共和党大統領候補となるミット・ロムニー氏のエネルギー計画

 

2012年8月23日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

 

共和党全国大会(注:1)を目前にひかえたミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は8月23日、遊説先のニューメキシコ州ホッブス市で、2020年までに北米のエネルギー自立を達成すること念頭においた最新のエネルギー計画、『ロムニーの中産階級増強プラン:エネルギー自立(The Romney Plan For A Stronger Middle Class: Energy Independence)』を公表した。

ロムニー氏がホッブス市での遊説演説で、「我々の足の真下にあるモノを活用することによって300万の雇用が米国に戻ってくる。このモノとは石油、天然ガス、石炭である。」と語ったことからも明らかなように、同氏のエネルギー計画は国内エネルギー生産の大幅な拡大を柱とする提案となっている。

ここでは、ロムニー氏が提案したエネルギー・アジェンダの概要と、ロムニー計画に対するホワイトハウス、下院エネルギー・商業委員会のUpton委員長、及び民主党ランキングメンバーのWaxman議員の反応を紹介する。

 

I.  ロムニー氏のエネルギー・アジェンダ

  • 連邦政府所有地におけるエネルギー開発の管理権限を州政府に付与

    • 州政府に、自州内の連邦政府所有地において、あらゆる種類のエネルギーの開発・生産を監督するプロセスを確立する権限を付与する。
    • あらゆる種類のエネルギー開発に関する州政府の規制プロセスと認可プログラムは、連邦法の義務要件を全て満たすものとする。
    • 連邦省庁は州政府に最大限のフレキシビリティを認める緩やかな基準を設定し、その基準に従って州政府プロセスが適切であることを認定する。
    • 連邦政府は、州政府がSTRONGER(State Review of Oil & Natural Gas Environmental Regulations)やIOGCC(Interstate Oil & Gas Compact Commission)等の既存団体と専門知識やベストマネジメント慣行を共有できるよう、州政府エネルギー開発評議会(State Energy Development Council)の結成を奨励する。

  • オフショアを開発に解禁

    • バージニア州とノース・サウスカロライナ州の沿岸を手始めとして新海域を積極的に開発へと解禁する、5ヵ年オフショア・リース計画を新たに設定する。
    • 5ヵ年オフショア・リース計画に生産の最低目標を設定し、目標達成に向けた進捗状況に関する年次報告を議会に提出することを義務付ける。

  • 北米エネルギー・パートナーシップの遂行

    • Keystone XLパイプラインを承認する。
    • 国境をまたぐエネルギー投資やインフラ整備、及びエネルギー販売を促進するため、地域協定を確立する。
    • リスポンシブルなエネルギー生産を奨励するため、規制面における政府間協力を推進・拡大する。
    • 国境をまたぐパイプラインやその他インフラ事業のために、ファストトラックの規制認可手続きを導入する。

  • エネルギー資源の正確な評価

    • 数十年前の古い情報を早急にアップデートするため、地震調査とオフショア探査を許可する。
    • 陸上(onshore)の地質学的・地球物理学的情報を内務省と共有することを義務付ける。
    • 新規リース計画に含まれていない海域で新たに地震分析を行う。
    • 正確な資源一覧表の作成やデータシェアのために、カナダ及びメキシコと協力する。

  • 許可制度と規制の透明化と公正化

    • 雇用や業界に損失を与えず、石炭等の資源の利用を禁止することなく、環境保護を強化するために、環境法令や規制の改正を行う。
    • 明確な期限や時効の設定、及び連邦省庁間の調整強化等によって、環境評価プロセスを改善する。
    • 連邦省庁が、規制策定過程を回避したり、厄介な規制をかすために、「訴訟と示談(sue-and-settle)」という方法を使うことを防止する。
    • 政府を相手取った訴訟で、連邦政府が原告側団体に支払った賠償金を開示する。

  • 民間部門主導の新技術開発の促進

    • 政府投資を、市場の勝者予想に使うのではなく、エネルギー関連技術の全領域に及ぶ研究に集中させる。
    • 再生可能燃料基準(RFS)を維持し、配電網や燃料系統(fuel system)や車両フリートの多様化の妨げとなる規制障壁を撤廃することによって、エネルギー資源の間での競争と市場浸透を助長する。
    • エネルギー開発の拡大政策が、石油・天然ガス探査から採炭、風力・太陽光・水力発電・その他再生可能エネルギー施設の立地にいたるまで、広範なエネルギー資源を対象とすることを確認する。
    • 原子力規制委員会(NRC)に新たなデザインを承認し、認可された用地で認可済み原子炉設計を2年以内に許可する権限を付与することによって、原子力発電を活性化する。


II. ロムニー氏のエネルギー計画に対する反応(注:2)

  • ホワイトハウスのJay Carneyスポークスマン

    オバマ大統領のアプローチが米国のエネルギー未来に向けたエネルギー全活用(all-of-the-above)戦略であるのに対し、ロムニーのエネルギー計画は大手石油会社が作成した、ほぼ全面的に化石燃料生産を中心とする提案であり、再生可能エネルギー源を否定的に見ている。

  • 下院エネルギー・商業委員会のFred Upton委員長(共和党、ミシガン州)

    ロムニーのビジョンは国内の天然資源を尊重し、2020年までに北米のエネルギー自立を達成する軌道に米国を乗せるものである。Keystoneパイプラインのような直ぐに着工できるプロジェクトを妨害し、カナダ等同盟国との強力を拒むオバマ政権のアプローチを許すわけにはいかない。

  • 下院エネルギー・商業委員会のHenry Waxman議員(民主党、カリフォルニア州)

    ロムニー氏のエネルギー計画は「石油第一アジェンダ(oil-above-all agenda)」でしかない。ロムニー氏は、クリーンな再生可能エネルギーへの課税を引き上げる一方で、石油会社向けの数十億ドルという補助金を保護することを望んでいる。ロムニー計画は石油への依存度を増し、気候変動の事実を無視し、常識的な環境保護及びクリーンエネルギー計画を非難するものであって、米国を間違った方向へと導くものである。

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注釈:

1: 共和党公認の大統領・副大統領候補を決定する大会で、8月27日から30日までフロリダ州タンパ市 で開催される。

2: 参考:"White House says Romney's new energy plan 'dictated by Big Oil'", E&E News PM, August 23, 2012。

 

 

 

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