ブッシュ大統領の2009年度予算:概要(その2)

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2008年3月2日

ブッシュ大統領が2006年に発表した、エネルギー省(DOE)科学部と全米科学財団(National Science Foundation)および、商務省国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology)コアプログラムの予算を10年間で倍増するという「米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative = ACI)」は、2007年8月に「America COMPETES法」にて法制化された。しかしながら、米国議会が可決した2008年度歳出予算法の計上予算は「America COMPETES法」の定める認可額を遥かに下回るものであったため、ブッシュ大統領は今年1月の一般教書演説において、物理科学の重要な基礎科学を支援するACIにフル予算を計上するよう議会に求めている。現政権の強い意向を反映し、ここ数年は前年度並みの予算要求に甘んじていた状況を覆して2009年には相当の増額を受ける全米科学財団、「America COMPETES法」の下で生まれ変わったばかりの技術イノベーション計画(Technology Innovation Program)が現政権によって撤廃の対象とされている商務省、内務省、環境保護庁、および、運輸省の予算について概説する。 


■ II. 全米科学財団

全米科学財団(National Science Foundation = NSF)の予算はこの3年間横ばい状態であったが、2009年度には「米国競争力イニシアティブ(ACI)」(注:1) の恩恵を受け、68億5,400万ドル(前年度比13.6%増)まで引き上げられる。研究開発(R&D)予算は2008年度比15.6%増の52億100万ドルで、NSF総予算の約75.9%に相当する。R&Dの内訳は、基礎研究(17.5%増の43億3,600万ドル)と応用研究(24.1%増の4億2,200万ドル)が大幅増額を受ける一方、施設・設備は5.9%削減の4億4,300万ドル要求となっている。

NSFの研究関連活動(Research and Related Activities)予算の総額は、2008年度推定を7億7,250万ドル(16.0%)上回る55億9,400万ドルで、社会学・行動科学・経済学と米国南極研究委員会を除く全ての費目が10%以上の増額を受けている。

NSF予算のハイライト:

1. 主要な研究関連活動

  • 2009年度の国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)予算は前年度推定を810万ドル(2.1%)上回る3億9,680万ドル。ナノスケールで生じる現象とプロセスの根本的理解(1億3,880万ドル→1億4,120万ドル);ナノ材料(6,210万ドル→6,310万ドル);ナノスケールのデバイスとシステム(5,030万ドル→5,160万ドル);主要研究施設と大型研究機器の調達(3,160万ドル→3,210万ドル);環境・衛生・安全面(2,920万ドル→3,060万ドル);教育(2,830万ドル→2,980万ドル)が増額となる一方、、ナノマニュファクチャリングおよび社会的側面の予算は前年度同額の要求となっている。
  • ネットワーキング・情報技術R&D(Networking and Information Technology Research and Development)の2009年度予算は1億5,880万ドル(17.0%)増の10億9,030ドルで、NSF予算全体の15.9%に相当。コンピューター・情報技術がNSFの理工学系アワードに占める役割が益々重要となっていることを示している。
  • 2008年度には1.5%の微増要求(注:2) に留まったNSFの気候変動科学プログラム(Climate Change Science Program = CCSP)に対する2009年度予算は、1,540万ドル(7.5%)増額で2億2,060万ドル。
  • コンピューター処理能力により開拓される斬新なパスウェイに沿って理工学の発展を推進していくサイバー活用の発見とイノベーション(Cyber-enabled Discovery and Innovation)イニシアティブの2年度予算は1億ドル(初年度の2008年度は4,790万ドル)まで引き上げ。
  • クリーンで安定した海洋環境を保証する活動の支援を目的に昨年新設された海洋研究優先プラン(Ocean Research Priorities Plan)の2年度予算は前年度同額の1,700万ドル。
  • 革新パートナーシップ(Partnerships for Innovation)は、2008年度比4.0%増の960万ドル。
  • 2009年度から総合的活動(IA)に移譲・統合されるEPSCoR(Experimental Program to Stimulate Competitive Research)計画の予算は、前年度比2.2%増の1億1,350万ドル。
  • 異なる専門分野の研究者を一堂に集める目的で2007年度に新設された研究革新新興フロンティア(EFRI)の2009年度予算は、前年度を400万ドル上回る2,900万ドル。
  • 中小企業革新研究プログラム(SBIR)の予算は16.1%増額で1億1,360万ドル。中小企業技術移転プログラム(STTR)の予算は16.1%増の1,340万ドル。
  • 長期の産官学パートナーシップ構築を推進する産学協同研究センター(Industry/University Cooperative Research Centers)の予算は前年度を90万ドル(13.0%)上回る730万ドル。
  • 植物ゲノム研究プログラム(Plant Genome Research Program)の2009年度予算は、前年度予算比で3.4%(340万ドル)増額となるものの、前年度要求額とは同額の1億100万ドル。


2. 主要な教育関連プログラム

NSFの教育・人材関連予算は、2008年度比8.9%(6,500万ドル)増の7億9,000万ドルまで引き上げられるが、2005年度・2006年度の大幅削減と2007年度の前年度並み予算の影響により、2009年度予算は実質的には2004年度レベルに復活したにすぎない。

  • 学部教育(Undergraduate Education)予算は880万ドル増額の2億1,980万ドル:主要プログラムと予算は、(i)連邦サイバーサービス奨学金計画の1,500万ドル(+350万);(ii)数学・科学パートナーシップの5,100万ドル(+250万);(iii)学科・教育課程・ラボ改善(Course, Curriculum & Laboratory Improvement)に3,920万ドル(+171万);(iv)Robert Noyceスカラーシップ計画が1,160万ドル(+80万)。先進技術教育(Advanced Technological Education)とSTEM人材育成拡充計画(STEM Talent Expansion Program)は2008年度予算と同額で、5,160万ドルと2,970万ドル。
  • 大学院教育予算は3,060万ドル増で1億9,070万ドル:(i)大学院研究フェローシップ(Graduate Research Fellowships)は前年度比32.5%増の1億1,670万ドル。最高3,075名(+700名)のフェローを支援。(ii)K-12教育の大学院生授業助手制度(Graduate Teaching Fellows in K-12 Education)は4.3%増の4,900万ドル。(iii)総合的大学院教育研究養成(IGERT)プログラムは2008年度と同額の2,500万ドル。
  • 人材開発予算は9.2%増の1億5,340万ドル:内訳は、(i)科学技術の優良研究センター(CREST)の3,050万ドル(+550万ドル);(ii)Louis Stokes少数民族参加同盟(LSAMP)の4,250万ドル(+200万ドル);(iii)大学院教育と教授陣の為の同盟(AGEP)が1,675万ドル(+140万ドル)。
  • 公式・非公式環境における学習の研究は1,250万ドルの伸びで2億2,650万ドル:内訳は、(i)K-12レベルのSTEM教育改善を狙った応用研究とイノベーションを支援するDiscovery K-12が1億850万ドル(+850万ドル);(ii)非公式科学教育(Informal Science Education)の2009年度予算は6,600万ドル(+100万ドル);(iii)プロジェクト・プログラム評価は1,000万ドル(+300万);(iv)理工学教育の研究と評価は前年度と同額の4,200万ドル。


3. NSFセンター・プログラムの2009年度予算は、前年度を3,930万ドル(15.7%)を上回る2億9,030万ドル。内訳は下記の通り。

■ III. 商務省

商務省の2009年度予算は81億7,670万ドルで、前年度推定(68億3,170万ドル)と比べ13億4,500万ドル(19.7%)という大幅な伸びとなっている。イノベーション、起業家精神、競争力、スチュワードシップ(stewardship)の促進によって経済成長と経済機会のための条件を創出することをミッションとする商務省では、@米国競争力を最大化し、米国産業・労働者・消費者の経済発展を可能にすること;A米国のイノベーションおよび産業競争力を促進すること;B環境スチュワードシップを推進することを戦略目標に掲げている。

商務省の2009年度R&D予算は、2008年度予算を4,400万ドル(4.0%)上回る11億5,7600万ドル。2008年度予算との比較では、基礎研究費が83.3%の大幅増額(注:4) となる一方、応用研究はほぼ前年度並み、開発と施設・設備は10.5%と16.2%の削減となっている。商務省R&D予算の内訳は下記の通り:


国立標準規格技術研究所(National Institute of Standards and Technology = NIST)の2009年度総予算は2008年度要求より279万ドル、2008年度予算より1億1,780万ドル少ない6億3,800万ドル。但し、ブッシュ大統領提案のACIで要求し、「America COMPETES法」で大幅増額を認可したNISTコアプログラム(注:5) の2009年度予算は、前年度要求を1億4,090万ドル(28.6%)、前年度予算を3,300万ドル(5.5%)上回る(注:6) 6億3,400万ドルとなっている。「America COMPETES法」では、ブッシュ政権が再三におよび廃止を要求してきた先端技術計画(Advanced Technology Program)を技術イノベーション計画(Technology Innovation Program = TIP)に再編したが、2009年度大統領要求ではTIPの廃止、および、製造技術普及計画(Manufacturing Extension Partnership = MEP)の大幅削減を要求している。

NIST予算のハイライト:

  • 2009年度R&D予算は2008年度推定比6.0%増の5億4,500万ドル。ブッシュ政権が基礎研究を優先視している一方で、米国議会が応用研究および開発と施設・設備を重視していることを、下記の表は浮き彫りにしている。ブッシュ政権の2009年度予算案は2008年度要求を踏襲する内容で、基礎研究の増額、他費目の減額を求めている。
  • 国家の最重要ニーズである@環境・安全・危機管理の急迫したニーズへの対応;A戦略技術および急進する技術への投資;B米国の理工系キャパシティと能力(capability)の拡大、に対する予算を1億3,270万ドル増額。
    @ 環境・安全・危機管理の急迫したニーズへの対応(2,620万ドル増額)
    • ナノテクノロジーの環境・衛生・安全面(EHS)影響に新たに1,200万ドル …(i)正確な測定・検出方法の開発;(ii)ナノテクの持つ多大な経済的ポテンシャルの活用;(iii)ナノテク製品に対する消費者コンフィデンスの持続を図る。
    • 気候変動科学プログラム(CCSP)の計量と基準に対する予算を500万ドル増額 …国際データ比較の不確実性を減らすキャリブレーションの標準化、エアロゾルの特性データベースと新測定方法の策定。
    • 全米地震危険度低減プログラム予算を330万ドル増額 …(i)最新の建築基準;(ii)新規・既存ビルの耐震度評価ツール;(iii)構造技術者向け技術的資料の作成等。
    • 全米地震危険度低減プログラム予算を330万ドル増額 …(i)最新の建築基準;(ii)新規・既存ビルの耐震度評価ツール;(iii)構造技術者向け技術的資料の作成等。
    • バイオメトリクス:敵味方の識別への予算を200万ドル増額 …顔認識、多モードシステムの実験、生体測定システムの相互運用性、顔認識・指紋・眼球の虹彩スキャンを同時に行う技術の実現を図る。

    A 戦略技術および急進する技術への投資(4,280万ドル増額)

    • バイオサイエンスの計量と基準に新規で1,000万ドル …ミスの減少・コスト削減・革新的医療技術の実現を助長し、オーダーメイド医療への道を開き、バイオインフォマティックスやモデリングツールの広範な利用を助長する。
    • 量子情報科学の予算を700万ドル増額 …(i)NISTとメリーランド大学の量子合同研究所(Joint Quantum Institute)で養成する学生を増数;(ii)テレポーテーション技術を活用する量子「ワイヤー」の開発;(iii)全光クロック(all optical clock)の開発。
    • ナノテクノロジー:発見から製造までの予算を700万ドル増額 …産官学のナノテク研究スピードを加速し、製品化を短期化し、製品の質および生産高を改善する。
    • 計測学のイノベーションは300万ドル増額 …産業界の新たなニーズを予測して、次世代技術が必要とする計測学を開発。
    • 包括的なサイバーセキュリティー・イニシアティブに新規で500万ドル …暗号化キーの管理改善、相互運用性とユーザー認証の改善、コンピュータ・セキュリティ設定の標準化。
    • 光通信とコンピューティングに新規で580万ドル …(i)信号測定を利用して通信不通地を遠隔診断する新規の測定ツール・データ分析ツール・モデリングツールの開発;(ii)光回路を分析する新しいナノスケール測定技術の開発。
    • 水素経済の実現に400万ドルの増額 …(i)パイプラインの安全性・信頼性に対する基準を策定;(ii)販売場所での正確な燃料計測を保証;(iii)燃料電池の性能と耐久性を改善。
    • 供給チェーンの統合による製造イノベーションは100万ドル増額 …効率的な供給チェーンの実現、競争力の維持、および、イノベーションの増進に欠かせない基準や計量や試験ツールを開発。

    B 米国の理工系キャパシティと能力の拡大(6,370万ドル増額)

    • NIST中性子研究センターの規模拡大と能力改善に200万ドル増額。
    • NISTボルダーキャンパスの増築に4,350万ドルの増額 …原子レベル現象の確実な操作に必要な環境制御(environmental control)を提供する近代的研究施設の増築を完了。
    • JILA増築予算として新規に1,300万ドル …根本的エレクトロニクス研究のためのクリーンルーム、生物物理学研究のための低温研究室を整備。
    • 安全性とキャパシティ、保守と大規模修理の予算は520万ドルの増額 …(i)NIST職員の安全の保証;(ii)老朽化した機械・電気システムの交換;(iii)危険物の除去;(iv)構造修理および交換;(v)アクセスビリティの改善。


■ IV. 内務省

2009年度の内務省予算は前年度よりも3億8,850万ドル(3.5%)少ない(注:7) 107億2,400万ドル。ミッション別予算は、@エネルギーへのアクセスや再生可能・再生不能資源プログラムの増強によるエネルギー安全保障の強化を目的とする資源利用(Resource Use)が16億ドル;A景観や河川流域の改善、文化遺産・自然遺産の保護を目的とする資源保護(Resource Protection)は33億ドル;Bリクリエーション(Recreation)予算が17億ドル;Cコミュニティサービス(Serving Communities)は39億ドル;D優良マネジメント(Management Excellence)が3億ドルとなっている。

内務省の2009年度自由裁量予算は、2008年度よりも4億ドル(3.7%)少ない106億ドル。また、内務省のR&D予算も前年度より5,900万ドル(8.7%)少ない6億1,700万ドルに減額されている。

膨らむ一方の財政赤字を抱えるブッシュ政権は2009年度予算で4省庁(注:8) のR&D予算を削減しているが、内務省R&Dは農務省R&Dの削減(15.5%減)につぐ、大幅な減額となっている。内務省R&D予算の内訳は、開発費が前年度同額となるものの、基礎研究と応用研究、および、施設・設備の予算は各々、7.0%、6.6%、90.9%の削減要求となっている。


内務省予算のハイライト:

  • エネルギー安全保障の強化
    内務省予算に盛り込まれたエネルギー計画の総合予算は、2008年度比2.9%(1,510万ドル)増の5億2,810万ドル。エネルギー関連計画予算をもつ内務省局は、国土管理局、鉱物資源管理部、米国地質調査局、魚類野生生物庁(Fish and Wildlife Service)、先住民局(Bureau of Indian Affairs)、および、内務長官室。この内、国土管理局、鉱物資源管理部、および、米国地質調査局の主なプログラムと予算は下記の通り:
    • 国土管理局(Bureau of Land Management = BLM)のエネルギー計画予算は、前年度より286万ドルの増額で1億7,910万ドル。
      • アラスカ州ノーススロープに散在する政府掘削廃井の修復活動を継続するため、石油・天然ガスプログラムの予算を1,120万ドル増額。
      • ガスハイドレート研究は活動の延期に伴い、2009年度予算は42.5万ドルの減額。
      • オイルシェール(油頁岩)開発プログラムは、オイルシェールの環境影響報告書(environmental impact statement)完了を反映し、195万ドルの減額。
    • 鉱物資源管理部(Minerals Management Services = MMS)のエネルギー計画予算は、1,052万ドル増で3億100万ドル。
      • 大陸棚(Offshore Continental Shelf = OCS)5ヵ年リース計画が定めた、アラスカとメキシコ湾における新リース地域での環境調査・資源アセスメント・リース協議を拡大するため、850万ドルを要求。
      • 代替エネルギー/在来方式に代わる利用(Alternative Energy/Alternate Use)プログラムの拡大で、100万ドルの増額。
      • 資源アセスメントや資源保全分析用の最先端地層科学解析ツールの予算を110万ドル増額。
    • 米国地質調査局(US Geological Survey = USGS)のエネルギー計画予算は26万ドル増額されて2,664万ドルまで引き上げられる。石油、天然ガス、炭層メタン、ガスハイドレート、石炭、地熱資源、オイルシェール、ウラニウムに関する国内外の研究やアセスメント、これらエネルギー資源の発生・生産・利用に伴う環境・健康面での影響評価を行う。
  • 気候変動関連
    内務省の主要科学機関であるUSGSの気候変動科学プログラム(CCSP)予算は、前年度より500万ドルの増額で3,140万ドル。
  • その他
    MMS管轄の重油漏れ研究(Oil Spill Research)プログラムの予算は3年連続の削減で、610万ドル。


■ V. 環境保護庁

環境保護庁(EPA)の2009年度予算は、2008年度予算(74億7,000万ドル)を3億3,000万ドル(4.4%)下回る71億4,000万ドル。2008年度大統領要求額(71億9,940ドル)と比較しても5,940万ドルの減額要求となっている。戦略目標別の予算配分は、目標1の「クリーンエアおよび地球気候変動」が前年度比3.4%減の9億3,900万ドル;目標2の「クリーンで安全な水資源」が9.6%減の25億8,100万ドル;目標3の「国土保全と地力回復」は0.2%増の16億9,100万ドル;目標4の「健全なコミュニティとエコシステム」が9.6%減で11億9,100万ドル;目標5の「遵守および環境管理」は2.2%増の7億5,110万ドル。

2009年度のEPA目標別予算

(出典:FY2009 EPA Budget in Brief)


同庁のR&D予算は5億5,000万ドルで、2008年度予算比では僅か1.3%(770万ドル)の削減ながら、2007年度予算と比較すると5,600万ドルの減額となる。2009年度要求では、開発費が微増となる一方、基礎研究も応用研究も僅かながら削減となる。EPAのR&D予算内訳は下記の通り:

EPA予算のハイライト:

  • 州政府・地方政府への大気質管理グラントは前年度・前々年度並みの1億8,600万ドル。    
  • 温室効果ガス(GHG)原単位を2012年までに18%削減するという大統領計画への貢献を目的とする気候保護プログラム(Climate Protection Program)の2009年予算は、9,800万ドル。主なプログラムは下記の通り:
    • Energy STARプログラム予算は前年度予算より400万ドル少ない4,420万ドル。
    • 国際的なGHG排出削減努力を支援するクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)の予算は500万ドル(注:9)
    • メタン市場化(Methane to Markets)パートナーシップは2008年度並みの450万ドル。
  • 州政府・部族政府支援グラント(State and Tribal Assistance Grants)は1.1%削減の26億2,200万ドル。主要なプロジェクトは下記の通り:
    • ディーゼル排出削減グラントの予算は2008年度と同額4,920万ドル。
    • ブランフィールド計画の予算は前年度予算並みの9,360万ドル。
    • 議会が2008年度に980万ドルを計上したカリフォルニア州排出削減グラントは、廃止要求。
  • 州政府回転資金(State Revolving Fund)グラントは1億2,090万ドル削減され、13億9,720万ドル。内訳は下記の通り:
    • クリーンウォーター・グラント予算は、1億3,400万ドル削減の5億5,550万ドル。
    • 飲料水グラント予算は、1,310万ドル増額されて8億4,220万ドル。
  • 省庁間イニシアティブである気候変動科学プログラム(CCSP)に対するEPA予算は前年度より400万ドル少ない1,600万ドル。
  • 米国の重要な水資源インフラを守る水資源安全保障イニシアティブ(Water Security Initiative)の2009年度予算は3,520万ドル。
  • スーパーファンド予算は1,000万ドル増額の12億6,00万ドル。
  • ナノ材料の環境運命(environmental fate)を左右するプロセスの理解を深めるナノテクノロジー研究は、450万ドル増額されて1,490万ドル。

 

■ VI. 運輸省 

2009年度の運輸省全体予算は2008年度予算(703億3,300万ドル)比3.0%(21億3,400万ドル)減の681億9,900万ドル。5つの重要戦略目標の比率をみると、環境保護が僅かに伸びた一方で、安全性の向上、渋滞軽減、世界的交通網連絡の改善、および、国家安全保障の支援の割合が全て、僅かながらも縮小している。各目標に対する予算配分は下記の通り:

(1) 安全性の向上への2009年度予算は202億9,500万ドル(29.7%)
(2) 渋滞軽減への配分は367億1,500万ドル(53.8%)
(3) 世界的交通網連絡の改善は13億8,200万ドル(2.0% )
(4) 環境保護に70億3,000万ドル(10.0%)
(5) 国家安全保障の支援に9億1,900万ドル(1.3% )

運輸省の2009年度自由裁量予算は昨年に続く削減で、2008年度より40億ドル(25.7%)少ない115億ドル。R&D予算は前年度比9.5%(7,800万ドル)増の9億200万ドルで、応用研究と開発の予算が6.6%と17.3%増額される一方、基礎研究と施設・設備はほぼ前年度並みの要求となっている。同省の主要部局別のR&D予算は下記の通り:

運輸省予算のハイライト: 

  • 連邦高速道路局(Federal Highway Administration)予算は401億3,800万ドル
    • 全米幹線道路網、および、都市や地方の道路や橋の建設・改修を行う州政府に対して財政支援を提供する連邦支援高速道路プログラム(Federal-Aid Highways Program)予算は394億ドル(注:10) 。主要プログラムの予算は、(i)渋滞軽減および大気質改善プログラム(CMAQ)の18億ドル;(ii)研究およびインテリジェント交通システム(ITS)の5億3,980万ドルで、この内 の1億1,000万ドルがITS予算。
    • 米国各地で交通渋滞と通勤時間の削減を狙った、行政府の新イニシアティブ「国家渋滞軽減戦略(National Strategy to Reduce Congestion)」に1億7,500万ドルを要求。1億ドルを大都市部の渋滞軽減実証イニシアティブに、7,500万ドルを未来回廊(Corridors of the Future)プログラム支援に計上。
  • 米国高速道路安全局(National Highway Traffic Safety Administration)の2009年度予算は8億5,100万ドル。
    • 自動車安全性研究(Vehicle Safety Research)の予算として1億2,200万ドル …(i)自動車安全性の研究分析に2,920万ドル;(ii)運輸省の「安全性」目標を支援する、ルール策定プログラムに1,670万ドルを要求。
    • 高速道路安全性R&D(Highway Safety Research and Development)の予算は1億550万ドル …(i)行動研究や技術支援、道路交通法の施行や救命救急システムといった高速道路安全性R&Dプログラムに4,200万ドル;(ii)安全傾向の確認や代替案の策定を行う研究・分析に2,690万ドル。
    • 高速道路交通安全性グラント(Highway Traffic Safety Grants)に6億100万ドル。
  • 研究・革新技術局(Research and Innovative Technology Administration)の予算は3,900万ドル。
    • 国家の経済および環境優先事項を支援しつつ、代替燃料重視の革新的交通技術を改善・推進する、研究・開発・技術(Research, Development and Technology)に1,200万ドル。
    • 多様な交通データや情報を提供する交通統計局(Bureau of Transportation Statistics)の予算として2,700万ドル要求。
    • 大統領の水素燃料イニシアティブを支援するため、500万ドルを拠出。
  • 連邦航空局(Federal Aviation Administration)の予算は146億4,300万ドル
    • 研究・工学・開発(RE&D)予算は1億7,100万ドル …(i)航空安全問題関係の研究継続に9,100万ドル;(ii)渋滞軽減と環境問題の研究費が1,400万ドル。
    • 空港改善プログラム(Airport Improvement Program)予算は7億5,000万ドル削減されて27億5,000万ドル。
  • 連邦交通局(Federal Transit Administration)の2009年度予算は101億3,500万ドル。
    • クリーン燃料グラント(Clean Fuels Grant)プログラムに5,150万ドルの要求。
    • 国立公園や公有地における輸送代替手段(Alternative Transportation in Parks and Public Lands)には2,690万ドル。
    • 障害を持つ労働者に革新的な交通問題の解決策を提供することによって交通面での障壁を軽減する、ニューフリーダム(New Freedom)プログラムに9,250万ドルを要求。
  • 省庁間プログラムである次世代航空輸送システム(Next Generation Air Transportation System = NextGen)イニシアティブの2009年度予算は、前年度より倍増されて6億8,800万ドル。FAAからの投資額は2億3,100万ドル。

 


注釈:

1:ACIの10ヵ年倍増計画では2016年のNSF予算を111億6,000万ドルまで増額することを最終目標としている。2007年8月に成立した「America COMPETES法」ではこの目標達成に向け、2009年度NSF予算として73億2,600万ドル、2010年度予算として81億3,200万ドルを認可している。
2:大統領の2008年度要求額は2億830万ドルであったが、議会が計上した予算は2007年度より140 万ドルの削減で2億530万ドルであった。
3:以前は、化学結合センター(Chemical Bonding Centers)と呼ばれていた。
4:2008年度大統領要求額との比較では、1,200万ドル(7.3%)の増額。
5:科学的・技術的研究事業(Scientific and Technical Research and Services = STRS)と研究施設建設(Construction of Research Facilities = CRF)。
6:ブッシュ大統領は今年の一般教書演説で議会に指定予算交付を半減するよう訴えている。商務省の2008年度予算には8,220万ドルの指定交付予算が含まれており、これを除くと、コアプログラムの2009年度予算は1億1,520万ドル(22.2%)の伸びになる。
7:2008年度の補正予算を加算すると、6億3,700万ドル(5.6%)の削減となる。
:2009年度予算でR&D予算が減額される他の2省は、復員軍人省(7.9%減)と環境保護庁(1.3%減)。
9:ブッシュ大統領は2008年度予算で500万ドルを要求したが、議会が認可した2008年度予算にはAPP予算が盛り込まれていない。
10:義務的支出と自由裁量支出の合計金額。


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