ホワイトハウスが発表した

『永続する米国経済の建築のためのブループリント』の概要

 

2012年1月26日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

 

大統領選挙の年を迎えたバラック・オバマ大統領は2012年1月24日に上下両院合同会議で、現任期最後となる一般教書演説を行った。大統領の演説は、米国経済の強化と米国経済の公平性に重点を置く内容で、雇用創出や税法改正を中心とする一連の国内経済政策が提示された。

オバマ大統領の提案は、製造業;労働者の技能;エネルギー;米国の価値観に大きく分類されるが、ホワイトハウスはこれら提案を『永続する米国経済の構築のためのブループリント(Blueprint for An America Built To Last)』にまとめ、演説後に発表している。ここに、同ブループリントの概要を報告する。

 

I. 米国内に新雇用を創出する為のブループリント:アウトソーシングの抑制、インソーシングの奨励

  • アウトソースする会社が受ける課税控除(tax deduction)を撤廃し、米国外の雇用や利益に最低税額の支払いを義務付け、企業が米国に雇用を戻すことに見返りを付与する。
    • 海外移転で受ける優遇税制の撤廃: オバマ大統領は、全ての米国企業に海外での利益に対して最低税額の支払いを義務付けること、及び、他諸国が超低税率で米国企業を誘致することを防ぐことを提案。
    • 企業の海外移転費に対する課税控除の禁止、雇用の母国への移転に対して税額控除を提供: 企業が国内工場の閉鎖費用や海外移転費用で受ける課税控除を廃止し、海外工場を閉鎖して雇用を米国に戻す企業の移転費用に対して新たな税額控除(tax credit)を設けることを提案。

  • 米国内で製造する企業及び雇用を創出する企業の課税率を引下げる。
    • 米国内で製造業を拡大する新規インセンティブの設置: 次世代製造業の仕事が確実に米国内で創出されるよう、製造業者の税率の引下げ及びハイテク製造業者の課税控除額の倍増を提案。
    • 雇用喪失で大打撃を受けたコミュニティに新規投資を行う企業を支援: 企業の移転や軍事基地閉鎖で大打撃を受けたコミュニティで新工場や装置または生産に出資することを望む企業を支援する新たな税額控除を提案。

  • 貿易取締まりの強化
    • 貿易執行部の新設: オバマ大統領は、中国を含む世界各国の不公正貿易慣行を追及する連邦政府貿易施行部の設置を発表。
    • 貿易品検査の強化: 大統領は模造品や海賊品や危険な製品の米国流入を防止するため、国境での検査強化を提唱。
    • 米国企業の立場の[海外企業との]対等化: 中国等の競争国が自国企業の海外ビジネス獲得に不公正な輸出金融を提供する場合には、米国は米国企業を対等な立場にするために融資を行う。

  • 対外戦争終了で生じる予算節減の半分を米国[インフラ]再建に使用して雇用を創出:
    • 企業が米国内外に効率的に商品を出荷できるインフラストラクチャーを確保するため、オバマ大統領は米国インフラストラクチャー再生のための新たな努力を提唱。対イラク・対アフガニスタン戦争が今後6年間で終わりに近づくことで生じる予算節減の約半分をインフラ整備計画に使用し、残りの半分を債務の返済に充てることを提案。

 

II. 勤勉でリスポンシブルな米国民に公平な機会を与える為のブループリント

  • 熟練労働者200万人を訓練・斡旋する、コミュニティカレッジとビジネスの新パートナーシップ構築:
    • 多くの米国人が職を探しているにも拘わらず、多くの産業は特殊専門技術の必要な職を埋めるのに苦労している。米国は今後数年間で、ヘルスケアから先進製造業、クリーンエネルギーから情報技術に至る産業分野で数百万もの中度・高度熟練技能職を埋める必要がある。オバマ大統領は、雇用主が必要とする技能の提供を目的とした、ビジネスとコミュニティカレッジの連携を介して200万の米国人を訓練・斡旋する新たなイニシアティブを提案。


  • 米国人の復職を助長するため、職業訓練と失業保険を改正:
    • 時代遅れで効率の悪い失業保険と職業訓練制度を改正する必要がある。大統領は、労働者に緊急時連邦援助の受領資格評価を受けることを義務付けると同時に、労働者の新就職を支援する新規ツールを提供するという失業保険計画改正案の審議を進めるよう議会に要請。更に、失業者が必要とする情報と援助を一のプログラム、一つのウェブサイト、一つの場所で見つけることが出来るように、訓練・雇用サービスを合理化することを提案。


  • 生徒の勉学を助ける優れた教師の誘致、育成、支援、報酬提供:
    • 教育大学の改革
    • 教師の為に昇進の道を構築し、所得とパフォーマンスが密接に結びついていることを保証
    • 学校経営における教師の役割と責任の拡大
    • 試験結果だけでなく、多様な基準に基づいた評価システムの構築
    • 水準を引き上げ、優れた教師を守り、アカウンタビリティを促進するため、教師在職資格(tenure)を再編

  • 高校中退者の防止:
    • 生徒が卒業するか18歳になるまで高校に在籍することを義務付けるよう、米国全州に要求。成績の悪い学校に対する政府投資と義務教育年齢の[18歳への]引き上げは、高校中退の危機を抑え、生徒を学問上・職業上の成功の道へ導くことになる。


  • ワークスタディ(work-study)学生の倍増、及び、中産階級の為の大学学費の抑制:
    • 学費高騰の防止: 連邦助成を、学費の上昇を止められず、十分な価値を提供できない大学から他へ移行することを提案。
    • 学生ローン金利の倍増を防止: 大統領は、今年7月1日にStafford学生ローンの金利が倍増することを阻止するよう議会に要請。
    • ワークスタディ学生の倍増: 働きながら在学することに同意する大学生の為に、向こう5年間でワークスタディ学生向けの職を倍増することを提唱。
    • 4年生大学に対する最高1万ドルの学費税控除の恒久化

  • 21世紀移民制度の確立、及び、責任ある若者に対する米国市民権獲機会の提供

  • コミュニティを守り、天然資源を保存する仕事への退役軍人起用:
    • 退役軍人を警官や消防士として雇用するコミュニティや、退役軍人を公園・森林・天然資源の再建・美化作業に雇用するコミュニティに資金を提供する、新規の退役軍人雇用部隊(Veterans Jobs Corps)を提案。

  • 男女同一賃金を保証

  • 規制改正と減税延長を介した、スタートアップや中小企業の成功・雇用創出の支援:
    • スタートアップや中小企業は今世紀の新雇用の大半を創出。オバマ大統領は、起業家の融資獲得を妨げる規制を改正し、雇用創出や賃金引上げを行うスタートアップや中小企業に対する減税を拡大することを提案。

  • 研究開発への投資によるイノベーション促進の助長

 

III. 米国エネルギー資源を最大限に活用する為のブループリント

  • 約100年分ある埋蔵天然ガスの安全でリスポンシブルな開発の推進。これにより、市民の健康と安全を確保しつつも60万以上の雇用を支援:
    • 米国は2009年に、世界第一の天然生産国となった。オバマ大統領は行政府に対し、安全なシェールガス開発を保証するよう指示。第三者の推定では、この開発は2010年終焉までに60万以上の雇用を支援。

  • エネルギーの効率向上を製造業者に奨励。これにより今後10年間で1,000億ドルを節減:
    • 大統領は産業部門のエネルギー効率を改善するため、製造業者に対して工場の設備アップグレードや無駄エネルギーの排除のための新インセンティブを提供し、規制面の障壁を取り除くことを提案。これにより米国はエネルギー費を1,000億ドル節減し、海外からの輸入エネルギーを削減することが可能。

  • 米国内におけるクリーンエネルギー雇用の創出:
    • 大統領は議会に対し、2035年までに米国総電力の80%を風力・ソーラー・バイオマス・水力・原子力・天然ガス・クリーンコールといった再生可能資源で賄うため、クリーンエネルギー税額控除の法案、及び、電力会社向けのクリーンエネルギー使用基準の設定を進めるよう再度要請。議会がクリーンエネルギー経済達成への重要な手段に未だに取り組んでいないことから、大統領は、内務省に2012年末までに10ギガワットの再生可能プロジェクト開発を許可するよう指示。更に、海軍が1ギガワットという歴史上最大の再生エネルギー購入を行うことを発表。

 

IV. 米国従来の価値観に立ち返るためのブループリント: 国民全員が同一規則を守り、公平な税負担

  • 中産階級の税法を公正かつ簡略化し、百万長者や億万長者はバッフェット・ルールに則して最低30%を納税
    • 年収100万ドル以上の一家に最低30%の最低実行税率(minimum effective rate)を課すバフェット・ルール
    • 年収100万ドル以上の一家の課税控除を撤廃: 大統領は非効率で不公平な税控除を改正する努力の一環として、百万長者の租税補助金(住宅購入、ヘルスケア、定年退職、育児に対する補助金)の撤廃を提案。
    • 年収25万ドル未満の納税者の保護

  • 百万長者に対する補助金の中止:
    • フードスタンプ(政府からの食料補助)や失業手当給付金や農業補助金といった連邦補助金を百万長者に与えることを中止するよう議会に要請。

  • 給与税減税を延長することにより、勤労者世帯の増税を阻止

  • リスポンシブルな自宅所有者に住宅ローンを借り換える企画を与えるよう議会に要請:
    • 住宅ローンの支払滞納がないリスポンシブルな住宅所有者がローンの借り換えで年間3,000ドルを節約可能とする計画を議会に送付予定。

  • ロビイストと金銭の影響を縮減し、議会が米国民代表として働くことを妨げる手順を排除:
    • 米国議会メンバーのインサイダー取引禁止: 大統領は、議会メンバーが米国民に適用されるインサイダー取引法の対象となることを明確にする法案を要請。
    • 行政府と同じ利益相反(conflict-of-interest)基準を米国議会に適用
    • ロビイストによる政治献金集め、及び、大口政治献金の束ね役によるロビー活動を禁止: ロビイストが過去2年間にロビーイングした連邦議員候補の支援で政治献金を集めることを禁止し、同様に、大口政治献金の束ね役(campaign bundler)が過去2年間に政治献金を集めて支持した連邦議会議員にロビーイングすることを禁止するよう提唱。
    • 上院承認を必要とする指名候補者に対する認否2択の投票: 大統領は、すべの裁判官及び公職員の指名については90日以内に単純な認否2択で票決を受けるという規定を可決するよう議会に要請。
    • 議事妨害の改正により、上院の審議障害を排除

  • 均衡のとれた公平な赤字削減計画の可決

     

     

 

 

 

 

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