共和党の中間選挙勝利がエネルギー・環境政策に及ぼす影響

 

2014年11月10日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

2014年11月4日の中間選挙は、共和党が下院の議席を伸ばした(注:1)他、上院でも53議席(注:2)注獲得するという、予想以上の共和党勝利で終わった。2015年1月に開会する第114議会では、共和党が下院の多数党を維持するだけでなく、上院も多数党が民主党から共和党へと変わり、新たな上院多数党院内総務にはMitch McConnell現上院少数党院内総務(ケンタッキー州)が就任することになる。

McConnell上院少数党院内総務は米国第3位の石炭生産州であるケンタッキー州(注:3)選出の上院議員であり、中間選挙の選挙遊説では、環境保護庁(EPA)が今年6月に発表した「既存固定発生源の炭素汚染排出ガイドライン(Carbon Pollution Emission Guidelines for Existing Stationary Sources: Electric Utility Generating Units:別称、クリーン発電計画(Clean Power Plan))」(注:4)の規制縮小を最優先事項にすると宣言した他、EPA予算の大幅な削減も公約している。

本レポートでは、今回の選挙の結果、上下両院ともに共和党主導となる米国議会が米国のエネルギー政策や環境政策に及ぼし得る影響について考察する。


1. Keystone XLパイプライン

Harry Reid現上院多数党院内総務(民主党、ネバダ州)(注:5)は、Keystone XLパイプラインの承認法案を上院本会議に持ち込むことを拒んできた。第114議会では、本会議審議にかける法案の決定権が上院多数党になる共和党の院内総務に移ることから、同承認法案が本会議へ提出されることは確実であり、「Keystone XLパイプライン承認法案(上院第2280号議案)」に対しては、改選前でも既に56名の法案共同提案者(注:6)がいたことから、同法案の本会議可決に必要な60票(注:7)の獲得はほぼ間違いと予想される。

2. 石油・石炭・天然ガスの海外輸出

国産の石油・石炭・天然ガスの海外輸出拡大及び促進が、共和党指導層の最優先エネルギーアジェンダとなる。具体的には、@液化天然ガス(LNG)を輸出する許可手順(注:8)の迅速な可決;A原油輸出禁止の解除(注:9);B州・連邦政府の所有地で採掘した石炭を中国他アジア市場へ輸送することを目的とする石炭輸出ターミナルを西海岸沿岸に数箇所建設する計画、等。 

3. 石油・天然ガスの探査

連邦政府所有の土地や海域における石油・天然ガスの開発を更に拡大する為、共和党は、@環境影響調査を制限し;A内務省の国土管理局(Bureau of Land Management =BLM)に対して一層の連邦政府所有地を採掘用に競売することを義務付け(注:10);B石油・天然ガス生産地域における絶滅危険種保護法(Endangered Species Act)を緩和することを試みるものと予想される。 

4. 再生可能エネルギー 

保守派エネルギー団体や石油・天然ガス産業等の働きかけにより、共和党主導の議会では、@自動車用の再生可能燃料使用基準(Renewable Fuel Standard)を撤廃または規模縮小する努力を強化し;A風力エネルギーの生産税控除(Production Tax Credit =PTC)(注:11)の延長を否定し;B連邦省庁に対して在来型燃料よりも二酸化炭素フットプリントが低い代替燃料の調達と使用を義務付けている「2007年エネルギー自立及びエネルギー安全保障法(Energy Independence and Security Act of 2007)」の第526条項を撤廃することを、三大優先事項として追求するものと予想される。

5. ユッカマウンテン核廃棄物貯蔵所

共和党による上院の支配権奪取によって、ユッカマウンテン核廃棄物貯蔵所プロジェクトに賛成する共和党議員がエネルギー問題への管轄権を持つ上院委員会の委員長(注:12)に就くことから、同プロジェクト支持者の間には、Harry Reid上院多数党院内総務(ネバダ州)の反対で棚上げ状態にあった同プロジェクトが復活するのではないかという期待の声が出ている。一方で、エネルギー省(DOE)には同プロジェクトを支持しようとする高官の気配もないことから、行政府が望まないプロジェクトに議会が予算をつけた(注:13)からといって、それがユッカマウンテン核廃棄物貯蔵所の開発を意味することにはならないと見る者もいる。

6. EPAの火力発電所規制 

Mitch McConnell次期上院多数党院内総務(ケンタッキー州)は、新規火力発電所及び既存火力発電所から放出される炭素排出を削減するEPA規制の縮小を最優先事項に掲げている。第114議会では、上院の共和党が、気候変動に関するEPA権限を骨抜きにしたり、権限執行を大幅に遅らせる等の法案を可決する為に必要な60票を獲得する可能性はあるものの、オバマ大統領による拒否権を覆すだけの票(注:14)は上院にも下院にも存在しない。共和党が使用可能なオプションとして以下が考えられる: 
a) 連邦政府が発布した主要規定(注:15)をその施行前に評価する「議会評価法(Congressional Review Act)」を使い、EPA規定を禁止する反対共同決議(Joint resolution of disapproval)を上院と下院で可決。

b) 歳出予算法案に、EPAが火力発電所規制の策定・実施へ予算を使用することを禁じる付帯条項をつける。

McConnell現上院少数党院内総務は既に、EPAの新規火力発電所規制案を禁止するべく、オプションa) の使用を試みたが、政府説明責任局(Government Accountability Office)から今年5月に、規定が未だ最終化されていない段階での「議会評価法」の反対決議案は時期尚早であるという判断を下されている。従って、EPAが最終的な新規火力発電所規制と既存火力発電所規制を来春発表した後で、McConnell上院多数党院内総務、又は他の共和党議員がオプションa) を再び試みる可能性があると予想される。

McConnel現上院少数党院内総務は過去にも、EPA規制に反発する手段として歳出プロセス使用に言及していることから、オプションb) を使う可能性はあると予想される。EPA規制に大幅な変更や制限を求める付帯条項では、大統領の拒否権発動を引き起こす可能性が高いものの、Bracewell & Guiliani法律事務所のScott Segal氏は、対象を綿密に絞った変更(例えば、クリーン発電計画の中期目標に対する変更)であれば、オバマ大統領も連邦省庁の閉鎖を避ける為に妥協する可能性があるのではないかと述べている。

7. 大統領による高官指名

上院の議事進行妨害改革法(注:16)により、連邦最高裁判事の承認を除き、政府高官職への大統領被任命者の承認に必要な投票数は単純過半数へと変更された。裏を返すと、共和党が多数党となる第114議会の上院では、単純多数の51名の反対でオバマ大統領の指名者を否認できることとなり、気候問題や環境問題にとって極めて重要な役職への指名者が決まらず、重要部署が指導者のいないままになる可能性がある。

 

 

 

 


注釈:

1: 現在の米国下院の内訳は、共和党議員が233名;民主党議員が199名;欠員が3議席。改選後の第114議会の内訳は現時点(2014年11月7日)で、共和党議員が243名;民主党議員が178名;14議席が未確定。

2: 現在の米国上院の内訳は、民主党議員が53名;共和党議員が45名;無所属が2名。改選後の第114議会の内訳は現時点(2014年11月10日)で、民主党議員が46名;共和党議員が53名;1議席が未確定。。

3: エネルギー情報局(EIA)のデータによると、ケンタッキー州の2013年の電力は約93%が石炭による発電。

4: 同計画の概要については、NEDOワシントン事務所の2014年6月4日付けの調査レポート『環境保護庁、既存発電所の炭素排出削減を狙った「クリーン発電計画」を発表』を参照されたし。

5: 多数党院内総務には、本会議へ提出する法案を選択・決定する権限が付与されている。

6: 民主党議員11名を含む。

7: 上院での議事進行妨害(filibuster)を回避するために必要な票数。

8: 次期上院多数党院内総務となるMitch McConnell上院議員が、本会議にかけることを希望している法案の一つ。

9: 第114議会の上院エネルギー・天然資源委員会委員長に就任すると見られているLisa Murkowski上院議員(共和党、アラスカ州)は過去に、原油輸出禁止を2015年に解禁することは時宜に適った施策であると示唆した経緯がある。

10: Wilderness Societyが2014年10月に発表した分析報告によると、石油・天然ガス企業が連邦政府からリースしている3,600万エーカーの国有地の内、開発されて産出している土地は1,260万エーカー(35%)に過ぎないほか、石油・天然ガス企業に付与された認可採掘許可証(approved drilling permits)の6,700以上が未使用のままになっているという。

11: Harry Reid現上院多数党院内総務は2014年9月に、PTCの2年間延長法案を今年末までに上院本会議へ持ち込むと公約している。中間選挙2日後の2014年11月6日、アメリカンエネルギー同盟(American Energy Alliance)を始めとする66の保守派エネルギー団体はJohn Boehner下院議長(共和党、オハイオ州)とMitch McConnell上院少数党院内総務に書簡を送り、今会期の残余期間中にReid上院多数党院内総務がPTCも含めた税額控除延長パッケージを本会議にかけることがあっても、PTC延長を却下するよう要請した。

12: 上院エネルギー・天然資源委員会の新委員長にはLisa Murkowski上院議員(アラスカ州)、上院環境・公共事業委員会の新委員長にはJames Inhofe上院議員(オクラホマ州);歳出委員会のエネルギー・水資源小委員会の新委員長にはLamar Alexanderが昇格の見通し。

13: 共和党主導の下院は過去数年間にわたり、エネルギー・水資源歳出予算法案でユッカマウンテン核廃棄物貯蔵所プロジェクトへの予算計上を提案したが、Reid上院多数党院内総務の強い要求で同プロジェクトへの予算は歳出予算法案から削除されてきた。

14:大統領拒否権を覆す為には、上院の3分の2(67票)及び下院の3分の2(290票)が必要。

15 主要規定は、(i)経済への影響が年間1億ドル以上にのぼる規定;(ii)消費者や個別産業、連邦・州・地方政府省庁にとってコスト増大や価格上昇をもたらす規定;(iii)米国拠点の企業の競争力、雇用、投資、生産性、イノベーション、又は海外企業との競争力に大きな悪影響をもたらす規定、と定義されている。

16: 議事進行妨害(filibuster)を行使して、一連のオバマ大統領被任命者の承認をことごとく妨げる共和党の戦略に対抗する施策として、上院は2013年11月21日に、連邦最高裁判事を除く政治任用官を単純過半数で承認するという改革法案を52対48で可決。 

 

 

 

参照文献:

i. Amy Harder, "GOP-Controlled Senate Expected to Oppose Obama Energy Policies," Wall Street Journal, November 5, 2014

ii. Jeff Spross, "What A Republican-Controlled Senate Would Mean For The Climate," October 31, 2014, available at http://thinkprogress.org/climate/2014/10/31/3586676/senate-gop-climate-review/

iii. Jean Chemnick, "Republican Senate vs. EPA rules," E&E Daily, November 5, 2014

iv. Evan Lehmann and Nathanael Massey, "United Republican congress will pose chanllenges to EPA-s climate rule," November 5, 2014

v. Laura Barron-Lopez, "Groups press new GOP majority to reject wind tax credits," The Hill, November 6, 2014

vi. Claire Moser and Matt Lee-Ashley, "Payback: A First Look at the Fossil-Fuel and Anti-Environment Agenda of the Next Congress," Center for American Progress News, November 5, 2014, available at https://www.americanprogress.org/issues/green/news/2014/11/05/100549/payback-a-first-look-at-the-fossil-fuel-and-anti-environment-agenda-of-the-next-congress/

vii. Phil Taylor, "Energy companies stockpiling drilling permits across West," Greenwire, October 23, 2014

viii. Steve Tetreault, "GOP takeover means new push on Yucca, nuke waste," Las Vegas Review-Journal, November 7, 2014, available at http://www.reviewjournal.com/news/nevada/gop-takeover-means-new-push-yucca-nuke-waste

ix. 'Kentucky State Energy Profile,' U.S. Energy Information Administration, March 27, 2014, available at http://www.eia.gov/state/print.cfm?sid=KY

 

 

 

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