下院科学・技術委員会のエネルギー・環境小委員会における

「バイオ燃料利用拡大への道」に関する公聴会:概要

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2007年6月19日

 

下院科学・技術委員会のエネルギー・環境小委員会は、Nick Lampson同小委員長(民主党、テキサス州)が草稿した「バイオ燃料研究開発推進法案(Biofuels Research and Development Enhancement Act)」草案に関して専門家や利害関係者の意見を聴取するため、6月14日に公聴会を開催した。同法案の詳細は未だ一般に公表されていないものの、6月14日のプレスリリースでは主要条項として下記をあげている:

  • 現行インフラストラクチャーを利用したバイオ燃料の輸送や貯蔵に固有な問題に対応する、研究・開発・実証プログラムに予算提供する。
  • バイオ精製所のエネルギー効率改善を狙った研究プログラムを設立する。
  • バイオ燃料関連研究の予算を増額する。
  • バイオ燃料生産率の低い州のために、生産量増大を狙ったグラント計画を設置する。

ここでは、NEDOワシントン事務所リサーチャーNicholas Rekstenのメモに基づき、Lampson委員長の開会の辞、および、エネルギー省(DOE)傘下の国立再生可能エネルギー研究所、Standard Renewable Energy社、再生可能燃料協会、先進バイオ燃料連合、環境団体のFriends of the Earthを代表する各証言者の発言と質疑応答について概説する。

 

<開会の辞>

Nick Lampson委員長(民主党、テキサス州)

化石燃料はいかなるエネルギー戦略においても依然として重要要素である一方、エネルギー問題の解決で将来への鍵となるのはバイオ燃料であり、連邦政府はこの研究開発にコミットする必要がある。エタノール業界は現在、トウモロコシ由来のエタノールと大豆由来のバイオディーゼルにもっぱら依存しているが、エタノール需要急増のために食品や飼料の価格高騰が懸念されている。エタノールが国内販売ガソリンに占める割合は現在僅か5%(注:1)であるが、これを、提案されているバイオ燃料使用目標まで引き上げるには国内で生産されるトウモロコシの約半分をエタノール製造にまわさねばならない。従って、バイオ燃料用の原料を拡大して、木片やスイッチグラス、その他セルロース系材料を利用することが必須であり、この技術コストを引き下げることが必要となる。

 

<証言>

国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のThomas Foustバイオマス研究部長

バイオ燃料業界がバイオ燃料の原料をトウモロコシからバイオマスへと切り替えるために必要な新規技術を探求しなければならない。米国内のバイオマス生産能力がフルに活かされれば、国内燃料の50%をバイオマスで供給することが可能となるが、現時点では、バイオマス由来のエタノールを効率的に生産する技術が未だ見つかっていない。 バイオマスや植物油、または、動物の脂肪から作られるバイオディーゼルも将来有望であるが、必要な原料の国内生産能力にはかなりの制限があり、既存の原料では年間20〜40億ガロンの生産がせいぜいと見られている。従って、藻のような新規原料が必要であるが、このプロセス技術には未だ10年はかかる見通しである。更には、DOEの調査研究によって、既存の燃料インフラが大量のバイオ燃料輸送には不十分であることが明らかになったように、バイオ燃料インフラの整備も必須である。


Standard Renewable Energy社のJohn Berger理事長

石油輸入を削減し、バイオディーゼル燃料に切り替える必要がある。2006年のバイオディーゼル生産は僅か2.5億ガロンであったが、米国内で建設中の50ヵ所の新規精製施設によって設備容量が約17億ガロン増えるため、国内の精製設備容量は間もなく爆発的に拡大し、4万の新規雇用が創出されることになる。Lampson委員長の草案に、切望されていたバイオディーゼル研究支援が盛り込まれていることを称賛する。特に、バイオディーゼル・インフラを拡大する方法、および、バイオディーゼル生産コスト引き下げに役立つ新原料の研究が重要となる。また、バイオディーゼルの消費を確実に拡大するためには、バイオディーゼル使用基準を採用することが不可欠となる。連邦政府は今後10年間で5%を目標とすべきである。


再生可能燃料協会(RFA)のRobert Dinneen会長

エタノール業界は技術的に進歩してきている。殆ど全てのエタノール企業がセルロース系エタノール生産プロセス向上を目指す研究プログラムを持っており、多様な新生産プロセスや原料が探求されている。こうした研究を推進し、バイオ燃料の市場構築と燃料輸送インフラ面で残っている課題に対応するため、RFAはLampson草案に対して下記を提言する:

  • バイオ燃料インフラに関する研究は、多様なバイオ混合燃料の独特な物理的・科学的特性を考慮に入れる必要がある。
  • バイオ燃料の原料多様化を推進するグラント計画を拡張する。
  • 燃料として市販され得る混合燃料に対して新基準を策定することを回避すべきである。草案では販売される多様な混合燃料の適合性を決定する調査研究を要請しているが、EPAが既に、各分野の専門家との協議に基づいてこれを設定し規定している。草案の定める基準は、このEPA規定を凌ぐものであり、事実上の新基準を設定することを意味する。


先進バイオ燃料連合(Advanced Biofuels Coalition)のMichael McAdams専務理

企業は、政府の新バイオ燃料技術開発に喜んで協力する意向である。但し、小委員会では、業界が自らにとっての最善技術や原料を決定できるよう、技術および原料ニュートラルな政策を可決すべきである。特に重要なのは、第一世代燃料を超えた進展である。第二・第三世代燃料の可能性は遠大で、砂糖やバイオマスを原料とするジェット機用バイオ燃料の可能性すらある。バイオ燃料の炭素基準設定に際しては、異なるプロセスが異なるレベルの二酸化炭素を放出することを考慮し、フレキシビリティに留意しなければならない。


Friends of the EarthのDavid Waskow国際プログラム局長

バイオ燃料には、将来のエネルギー源としての大きな期待がもたれるが、バイオ燃料の生産は正しい方法、つまり、温室効果ガス(GHG)を削減し・地方経済を活性化する方法で行われなければならない。業界が成長するにつれて、土地や水資源の利用、土壌や水の質、生成プロセスから生じる炭素排出等に配慮する必要がある。また、バイオ燃料のライフサイクル炭素排出を理解するため、土地開墾によるバイオマス収穫やトウモロコシへの土地転用の影響について疑わしい推測をする現行モデルよりも優れたモデルが必要である。技術開発の面では、@バイオ燃料原料の多様化;A原料作物の持続可能な農耕技術の研究;B新発見原料を効果的に利用出来るような生産技術の研究が重要である。

 

<質疑応答>

Lampson委員長(民主党、テキサス州)
バイオ燃料を全米各地に輸送するため、バイオ燃料用のパイプラインを新設すべきであるか?もしくは、現在のようにトラックや貨車といった「実質上のパイプライン(virtual pipeline)」を引き続き利用すべきであるか?

Dinneen RFA会長
CSX鉄道によると、現行法の定めるエタノール輸送には、貨車を4%増やすことで対応可能であるという。真の問題は、業界がどのように発展するかにつきる。石油業界の場合は生産地域がメキシコ湾西岸に集中しているため、パイプラインが適切であるが、バイオ燃料生産が全米各地に散在し、地方化するのであれば、パイプラインは採算性がないかもしれない。

Foust NRELバイオマス研究部長
バイプライン建設の方がどちらかといえば安価である。現時点ではパイプラインによるバイオ燃料輸送には技術的問題があるものの、これらは比較的容易に解決されるであろう。

 

Lampson委員長(民主党、テキサス州)
既存の石油インフラの一部をバイオ燃料輸送に変換するべきであるか?

Dinneen RFA会長、Foust NRELバイオマス研究部長、McAdams専務理事

バイオ燃料輸送用への変換は可能である。

 

Ralph Hall下院議員(共和党、テキサス州)
第二・第三世代のバイオ燃料を研究開発している企業の例は?

McAdams先進バイオ燃料連合専務理事
イースト菌からマラリア・ワクチンを開発したAmyris Biotechnologies社が、イースト菌利用の類似手法でエタノールを第二世代バイオ燃料に変換する研究を行っており、3年ほどで市場化の計画となっている。また、フィンランド企業のNeste Oil社が現在、米国に第二世代バイオ燃料工場の建設を企画中である。

 

Lynn Woolsey下院議員(民主党、カリフォルニア州)
炭素ニュートラルの目標は十分であるか?また、バイオ燃料増産のもたらす環境影響問題 …トウモロコシ価格高騰や土地利用問題等… は何か?

Waskow Friends of the Earth国際プログラム局長
炭素ニュートラルよりも、上院エネルギー法案に盛り込まれた低炭素燃料(low carbon fuel)使用基準といった適切な政策目標の方が重要である。土地利用の問題に関しては、多くの土地がエタノール用原料生産に転用されることで、食品や飼料価格高騰という波及効果を引き起こす。ブラジル等では、これが熱帯雨林の壊滅的破壊の一因とされている。バイオ燃料政策を策定する際には、こうした間接的な結果を無視することは出来ない。これらの問題を回避する一つの方法は、藻や多年草といった土地集約度の低い原料を利用することである。

 

Bob Inglis下院議員(共和党、サウスカロライナ州)
草案に盛り込まれた、11のバイオエネルギー研究センター新設案(注:2) をどう思うか?

Dinneen RFA会長
11ヶ所の新センターは必要以上であるかもしれない。しかしながら、バイオエネルギー研究センターが全米各地に散在して設置されるのであれば、各地域の異なる原料を使ったバイオ燃料研究開発を実施することが出来るため、新センターの建設は生産的であると思う。

Foust NRELバイオマス研究部長
全米の各石油地帯に一つづつ、5ヶ所のセンター新設が適切だと思う。

 

Lampson委員長(民主党、テキサス州)
藻を原料に利用するためには、一層の研究を行う必要があろうか?

Foust NRELバイオマス研究部長
一層の油を搾り出せる藻を開発する必要がある。現在は、藻は飢えている時のみ油を出すため、栄養が十分で成長しているときには殆ど油が出ない。藻は、同量の大豆と比較すると、その1,000〜10,000倍もの油を生産可能であると見られているため、研究者は、成長しながら同時に多量の油を出す藻を開発する必要がある。

 

Bob Inglis下院議員(共和党、サウスカロライナ州)
藻の研究について、連邦政府はどのような支援が可能か?

Foust NRELバイオマス研究部長
この技術は未だ商業的に実現可能な段階に至っていないため、連邦政府は同技術への支援予算を増額すべきである。

Berger Standard Renewable Energy理事長

我が社は、採算性の見込まれる新技術には喜んで投資している。業界にとってベストなのは、一貫性のある政府政策である。これによって、投資家は安心して新技術に投資することが可能となる。

 


注釈:

1:ガソリン消費の5%に相当するエタノールを製造するために使用されたトウモロコシは、2005/2006作物年度収穫量の14%。(出典:UDSA/ERS, "Etahnol Expansion in the United States: How will the Agricultural Sector Adjust?" Paul C. Wescott, May 2007.)

2:上院では、Jeff Bingaman上院議員(民主党、ニューメキシコ州)が全米各地に7ヶ所のバイオエネルギー研究センターを新設することを「2007年エネルギー安全保障および輸送の為のバイオ燃料法案(上院第987号議案)」で提案している。上院第987号議案は、Harry Reid上院民主党院内総務(ネバダ州)によって「2007年再生可能燃料、消費者保護、及びエネルギー効率改善法案(上院第1419号議案)」に統合され、現在上院本会議で審議されている。


Top Page