アメリカ再生可能エネルギー評議会(ACORE)主催の
「アメリカ国家政策における再生可能エネルギー:第2フェーズ」フォーラムについての報告

 

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2008年12月10日

アメリカ再生可能エネルギー評議会(American Council on Renewable Energy = ACORE)が2008年12月4日にワシントンDCのCapitol Hill Clubで、「アメリカ国家政策における再生可能エネルギー:第2フェーズ」フォーラムを開催した。

同セミナーは、開会の辞、基調演説の後、(1)輸送用燃料政策;(2)電力政策;(3)再生可能エネルギー拡大の為の融資、という3セッション構成で進められた。

ここでは、ACORE議長のMichael Eckhart氏とグーグル社の気候変動環境イニシティブ部長であるDan Reicher氏の開会の挨拶、および、昨年アイオワ州知事に就任したChet Culver氏の基調演説の概要を報告する。


1. 開会の辞および基調演説

A. Michael Eckhart氏(ACORE(注1)議長)の発言

  • 我々が直面している課題は、米国は地理的に一様でなく、経済;財務能力;既存インフラ;生活様式;個人的嗜好やコミュニティの嗜好が各々に異なるため、再生可能に対してたった一つの回答というものがないこということにある。このため、地域格差を受け入れた国家エネルギー政策が必要である。
  • 米国における再生可能エネルギーの現状
    • 風力エネルギーは成長しているが、生産税額控除(PTC)は僅か1年延長されたにすぎないため、PTC満期終了後の状況が大問題となる。PTCのこうした[断続的な施行]状況は国家政策の無責任に他ならない。これを正す必要がある。
    • 太陽光発電は軌道に乗っている。しかし、設置されるPV装置や設備が国産なのか、外国産になるのかという問題がある。国内にPV産業が根差すように、PV生産を奨励する必要がある。
    • 地熱エネルギー開発に関しては、年間40億ドルの計画を求めたが、エネルギー省(DOE)は未だ同計画に着手していない。現在作動中の地熱発電設備容量は2,957MWで、4,000MWが計画・開発段階にある。エネルギーは存在するが、それを手に入れなければならない。掘削と電気の技能を活用して、ポテンシャルの高い同資源を開発すべきである。
    • 海洋エネルギーの開発がとりのこされている。東海岸における時速1マイルの波は、空気の171倍もの密度を持っている。これを活用する必要がある。
    • バイオ燃料は、好況と不況を周期的に繰り返している。この不安定な現状を安定化させるは政府の政策次第である。
  • 再生可能エネルギーはオバマ次期大統領の優先事項リストに含まれており、これを国家アジェンダへと引き上げる好機を迎えている。州政府は既に指導力を発揮している。今度は、連邦政府が新たなリーダーシップを示す時である。

B. Dan Reicher氏(グーグル社の気候変動環境イニシアティブ部長)(注2)の発言

  • オバマ政権の成立を目前にして、ワシントンは今、エキサイティングで歴史的な瞬間に立ち会っている。
    • 我々のアジェンダ…積極的なRPS、長期的税額控除、大規模なスマートグリッド、研究開発(R&D)の大幅拡張…を支持する次期大統領が控えている。
    • 民主党優勢の議員構成から、第111議会では実際に我等のアジェンダをやり遂げ得るものと期待される。
  • オバマ政権移行チームにとっての最重要点は、新政権始動直後の重大な数ヶ月の行動であり、特に、クリーンエネルギーを経済刺激法案に盛り込むことを検討している。これにより、今後2年間の経済活動と雇用創出、民間資金のてこ入れ、そして、政策変更のてこ入れに大きな効果が期待される。皆さんからのアイディアを頂戴したい。
  • 加えて、包括エネルギー法案、気候変動法案、2010年度予算等の長期的なエネルギー政策にも関心をもっている。
  • 株式と負債(equity and debt)は、再生可能エネルギー産業の成長に必要不可欠であるものの、金融危機のために現在行き詰っている。これを如何にして開放するかが特別な関心事となっている。これに対して、皆さんからアイディアを是非とも頂戴したい。
  • グーグル社の再生可能エネルギーに対する主要コミットメント
    • 技術者チームによる、重大な技術的課題への取り組み
    • 風力、ソーラー、地熱分野における主要エネルギー会社への一連の投資
    • 行き詰っているプロジェクト融資の開放で一役を果す方法を検討中
    • ワシントンの政治焦点を変える努力
    • 大型スマートグリッド、再生可能エネルギーおよび省エネで、ゼネラル・エレクトリック社と連携

C. Chet Culverアイオワ州知事(注3)(民主党)の基調演説

  • 我々が今日ここに結集した理由は、アイディアを出し合い、地域のベストプラクティスを共有し、再生可能エネルギー資源開発を一刻も早く進めるための支援を次期大統領と次期(第111)議会に要請するためである。
  • アイオワ州は探査とイノベーションで有名であり、アイオワ州立大学初の黒人教授で、後にタスキギー大学で付加価値化農業(value-added agriculture)を確立したGeorge Washington Carver博士; 現在のDuPont社の先駆となるPioneer Hi-Bred International社を創設し、後に第33代米国大統領となったHenry Wallace氏; 植物病理学の開拓者であるNorman Borlaug博士等、先見の明ある人物を輩出している。
  • 米国は今、新たな課題に直面しているが、我々の前には再生可能エネルギーのフロンティアが広がっている。これを早急に、州毎・地域毎に開拓する必要がある。エネルギー自立の未来に対する共通ビジョンを創って採用し、発見の限界を超えて押し広げることにより、気候の危機に対応し、海外輸入エネルギー依存から米国を開放し、グリーン産業雇用を数百万創出し、エネルギー自立への道を歩むことを助長することが出来る。
  • アイオワ州の体験
    • 40年前、我が州は米国でも輸入エネルギー依存の最も高い一州であり、1970年にはエネルギー生産で下から二番目であった。エネルギー生産・消費・節約方法を変える賢明な公共政策…R&D投資、農業従事者の生産性向上、付加価値化農産業、豊富な天然資源の活用推進…の30年余による実施により、今では米国内で最もエネルギーリッチな州に変貌した。アイオワ州は、アメリカの再生可能エネルギーの首都、中西部のシリコンバレーになりつつある。
    • 在来型エネルギーのオプションを縮減して、再生可能資源オプションを拡充する進歩的で革新的なアイオワ州の政策:
      • 18ヶ月前に米国州政府で初めて、閣僚級のエネルギー自立局Office of Energy Independence)を設置。
      • 可能な限り多様な再生可能エネルギー・ポートフォリオの構築
        1. バイオ燃料 … 我が州のバイオ燃料業界は州経済に80億ドル、5万の新雇用を追加。アイオワ州の年間エタノール生産量は米国全体の30%(20億ガロン)で、バイオディーゼル生産量は25%(2.5億ガロン)。セルロース系エタノール等の次世代バイオ燃料開発を考慮に入れると、我が州のポテンシャルには限りがない。Emmitsvilleに建設中のPOET Libertyプロジェクトが完成すれば、米国初の商業的に存立可能なセルロース系エタノール工場となる。同プロジェクトは、アイオワ州が1,500万ドル、連邦政府エネルギー省(DOE)が8,000万ドル、民間部門が1億ドル以上を拠出している、州-連邦-民間パートナーシップである。
        2. 風力 …1,200基以上の風力タワーが現在稼動中で、1,400MWのクリーンエネルギーを生産。今後2年間で1,000基以上の増設が予定されている。州知事風力エネルギー連合(Governors Wind Energy Coalition)共同議長として、一人あたりの風力発電量でアイオワ州が米国一であることを誇りに思っている。米国でタービン、タワー、ブレードの3部品を製造する州は2州だけであり、アイオワ州はその一州である。過去24ヶ月の間に、Shiona Baird、Siemens、Clipper Windpower、Hendricks、TPI Composites、及びTrinityの6社がアイオワ州に部品製造工場を設置、または、同州の工場を拡大することを決定。これにより、2,300の新雇用が創出され、2.5億ドル以上の投資が流入。
      • 2006年11月州知事選において、自分は再生可能エネルギーを最重要公約に掲げた。州知事就任後に:
        1. 予算1億ドルの「アイオワ電力基金(Iowa Power Fund)」を創設(注4)
        2. 家庭における省エネ助長を目的とする「アイオワ州グリーン部隊(Iowa Green Corps)」を設立。
        3. 我が州の地下岩層を、風車で発生する圧縮空気の貯蔵に使用することを目的とする「アイオワ州貯蔵エネルギーパーク(Iowa Stored Energy Park)」を支援。
  • 米国の州政府は各自に出来ることを実施してはいるが、これには限界がある。国家レベルの課題には国家レベルの指導力が必須であり、今こそ、オバマ-バイデン政権、及び、第111議会のリーダーシップが必要である。
  • 5つの提言
    1. グリッドの整備が必要である … 米国風力エネルギー協会(AWEA)によると、2008年に米国は世界最大の風力エネルギー生産国になったという。しかしながら、送電面での課題が残っている。大容量送電線の新設コスト分担が主な障壁であり、公平な資金調達制度が必要である。グリッドの整備は、DOEが設定した2030年までに米国総電力の20%を風力で賄うという目標の達成において最重要項目(注5)でなければならない。アイゼンハワー大統領の州間高速道路建設アプローチに類似した、大規模なオバマ-バイデン国家グリッド計画が必要である。
    2. 風力エネルギーの生産税控除(PTC)を5ヵ年延長 … オバマ次期大統領の呼び掛けの復唱となるが、風力エネルギーを国家エネルギー戦略の重要コンポーネントとして確立する上で必要不可欠なPTCを最低5年間延長するべきである。
    3. 国家レベルの再生可能エネルギー使用基準(RPS) … アイオワ州は、RPSが如何に効果的であるかを実体験した。1990年に他州に先駆けて導入したRPSは2%と控えめなものであったが、今では州のエネルギー生産量の8%が再生可能エネルギーとなっている。国家レベルのRPS導入によって、技術的障壁を打ち破り、R&Dを推進し、再生可能エネルギー電力生産者に市場を開放することが可能である。
    4. フレックス燃料車増産増産で自動車メーカーと、フレックス燃料車の普及に必要となるインフラ整備で石油流通業者との協力が必要である。
    5. エネルギー自立に向けた国家プランが必要である。
  • J.F.ケネディ大統領が宇宙開発競争を提言して国民を鼓舞したように、もう一人の若い大統領(オバマ次期大統領)は広大なプランを提言している。2009年1月にオバマ大統領とバイデン副大統領が就任した折、その呼びかけに応えようではないか。責任を持って、オバマ-バイデンの包括エネルギー政策を可決させようではないか。再生可能エネルギーのフロンティアは、希望と好機と可能性に満ちており、我々の手の届く範囲にある。力を結集して、この目標を達成させようではないか。

     


注釈:

注1:ACOREは、再生可能エネルギーをアメリカ経済の本流へ移行させること、および、持続可能で自立したエネルギー未来の創設を助長する一方で再生可能エネルギー産業の成功を支援すること、をミッションとして、2001年に創設された非営利団。

注2:2クリントン政権下ではエネルギー効率化・再生可能エネルギー担当次官補を務めた。「Clean Tech for Obama」という運営委員会のメンバーで、オバマ政権移行チームのメンバー。Haffington Post紙は、同氏のエネルギー長官指名の可能性を示唆している。

注3:1966年生まれ、42歳。1998年に32歳でアイオワ州政府の総務長官となる。2006年の州知事選挙で勝利し、2007年1月からアイオワ州の州知事。

注4:これまで受領した162件のプロジェクトの内、19件のプロジェクトに州政府資金で3,000万ドルを給付(民間資金は1.8億ドル)。同基金では最先端プロジェクト(天然ガスの代わりにマイクロ波を使って蒸留穀物を乾燥させる技術の実験、バイオマスを石炭代わりに使えるブリケットに変換する方法の実験、等)を支援。

注5:DOEは2008年5月に、米国の風力資源、技術要件、及び、持続可能な風力発電利用拡張の妨げとなる製造面・立地面・送電面での課題を分析した報告書を発表した。『2030年までに風力エネルギーを20%に:風力エネルギーの米国電力供給に対する貢献拡大20% Wind Energy by 2030: Increasing Wind Energy's Contribution to U.S. Electricity Supply)』という分析報告は、2030年までに総電力の20%を風力で賄うためには、@送電インフラの強化;A立地・許可制度の合理化;B風力システムの信頼性と運転性能の向上;C米国の風力発電設備製造能力の拡大、が必要であると結論づけている。

 


Top Page