環境保護庁、クリーン発電計画に対する変更調整案を発表

 

2014年11月3日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

「既存固定発生源の炭素汚染排出ガイドライン(Carbon Pollution Emission Guidelines for Existing Stationary Sources: Electric Utility Generating Units:別称、クリーン発電計画(Clean Power Plan))」(注:1)に対する一般コメント期間(2014年12月1日まで)の終了が約一ヵ月後に迫った環境保護庁(EPA)が、これまでに利害関係者等から提起された懸念や提言を考慮に入れた上で自庁が検討しているクリーン発電計画の変更調整案を提示する為、10月28日にNODA(Notice of Data Availability)を発表した。

今回のNODAでEPAは、@2020年から2029年までの排出削減のコンプライアンス軌道; A構成要素(Building Block)方法論の幾つかの側面; B州別の二酸化炭素排出目標を算出する方法、という3つのトピックに関して、利害関係者等から出された懸念やアイディアを概説すると同時に、自庁で検討中の調整案を提示し、それらに対するコメントを求めている。今回発表されたNODAの要点は以下の通り:


1. 2020年から2029年までの排出削減コンプライアンス軌道

 a) 利害関係者からのコメント

  • 構成要素2(注:2)の施行により2020年までに発電量のシフトが達成されるという仮定に基いて中間目標が算出されているが、これは中間目標期間(2020年〜2029年)の初期段階において州政府に二酸化炭素(CO2)の大幅な排出削減を義務付けることになり、自州の排出目標達成の為に州政府にフレキシビリティを与えるという本来の目的にそぐわない。

  • フレキシビリティの欠如によって、コスト効率のよい排出削減戦略を活用することが困難となる他、2014年の極渦(polar vortex)で生じたような悪天候へエネルギーシステムが確実に対応することを保証できなくなる可能性あり。

 b) EPAが検討中の対応案  

  • 構成要素2: 既存の天然ガス発電所の利用率増加にあたり、付加的なインフラ改良(天然ガスパイプラインの拡張や送電網の改善、等)の必要性、及び必要なインフラ改良の程度に基いて、構成要素2の施行に関する段階的(phase-in)スケジュールを策定。

  • 新規石炭火力発電所の帳簿上の寿命(book life)(注:3): 帳簿上の寿命を、構成要素2の緩やかな排出削減軌道を策定する際に一つの根拠として使用するべきかどうか、または、どのように使用するべきか? 更には、上述の段階的アプローチのような代替的な排出削減軌道の策定が回収不能な投資コストに関する利害関係者の懸念に対応し得るかどうかを評価する際に、帳簿上の寿命を使用するべきかどうか、または、どのように使用するべきか?

 

2. 構成要素方法論の幾つかの側面

 a) 利害関係者からのコメント

  • 全ての天然ガス複合発電(NGCC)ユニットを設備利用率70%で稼動することは出来ない。

  • クリーン発電計画で提案された構成要素2のアプローチは、NGCC発電容量を殆ど又は全く持たない州と、かなりのNGCC発電容量を持ちながらも現在これを十分活用していない州との間に大きな格差をつくる。

  • 天然ガスには、EPAがクリーン発電計画で提案している天然ガス利用を超えた機会(建設中NGCCユニットの設備利用率拡大、NGCCユニットの新設、既存石炭火力発電所における天然ガスとの混焼)が存在する。

  • 構成要素2では、発電所から放出されるCO2の削減手段として天然ガスの利用を包括的かつ総体的に検討すべき。

  • 構成要素3では、州目標順守の為に州外の再生可能エネルギー(RE)利用を認めている反面、各州目標を州内REに基いて見積もっているが、これはアンバランスである。州目標の算出には、州間のRE取引を考慮に入れた目標設定方法論が必要である。

  • クリーン発電計画が提案しているRE目標設定方法では、RE資源開発にあまり取り組んでいない州と比べて、既に相当のRE投資を行った州に対して更に大幅なRE開発を義務付けることになる。

  • 地域別のRE目標を設定し、これを地域内の各州に配分することを検討すべき。

 b) EPAが検討中の対応案

  • 構成要素2の目的達成のため、化石燃料火力発電(fossil steam generation)(注:4)を州目標に組み込む全州(NGCC発電所を持たない州も含む)を対象として、石炭から天然ガスへシフトする発電量の切り替え最小値を設定。

  • 既存の石炭火力発電所における石炭と天然ガスの混焼を、石炭火力発電ユニットからNGCCユニットへの切替えに代わる現実的選択肢として検討。

  • 天然ガスインフラが殆どない州は、NGCCユニットへ発電量を移行する機会に恵まれないという懸念に応え、構成要素2の目標設定には、NGCC発電容量の州内の可用性ではなく、地域内の可用性を考慮。

  • 地域化(注:5)されたREアプローチ(regionalized RE approach): 複数州を含む地域における潜在的なRE可用性に基いて、各州のRE目標を調整。各州は自州プランの一環として地域内の他州のRE資源開発を盛り込むことが可能。

 

3. 州別の二酸化炭素排出目標設定方法

 a) 利害関係者からのコメント

  • クリーン発電計画が提案している各州の目標値を算出する方程式は、構成要素3及び4と比べ、構成要素2に対する排出削減最善システム(BSER)の適用に一貫性がない(注:6)

  • 中間目標と最終目標の算出にあたり、2012年を基準年として使っているが、一部の州や利害関係者にとって2012年は異例な年であった為、基準年として使用するのは不適切。

 b) EPAが検討中の対応策

  • クリーン発電計画が提案している当初案では、既存の化石燃料火力発電の発電量が一定不変(注:7)であると仮定し、REとEEによる発電増加量を、既存化石燃料火力発電量への増設容量とみなしている為、既存EGUから放出されるCO2総排出量(分子)を減らしていない。代替案として、以下の2つのアプローチを検討:
    • REとEEによる発電増加量は、化石燃料火力発電所の発電量を置換すると仮定し、REとEEの導入に伴い回避されるCO2排出量を2012年ベースラインの排出量から按分に(注:8)削減。
    • 上述のように排出量を按分で削減するのではなく、REとEEによる発電増加量は先ず化石燃料火力発電の発電量を置換し、更にREとEEによる発電増加量が残っている場合はガスタービン発電の発電量を置換すると仮定。対応する排出量も同順序で削減。

  • 各州の中間目標と最終目標を算出する為に使う基準年を2012年ではなく他の年にする。又は、数年間(例えば、2010・2011・2012年の平均値)の排出量平均値を基準年の数値として使用する。

  • 各州の中間目標と最終目標を算出する際に、全州に対して単一の基準年又は複数年の排出量平均値を使用するのではなく、州特有の事情を考慮して州毎に異なる年を基準年として使用する。

 

 

 

 

 

 


注釈:

1: EPAが2014年6月2日に発表した計画。この概要については、NEDOワシントン事務所の2014年6月4日付けの調査レポート『環境保護庁、既存発電所の炭素排出削減を狙った「クリーン発電計画」を発表』を参照されたし。

2: 当該発電装置(electric generating unit =EGU)の中でも、炭素集約度が高い発電所(石炭火力発電所)の発電量を減らし、炭素集約度の低い発電所(建設中の天然ガス複合発電所も含む)の発電量を増やすことで、クリーンな発電に移行し、排出量を削減。

3: EPAの当初モデリングでは、新規石炭火力発電所の帳簿上の寿命を40年と仮定している。

4: 石炭燃焼ボイラーや石油燃焼ボイラー、及び、天然ガス燃焼ボイラー。

5: 地域化の例として、EPAはクリーン発電計画で提示した、East Central;North Central;Northeast;South Central;Southeast;West;Alaska;Hawaiiという地域グループ化を挙げている。

6: 構成要素2では、NGCC発電量が1MWh増加するに伴い、石炭火力発電所の発電量を1MWh及びそれに対応する排出量を2012年ベースラインから削減。一方、構成要素3と4では、RE(再生可能エネルギー発電)とEE(需要側のエネルギー効率化)の増加量を2012年ベースラインの発電量(方程式の分母)に追加するものの、それに対応して削減する排出量を2012年ベースラインから差し引いていない。

7: 構成要素2によって、炭素集約度の高いEGU(石炭火力発電所)の発電量を減少して、炭素集約度の低いEGU(NGCC等)の発電量を増大しても、発電量自体は変化なく一定であると仮定。

8: 石炭火力EGU、石油・天然ガスEGU、NGCCとその他EGUの発電量を、過去の発電量データに比例して置換し、対応する排出量も按分で削減。

 

 

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