研究所の相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)、ホリフィールド放射性イオンビーム施設(HRIBF)とATLASにおける研究・運転予算が2007年度要求より500万ドルの増額となり、連続電子ビーム加速器施設(CEBAF)アップグレード予算が650万ドル増額となる。
  • 生物・環境研究の内、ライフサイエンス分野(2億6,410万ドル→2億8,230万ドル)で注目されるのが、セルロース系エタノールその他バイオ燃料のコスト効率的生産方法開発に繋がる研究を加速化するバイオエネルギー研究センター3ヶ所の新設・運営計画(注:22)で、2008年度には7,500万ドルを要求している。環境分野では、第一世代地球システム(Earth System)モデル構築研究の加速化、および、急激な気候変動研究の開始等の予算が860万ドル増額される反面、開放大気系炭素増加(Free Air Carbon Enrichment)実験への支援中止(540万ドル減)により、気候変動研究関連予算は全体では1億3,810万ドル(+320万ドル)となる。人工網膜の開発を含む基礎研究やイメージング装置開発等を支援する医学的応用・計測学研究(Medical Applications and Measurement Science Research)は前年度と同額要求。
  • 基礎エネルギー科学の内、材料科学工学の予算は8,900万ドル増、化学・地球科学・生物科学は1,540万ドルの増額。
    • 材料科学工学分野の増額分は、ナノスケール科学研究(+1,380万ドル)、5ヶ所のナノスケール科学研究センター(NSRCs)(注:23)運営(+2,290万ドル)、大統領の水素イニシアティブ(+950万ドル)、ソーラー(+310万ドル)等に充てられている。これにはまた、高エネルギー物理学からのSLAC線形加速器運営業務移譲に伴う2,150万ドル増額も含まれる。
    • 化学・地球科学・生物科学: ナノスケール科学研究予算が800万ドル増額されるほか、大統領の水素イニシアティブ予算が420万ドル増額、ソーラーが410万ドル増、および、バイオマス関連研究予算が50万ドルの増額となっている。
  • 先端科学演算研究では、計算科学大学院フェローシップ(Computational Science Graduate Fellowship)プログラム予算の740万ドル増額、アルゴンヌ国立研究所のリーダーシップ計算施設(Leadership Computing Facility = LCF)とオークリッジ国立研究所のLCFにおける計算能力スケールアップに伴う250万ドルの増額等が要求されている。
  • 核融合エネルギー科学では、国際熱核融合実験炉(ITER)MIEプロジェクト予算が大幅に増額(6,000万ドル→1億6,000万ドル)されるほか、科学研究プログラムとその他の有効R&D(Enabling R&D)プログラムは昨年度の減額要求から、530万ドル、60万ドルの増額要求に転じている。 

 

3. 先進エネルギーイニシアティブ: 国家エネルギー安全保障の強化と輸入石油依存度の軽減を目指し、電力部門と自動車部門でのクリーンエネルギー技術ブレークスルーを支援する「先進エネルギーイニシアティブ(AEI)」の2008年度予算は、2007年度要求額を26%上回る27億300万ドル。AEIの多様なエネルギーポートフォリオには、バイオマス(農業廃棄物や森林廃棄物、および、スイッチグラス等エネルギー専用穀物を原料とするセルロース系エタノールを含む)、ソーラー、風力、水素といった再生可能エネルギー技術の向上に加え、クリーンコール技術(含FutureGen)開発推進や原子力エネルギー技術(含GNEP)等が含まれている。大統領が年頭教書演説で再生可能燃料および代替燃料の使用大幅拡大を提案したことを反映し、バイオエネルギーとクリーンコール(石炭液化燃料と推察される)の予算がかなりの増額を享受するほか、核再利用技術を開発する野心的なGNEPを含めた原子力エネルギー予算も大幅増額になっている。2年目に入るAEIの予算内訳は下記の通りである。
 


注釈:

1:上下両院は、2007年度予算が未成立の連邦省庁の運営を継続するため、2006年9月26日に暫定予算の第一号継続決議(1st Continuing Resolution:2006年11月17日まで)を可決し、同11月15日に第二号継続決議(2006年12月8日まで)を、2006年12月9日には第三継続決議(2007年2月15日まで)を可決した。第三号継続決議の失効まで2週間を残すところとなった1月31日、下院本会議は個々の歳出予算法案を審議・可決することに見切りをつけ、2007会計年度最終日(2007年9月30日)までの予算を計上する第四号継続合同決議 「2007年継続歳出予算改定決議案(Revised Continuing Appropriations Resolution, 2007)」 を286対140で可決した。この法案は2月12日の週に上院で審議・採決される予定となっている。 

2:ブッシュ大統領は再度、減税(2010年で失効)の恒久化を要求。減税の負担は5年間で3,739億ドル、10年間で1兆6,200億ドルと推定されている。

3:2008年度の財政赤字は2007年度財政赤字見通しを約50億ドル下回る2,390億ドルと推定されている。

4:エンタイトルメント・プログラムの支出を向こう5年間で959億ドル(Medicareのみで660億ドル)、10年間で3,090億ドル(Medicareで2,524億ドル)削減することを提案している。

5:2008年度予算では、非防衛関連の自由裁量予算を1%増に留めることを提案している。

6:ブッシュ政権は、プログラム廃止で50億ドル、大幅縮減で70億ドルの総計120億ドルを削減できると算定している。

7:上記(注1)で言及の第四号継続合同決議は、国防省(4,366億ドル)と国土安全保障省(348億ドル)を除く他省庁に2007年度予算として4,635億ドルを計上する。これが成立すれば2007年度の自由裁量予算は総額9,349億ドルとなり、、2008年度大統領要求額は2007年度予算よりも51億ドル(0.5%)の減少となる。

:国防省と国土安全保障省に関しては、既に成立した2007年度予算と比較。

9:第四号継続合同決議は、法案に特記するプログラムを除き、その他のプログラム予算を2006年度並みと定めている。そのため、国防省と国土安全保障省以外の省庁の2007年度予算は、大統領の2007年度要求額よりも2006年水準に近いものと推察できる。

10:全米科学振興協会(AAAS)の発表したAAAS Preliminary Analysis of R&D in the FY 2008 Budgetによると、実質ベースでは、基礎・応用研究向け予算は2007年度推定予算(下院が1月31日に可決した第四号継続合同決議を踏まえた推定予算)比で2.0%の削減になるという。

11:物理科学・工学の基礎研究を支援する、全米科学財団(NSF)、エネルギー省(DOE)科学部、商務省国立標準規格技術研究所(NIST)のコアプログラムの予算を10年間で倍増するイニシアティブ。

12:AAASのPreliminary Analysisによると、厚生省の国立衛生研究所(NIH)のR&D予算削減が主要因であるという。

13:ブッシュ大統領が今年の年頭教書演説で初めて地球温暖化に言及したこと、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第一作業部会が2月2日に発表した報告書により、気候変動への問題意識が高まっている。

14:2006年度予算と比較すると、国土安全保障省、農務省、運輸省、内務省のR&D予算は削減に転じる。

15:第四号継続共同決議案は同費目に、大統領要求を3億700万ドル上回る14億7,384万ドルを計上している。従って、2007年度推定予算と比較すると2008年度予算は2億3,764万ドル(16.1%)の削減となる。

16:水素燃料電池自動車や基盤技術の開発促進を行う5ヵ年計画で、総予算は12億ドル。2004年度から2007年度までに9億600万ドルを要求・計上。2008年度予算は3億900万ドルで、DOE科学部(6,000万ドル)、化石エネルギー部(1,300万ドル)、原子力科学技術部(2,300万ドル)が9,600万ドルを拠出する。

17:DOEの2007年度APP予算要求額は1,500万ドル。下院歳出委員会が同予算要求を拒絶したものの、上院歳出委員会は「2007年度エネルギー・水資源開発歳出予算法案」にて、新予算はつけないものの、既存の費目からAPPに1,500万ドル充当することを承認した。現時点では、下院歳出委員会が超党派で作成した第四号継続合同決議案にDOEのAPP予算が含まれているか否かは明らかでない。

18:これにより、2000年の大統領選挙の際にブッシュ大統領候補が公約した、環境に優しい石炭利用技術への10ヵ年20億ドルという投資を3年早く達成することになる。

19:二酸化炭素を隔離目的で回収する先進技術を対象とする競争公募。

20:2007年1月24日に上院エネルギー・天然資源委員会で開催された公聴会で、Jeff Bingaman委員長(民、ニューメキシコ州)、Pete Domenici上院議員(共、ニューメキシコ州)、Larry Craig上院議員(共、アイダホ州)、Jeff Sessions上院議員(共、アラバマ州)、Olympia Snowe上院議員(共、メイン州)が、原子力発電を国家エネルギーミックスの一環とすべきことを指摘した。同公聴会は、原子力をクリーン発電源として受け入れようという風潮が米国議会において若干高まりつつあるのではないかという印象を示唆するものであった。

21:現行の2007年度暫定予算(第三号継続決議)に盛り込まれたGNEP予算は約半額の1億2,000万ドル。

22:2007年度中にセンターを選定し、2008年度末までには運転準備を整える予定。各センターには年間2,500万ドルの予算が5年間給付となる見込み。

23:ローレンスバークレー国立研究所のMolecular Foundry;サンディア国研の統合ナノテクノロジーセンター(Center for Integrated Nanotechnologies);ロスアラモス国研の機能的ナノマテリアル・センター(Center for Functional Nanomaterials);アルゴンヌ国研のナノスケール材料センター(Center for Nanoscale Materials)、オークリッジ国研のナノフェーズ材料科学センター(Center for Nanophase Materials Sciences)。


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