エネルギー情報局、「2014年エネルギー年次見通し」

早期リリース版を発表

2013年12月24日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(Energy Information Administration =EIA)が2013年12月16日に、「2014年エネルギー年次見通し(Annual Energy Outlook 2014 =AEO2014)」の早期リリース版(early release)を発表した。早期リリースは、現行法が2012年から2040年の間に不変化であるという仮定の下に、米国エネルギー市場の形成要素に焦点をあてた予測調査報告であり、2040年までのエネルギ市場動向の分析・検討のための根拠を提供し、米国のエネルギー政策・規定・規制の潜在的な変化を分析する出発点としての役目を果たしている。ここでは、AEO2014早期リリースの主要点と、形成要素の概要を報告する。

 

主要点

  1. 天然ガスと原油の国内生産が引続き拡大し、原油は日産960万バレルという1970年の記録に近づく。
  2. 軽量自動車(Light-duty vehicle =LDV)の走行距離の伸びの減速と燃費向上により、LDVのエネルギー消費が急減する。
  3. 2040年には天然ガスが石炭を追い越し、発電シェアで最大となる。
  4. 米国は2016年にLNG(液化天然ガス)の輸出国となり、2018年には天然ガスの輸出国となる。
  5. 国のエネルギー関連の二酸化炭素(CO2)排出は、家庭・運輸部門のエネルギー効率改善や発電部門の石炭離れから、2040年まで2005年水準以下を保つ。
  6. 実質国内総生産(GDP)の推定成長率は「2013年エネルギー年次見通し(Annual Energy Outlook 2013 =AEO2013)」での同時期予測より減速する。 

 

形成要素の概要

I. 経済成長

  • 2012年から2040年までのGDPの推定成長率は年間平均2.4%、労働力人口増加率は0.6%、生産性の伸び率は年間平均1.8%。

  • 2012年から2040年までの人口増加率は、AEO2013の推定よりも0.2%下方修正されて、年間0.7%。

II. エネルギー価格

  • 原油
    • OPEC諸国以外における原油他液体燃料の生産がAEO2013の推定レベル以上に拡大。特に、米国内の原油生産が2016年まで年間平均で日産80万バレル増の日産950万バレルに拡大。
    • ブレント原油スポット価格(Brent crude oil spot price)は2012年の1バレル当たり112ドルが2017年には1バレル当たり92ドルまで低下し、その後は徐々に上昇して2040年には141ドルとなる。
    • 米国内の自動車用ガソリン価格はAEO2013の推定よりも下方修正され、2017年の小売価格は1ガロン当たり3.03ドル、2040年は3.90ドル。輸送用ディーゼル燃料の小売価格もガソリンと同様の傾向をたどり、2017年に1ガロン当たり3.50ドルまで下がった後、2040年には4.73ドルまで上昇する。

  • 天然ガス
    • 天然ガスのHenry Hubスポット価格は、短期的には産業及び電力部門での消費量の増加により、その後は輸出需要の拡大によって、2037年までは上昇する。
    • 2018年のHenry Hubスポット天然ガス価格はAEO2013推定を77セント上回る、百万Btu当たり4.80ドル。その後、価格は安定傾向となり、2020年には4.38ドルに落ち着き、2040年には、AEO2013推定を4%下回る7.65ドルとなる。

  • 石炭
    • 採掘費用の高い埋蔵炭への移行による生産コストの増加が採炭技術の向上による経費削減を上回るため、石炭の坑口価格は2012年の百万Btu当たり1.98ドルから年間平均1.4%で上昇し、2040年には2.96ドルとなる。
    • 石炭輸送費の伸びが2012年の百万Btu当たり83セントから2040年の89セントと微増であるため、石炭価格は坑口価格よりも穏やかな伸びとなり、2012年の2.60ドルから年率1%で上昇し、2040年には3.43ドルとなる。
    • 米国炭の輸出は2005年の5千万ショートトンから2012年には1.26億ショートトンに拡大し、米国の石炭会社や石炭輸送会社にとって収入源としての重要度を増す。米国炭の輸出価格は年間1.2%で上昇し、2040年には6.40ドルとなる。

  • 電気
    • 2008年以来の天然ガス価格の下落により、2009年以降は電気料金は一貫して低下し、2012年には1キロワット時当たり9.8セントまで下がった。
    • 電気料金は燃料価格(特に天然ガス価格)の影響を受けるが、電気料金と天然ガス価格の関係には様々な要素が絡まって複雑であり、燃料価格の変化が電気料金に影響を及ぼすには時間がかかるほか、その影響も地域で異なる。
    • AEO2014のリファレンスケースでは、電気料金はAEO2013リファレンスケースの予測を上方修正し、2030年には1キロワット時当たり10.4セント、2040年には11.1セントになると推定。

III. 部門別のエネルギー消費 

  • 運輸部門
    • 運輸部門のエネルギー消費は、LDVによるエネルギー消費の大幅な減少により、2012年の26.7千兆Btuが2040年には25.5千兆Btuまで減少。
    • LDVによる総走行距離は2012年から2040年まで年間平均0.9%の率で伸びるものの、LDVの燃費向上によって、そのエネルギー消費は16.0千兆Btu(2012年)から12.1兆千Btu(2040年)に減少する。
    • ガソリン以外の燃料(ディーゼル、電気、E85、又はハイブリッド装置搭載)で走るLDVが年間販売台数に占めるシェアは、2012年の18%から2040年には22%(注:1)まで拡大する。
    • 大型トラック(Heavy-duty vehicle =HDV)は、産業活動の成長によってHDV走行距離が年間平均1.9%で伸びることから、HDVのエネルギー消費は5.3千兆Btu(2012年)から7.5千兆Btu(2040年)に増大する。
    • o 航空機のエネルギー消費は2.5千兆Btu(2012年)から2.7千兆Btu(2040年)に拡大。

  • 産業部門
    • 産業部門のエネルギー消費は2040年に、AEO2013の推定を1.5千兆Btu上回り30.2千兆Btuとなる。
    • 産業部門は2018年以降2040年まで、最大のエネルギー消費部門となる。
    • エネルギー最大ユーザーはバルクケミカルズ(bulk chemicals)工業で、そのエネルギー消費量は2012年に5.5千兆Btu、2040年には7.0千兆Btuまで増大する。

  • 家庭部門
    • 家庭部門エネルギー消費は2012年が20.1千兆Btu、2040年は21.5千兆Btuで、ほぼ一定にとどまる。AEO2014の予測はAEO2013推定を下回るが、これは人口増加率がAEO2013よりも下方修正されたこと、2009年の家庭部門エネルギー消費調査(Residential Energy Consumption Survey)のデータが取り入れられたこと等に起因する。
    • AEO2014では、同部門に外灯を追加したほか、多くの家庭用照明のコストと性能属性をEIAの委託レポートやDOEの市場調査報告に基いてアップデート。LEDの価格低下やアベイラビリティーの増加が、AEO2013推定に比較して、2020年以降のエネルギー消費を引下げることに繋がった。

  • 商業部門
    • 商業部門のエネルギー消費は2012年の8.3千兆Btuから2040年には10.2千兆Btuまで拡大。
    • 商業部門の床面積は2012年から2040年まで年平均1.0%で増大する一方、電力消費は、PCのエネルギー消費効率が予測以上に向上したことから、年平均0.8%の増加にとどまる。
    • 商業部門の天然ガス消費は2012年から2040年まで年平均で約0.7%で増大する。

IV. エネルギー原単位(Energy Intensity)

  • GDP 1ドル当たりのエネルギー消費は、製造業からサービス産業への移行、及び省エネ推進政策の導入の結果、2012年から2040年まで年平均1.9%で減少する。

  • 米国の人口が2012年から2040年までに21%増加する一方で、エネルギー消費は僅か12%の伸びとなる。1人当たりのエネルギー消費は2012年から2040年までに8%低下する。

  • GDP 1ドル当たりのCO2排出は急減し、2040年には2005年比56%減となる。

V. エネルギー生産と輸入

  • 原油・天然ガスの国内生産の増加、及び、エネルギー価格の高騰や徐々な自動車燃費改善に起因する需要減退によって、エネルギー輸入が米国エネルギー総消費に占める割合は減少する。

  • 国産原油供給量は2012年の日産650万バレルから2019年には日産960万バレルまで増加。2019年以降は国産原油供給量が減少するが、2040年までは約750万バレルで推移す2005年に60%に達した輸入原油への依存度は2016年に25%まで減少するものの、2022年から国内の原油生産が減り始め、2040年には輸入原油が32%まで拡大する。

  • 米国は2016年にLNG(液化天然ガス)の輸出国となり、2018年には天然ガスの輸出国となる。

  • 2012の1,016百万ショートトン(MMst)という国内石炭生産は年平均0.3%で増え、2040年には1,121 MMstとなる。

VI. 発電

  • 米国の電力総消費は2012年(3兆8,260億キロワット時)から毎年平均0.9%で伸び、2040年には4兆9,540億キロワット時まで増大する。

  • 電力需要増大の鈍化・価格競争力のある天然ガス・再生可能燃料利用促進プログラム・EPAの環境規制実施が将来の石炭利用を抑制し、石炭火力発電総容量は2012年の310ギガワットから2040年には262ギガワットへと縮小し、石炭火力発電が総発電量に占める割合は2012年で37%、2035年が34%、2040年には32%へと低下する。

  • 天然ガス発電が総発電量に占める割合は2035年が34%であるが、2040年には石炭火力発電を追い越して35%となる。

  • 原子力発電所の発電量は2012年の7,690億キロワット時から2040年には8,110億キロワット時まで拡大し、総発電量に占める割合は2040年に約16%となる。2020年には幾つかの既存原子力ユニットが閉鎖となることから、原子力発電容量が98ギガワットに縮小(注:2)するものの、2025年以降は数件の新規原子力ユニットが作動を開始し、2040年には102ギガワットに回復する。

  • 再生可能資源(在来型水力を含む)利用の電力が総電力に占める割合は2012年が12%で、2040年には16%まで増加。2012年から2040年までの発電量増加のうちの28%は、再生可能資源(水力発電を除く)での増大となる。AEO2014リファレンスケースは再生可能発電に対する連邦支援が法の定めに従って満期終了となることを想定しているため、これ等助成の延長は、再生可能発電に大きな影響を与えることになる。

VII. エネルギー使用に伴う二酸化炭素排出

  • 米国のエネルギー使用に伴う2040年のCO2排出は、AEO2013推定を1.6%(9,200万メトリックトン)下回る55.99億メトリックトンで、2005年比では7%減となる。

  • 運輸部門に伴うCO2排出が、新たな燃費規制やバイオ燃料使用義務及び消費者の行動変化によって2012年から2040年までは安定もしくは減少傾向となる一方で、産業活動に伴うCO2排出は2020年半ばには、1990年後期以来初めて運輸部門を上回ることになる。

  • 商業部門のエネルギー使用に伴うCO2排出は家庭部門よりも早いペースで増加し、2040年には排出量がほぼ同じとなる。

  • 発電部門では、石炭火力発電所が天然ガスや再生可能資源といった低炭素燃料の利用を増やすに伴い、2029年以降は石炭燃焼からのCO2排出が減少する。

 

 


注釈:

1: 2040年の年間販売台数の11%はエタノール・フレキシブル燃料自動車; 5%がハイブリッド電気自動車; 4%がディーゼル自動車; プラグイン・ハイブリッド自動車と電気自動車が各1%。

2: 2012年の発電容量は102ギガワット。

 

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