ブッシュ大統領の2009年度予算:概要(その1)

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2008年2月15日

 

ブッシュ大統領は2008年2月4日に、2008年度予算を2,000億ドル(6.9%)上回る総額3兆1,000億ドルの2009年度予算教書を発表した。2009年度予算案はほぼ、前年度予算案を踏襲する内容で、防衛・国家安全保障関係予算を増額する一方、非防衛関係の国内プログラムの伸びを1%以下に抑え、103プログラムの廃止(注:1)および48プログラムの大幅縮減(注:2) を提案している。大統領予算案の推定する2009年度の財政赤字を4,070億ドル(注:3) 。しかしながら、現政権が、@今年3月に予定されている兵力規模再検討後のイラク在留兵士数が不明であること;A来年1月に就任する新政権がイラクおよびアフガニスタン戦争の政策や戦費レベルを変更すること可能性が高いことを理由に、2009年度予算では700億ドル(2008年度要求の半額以下)の戦費を盛り込んでいるにすぎないことを考慮すると、実際の財政赤字が現政権の推定以上となるであろうことは想像に難くない。

2009年度予算案からMedicare(老齢者医療保険)、Medicaid(低所得者医療扶助)、社会保障等の義務的支出、および、支払利息を除いた自由裁量予算(discretionary budget)は9,876億ドルで、2008年度予算よりも462億ドル(4.9%)の増額となっている。しかしながら、増額分の97.2%に相当する449億ドルが防衛関係へ計上されるのに対し、非防衛関係の伸びは僅か13億ドルであって、米国政府の自由裁量予算に占める防衛関係予算(5,945億ドル)と非防衛関係予算(3,930億ドル)の格差は更に拡大している。省庁別では、国防省予算が2008年度予算比7.5%(360億ドル)の伸びとなるほか、国務省が16.5%(54億ドル)、国土安全保障省が7.7%(27億ドル)の増額となる。一方、2008年度予算案で削減対象となった運輸省と環境保護庁は今回もまた、25.7%と4.4%の削減要求となっている。主要省庁の自由裁量予算は下記の通り:

現政権提案の2009年度研究開発(R&D)予算は、総予算の約4.7%にあたる1,469億6,300万ドル。2008年度予算(1,430億6,300万ドル)と比べ39億ドル(2.7%)の増額(注:4) となる。このうちの24億9,700万ドルが施設・設備予算へ、15億8,100万ドルが開発予算に、残りの8億4,700万ドルが基礎研究予算への計上となり、応用研究予算は10億2,500万ドル(前年度比3.6%)削減されている。分野別では、防衛関連開発、「米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative = ACI)」(注:5) で恩恵を受ける物理科学、および、有人宇宙船開発の予算が増額されるほか、2008年度予算では7.4%の削減要求であった気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program)予算が2008年度推定予算比9.6%増の20億1,500万ドルまで引き上げられる。反面、生物医学研究やナノテクノロジーの予算は前年度並みとなっている。

省庁別では、ACIに対するブッシュ大統領のコミットメントを反映して、NSF、DOE、および、商務省の国立標準規格技術研究所のR&D予算が各々、前年度推定予算比15.6%(7億100万ドル)、8.4%(8億1,900万ドル)、6.1%(3,100万ドル)(注:6) の増額となるほか、国土安全保障省のR&D予算が187.6%増で32億8,700万ドルまで伸びている。米航空宇宙局(2.9%増)と運輸省(9.5%増)、および、国防省(0.4%増)が増額される一方、厚生省の国立衛生研究所(NIH)は2年連続でほぼ前年並み、農務省と内務省と環境保護庁は各々、15.5%、8.7%1.3%の減額要求となっている。

このレポートでは、エネルギー省予算の概要を報告し、第2レポートで全米科学財団、商務省、内務省、環境保護庁、および、運輸省を、第3レポートで米航空宇宙局、国防省、国土安全保障省、厚生省、教育省、および、省庁間R&Dプログラムの予算概要を報告する。


■ I. エネルギー省

2009年度のDOE全体予算は2008年度大統領要求を7億5,600万ドル(3.1%)、2008年度予算を11億3,000万ドル(4.7%)上回る250億1,500万ドル。ブッシュ大統領は2006年に、「先進エネルギーイニシアティブ(Advanced Energy Initiative = AEI)」と「米国競争力イニシアティブ(ACI)」を発表したが、2008年度の大統領要求額と議会認可額を比較すると、現政権の重点がACIの一環である科学部の大幅増額であるのに対して、議会はAEIの主要要素であるエネルギー関連を優先していることが明らかになる。ブッシュ政権は2009年度予算案で、昨年に違わず、科学部予算の前年度予算比18.8%増という大幅増額を要求しているほか、国家核安全保障局、エネルギー関連、および、マネジメント関連/連邦エネルギー規制委員会の予算も2008年度予算比で各々、3.3%、3.6%、1.8%増額している。一方、2008年度に科学部予算の増加分を相殺するために減額された環境関連予算は、2009年度にもまた1.0%削減され、2006年度から4年続きで減額を被ることになる。DOE全体の予算内訳は下記の通り:

1. エネルギー関連予算の内訳: エネルギー関連予算は、2008年度予算を3.6%(1億3,700万ドル)上回る39億3,600万ドル。予算内訳は、「エネルギー効率化・再生可能エネルギー」が12億5,500万ドル(前年度予算比27.1%減)、「配電・エネルギー信頼性」が1億3,400万ドル(3.6%減)、「化石エネルギー」が11億2,700万ドル(24.7%増)、「原子力科学技術」が14億1,900万ドル(37.2%増)となっている。以下、@エネルギー効率化・再生可能エネルギー;A配電・エネルギー信頼性;B化石エネルギー;C原子力科学技術の各予算を概説する。

C エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)予算は2008年度要求(12億3,600万ドル)比では1.5%増で、2008年度予算(17億2,240万ドル)(注:7) 比では27.1%減となる12億5,540万ドル。EEREプログラムの大半はAEIの不可欠要素であり、米国議会は2007年度(注:8) ・2008年度と二年連続で大統領要求以上の予算を計上している。大統領の2009年度予算案を2008年度予算と比較すると、バイオマスとビルディング技術が各々13.5%と13.6%の増額、自動車技術が水素技術から3,200万ドルの移譲を受けて3.8%(810万ドル)の増額となる一方、水素技術とソーラーエネルギーは30.7%と7.4%の減額となる。ブッシュ政権は、2007年度と2008年度に廃止を提案していた地熱技術の予算を2009年度には一転して51.5%増額する一方、2008年度に大幅削減を提案した耐候化支援プログラムに関してはこの予算案で廃止を要求している。主要プログラムの予算内訳は下記の通り:

  • 水素技術の予算は、(i)技術認証(validation)、安全性・規格・基準、および、啓蒙という3活動の予算(3,200万ドル)を自動車技術に移行したこと;(ii)水素技術プログラムの重点を水素貯蔵R&D(36.1%増)と燃料電池スタック部品R&D(43.8%増)に置き、水素製造や水素/燃料電池製造技術R&Dへの着手を遅延したことにより、前年度予算より6,480万ドル少ない1億4,620万ドルを要求
  • バイオマス・バイオ精製R&Dの予算は2,680万ドルの増額。地域別の地理情報システムに基づいた原料アトラス(地図帳)を作成する「地域別バイオマス原料開発パートナーシップ(Regional Biomass Feedstock Development Partnership)」(+310万ドル);バイオ精製技術統合の下で実施する商業規模実証プロジェクト(+3,600万ドル);エタノロジェン(ethanologen)という醗酵菌の開発プロジェクト支援(+610万ドル)が増額される一方、プラットフォームR&Dプログラムの一部委譲(−1,390万ドル);セルロース系エタノールの逆オークション・プログラム設置用費用(−500万ドル)が削減となる。
  • ソーラーエネルギーは1,230万ドルの減額。集光型太陽エネルギー発電(Concentrating Solar Power)システムが1,070万ドルの削減となるほか、太陽熱利用冷暖房システムをビルディング技術へ移行することにより200万ドルの減少。
  • 地熱技術の予算は51.5%(1,020万ドル)増額されて3,000万ドル。EGS(Enhanced Geothermal Systems)(注:10) の技術的障壁克服、および、コスト効率改善に必要なR&Dに焦点を当てるプログラム計画を2008年に策定する。
  • 自動車技術は800万ドルの増額であるが、水素技術から移譲される3活動の予算(3,200万ドル)を除くと、実質では前年度予算よりも2,390万ドルの削減となる。
  • ビルディング技術の1,480万ドルという増額は、建築基準プログラム(+430万ドル);Energy Star拡大(+130万ドル);住居用ビルの統合(+240万ドル);商業ビルの統合(+110万ドル);ネット・ゼロ・ビルディング計画(+210万ドル)等に充てられる。
  • 政府間プログラム予算は350万ドルの増額。クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)に初めて予算が正式計上され、州政府エネルギープログラム助成が590万ドル増額される一方、再生可能エネルギー生産インセンティブ(−500万ドル)とアメリカ原住民の部族エネルギー活動(−490万ドル)は減少となる。
     

C 配電およびエネルギー信頼性の2009年度全体予算は、2008年度予算より456万ドル少ない1億3,400万ドル(注:11)。送配電システムの近代化;エネルギーインフラの安全確保と信頼性;エネルギー供給混乱からの回復を助長する国家努力を指導する同プログラムは、研究開発、および、オペレーションと分析に焦点を当てている。2009年度予算では研究開発に1億20万ドル(前年度比8.5%減)、オペレーションと分析に1,410万ドル(23.3%増)を要求している。主要な研究開発関連予算は下記の通り:

  • 高温超伝導R&Dでは、2G(第二世代)高温超電導ワイヤー開発のコア研究、および、誘電体や低温学の研究支援を継続。2009年度予算は前年度とほぼ同額の2,820万ドル。
  • 可視化及び制御(Visualization and Controls)R&Dの予算はほぼ前年度並みで2,530万ドル。広域モニター用の先進安全性視覚化(safety visualization)ツールの開発と立証を引き続き支援する。超伝導R&Dでは、2Gワイヤーの幾つかの代替加工処理方法を中止。このため、2008年度予算は2007年度要求額より1,730万ドル(38.0%)少ない2,820万ドルに減額。
  • 発電所規模の改良型エネルギー貯蔵装置やシステムの開発を支援する、エネルギー貯蔵・パワーエレクトロニクスの予算は倍増で、1,340万ドルまで引き上げられる。
  • 再生可能および分散型エネルギーシステム統合R&Dは780万ドル増額の3,330万ドル。増額分は主に、再生可能その他クリーンエネルギー資源の普及を促進するため、再生可能エネルギーの電力網統合活動支援に充てられる。


C 化石エネルギー計画の2009年度予算は、2008年度を2億2,270万ドル(24.6%)上回る11億2,690万ドル。但し、増額分の約70.6%にあたる1億5,700万ドルは、石油不足と石油価格の高騰を懸念する現政権が戦略石油備蓄(SPR)の備蓄量増大のために要求している予算であって、化石エネルギーR&D予算は前年度より1,120万ドル(1.5%)多い7億5,400万ドルに留まっている。昨年同様、化石エネルギーR&Dで予算が要求されているプログラムは石炭のみであり、石油技術、天然ガス技術、共同研究開発プログラムは再度の廃止提案となっている。化石エネルギーR&D予算の主な内訳は下記の通り:

石炭R&Dの主な内訳は下記の通り:

  • クリーンコール発電イニシアティブ(CCPI)の第3ラウンド公募、提案評価、プロジェクト選定を終了するため、前年度比22.5%増の8,500万ドルを要求。
  • FutureGenでは2009年度活動として、FutureGenアプローチの見直しと再編を終了し、選定プロジェクトの発表、および、業界パートナーとの交渉を行う。同予算は前年度より8,170万ドル(110%)多い1,560万ドル。
  • 燃料・発電システムの2009年度予算は3,050万ドル増額され、4億650万ドル。
    • 2008年度に現政権が廃止を提案した、既存の在来型発電所改良技術の開発を支援する既存発電所イノベーション予算は、2009年度には増額要求に転じ、前年度予算(注:12) 比10.8%増の4,000万ドル。
    • 石炭ガス化複合発電(IGCC)予算は前年度より1,550万ドル多い6,900万ドル。
    • 最優先課題である超低公害石炭火力発電所用水素タービンの開発を支援するため、先進タービンプログラム予算を420万ドル増額して、2,800万ドルに引上げ。
    • 炭素隔離R&D予算は3,020万ドル増額され、1億4,910万ドル。増額分は、大規模な地中炭素貯留テストを行う用地選定、規制許可、コミュニティ・アウトリーチ、運転計画の策定等の支援に充てられるほか、第3フェーズで実施されるモニター、削減、および検証の準備活動に充当される。
    • 燃料プログラムでは、炭素排出研究用の石炭-バイオマス処理、および、代替天然ガスや石炭液化(CTL)燃料の製造研究が廃止となる。このため、2009年度要求は1,480万ドル削減されて1,000万ドル。
    • 燃料電池R&D予算は前年度比8.1%増の6,000万ドル。石炭火力発電所で90%以上の炭素を回収可能な、低コスト(キロワットあたり400ドル)の燃料電池システムを開発する4つのSECAチームを支援する。
    • 先端研究プログラムの2009年度予算は1,060万ドル削減されて2,660万ドル(注:13)。予算削減は、液化天然ガスに関する報告書の完成(−800万ドル)、水素-空気分離用の薄膜開発プロジェクトの一時中止、センサー・制御イノベーションプロジェクトの規模縮小等を反映している。

 

C 原子力科学技術の2009年度予算は、2008年度大統領要求を62.3%、2008年度歳出予算を37.3%上回る14億1,950万ドル。ブッシュ政権が原子力エネルギーを、輸入エネルギー依存度の軽減および気候変動問題への対応に不可欠な一策と見なしていることを反映し、原子力科学技術予算は、2002年度(3億6,289万ドル)以来、約3倍に膨れ上がっている。昨年に続き2009年度予算においても最大の増額を享受するのは研究開発予算(6億2,970万ドル)で、前年度より3億7,110万ドルの増額となる一方、基盤整備の予算は40.1%削減で1億4,340万ドルまで引き下げ、核燃料サイクル研究・施設プログラムと燃料サイクル研究・施設プログラムは廃止が提案されている。原子力科学技術予算の主要内訳は下記の通り:

  • 「世界原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)」の技術開発要素である先進燃料サイクル・イニシアティブ(Advanced Fuel Cycle Initiative)予算は前年度の1億7,940万ドルから3億150万ドルに増額(注:14) される。増額分は、分離技術開発を支援するR&D活動の増強(+2,140万ドル);燃料研究拡大(+1,770万ドル);原子炉の安全性・性能・経済性を改善するコンピューテイング・モデリング・シミュレーション計画の拡大(+3,290万ドル);先進燃料サイクル施設の概念設計活動(+640万ドル);GNEPの国際的側面実施における他諸国との協力拡張(+450万ドル)、等を反映している。
  • 原子力発電2010プログラムは、1億780万ドル(80.7%)の増額で2億4,160万ドル。原子炉設計の認証完了、および、2件のコスト分担型ライセンシング実証を行う全体スケジュールを維持し、電力会社による原子力発電所新設決定を助長する。
  • 第四世代原子力システム・イニシアティブ(Generation IV Nuclear Energy Systems Initiative)予算は、2008年度に1億1,490万ドルまで増額されたものの、2009年度予算案では4,490万ドル減の7,000万ドル要求となっている。減額は、ロシアのガス炉研究廃止とガス冷却式原子炉の深部熱傷特性(deep burn characteristics)研究廃止を反映している。
  • 原子力利用水素イニシアティブ(Nuclear Hydrogen Initiative)では、統合的実験室規模(Integrated Laboratory Scale)の実験で運転実績の追加データを収集するため、2009年度には670万ドル増額の1,660万ドルを要求している。

 

2. エネルギー省の科学関連予算の内訳: DOE科学部の2009年度予算は、前年度予算(注:15) を7億4,880万ドル(18.8%)上回る47億2,200万ドル。これは、2008年度大統領予算要求額(43億9,790万ドル)比でも3.5%(3億2,410万ドル)の増額に相当し、DOE科学部はブッシュ大統領がACIで提案した基礎研究予算の10年間倍増目標に向けた軌道に戻ることが可能となる。2009年度予算では、国家全体の知力に梃入れしてエネルギー研究プロジェクトの進展を目指すという新たな「エネルギーフロンティア研究イニシアティブ(Energy Frontiers Research Initiative)」(注:16) に1億ドルを要求しているほか、核融合エネルギー科学(72.1%)、科学研究所基盤整備(64.9%)、基礎エネルギー科学(23.5%)、原子物理学(17.9%)、高エネルギー物理学(16.8%)、先端科学演算研究(5.9%)、生物・環境研究(4.2%)の全てを増額している。科学関連予算の主要費目の内訳は下記の通り:

科学関連予算のハイライト:

  • 高エネルギー物理学の内、陽子加速器利用物理学の焦点はフェルミ研究所の運営・整備で、2009年度予算は4,280万ドル増の2億2,190万ドル。大型ハドロン加速器(LHC)プロジェクトの運営・研究費は880万ドル増額で7,250万ドル。電子加速器利用物理学は、ブッシュ政権が昨年に続き、スタンフォード線型加速器センター(SLAC)B-工場の管轄を基礎エネルギー科学へ移譲することを提案しているため、1,770万ドルの減額。非加速器物理学(Non-Accelerator Physics)への2009年度予算は8,650万ドル(+1,230万ドル)、理論物理学の予算は6,300万ドル(+280万ドル)、国際リニアコライダーや超電導高周波技術関係の研究を支援する先端技術R&Dは1億8,710万ドル(+6,660万ドル)となっている。
  • 原子物理学では、トーマスジェファーソン国立加速器施設(TJNAF)、ブルックヘイブン国立研究所の相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)、ホリフィールド放射性イオンビーム施設(HRIBF)、および、アルゴンヌ・タンデム線型加速器(ATLAS)における研究・運転予算が3,270万ドル増額され、連続電子ビーム加速器施設(CEBAF)アップグレード予算が1,520万ドル増額となる。
  • 生物・環境研究は、生物研究分野(4億750万ドル→4億1,360万ドル)と気候変動研究(1億3,690万ドル→1億5,490万ドル)に二分される。(i)生物研究分野の焦点はライフサイエンスの中の分子・細胞生物学で、前年度比7.4%(1,310万ドル)増の1億9,050万ドルが要求されている。分子・細胞生物学の主な細目は下記の通り: 
    (ii)気候変動研究分野は1,810万ドル増額の1億5,490万ドル。主な内訳は、第一級のコンピュータ設備を使って将来の地球気候変動を予測する気候変動モデリングの予算が4,540万ドル(+1,440万ドル);2基めの可動式ARM(大気放射測量)気候研究装置の開発を含む気候フォーシングが8,120万ドル(+320万ドル)。
  • 基礎エネルギー科学の内、施設運営と建設費を除いた、材料科学工学および理化学・地球科学・エネルギーバイオ科学の研究プログラム予算は1億7,270万ドル増の7億340万ドル。増額となる主要プログラムは、水素経済(+2,400万ドル);ソーラーエネルギー有効利用(+3,340万ドル);先進原子力エネルギーシステム(+1,700万ドル);電気エネルギー貯蔵(+3,400万ドル);炭素隔離(+500万ドル)。
  • 先端科学演算研究では、新規の応用数学演算科学研究所(Applied Mathematics-Computer Science Institute)支援に1,190万ドル、SciDAC(先端コンピューティングによる科学的発見)活動予算の180万ドル増額、アルゴンヌ国立研究所とオークリッジ国立研究所のリーダーシップ計算施設(Leadership Computing Facility = LCF)支援予算の480万ドル増額等を要求している。
  • 核融合エネルギー科学には、2008年度に削減された国際熱核融合実験炉(ITER)プロジェクト予算の復活を狙った、2億390万ドルという大幅増額(1,010万ドル→2億1,400万ドル)が盛り込まれている。

 

3. 先進エネルギーイニシアティブ: ブッシュ大統領は2006年の一般教書演説で、輸入石油依存度を軽減し、温室効果ガス(GHG)他の汚染物質排出を削減する代替エネルギー技術の技術面・コスト面での実現可能性を速めるため、「先進エネルギーイニシアティブ(AEI)」を発表した。2009年度予算教書には、AEI予算として前年度予算を24.5%(6億2,400万ドル)上回る31億6,800万ドルが盛り込まれている。その予算計上を見ると、現政権が発電面での技術として着目しているのは原子力エネルギー(前年度比40.2%増)とクリーンコール(20.9%増)であって、米国議会が最優先視するEEREプログラムに対しては僅か1.6%(1,500万ドル)の増額を要求しているにすぎない。一方、ACIの一環にもなっている科学部の基礎研究予算の方は、10年間で予算倍増という目標に向け、前年度比54.9%という大幅な増額要求となっている。AEIの予算内訳は下記の通りである。
 


注釈:

1:削減数では、教育省が47プログラムで今回も最大。このほか、農務省(19)、厚生省(9)、内務省(7)、商務省(4)、住宅・都市開発省(4)、労働省(4)、DOE(3)、EPA(2)、司法省(1)、その他機関(3)が削減対象となっている。ブッシュ政権はこれらプログラムの廃止で71億2,300万ドルの削減を見積もっている。
2:農務省(14)、労働省(6)、厚生省(4)、運輸省(4)、教育省(3)、EPA(3)、商務省(2)、住宅・都市開発省(2)、内務省(2)、NASA(2)、国土安全保障省(1)、中小企業庁(1)、その他機関(4)で、110億4,200万ドルの削減が見積もられている。
3:2007年度の財政赤字(1,620億ドル)の2.5倍以上。
4:全米科学振興協会(AAAS)の発表したAAAS Preliminary Analysis of R&D in the FY 2009 Budgetでは2009年度R&D予算を、前年度推定予算(1,407億7,200万ドル)比3.3%増の1,453億7,800万ドルと推定しているが、ここでは2008年2月4日に科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy = OSTP)が発表したFY2009 Federal Research and Development Budgetの数値を使用する。
5:ブッシュ大統領が2006年に発表したイニシアティブで、全米科学財団(NSF)、DOE科学部、商務省国立標準規格技術研究所(NIST)のコアプログラムの予算を10年間で倍増するというもの。これを法制化する「America COMPETES法」が2007年8月に成立。
6:OSTP発表資料では商務省全体のR&D予算を記載するのみで、NISTと国立海洋大気局(NOAA)に分けていないため、ここではAAASの分析数値を使用。
7:2008年度予算が大統領要求を39.3%(4億8,600万ドル)も上回っているのは、議会が、@2008年度の耐候化支援プログラム予算を1億4,400万ドルまで削減するというブッシュ政権の要求を退けたこと;A1億8,670万ドルにのぼる指定資金交付をつけたことに起因している。
:2007年度大統領要求は、水素技術が1.96億ドル、バイオマス・バイオマス精製R&Dが1.5億ドル、ソーラーが1.48億ドル、風力が0.43億ドル、自動車技術が1.66億ドル、ビルディングが0.77億ドル、産業技術が0.45億ドル、施設・基盤整備が0.59億ドル、耐候化支援が1.64億ドル、地熱と水力発電が廃止であった。
9:水力には、水力発電技術のほかに、流水(stream)、海洋エネルギー、潮汐エネルギーの技術も含まれる。
10:地下に人工地熱貯留層を形成して、熱水レベルの低い天然地熱貯留層からエネルギーを生み出すという新たな地熱発電方式。
11:2008年度大統領要求と比較すると、1,420万ドルの増額。
12:議会はブッシュ政権の廃止案を覆し、同プログラムに2008年度予算として3,610万ドルを計上。
13:2008年度大統領要求(2,250万ドル)と比較すると、410万ドルの増額。
14:2008年度大統領要求額(3億9,500万ドル)よりは6,350万ドルの減額となる。
15:ACIは2007年に法制化されたが、2008年度の計上予算は「America COMPETES法」の定める認可額には程遠く、ブッシュ大統領は今年1月の一般教書演説でACI認可額をフルに計上するよう求めた。
16:同イニシアティブでは、大学や研究所、および、優れた非営利機関に競争ベースでグラントを毎年提供。
17:2007年度終焉に選定・着工された3ヶ所のGTLバイオエネルギー研究センター…ローレンスバークレー国立研究所のバイオエネルギー合同研究所、ウィスコンシン大学マジソン校の五大湖バイオエネルギー研究センター、オークリッジ国立研究所のバイオエネルギー科学センター…に、年間各2,500万ドルを給付する。


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