大統領科学技術諮問委員会(PCAST)発表の報告書

『総合的な連邦エネルギー政策を介した

エネルギー技術変革の促進』:概要

 

2010年12月2日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

大統領科学技術諮問委員会(President's Council of Advisors on Science and Technology =PCAST)が2010年11月29日に、『総合的な連邦エネルギー政策を介したエネルギー技術変革の促進(Accelerating the Pace of Change in Energy Technologies Through an Integrated Federal Energy Policy)』という報告書を発表した。

同報告書では、経済競争力、環境管理および国家安全保障上の理由から今後10〜20年間で米国エネルギーシステムを変貌させることが不可欠であり、米国はエネルギー技術革新で最前線にいなければならないと結論づけている。PCASTは、エネルギーシステムの変貌を遅らせている主な原因はエネルギー技術の開発・導入・活用に影響を与える多数の政策によって責任を付与された省庁間の連携不足であると指摘し、連邦政府省庁間の協調方法を大幅に変更して、調整の行き届いた確固たる連邦エネルギー政策の構築に繋がる新プロセスを確立するよう求めている。また、エネルギー関連研究開発に対する政府投資の大幅増大も要請している。

PCASTメンバー(注:1)と公共・民間部門の著名なエネルギー専門家(注:2)で構成したPCASTエネルギー技術イノベーションシステム作業部会(Energy Technology Innovation System Working Group)の答申を基に作成された同報告書では、エネルギー技術イノベーション促進で行政府に対し下記の提言を行っている:

  • 大統領は、下記の項目を盛り込んだ複数年度ロードマップを策定するため、4年に一度のエネルギー計画見直し(Quadrennial Energy Review =QER)過程を確立すべきである: 
    • 経済、環境および安全保障面の優先事項に照らし合わせた、短期的・中期的・長期的な連邦政府エネルギー目標
    • 議会への立法提案
    • 予想される行政府の活動(プログラム上、規制上、財政上、他)
    • 研究開発・導入プログラムおよびイノベーション奨励プログラムに必要なリソース

  • エネルギー省(DOE)長官は、QERの一部となるDOEのエネルギー計画見直しを、QERよりも早いタイミングで作成し、これを実行すべきである。

  • 大統領は、エネルギー研究開発実証・導入(RDD&D)への年間予算を現行の約50億ドルから160億ドルに増額すべきである。エネルギーRDD&Dの予算増額は長期的で安定していなければならず、また、政権交代に耐えられるだけの広範な超党派支持を得るものでなければならない。

  • 大統領は、民間部門や米国議会を引き込んで、新たな収入源による年間約100億ドルの捻出(注:3)を検討すべきである。

  • QERで特定する優先事項に沿って資源の再配分を行うため、経済諮問委員会(Council of Economic Advisors)を筆頭として、行政府は既存のエネルギー補助金やインセンティブの目録を作成すべきである。

  • 連邦政府の購買力を使ってエネルギー技術革新を強化するため、@国防省、DOE、総務庁(GSA)は再生可能エネルギー資源発電購入契約期間を長期化する権限を求め;A法案に盛り込まれたエネルギー供給やエネルギー技術条項の予算分析を行う際、議会予算局(CBC)はコストを契約期間全体に拡散して考慮し;B行政管理予算局(OMB)はエネルギー購入の評価のために、ライフサイクルコスト及び社会的コストを判定するクライテリアを策定すべきである。

  • ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)は、国家科学技術会議(National Science and Technology Council)内に、クリーンエネルギー・アジェンダの前進を重視する国際科学工学技術委員会(Committee on International Science, Engineering, and Technology =CISET)を再構築すべき(注:4)である。

  • 行政府は2012年度予算案でエネルギーイノベーションに160億ドルを要求し、この内の120億ドルをRD&Dに配分すべきである。2012年度の連邦拠出レベルは最低でも2011年度要求の51億ドルで維持し、残りの70億ドルは新たな収入源から捻出するべきである。

  • DOE長官は、エネルギー技術の進歩を加速するため、省内の組織やプロセスを合理化する権限を柔軟に実践すべきである。
    • ARPA-Eで成功している下記の手続や過程(プロセス)をDOEの全エネルギープログラムへ拡大:
      • 厳格なレビュープロセス
      • コントラクトやグラントの交渉を数ヶ月で完了
      • 調達・契約・人事・ITサービスの共有;OTA(Other Transaction Authority)を含む、全ての契約方式や権限の活用
      • 大学および非営利機関に課される応用エネルギー研究プロジェクトの20%マッチング義務を、必要に応じて変更(注:5)
      • 有能な人材を大学や産業界から雇用するARPA-Eフェロープログラム
    • ローン保証を含むアワードを合理化するため、OMBと協力
    • 21世紀のエネルギーイノベーションに向けた国立研究所の能力を見直し
    • エネルギー政策・国際部を、エネルギー政策に専心する独立したエネルギー政策部と、国際部に分割する。エネルギー政策部のディレクターはDOE長官に直接報告するものとする。国際部は現行通り、次官補が率いるものとする。

  • DOEは、国立衛生研究所(NIH)や全米科学財団(NSF)のトレーニング・グラント計画に類似した、トレーニング・グラント計画を大学に設置すべきである。

  • DOEはNSFと協力して、米国のエネルギー技術イノベーション・エコシステムを分析調査する、分野横断的な社会科学研究プログラムを開始するべきである。

 

 

 

 


注釈:

1: Ernest Jonizマサチューセッツ工科大学(MIT)教授、Maxine Savitz全米工学アカデミー副総裁、John Holdrenホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)局長、Nick Donofrio元IBM副社長、William Powers元フォード自動車副社長他、計16名。

2: Steven Chuエネルギー長官、Jeff Bingaman上院議員(民、ニューメキシコ州)、Bart Bordon下院議員(民、テネシー州)、Paul Alivisatosローレンスバークレー国立研究所所長、Michael Howard電力研究所(EPRI)副所長、David Goldston天然資源保護協議会(NRDC)ディレクター、Granger Morganカーネギーメロン大学教授他、計40名。

3: 報告書は、米国の電力年間消費量(約4兆キロワット時)にキロワット時あたり0.1セントを課せば年間約40億ドル、ガソリン年間消費量(約2,000億ガロン)にガロンあたり2セントを課せば年間約40億ドルの収入が生まれると提案している。

4: CISETはクリントン政権時に創設されたが、ブッシュ政権下で2001年に解散された。

5: ARPA-Eでは、大学、非営利機関、および小規模スタートアップ企業に課すマッチング義務を10%に引下げている。

 

 

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