ブッシュ大統領の2008年度予算:概要(その2)

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2007年2月19日

 

ブッシュ大統領が2006年に着手した「米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative)」では、エネルギー省科学部(2008年度要求は前年度比7.2%増)の他に、全米科学財団(National Science Foundation)と商務省国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology)のコアプログラムの予算も10年間で倍増することになっている。このレポートでは、2002年12月19日成立の「2002年NSF認可法(National Science Foundation Authorization Act of 2002:以下「NSF予算倍増法」という)」(注:1)通りには予算が伸びなかったもののACIの恩恵で2007年度要求比6.8%の増額を受ける全米科学財団、予算倍増が終了してからというもの予算の伸び悩みに直面している厚生省の国立衛生研究所、技術イノベーションに更に効率的に対応する目的で省内の技術局(Technology Administration)(注:2)を廃止する商務省、および、内務省の予算について概説する。


II. 全米科学財団

全米科学財団(National Science Foundation = NSF)の予算は、「NSF予算倍増法」通りに増額されていれば2007年度には98億3,900万ドルまで引き上げられたはずであったが、厳しい緊縮財政の影響を完全に逃れることは出来ず、ブッシュ大統領の「米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative = ACI)」(注:3)をもってしても2007年度予算要求額は60億ドル200万ドルに留まっている。2008年度のNSF予算はこの2007年度要求を4億900万ドル(6.8%)上回る64億3,000万ドルまで引き上げられてはいるものの、これは「NSF予算倍増法」の認定した2004年度予算(63億9,100万ドル)を僅かに上回っているに過ぎない。2008年度の要求増額分の内、3億800万ドルは研究開発(R&D)予算の増額で、R&D予算は48億5,600万ドルとなっている。2007年度(ACIの初年度)と同様、基礎研究費(7.9%増の39億7,700万ドル)、応用研究(0.5%増の3億8,100万ドル)、施設・設備費(3.3%増の4億9,800万ドル)の全てが増額されている。

NSFの研究関連活動予算の総額は前年度要求比7.7%増の51億ドル3,200万ドルで、@生物学;Aコンピューター・情報科学;B工学;C地球科学;D数学・物理学;E社会学・行動科学・経済学;Fサイバーインフラ;G国際理工プログラム;H極地研究プログラム;I総合的活動(Integrative Activities);J米国南極研究委員会に下記の通り(注:4)計上されている。

NSF予算のハイライト:

1. 主要な研究関連活動

  • NSFがリード役を務める国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(National Nanotechnology Initiative)への2008年度予算は前年度要求を1,670万ドル(4.5%)上回る3億8,990万ドル。この内、6,290万ドル(前年度390万ドル増)が社会的側面の研究に充当される。
  • NSFのネットワーキング・情報技術R&D(Networking and Information Technology Research and Development)予算は9,000万ドルの増額で約10億ドル。増額分は、高性能コンピューターインフラや大規模ネットワーク、および、情報技術の社会・労働力・経済的側面に充てられる。
  • NSFの気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program)に対する2008年度投資は1.5%(300万ドル)という微増で、2億830万ドル。
  • 国際地球観測年(1957-1958)の創設50周年を祝う国際極年(International Polar Year)への2年目の予算は前年度比4.7%減の5,870万ドル。
  • コンピューターと物理学、または、コンピューターと生物学の交点にある概念を探求するイニシアティブ「サイバー活用の発見とイノベーション(Cyber-enabled Discovery and Innovation)」を新設。初年度予算は5,200万ドル。
  • 海洋力学の理解、海洋事象の予測、海洋資源の管理に必要となる重要な研究課題を確認する新イニシアティブ「海洋研究優先プラン(Ocean Research Priorities Plan)」に初年度予算として1,700万ドル。
  • 革新パートナーシップ(Partnerships for Innovation)の2008年度予算は前年度要求と同額の920万ドル。
  • EPSCoR(Experimental Program to Stimulate Competitive Research)計画の2008年度予算として、前年度比7%増の約1億700万ドルを要求。
  • 2007年度に新設された研究革新新興フロンティア部(Office of Emerging Frontiers in Research and Innovation = EFRI)の2年目予算は前年度と同額の2,500万ドル。
  • 中小技術企業が実施するイノベーション研究支援を目的とする中小企業革新研究プログラム(SBIR)と中小企業技術移転プログラム(STTR)への予算は、6.9%増額で1億1,640万ドル。
  • 産官学の長期パートナーシップ構築を推進する産学協同研究センター(Industry/University Cooperative Research Centers)の2008年度予算は前年度要求を50万ドル(7%)上回る730万ドル。
  • 植物ゲノム研究プログラム(Plant Genome Research Program)の予算は前年度と同額で1億100万ドル。

2. 主要な教育関連プログラム

NSFの教育・人材関連予算は前年度要求(7億1,620万ドル)を3,440万ドル(4.8%)上回る7億5,060万ドル。2007年度に続いて大学院教育への投資が増額(5.6%増)となるほか、昨年は削減要求であった学士課程教育への予算も2008年度には6.8%の増額となっている。

  • 米国の有望な科学・数学・工学専攻大学院生を支援する大学院研究フェローシップ(Graduate Research Fellowships)の予算は10.1%増額されて9,750万ドル。2008年度予算ではフェローシップを新たに200件増数する。
  • 理工学分野の技術者教育を改善する先進技術教育(Advanced Technological Education)の予算は前年度要求比11%増で5,160万ドル。
  • 科学・技術・工学・数学(STEM)分野で学位を取る米国市民や永住者の増数を狙ったSTEM人材育成拡充計画(STEM Talent Expansion Program)は12.1%増の2,790万ドル。
  • 2年続きで予算削減となった学科・教育課程・ラボ改善(Course, Curriculum & Laboratory Improvement)の予算は2008年度に増額に転じ、350万ドル(10.3%)増の3,750万ドル。
  • 科学技術の優良研究センター(Center of Research Excellence in Science and Technology = CREST)予算は18.1%増額され、2,950万ドル。
  • K-12教育の大学院生授業助手制度(Graduate Teaching Fellows in K-12 Education)、数学・科学パートナーシップ(Math & Science Partnerships)、総合的大学院教育研究養成(Integrated Graduate Education and Research Training)、および、非公式科学教育(Informal Science Education)の2008年度予算は2007年度と同額で、4,700万ドル、4,600万ドル、6,600万ドル。

3. 学際的研究の奨励を目的とするNSFセンター・プログラムの2008年度総予算は2億8,070万ドル。

  • 学際的専門知識を必要とする研究問題を模索し、技術移転の機会を創出し、学生や研究者に教育・訓練を提供する産官学パートナーシップを支援する科学技術センター(Science and Technology Centers)の2008年度予算は、前年度要求比1.9%減の6,620万ドル。
  • 学習プロセスの理解を深めるために学際的センター等を支援する学習科学センター(Science of Learning Centers)予算は前年度同額の2,700万ドル。
  • 全米各地の学術機関で学際的な材料研究を支援する材料研究科学工学センター(Materials Research Science and Engineering Centers)の予算は、6.3%増額の5,920万ドル。
  • ナノスケール科学工学センター(Nanoscale Science & Engineering Centers)の予算は、前年度比13.4%増で4,240万ドル。
  • 工学研究センター(Engineering Research Centers)の2008年度予算は、既存19センターの内の4センターがNSF支援を卒業することに伴い、15.8%削減されて5,290万ドル。
  • 基礎的な化学研究の「重大な問い」への対応を目的とする化学結合センター(Chemical Bonding Centers)の予算は、200%という大幅増額で900万ドル。
  • 生体情報管理の新ツール・基準策定を継続し、生物科学のデータ分析能力を支援する分析・合成センター(Centers for Analysis and Synthesis)の予算は、前年度比77.4%の増額で1,150万ドル。

4. 国土安全保障関連活動

NSFの国土安全保障に関する基礎研究投資は、2007年度要求より870万ドル少ない3億7,530万ドル。この減額の一因は、2007年度予算案に爆発物探知センサー(Sensors for the Detection of Explosives)の一回限り予算として2,000万ドルが含まれていたことによる。


III. 厚生省の国立衛生研究所

厚生省の2008年度全体予算は2007年度要求を7億ドル(0.1%)下回る6,973億ドル。厚生省予算の大半はMedicare(老齢者医療保険)やMedicaid(低所得者医療保険)といった義務的支出プログラムへの予算であって、国立衛生研究所(National Institutes of Health = NIH)や食品医薬品局(Food and Drug Administration)等への自由歳出予算は693億ドル(注:5)と、厚生省全体予算の僅か9.9%にすぎない。NIHの2008年度総予算は前年度要求(285億7,800万ドル)を2億8,200万ドル(1.0%)上回る288億6,000万ドルで、NIHのR&D予算は2007年度要求を3億1,200万ドル上回る280億8,000万ドル。但し、「2007年度予算決議法(Budget Resolution FY2007)」(注:6)に盛り込まれたNIHの2007年度R&D推定予算は284億500万ドルであるため、これとの比較では3億2,500万ドルの削減ということになる。2008年度R&D予算の内訳は、前年度予算とは正反対で、応用研究および施設・設備予算が増額され、基礎研究が削減されている。NIHの研究機関別では、国立アレルギー・伝染病研究所(NIAID)と国立研究資源センター(NCRR)が各々、前年度要求比で4.5%と1.3%の増額となるが、他の研究機関は全て1%未満の増額に抑えられている。NIHのR&D予算内訳は下記の通り:

NIH予算のハイライト:

  • 2008年度NIH予算の約84%が全米各地の大学・病院・他の研究機関に属する30万人以上の科学者や研究者を支援するグラントやコントラクトに費やさ(注:7)れ、約10%にあたる29億6,500万ドル(前年度要求比2,060万ドル増)が基礎研究や臨床研究活動プログラムという内部研究に、残りがNIH内の研究施設維持や研究管理支援等に充てられている。
  • 外部の研究者や研究機関を対象とする研究プロジェクトグラント(Research Project Grant = RPG)(注:8)には、2007年度比約4.4%増の151億6,500万ドルが要求されている。新規の競争グラント用予算は前年度要求を3億2,900万ドル上回る36億ドルに引き上げられるものの、競争グラントの交付数が851件増えて10,188件にまると見込まれているため、1件あたりの平均助成金は2007年度水準どまりとなる。無競争グラントを含めたRPG研究プロジェクト総数は481件増えて36,286件となる。
  • 中小企業革新研究(SBIR)と中小企業技術移転研究(STTR)の予算は、2007年度要求と同額の6億300万ドル。一方、グラント交付数の方は22件減って1,777件となる。
  • バイオ防衛研究(Biodefense research)の2008年度予算は2007年度要求(18億9,100万ドル)を1億6,800万ドル下回る17億2,300万ドル。同予算では、@生物兵器が誘発する感染の診断・治療・予防研究を柱とするバイオ防衛;A化学兵器への医療的対応策を開発・改善する化学的脅威の研究;B被爆した市民を診断・治療する効果的新医療措置の研究を支援する核・放射線脅威の研究という3分野における研究を支援する。
  • バイオ医療研究ロードマップの2008年度予算は前年度要求を4,320万ドル上回る4億8,620万ドル。ロードマップの3つのテーマの内、発見への新たな道(new pathways to discovery)と未来の研究チームに対する予算は増額されて、2億810万ドルと8,250万ドルとなる一方、臨床研究事業の活性化に対する要求額は、2007年度要求額(1億8,100万ドル)を1,540万ドル下回る1億6,560万ドルに削減される。
  • ブッシュ政権が2007年度に新設した自立への道(Pathway to Independence)プログラムの2年目予算は、1,500万ドルから3,100万ドルまで増額。
  • AIDS研究プログラムの予算は2007年度要求比0.6%(1,700万ドル)増の29億500万ドル。HIV/AIDS、マラリア、および、結核の世界基金に3億ドルが提供される。


IV. 商務省

商務省の2008年度予算は65億5,300万ドルで、2007年度要求額(61億3,900万ドル)を4億1,400万ドル(6.7%)上回るものの、2006年度予算(66億2,600万ドル)比では7,300万ドル(1.1%)の削減となる。2008年度の商務省予算案で目を引くのが、技術政策の遂行や米国技術革新の推進を担当する技術局(Technology Administration)と技術政策部(Office of Technology Policy)、および、技術担当次官職と技術政策担当次官補職を廃止するという提案である。商務省の『2008年度予算概要(FY2008 Budget in Brief)』によると、技術革新が米国経済全体の競争力に決定的な役割を果たす段階にまで進化したことを踏まえ、大統領は同省の技術政策アプローチを近代化するために、技術政策活動を長官レベルに格上げするのだという。具体的には、現行の独立した技術局に代わり、商務省の政策・戦略企画部(Office of Policy and Strategic Planning)の内に、技術政策・分析の調整や利害関係者の連絡窓口を務める上級政策顧問職が設置され、更には、省内に散在する技術政策活動を調整するために、省内部署の代表者から成る技術評議会(Technology Council)(注:9) が新設されることになる。この変更に伴ない、現在は技術担当次官に直属している国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology = NIST)は、商務長官に直接報告を行うことになる。しかしながら、技術担当次官職が大統領の指名を受け、上院議会の承認を必要とする要職であるのに対し、提案されている政策・戦略企画部の上級政策顧問職は上院承認を必要としない役職であるため、現政権の提案が本当に格上げを意図したものであるのか、あるいは事実上の降格を意味するものであるのか、今後見極めていく必要があろう。

大統領提案ACIの対象機関の一つであるNISTを傘下に持つ商務省の2008年度R&D予算は、2007年度要求を2,300万ドル(2.2%)上回る1億8,800万ドルで、2006年度レベルにほぼ復活することになる。基礎研究費が大幅に増額(2007年度要求比88.5%増)される反面、応用研究と開発は9.5%と23.4%の削減となる。一方、昨年削減を被った施設・設備の予算は4,100万ドル(35.7%)増で1億5,600万ドルに引き上げられている。NISTのR&D予算がACIの恩恵を受けて、昨年に続き増額となる反面、国立海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration = NOAA)のR&D予算は再度の削減されている。商務省R&D予算の内訳は下記の通り:

ここでは、NIST とNOAAの予算について概説する。

1. NISTの2008年度総予算は2007年度要求を5,940万ドル(10.2%)上回る6億4,070万ドル。但し、2007年2月5日のNISTプレスリリースによると、「2007年継続歳出予算改定決議法案」(注:10))に盛り込まれた2007年度NIST予算は6億7,500万ドルであるため、これとの比較では3,430万ドルの削減ということになる。NISTコアプログラムである(i)科学的・技術的研究事業(Scientific and Technical Research and Services = STRS)と(ii)研究施設建設(Construction of Research Facilities = CRF)への2008年度予算要求は、2007年度要求を5,940万ドル(11.1%)、2006年度予算を2,590万ドル(4.6%)上回る5億9,440万ドルとなっている。産業技術事業(Industrial Technology Services = ITS)の大幅縮減に固執するブッシュ政権は、2008年度予算でもまた、先端技術計画(Advanced Technology Program = ATP)の廃止と製造技術普及計画(Manufacturing Extension Partnership = MEP)予算の大幅削減を要求している。しかしながら、先週成立した「2007年度予算決議法」は、ブッシュ政権のATP廃止、MEP大幅削減に反対し、2006年度と同額の予算を2007年度にも計上しているため、2008年度のITS予算は実際には、2007年度推定予算を1億3,730万ドル(74.8%)下回る4,630万ドルとなる。

NIST予算のハイライト:

  • 2008年度R&D予算は2007年度要求額(4億5,100万ドル)を6,400万ドル(14.2%)上回る5億1,500万ドル。基礎研究予算、および、開発と施設・設備予算が2年連続の増額となる一方で、応用研究が削減となっている。
  • 大統領の提案したACIの一環として2007年度に増額を受けた、@ナノテクノロジーの実現:発見から製造まで;A中性子研究センターの拡張および改善;B水素経済の実現;Cサプライチェーン統合による製造イノベーション;D量子情報科学:21世紀イノベーションのためのインフラ整備;E台風、火災、地震時の構造安全;F次世代材料イノベーションを可能にするシンクロトロン計量科学技術;G国際基準とイノベーション;H計測学におけるイノベーション;I生体イメージング:21世紀医療技術のための計量科学と基準;Jサイバーセキュリティ:国家と国民の安全を保障する革新技術;Kバイオメトリクス、という12イニシアティブを継続する。
  • NIST研究所の予算増額の内、2,225万ドルは下記の分野における5つの新イニシアティブに計上される:
    • ナノテクノロジーの実現:発見から製造まで … ナノ構造の強度特性・ストレス・ひずみ特性・光学的特性・電子特性の測定方法開発;構造や化学組成の詳細を明らかにする三次元の高解像度イメージング方法構築;ナノテクノロジーの衛生・環境・安全面での影響を特定する省庁間努力に必要な測定方法の策定等に600万ドル。
    • 気候変動科学プログラム(CCSP)のための計量と基準 … 他省庁との協力による国際的放射照度測定尺度の開発;人工衛星ベースの放射照度測定システムの精度と安定度を最適化する新機器設計戦略・品質保証プログラムの策定;研究室において特定エアロゾルを発生させる技術の開発等に500万ドル。
    • 量子科学によるイノベーションの実現 … 2006年度に創設された量子合同研究所(Joint Quantum Institute)・メリーランド大学および国家安全保障局(National Security Agency)との協力による、テレポーテーション技術を活用する量子「ワイヤー」の研究;コンピュータのランダム・アクセス・メモリーに似た量子メモリーの研究;情報を一形態の量子情報から他形態の量子情報に変える量子変換プロセスの研究等に400万ドル。
    • 災害に強い構造およびコミュニティー … 他省庁との協力により、コミュニティーおよび地域規模での損失予測や防災能力評価; リスク管理戦略の対費用便益(コスト・ベネフィット)の推定、および、リスクに応じて規格や慣行を近代化するための意思決定の支援に必要なツールや標準方法を策定するために400万ドル。
    • 全米地震危険度低減プログラム … 基礎研究の調査結果と設計指導や国家モデル建築基準の間にある実施面でのギャップ確認;国家モデル建築基準に使用する、コンセンサスに基づいた費用効率的な耐震設計・分析手順の策定等に325万ドル。
  • 研究施設建設(CRF)予算の内4,690万ドルは、NISTキャンパスの運用環境の維持・大規模な修理・安全性改善に充てられ、4,700万ドルが下記の新イニシアテイブに計上される:
    • コロラド州ボルダーのキャンパスに、原子レベル現象の確実な測定・操作に必要な環境制御(environmental control)を提供する近代的研究施設を建設 … 2,800万ドル
    • NIST中性子研究センターの規模拡大と能力改善を継続 … 1,900万
  • 国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(National Nanotechnology Initiative)に対するNIST投資は、2007年度要求を1,100万ドル上回る9,700万ドル。

2. NOAAの2008年度総予算は2007年度要求を1億3,100万ドル(3.6%)上回る38億1,500万ドルで、増額分の大半(1億2,300万ドル)は、海洋科学研究の進歩;変化に過敏な(sensitive)海域や沿岸地域の保護と修復;海洋資源の持続可能な利用に充てられる。ここ数年来のR&D予算削減傾向は2008年度にも変わらず、前年度要求比5.9%(3,400万ドル)減の5億4,400万ドルとなっている。応用研究が前年度より2,600万ドル(5.3%)少ない4億6,400万ドルとなるほか、開発と施設設備を合わせた予算も800万ドル(9.1%)削減の8,000万ドルという要求になっている。

NOAA予算のハイライト:

  • 2007年度に削減(注:11)要求となったNOAAの海洋・大気研究局(NOAA Researchと呼ばれる)は、2008年度には増額要求へと転じ、2007年度要求額を2,010万ドル(5.8%)上回る3億6,880万ドルに引き上げられる。内訳としては、全米旱魃統合情報システム(NIDIS:+110万ドル);下層大気中水蒸気が地球温暖化で果たす役割を明確にする水蒸気プロセス研究(+90万ドル);米国の全地球気候観測システム(GCOS)プロジェクト(-130万ドル)等を含む気候研究(Climate Research)への2008年度予算が1,030万ドルの増額、海洋・沿岸線・五大湖リサーチ予算が2,520万ドル増、および、気象・大気質研究の予算も500万ドル増額となる。
  • 全米環境衛星データ・情報サービス局(National Environmental Satellite Data and Information Service)の2008年度予算は2007年度要求よりも5,560万ドル(36.2%)少ない9,780万ドル。これは、環境観測システム(Environmental Satellite Observing System)に含まれる、静止衛生システム(Geostationary Satellite System = GOES)の予算削減(-8,020万ドル)(注:12)や極軌道衛星システム予算の削減(-660万ドル)等を反映している。一方、NOAAデータ・情報サービスセンターの予算は約90万ドルの増額で5,280万ドルとなる。
  • 省庁間イニシアティブの気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program)へのNOAA投資は前年度レベルを1,200万ドル(6.5%)下回る1億7,400万ドル。


V. 内務省

内務省の2008年度自由歳出予算は、2007年度推定予算(注:13)を3億1,800万ドル(3.0%)上回107億500万ドル(注:14)。戦略ミッション別では、;@リクリエーション(Recreation)予算が17億ドル(2007年度要求より5億ドル増);A国家エネルギー安全保障強化を目的とする資源利用(Resource Use)が16億ドル(2007年度要求比1億ドル増);B景観や河川流域の改善、文化遺産・自然遺産の保護を目的とする資源保護(Resource Protection)が32億ドル(2007年度要求比6億ドル増)と増額を受ける一方、Cコミュニティサービス(Serving Communities)は2007年度要求額(50億ドル)より10億ドル削減されて40億ドル;D優良マネジメント(Management Excellence)は前年度同額の2億ドルとなっている。

内務省の中で2008年度に最大の増額を享受するのは、2016年に国立公園創立100周年を迎える国立公園局(National Park Service = NPS)で、百周年記念に備える「大統領の国立公園百周年イニシアティブ(President's National Parks Centennial Initiative)」の一環としてこれまでで最大の増額を受け、NPSの2008年度予算は前年度比12.2%(2億6,120万ドル)増の24億ドルまで引き上げられている。一方、同省のR&D予算は4年連続で削減され、2008年度予算は前年度より1,500万ドル少ない6億2,100万ドルとなる。内訳では、昨年に続き、基礎研究と応用研究の予算が7.1%、1.7%と削減される一方で、開発費は3.7%増額されている。

内務省予算のハイライト:

  • 内務省予算に盛り込まれたエネルギー計画の総合予算は前年度比3.4%(2,550万ドル)増で4億8,130万ドル。ブッシュ大統領が昨年2月6日に発表した2007年度予算案は、『2005年包括エネルギー政策法(NEPA)』成立後の初めての予算教書であったため、国内エネルギーの供給拡大を助長する内務省のエネルギー計画を詳述していたが、この2008年度予算案では内務省管轄の天然資源がリースされた場合に生まれる収入の推定が主体で、エネルギー計画への拠出額が明示されていない。主要なプログラムの概要は下記の通り:
    • 国土管理局(Bureau of Land Management)のエネルギー計画予算は、前年度比4.4%(600万ドル)増の1億4,290万ドル。増額分の内の310万ドルは、石油・天然ガス操業が環境上適正な方法で実施されていることを確認するため、石油・天然ガスの査察およびモニター拡張に充てられている。
    • 鉱物資源管理部(Minerals Management Services = MMS)のエネルギー計画予算は、前年度比6.1%増の2億9,080万ドル。大陸棚(Offshore Continental Shelf = OCS)の2007〜2012年リース計画の実施、および、2008年のOCSリース販売に必要な環境分析完了等の予算が400万ドル増額され、急増するメキシコ湾超深海での探査活動・開発対応に130万ドルが充当される。一方、メタンハイドレート研究予算は100万ドルの削減となる。
    • 米国地質調査局(US Geological Survey = USGS)のエネルギー計画予算は2.6%増額されて2,680万ドル。USGSでは、国内エネルギー資源に関する研究・査定活動を継続するほか、エネルギー発見・利用の環境影響評価を継続する。
    • 2007年度予算ではオイルシェール(油頁岩)の開発に、BLMとUSGSの予算で計480万ドルを計上していたが、2008年度予算ではBLMがオイルシェールの研究開発実証に5件のリースを認可したことから、これに伴うリース料の1,500万ドルを収入として見込んでいる。
    • ガスハイドレートに関しては、メキシコ湾およびアラスカ州ノーススロープにおいて、研究・資源モデリング・査定評価を促進するBLM、MMS、USGSの努力を調整。2008年度予算案では、北極圏野生生物保護区域(Arctic National Wildlife Refuge)の一部を掘削解禁する法案が成立して2009年に第一回目のリース販売が行われることを想定し、70億ドルのボーナス収入を見込んでいる。
  • MMS管轄の重油漏れ研究(Oil Spill Research)プログラムの2008年度予算は2年連続の削減で640万ドル(前年度より50万ドル減)。
  • 内務省の主要科学機関である米国地質調査局(USGS)の2008年度予算は2007年度より1,230万ドル増額の9億7,500万ドル。但し、R&D予算は3年続いての削減要求で、前年度より1,900万ドル(3.4%)少ない5億4,700万ドルとなっている。
    • USGSのマッピング・遠隔センサー探査・地理学調査(Mapping、Remote Sensing, and Geographical Investigations)の予算は、30万ドル削減されて7,500万ドル。
    • エコシステム科学プログラム予算が2,000万ドルの削減となる反面、大統領の優先事項である健全な土地イニシアティブ(Healthy Land Initiative)の予算が500万ドル、海洋アクション計画(Ocean Action Plan)の一部である海洋研究優先プラン(Oceans Research Priorities Plan)および実施戦略の着手予算が300万ドル増額となる。
    • USGSの気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program)への2008年度投資は、100万ドル増えて2,700万ドル。

 

《付録》 商務省に新設される技術評議会の組織図 (PDF file)


注釈:

1:NSFの予算2003年度から2007年度までの5年間で倍増するという法令。

2:商務省の技術局は現在、ACIで予算増額を受ける国立標準規格技術研究所(NIST)を管轄している。

3:ACIの10ヵ年倍増計画に従うと、NSF予算は2016年度に111億6,000万ドルとなる。

4:2006年度・2007年度予算では教育関連プログラムに分類されていたEPSCoR(Experimental Program to Stimulate Competitive Research)計画が、2008年度予算では研究関連活動の統合的活動に移譲されたことを反映した数字になっている。

5:これは、2007年度要求額よりは約17億ドル(2.5%)の増額となる。

6:「2007年継続歳出予算改定決議法案」は2月14日に上院本会議で81対15で可決され、2月15日には、ブッシュ大統領の署名によって「2007年度予算決議法」が成立している。

7:SSTI Weekly Digest Special Federal Budget Issue - February 5, 2007の算定。

8:同グラントの予算は、NIH総予算の約52.5%に相当する。

9:新設される技術評議会は、技術担当上級政策顧問(議長)、NIST所長、国際通商担当次官、米国特許商標局長、産業・セキュリティー担当次官、国際知的所有権執行調整官、国立海洋大気局(NOAA)局長、経済問題担当次官、経済開発担当次官補、国立電気通信情報局(NTIA)局長で構成される。

10:同法案は、下院で2007年1月31日に、上院で2月14日に可決され、2月15日には大統領の署名をもって「2007年度予算決議法」として成立しているが、ここでは2月5日付けのNISTプレスリリースを参照しているため、敢えて「2007年継続歳出予算改定決議法案」のままとするもの

11:2007年度予算要求額は、2006年度予算(3億7,960万ドル)より3,090万ドル少ない3億4,870万ドルであった。

12:開発最終段階にあるということで、GOES-Nシリーズの予算が2,680万ドル、GOES-Rシリーズの予算が5,430万ドルの削減となっている。

13: 『2008年度内務省予算概要(Fiscal Year 2008 Interior Budget in Brief)』では、2008年度予算を2007年度推定予算と比較している。従って、内務省予算に関しては特記がない限りは、2007年度要求額ではなく、2007年度推定予算との比較とする。

14:但し、2007年度予算は削減であるため、2006年度予算(108億5,200万ドル)との比較では1.4%減となる。


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