アメリカ再生可能エネルギー評議会(ACORE)主催の
「アメリカ国家政策における再生可能エネルギー:第2フェーズ」フォーラムについての報告

 

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2008年12月10日
(更新:2008年12月20日)

アメリカ再生可能エネルギー評議会(American Council on Renewable Energy = ACORE)が2008年12月4日にワシントンDCのCapitol Hill Clubで、「アメリカ国家政策における再生可能エネルギー:第2フェーズ」フォーラムを開催した。

同セミナーは、開会の辞、基調演説の後、(1)輸送用燃料政策;(2)電力政策;(3)再生可能エネルギー拡大の為の融資、という3セッション構成で進められた。

ここでは、ACORE議長のMichael Eckhart氏とグーグル社の気候変動環境イニシティブ部長であるDan Reicher氏の開会の挨拶、および、昨年アイオワ州知事に就任したChet Culver氏の基調演説の概要を報告する。


1. 開会の辞および基調演説

A. Michael Eckhart氏(ACORE(注1)議長)の発言

  • 我々が直面している課題は、米国は地理的に一様でなく、経済;財務能力;既存インフラ;生活様式;個人的嗜好やコミュニティの嗜好が各々に異なるため、再生可能に対してたった一つの回答というものがないこということにある。このため、地域格差を受け入れた国家エネルギー政策が必要である。
  • 米国における再生可能エネルギーの現状
    • 風力エネルギーは成長しているが、生産税額控除(PTC)は僅か1年延長されたにすぎないため、PTC満期終了後の状況が大問題となる。PTCのこうした[断続的な施行]状況は国家政策の無責任に他ならない。これを正す必要がある。
    • 太陽光発電は軌道に乗っている。しかし、設置されるPV装置や設備が国産なのか、外国産になるのかという問題がある。国内にPV産業が根差すように、PV生産を奨励する必要がある。
    • 地熱エネルギー開発に関しては、年間40億ドルの計画を求めたが、エネルギー省(DOE)は未だ同計画に着手していない。現在作動中の地熱発電設備容量は2,957MWで、4,000MWが計画・開発段階にある。エネルギーは存在するが、それを手に入れなければならない。掘削と電気の技能を活用して、ポテンシャルの高い同資源を開発すべきである。
    • 海洋エネルギーの開発がとりのこされている。東海岸における時速1マイルの波は、空気の171倍もの密度を持っている。これを活用する必要がある。
    • バイオ燃料は、好況と不況を周期的に繰り返している。この不安定な現状を安定化させるは政府の政策次第である。
  • 再生可能エネルギーはオバマ次期大統領の優先事項リストに含まれており、これを国家アジェンダへと引き上げる好機を迎えている。州政府は既に指導力を発揮している。今度は、連邦政府が新たなリーダーシップを示す時である。

B. Dan Reicher氏(グーグル社の気候変動環境イニシアティブ部長)(注2)の発言

  • オバマ政権の成立を目前にして、ワシントンは今、エキサイティングで歴史的な瞬間に立ち会っている。
    • 我々のアジェンダ…積極的なRPS、長期的税額控除、大規模なスマートグリッド、研究開発(R&D)の大幅拡張…を支持する次期大統領が控えている。
    • 民主党優勢の議員構成から、第111議会では実際に我等のアジェンダをやり遂げ得るものと期待される。
  • オバマ政権移行チームにとっての最重要点は、新政権始動直後の重大な数ヶ月の行動であり、特に、クリーンエネルギーを経済刺激法案に盛り込むことを検討している。これにより、今後2年間の経済活動と雇用創出、民間資金のてこ入れ、そして、政策変更のてこ入れに大きな効果が期待される。皆さんからのアイディアを頂戴したい。
  • 加えて、包括エネルギー法案、気候変動法案、2010年度予算等の長期的なエネルギー政策にも関心をもっている。
  • 株式と負債(equity and debt)は、再生可能エネルギー産業の成長に必要不可欠であるものの、金融危機のために現在行き詰っている。これを如何にして開放するかが特別な関心事となっている。これに対して、皆さんからアイディアを是非とも頂戴したい。
  • グーグル社の再生可能エネルギーに対する主要コミットメント
    • 技術者チームによる、重大な技術的課題への取り組み
    • 風力、ソーラー、地熱分野における主要エネルギー会社への一連の投資
    • 行き詰っているプロジェクト融資の開放で一役を果す方法を検討中
    • ワシントンの政治焦点を変える努力
    • 大型スマートグリッド、再生可能エネルギーおよび省エネで、ゼネラル・エレクトリック社と連携

C. Chet Culverアイオワ州知事(注3)(民主党)の基調演説

  • 我々が今日ここに結集した理由は、アイディアを出し合い、地域のベストプラクティスを共有し、再生可能エネルギー資源開発を一刻も早く進めるための支援を次期大統領と次期(第111)議会に要請するためである。
  • アイオワ州は探査とイノベーションで有名であり、アイオワ州立大学初の黒人教授で、後にタスキギー大学で付加価値化農業(value-added agriculture)を確立したGeorge Washington Carver博士; 現在のDuPont社の先駆となるPioneer Hi-Bred International社を創設し、後に第33代米国大統領となったHenry Wallace氏; 植物病理学の開拓者であるNorman Borlaug博士等、先見の明ある人物を輩出している。
  • 米国は今、新たな課題に直面しているが、我々の前には再生可能エネルギーのフロンティアが広がっている。これを早急に、州毎・地域毎に開拓する必要がある。エネルギー自立の未来に対する共通ビジョンを創って採用し、発見の限界を超えて押し広げることにより、気候の危機に対応し、海外輸入エネルギー依存から米国を開放し、グリーン産業雇用を数百万創出し、エネルギー自立への道を歩むことを助長することが出来る。
  • アイオワ州の体験
    • 40年前、我が州は米国でも輸入エネルギー依存の最も高い一州であり、1970年にはエネルギー生産で下から二番目であった。エネルギー生産・消費・節約方法を変える賢明な公共政策…R&D投資、農業従事者の生産性向上、付加価値化農産業、豊富な天然資源の活用推進…の30年余による実施により、今では米国内で最もエネルギーリッチな州に変貌した。アイオワ州は、アメリカの再生可能エネルギーの首都、中西部のシリコンバレーになりつつある。
    • 在来型エネルギーのオプションを縮減して、再生可能資源オプションを拡充する進歩的で革新的なアイオワ州の政策:
      • 18ヶ月前に米国州政府で初めて、閣僚級のエネルギー自立局Office of Energy Independence)を設置。
      • 可能な限り多様な再生可能エネルギー・ポートフォリオの構築
        1. バイオ燃料 … 我が州のバイオ燃料業界は州経済に80億ドル、5万の新雇用を追加。アイオワ州の年間エタノール生産量は米国全体の30%(20億ガロン)で、バイオディーゼル生産量は25%(2.5億ガロン)。セルロース系エタノール等の次世代バイオ燃料開発を考慮に入れると、我が州のポテンシャルには限りがない。Emmitsvilleに建設中のPOET Libertyプロジェクトが完成すれば、米国初の商業的に存立可能なセルロース系エタノール工場となる。同プロジェクトは、アイオワ州が1,500万ドル、連邦政府エネルギー省(DOE)が8,000万ドル、民間部門が1億ドル以上を拠出している、州-連邦-民間パートナーシップである。
        2. 風力 …1,200基以上の風力タワーが現在稼動中で、1,400MWのクリーンエネルギーを生産。今後2年間で1,000基以上の増設が予定されている。州知事風力エネルギー連合(Governors Wind Energy Coalition)共同議長として、一人あたりの風力発電量でアイオワ州が米国一であることを誇りに思っている。米国でタービン、タワー、ブレードの3部品を製造する州は2州だけであり、アイオワ州はその一州である。過去24ヶ月の間に、Shiona Baird、Siemens、Clipper Windpower、Hendricks、TPI Composites、及びTrinityの6社がアイオワ州に部品製造工場を設置、または、同州の工場を拡大することを決定。これにより、2,300の新雇用が創出され、2.5億ドル以上の投資が流入。
      • 2006年11月州知事選において、自分は再生可能エネルギーを最重要公約に掲げた。州知事就任後に:
        1. 予算1億ドルの「アイオワ電力基金(Iowa Power Fund)」を創設(注4)
        2. 家庭における省エネ助長を目的とする「アイオワ州グリーン部隊(Iowa Green Corps)」を設立。
        3. 我が州の地下岩層を、風車で発生する圧縮空気の貯蔵に使用することを目的とする「アイオワ州貯蔵エネルギーパーク(Iowa Stored Energy Park)」を支援。
  • 米国の州政府は各自に出来ることを実施してはいるが、これには限界がある。国家レベルの課題には国家レベルの指導力が必須であり、今こそ、オバマ-バイデン政権、及び、第111議会のリーダーシップが必要である。
  • 5つの提言
    1. グリッドの整備が必要である … 米国風力エネルギー協会(AWEA)によると、2008年に米国は世界最大の風力エネルギー生産国になったという。しかしながら、送電面での課題が残っている。大容量送電線の新設コスト分担が主な障壁であり、公平な資金調達制度が必要である。グリッドの整備は、DOEが設定した2030年までに米国総電力の20%を風力で賄うという目標の達成において最重要項目(注5)でなければならない。アイゼンハワー大統領の州間高速道路建設アプローチに類似した、大規模なオバマ-バイデン国家グリッド計画が必要である。
    2. 風力エネルギーの生産税控除(PTC)を5ヵ年延長 … オバマ次期大統領の呼び掛けの復唱となるが、風力エネルギーを国家エネルギー戦略の重要コンポーネントとして確立する上で必要不可欠なPTCを最低5年間延長するべきである。
    3. 国家レベルの再生可能エネルギー使用基準(RPS) … アイオワ州は、RPSが如何に効果的であるかを実体験した。1990年に他州に先駆けて導入したRPSは2%と控えめなものであったが、今では州のエネルギー生産量の8%が再生可能エネルギーとなっている。国家レベルのRPS導入によって、技術的障壁を打ち破り、R&Dを推進し、再生可能エネルギー電力生産者に市場を開放することが可能である。
    4. フレックス燃料車増産増産で自動車メーカーと、フレックス燃料車の普及に必要となるインフラ整備で石油流通業者との協力が必要である。
    5. エネルギー自立に向けた国家プランが必要である。
  • J.F.ケネディ大統領が宇宙開発競争を提言して国民を鼓舞したように、もう一人の若い大統領(オバマ次期大統領)は広大なプランを提言している。2009年1月にオバマ大統領とバイデン副大統領が就任した折、その呼びかけに応えようではないか。責任を持って、オバマ-バイデンの包括エネルギー政策を可決させようではないか。再生可能エネルギーのフロンティアは、希望と好機と可能性に満ちており、我々の手の届く範囲にある。力を結集して、この目標を達成させようではないか。


2. 輸送用燃料政策

 A. Tom Daschle氏(注6)(元上院院内総務で、Center for American Progressのシニアフェロー)の発言 

  • この場では、オバマ次期大統領や政権移行チームの代表としてではなく、個人的な所見を述べる。オバマ次期大統領が選挙運動で気候変動と代替エネルギー開発を重要視したことは皆の知るところである。オバマ氏はこの2年間、国家緊急事態として積極的なエネルギー効率化及び炭素削減努力に乗り出すよう唱道してきた。
  • オバマ次期大統領は、@Cap-and-trade制度の導入によって、炭素排出量を2020年までに1990年水準の20%減、2050年までに80%減まで引き下げることが可能であると主張し;AエネルギーR&Dに今後10年間で1,500億ドルの計上を約束し;B向こう7年間で100万台のプラグイン・ハイブリッド自動車の導入を要請し;C米国30州が再生可能エネルギー使用基準(RPS)を導入していることを鑑み、いよいよ国家基準(2012年までに総電力の最低10%、2025年までに25%を再生可能エネルギーで賄う)を制定すべき時が来たと指摘している。
  • フレックス燃料車や燃費の良い自動車、ハイブリッド電気自動車やマルチ燃料用エンジン、公共交通機関やその他輸送手段は、米国の輸入石油依存を軽減し、持続可能な雇用を数百万創出し、環境および公共衛生にプラスとなる。しかし、2008年末の状況を考慮すると、「適切なバイオ燃料政策」が国家気候・エネルギー戦略の重要な一部であることが明白となる。
  • 米国におけるエネルギーの現状
    • 米国は未だに国のエネルギーニーズを化石燃料に頼り、特に運輸部門の石油依存が激しい。
    • 米国の石油消費は毎日2,000万バレルであり、その3分の2が輸入。米国は世界の石油の25%を消費するものの、直接管理下にある埋蔵量は3%にすぎない。
    • 在来型石油資源の殆どが中東やその他の政治的に不安定な諸国に横たわっている。
    • 石油依存は有害な温室効果ガス(GHG)排出の大きな一因である。
    • 電力部門には石油代替エネルギーとして、天然ガス、石炭、風力、ソーラー、地熱、原子力、水力があるが、輸送部門はもっぱら液体燃料に頼っている。
    • 水素、電気、天然ガスといった非液体燃料の導入には、卸売り・小売の燃料流通システムや車両そのものの一新で、数十年の歳月と数百億ドルの資金が必要である。
    • エネルギー多様化への努力継続は必要であるものの、今必要な[エタノール供給]システムを石油業界が開発することを待つ余裕はない。基盤整備の先例であるブラジルは、10〜90%という多種のエタノール混合燃料を既存石油インフラで使用できることを世界に示している。
    • タールサンドやオイルシェールといった非在来型石油は、カナダを始めとする一部の南北アメリカに存在するという利点があるものの、この採掘は困難であり、大量のエネルギーと水を必要とするほか、カーボン・フットプリントは在来型石油の3〜5倍となる。
  • オバマ氏は、上院議員の時に自動車効率改善と低炭素基準を組み合わせた法案を提案している。更に先頃、向こう数年間で250万の新雇用創出を目的とした大規模なインフラ整備・グリーン雇用・経済再活性計画を提案している。
  • 米国エタノール業界の現状と見通し
    • 輸送部門石油消費の10%をエタノールで賄うという2012年目標を2009年に達成の見通し。
    • エタノールは2008年の米国ガソリン価格を約15%引き下げている。ガソリンの平均価格を1ガロン3ドルと見積もっても、米国消費者は600億ドルを節約したことになる。つまり、2008年には納税者のエタノール投資(30億ドル)が20倍になって返ってきたことを意味する。
    • 第一世代のトウモロコシ由来エタノールはこの18ヶ月ほど困難に直面している。エネルギーのバランスや食品価格高騰の責任の所在、熱帯雨林損失の可能性に関する誤った情報が原因で、環境保護団体や公益団体の意見が右に左にと揺れている。こうした懸念や課題には、土地の最適利用や節水等で対応可能である。朗報は、明確な規制枠組みが存在し、国家優先事項の達成のために容易にこの枠組みを調整することが出来るということである。
    • 30年に及ぶ民間・公共部門の努力により、米国バイオ燃料業界は輸入石油の削減;GHG排出の削減;米国経済の活性化を重点とする短期、中期、長期目標を容易に達成できる。
  • 我々が今なすべきことは、既存の第一世代エタノール業界を安定化させ、次世代産業へとアップグレードするために必要な政策を決定することである。次世代バイオ燃料業界は、既存エタノール基盤の上に成り立ち、セルロース、木質バイオマス、その他材料からエタノールを製造するほか、燃料やガスだけといった単品の製造ではなく、マルチ製品の製造を行う。
  • 他産業も食料、肥料、燃料、化学物質でバイオ業界に依存している。全ての業界が相互依存の関係にあり、全ては土地の最適利用、土壌保存、および節水にかかっている。
  • あらゆる種類のバイオマスに対する需要が急増している。持続可能性、穀物生産慣行の向上、生産面積の拡大が叫ばれているが、同時に、熱帯雨林や川の流域、湿地帯や自然保護区の保存強化も重要となる。米国が西ヨーロッパの様に土地利用を管理するならば、バイオマス生産を倍増する一方で、国を美化することも可能である。
  • GHG排出削減の闘いでは、バイオマスに対等するものはない。世界にある主要な炭素シンクは、木、土壌、海の3つである。湿地帯や川の流域を改善し、木や草を活用することによって、侵食や二酸化炭素排出を大幅に削減することが出来る。
  • 気候・バイオ燃料政策の枠組み策定に必要な9条項:
    • 2010年12月末で満期終了となる優遇税制を延長し、修正する。
    • バイオディーゼルの税控除を延長する。
    • バイオ燃料の低炭素基準(low-carbon eligibility standard)設定に健全な科学を利用する。
    • 石油のGHGタイムライン基準を科学に基づいて決定する。タールサンドやオイルシェールのカーボン・フットプリントの正確な測定を配慮する。
    • 積極的な基盤整備・送配電政策を促進する。
    • E30やE40の研究および使用を拡大する。
    • 野心的なフレックス燃料車生産スケジュールを義務付ける。
    • バイオ燃料政策を、効率の良いフレックス燃料プラグイン・ハイブリッド車促進政策と連結させる。
    • 次世代燃料生産、および、第一世代エタノール産業の食料・飼料・繊維といった副産物生産を促進するため、研究開発実証への投資を増大させる。

B. Jeff Broin氏(POET社社長)の発言

  • 我が社は現在、米国7州に26のエタノール工場を所有し、年間15億ガロンのエタノールと400万トンの副産物(DDGS:トウモロコシ蒸留粕)を生産している。
  • 環境改善、輸入エネルギー削減、経済活性化を可能にする3つの政策の柱:
    • 既存エネルギー政策の安定化
      • 米国は容量エタノール物品税控除(Volumetric Ethanol Excise Tax Credit = VEETC)(注7)と関税(注8)を併用すべきである。…関税はVEETCのオフセットであるということが理解されていない。輸入エタノールも全て、VEETC(1ガロンあたり51セント)を受けるため、関税の撤廃は他国産のエタノールを米国が補助することを意味する。
      • 再生可能燃料使用基準(Renewable Fuels Standard = RFS)を固定化する。
      • 2007年に米国エタノール産業は、@輸入石油を2億2,820万バレル削減し;A3.8万の雇用を創出し;B国内総生産(GDP)に476億ドル貢献し;CGHG排出を18〜29%削減した。
    • 規制にある生産上限の引上げ
      • 現行法では、2012年まで市場の10%に制限されている。輸送部門の燃料需要が1,400億ガロンであるので、理論上は140億ガロンであるが、実際には各州の異なる規制・基準により、125〜130億ガロンが上限となる。現在建設中の工場を考慮すると、来年中にはこの上限に達成する見込みとなる。自動車業界をE15やE20へと動かす必要がある。
      • 上限の引上げなしでは、セルロース産業への投資意欲が沸かず、同産業の進展は期待できない。
      • 将来の燃料および食料生産ポテンシャル:
        • 2007年のトウモロコシ作付面積は8,650万エーカーで、1エーカー当たりのトウモロコシ生産量は175ブッシェル。デュポン社は2018年までに211ブッシェルまでの拡大を予測し、Monsanto社においては2030年までに300ブッシェルになると予測している。
        • 2007年のトウモロコシ総生産高は130億ブッシェルであり、2030年までにはこれが倍増すると見られている。
        • 上記の数値に基づくと、2007年のエタノール生産量は90億ガロン。2030年までにエタノール生産が500億ガロンまで拡大するほか、食料生産高も40%増大することになる。
      • セルロース系エタノールの研究開発に対する取り組み:
        • POET社は2008年にパイロットスケール工場をオープン。
        • アイオワ州に建設中のPOET Libertyプロジェクト(POET社の商用セルロース系エタノール生産工場)は2011年に操業開始予定。
        • トウモロコシ穂軸を原料に使用することで、50億ガロンのエタノールを生産可能。
        • 米国には利用可能なバイオマスが10億トン以上存在。これを800〜1,000億ガロンのエタノールに変換することが可能。
      • 今日の設備容量は110億ガロンであるが、向こう20年間で、穀物から500億ガロン、セルロースから850億ガロンのエタノールを生産可能であり、我が国のガソリン需要をほぼ完全にエタノールで賄える可能性がある。
    • フレックス燃料自動車政策…消費者への選択肢提供として、エタノール混合燃料ポンプの他に、E10、E20、E30、E40、E85といった様々なグレードの燃料を供給可能なフレックスポンプを設置すべきである。
  • 現在、商業的に実現可能で、利用可能な輸送用の液体燃料はエタノールだけである。エタノール技術の進歩で、エタノールは将来一層クリーンな燃料となっていく。

C. James Woolsey氏(元CIA長官で、現在はVantagePoint Ventureのパートナー)の発言

  • 石油はエネルギー密度の高い燃料であり、他の燃料よりも貯蔵・輸送が容易である。
  • 石油の短所
    • 米国は世界の石油の25%を消費し、輸入石油のために2,000〜3,000億ドルの借金をしている。これは、米国の一産業の救済金額にほぼ匹敵する。
    • 輸入石油へ支払った金はOPECやロシア等に流れるが、最大シェアを受け取っているのはサウジアラビアである。サウジアラビアはその金の一部をワッハーブ派(Wahabi Sect)へ提供している。ワッハーブ派は圧制的な宗派であり、特に女性を抑圧し、その教理はアルカイダとほぼ同様である。
    • パキスタンの8歳の少年に自爆テロ犯となることを教えているのは誰なのかと質問するのならば、ガソリンスタンドでガソリンを入れる際にバックミラーを覗くことだ。答えは我々なのだ。
  • 石油に伴う数々の問題は、独占的な輸送用燃料である石油から断固として可能な限り迅速に離脱すべきであるという動機を我々に与えてくれるに十分だと思う。
  • Boyden Gray氏がテキサス・ジャーナルへ寄稿した記事は、クリーンエア法(Clean Air Act = CAA)免責について語っている。化学工場を経営する場合には、ベンゼン等の発がん性物質を放出することは出来ないが、石油の場合にはCAA免責条項のおかげでこの制限を負わない。Boyden Gray氏によると、CAA免責は石油業界にとって2.5億ドルの補助金に相当するという。
  • 石油に対してどうした対応をすべきなのか?
    • 塩はかつて食品保存に不可欠であり、戦略的な商品(strategic commodity)であったが、電気の発明により、塩はもはや戦略商品ではなくなった。我々は石油にも同様の対応をする必要がある。
    • 政府は、@技術の勝者敗者を選ぶ習慣を断ち;Aオープンな立場でフレックス燃料自動車使用を義務付け;Bクリーンな再生可能エネルギーを利用する電気会社とのパートナーシップを形成するべきである。
    • 自分はハイブリッド車プリウスをプラグイン・ハイブリッドに改造した。最初の40マイルは電気で走行するため、1マイルを1セントで走っていることになる。石油は電気には敵わないのである。電気が塩の戦略商品として価値を破壊したように、戦略商品としての石油を破壊する必要がある。

 


注釈:

注1:ACOREは、再生可能エネルギーをアメリカ経済の本流へ移行させること、および、持続可能で自立したエネルギー未来の創設を助長する一方で再生可能エネルギー産業の成功を支援すること、をミッションとして、2001年に創設された非営利団。

注2:2クリントン政権下ではエネルギー効率化・再生可能エネルギー担当次官補を務めた。「Clean Tech for Obama」という運営委員会のメンバーで、オバマ政権移行チームのメンバー。Haffington Post紙は、同氏のエネルギー長官指名の可能性を示唆していた。

注3:1966年生まれ、42歳。1998年に32歳でアイオワ州政府の総務長官となる。2006年の州知事選挙で勝利し、2007年1月からアイオワ州の州知事。

注4:これまで受領した162件のプロジェクトの内、19件のプロジェクトに州政府資金で3,000万ドルを給付(民間資金は1.8億ドル)。同基金では最先端プロジェクト(天然ガスの代わりにマイクロ波を使って蒸留穀物を乾燥させる技術の実験、バイオマスを石炭代わりに使えるブリケットに変換する方法の実験、等)を支援。

注5:DOEは2008年5月に、米国の風力資源、技術要件、及び、持続可能な風力発電利用拡張の妨げとなる製造面・立地面・送電面での課題を分析した報告書を発表した。『2030年までに風力エネルギーを20%に:風力エネルギーの米国電力供給に対する貢献拡大20% Wind Energy by 2030: Increasing Wind Energy's Contribution to U.S. Electricity Supply)』という分析報告は、2030年までに総電力の20%を風力で賄うためには、@送電インフラの強化;A立地・許可制度の合理化;B風力システムの信頼性と運転性能の向上;C米国の風力発電設備製造能力の拡大、が必要であると結論づけている。

注6:オバマ次期大統領政権移行チームのメンバーで、保健対策作業部会を指揮。12月11日の記者会見でオバマ時期大統領はDaschle氏の厚生省長官指名を発表した。

注7:VEETCはガソリンに混合されるエタノール1ガロンに対する51セントの税額控除で、エタノールは国産であっても外国産でもあっても同税額控除の対象となる。

注8:米国の燃料用エタノールに対する関税は2.5%。

 


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