オバマ大統領が発表した、米国エネルギー安全保障計画の概要

 

NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2011年3月30日

オバマ大統領は3月30日にジョージタウン大学で、国内燃料の増産、天然ガスやバイオ燃料の使用拡大、及び、自動車やトラックの燃費改善によって、石油輸入量を2025年までに3分の1削減するという計画の概要を説明した

ジョージタウン大学におけるこの演説は、米国のエネルギー安全保障強化を狙った新キャンペーンのキックオフと言えるもので、大統領は、リースされてはいるが未だに開発されていない公有地や連邦水域における石油・天然ガスの掘削を奨励するインセンティブを発表したほか、議会に対するクリーンエネルギー使用基準(2035年までに電力の80%を再生可能燃料やクリーンコール、天然ガスや原子力で賄うことを電力会社に義務付け)策定の要請をあらためて表明した。

米国のエネルギー安全保障計画の概要は下記の通り:


石油輸入の削減 …2008年に米国は日量1,100万バレルを輸入。2025年までに輸入量を3分の1削減。

  • 石油や天然ガスの安全でレスポンシブルな国内開発・生産の拡大
    • 重大な安全改革の実施: メキシコ湾原油流出事故に応え、オバマ政権は海底の石油・天然ガス資源のレスポンシブルな開発を保証する厳格で包括的な環境・安全改革に着手。
    • 未開発資源の確認:  内務省がオバマ大統領の要請を受けて作成した報告書によると、陸上のリース面積の57%、オフショアのリース面積の70%が探査も開発もされておらず、未利用のまま。
    • 迅速な開発・生産を促すインセンティブの策定: 内務省は、現行リース及び将来リース下での迅速な石油・天然ガス生産を促すインセンティブを策定中。オフショアのリース計画に関しては既に、リース期間の短縮やリース延長に先立つ採掘開始の義務、といったインセンティブを採用。この他、テキサス州が採用している累進的なロイヤリティ料率体系(graduated royalty rate structure)の使用を検討中。

  • 多様で安定したエネルギー源へのアクセス確保
    • バイオ燃料市場の拡大、及び、新規バイオ燃料技術の実用化: バイオ燃料の市場シェア拡大には、インフラ課題の克服と、セルロース系エタノール及び先進バイオ燃料技術の実用化が必須。このため、オバマ政権は今後2年間で商業規模のセルロース系エタノールまたは先進バイオ燃料精製所を少なくとも4ヶ所新設の予定。
    • レスポンシブルな天然ガス開発慣行の奨励: 重要な国内資源である天然ガスを安全かつレスポンシブルに開発するため、オバマ政権は、フラッキング掘削法での化学物質使用に関するトランスペアレンシーの向上や、業界専門家・環境団体・州政府を活用してシェール(頁岩)抽出慣行に対する提言を策定する新イニシアティブの開始、等を重視。

  • 自動車やトラックの燃費向上による、燃料費の削減
    • 歴史的な燃費新基準の設定: 自動車の平均燃費基準が2016年までに1ガロンあたり35.5マイルまで引上げ。加えて、オバマ政権では今年7月に2014年−2018年型の商用トラック・バン・バスを対象とする燃費や温室効果ガス排出の国家基準をまとめるほか、9月には2017年−2025年型乗用車を対象とする燃費基準・温室効果ガス排出基準を発表の予定。
    • 先進自動車への地固め: 2015年までに100万台の電気自動車を導入するというオバマ大統領の目標を達成するため、大統領の2012年度予算案は、@7,500ドルという消費者向け税額控除の改変;Aコミュニティの電気自動車導入を奨励する競争グラント;B先進バッテリー技術のイノベーションを後押しするR&D投資を提案。加えて大統領は、天然ガス自動車の可能性を広げる政策を進めるよう議会に要請。

  • 手本となる連邦所有車両

    60万台以上の車両を所有する連邦政府は既に、ハイブリッド自動車の台数を倍増済み。加えて、オバマ大統領は本日、2015年までには連邦政府が購入する新車を全て、代替燃料車(ハイブリッド車や電気自動車を含む)とするよう各省庁に命令。

     

クリーンなエネルギー未来の達成に向けた革新 …クリーンな電力供給源やエネルギー効率改善に向けた方針の策定、及び、クリーンエネルギー技術の最先端を維持。

  • クリーンエネルギー市場の構築

    クリーンエネルギー経済への移行には、クリーンエネルギー・イノベーションの市場があるという明白なシグナルをビジネスや起業家に送る必要あり。このため、オバマ政権は、2035年までに電力の80%をクリーンエネルギー資源(風力、ソーラー、バイオマス、水力、原子力、天然ガス、クリーンコールといった資源を含む)で賄うという野心的ではあるが達成可能な「クリーンエネルギー使用基準」の設定にコミット。

  • 省エネ住宅や省エネビルによる光熱費の節約

    米国エネルギー消費の70%は住宅、ビジネス、工場での消費であるため、住宅部門・商業部門・産業部門における省エネ投資は、電気代を節約すると同時に、米国の競争力を強化し、環境を保護することになる。オバマ政権が、ARRA(経済刺激策)の投資を介して低所得家庭60万戸の耐候化を進め、一連の省エネ政策(HOMESTARプログラム(注1)、ビルディング改善イニシアティブ(注2)等)にコミットしているのは、この理由からである。

  • クリーンエネルギー研究開発を通じて最先端を維持

    ARPA-Eプログラムを介して、スマートグリッド技術から炭素回収、電気自動車用バッテリー技術に至る多様な分野で100件以上の最先端プロジェクトに投資したほか、これまでに、@省エネビル;A太陽光利用の燃料生産;B原子炉モデリング・シミュレーションという3つの「エネルギー革新拠点(Energy Innovation Hub)を支援。2012年度大統領予算案では、ARPA-E予算の倍増、および、既存の3拠点に加えて(i)スマートグリッド技術;(ii)重要原料の研究;(iii)バッテリーとエネルギー貯蔵を扱うエネルギー革新拠点を新たに支援。

 

【参考】

  1. CQ Today Online News "Obama Announces Plans to Reduce Oil Imports" March 30, 2011
  2. Department of Energy News Release "President Obama to Outline Plan for America's Energy Security" March 30, 2011

 


注釈:

注1:住宅所有者の住居改築の資金調達を支援するプログラム。

注2:2020年までに商業ビルのエネルギー消費を20%削減することを目的とするイニシアティブ。同イニシアティブの詳細については、2011年2月3日号のNEDOワシントン・デイリーレポートを参考されたし。


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