米加墨の3首脳、「北米気候・エネルギー・環境パートナーシップ」

行動計画を発表

2016年6月29日
NEDOワシントン事務所
松山貴代子

米国のバラック・オバマ大統領、カナダのジャスティン・トルドー首相、及びメキシコのエンリケ・ぺーニャ・ニエト大統領は6月29日、オタワにおける北米首脳サミットの席で「北米気候・エネルギー・環境パートナーシップ(North American Climate, Energy, and Environment Partnership)」を発表した。

本日発表されたパートナーシップの最重要項目は、2025年までに再生可能エネルギー他のクリーン資源(原子力、CCS技術、エネルギー効率を含む)で北米大陸全体の発電量の50%を賄うという新たなクリーン発電目標である。2015年にクリーン資源が北米大陸の総発電に占めた割合は約37%。 国別に見ると、米国は約32%(原子力を含む)、メキシコが22%、カナダが約80%(原子力を含む)(注:1)と、3ヶ国の間には非化石エネルギー資源の導入で格差があることが明白となる。

このクリーン発電目標が北米大陸全体目標であるということは、クリーン資源発電の導入率が一番低いメキシコが2025年までに自国のクリーン発電を2倍以上に増やすか、もしくは、米国とカナダがメキシコの不足分を補充しなければならないということを意味する。

米国エネルギー省のエネルギー情報局(Energy Information Administration =EIA)は、米国におけるクリーン資源導入率は2025年には41%(再生可能23%、原子力18%)(注:2)になると推定している。州政府の再生可能エネルギー利用基準(Renewable Portrolio Standards =RPS)を達成するだけで大量の再生可能発電が生まれることを指摘し、米国は2025年目標を達成可能であると評価する分析者(注:3)がいる一方で、国のクリーン発電計画(Clean Power Plan =CPP)が訴訟を乗り切ったとしても、開始時期の遅れで再生可能エネルギー開発がホワイトハウスの予想よりも遅れるために米国の目標達成は不可能であると指摘する批評家(注:4)もいる。

カナダが北米大陸で最もグリーンな送電網を有するとはいっても、発電量は年間600テラワット時と、米国(4,000テラワット時)の15%に過ぎない。米国とメキシコが自国の目標を達成しない場合に、その不足をカナダが補うといっても、その能力には限界があるのが実情である。クリーン発電目標を達成するためには、今後稼動する新規発電が確実に再生可能発電となるよう、3国の強靭なコミットメントが必要となる。

 

「北米気候・エネルギー・環境パートナーシップ」行動計画の主要事項は以下の通り:

クリーンで安全なエネルギーの推進

1. クリーンエネルギーとエネルギー資源統合の推進:

  • 2025年までに北米の電力の50%をクリーン発電とする目標達成に向けた努力。クリーン発電には、再生可能資源、原子力、炭素回収貯蔵(CCS)技術の他、エネルギー効率化を介した需要削減も含む。各国は、この地域的目標の達成に向けて、自国の諸条件に応じた行動に取り組む。

  • 越境送電プロジェクト(再生可能資源発電も含む)開発の支援。 
    3国は越境送電網が北米電力供給網の浄化・信頼度及び柔軟性の強化に重要な役割を果たすことを認識。 提案中または許可手続き中の6件のプロジェクトで、越境送電網のキャパシティは約5,000メガワット増となる見込み。 

  • エネルギーシステムを広範に統合するオプションを共同で調査・確認・実施。
    「4年に一度のエネルギー計画見直し(Quadrennial Energy Review =QER)」の第2報告書(焦点はエネルギーシステムの包括的見直し)を完成させる他、新たに「北米再生可能エネルギー統合研究(North American Renewable Integration Study)」に着手。

  • 政府イニシアティブの緑化及び高効率製品調達の奨励。
    米国一般調達局(U.S. General Services Administration)とカナダ公共サービス・調達局(Public Services and Procurement Canada)は2025年までにクリーン電力調達を100%にする意向を発表。

2. エネルギー効率の改善:

  • 家電機器基準のより良い調整と改善。
    3国は、省エネ基準や装置試験方法の6件を2017年末までに調整することを誓約。

  • エネルギー消費削減および競争力強化のため、ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム)自主基準を介して産業効率と商業効率を強化。
    2017年までにISO 50001取り込みの共通目標を設定する。

3. クリーンエネルギー・イノベーションの加速化、およびエネルギー情報に関する協力の推進:

  • Mission Innovation(注:5)の活用。
    下記の優先分野においてクリーン技術を促進する共同研究及び実証イニシアティブを特定する:
    • メタンガス排出削減
    • 炭素の回収・利用・貯蔵
    • 送電網とエネルギー貯蔵
    • ビルディングの空調と省エネ

  • エネルギー情報に関する北米協力の向上。
    越境インフラストラクチャーに関連する地理空間情報の拡大、太陽資源のスタティック(静的)マップ、再生可能資源の目録、関連する用語集の更新等。

 

短寿命気候汚染物質(Short-lived climate pollutant)の低減

1. 石油・天然ガス部門におけるメタンガス排出の削減

  • 石油・天然ガス部門からのメタンガス排出を2025年までに40-45%削減。

  • 政府計画・政策の策定で連携し、石油・天然ガス部門の排出削減に関する情報・プラクティス・経験を交換

  • 石油・天然ガス企業に対し、世界メタンイニシアティブ等の国際的努力、および国内イニシアティブへの参加を奨励

  • 自国のメタン戦略の策定


2. ブラックカーボン(煤煙)の削減

  • 産業や農業等の部門におけるブラックカーボン削減イニシアティブの強化。
  • 新型のディーゼル大型車両から放出されるブラックカーボン排出を2018年までに北米全体でほぼゼロに低減。
  • 国際的なパートナーや機関と協力し、遠隔コミュニティでディーゼルや石炭や薪に代わる効率的代替資源と再生可能エネルギーを展開。
  • ルーティン・ガスフレアリングを2030年までに皆無にすることを目指す、世界銀行のZero Routine Flaring by 2030イニシアティブの実施に協力。



クリーンかつ効率的な輸送の推進

1. 自動車のエネルギー消費、GHG、および大気汚染物質排出の削減

  • 自動車に関し、北米大陸共通アプローチの推進、エネルギー消費とGHGの削減、その他の重要な大気的副メリットの達成で協力。具体策は以下の通り:
    • 政府所有車両へのクリーンかつ高効率車両導入を加速化する。
    • 産業界と協力して、消費者によるクリーンかつ高効率車両の選択を奨励するイニシアティブを特定する。
    • 北米クリーン燃料補給回廊(North American clean refueling corridors)を構築するため、クリーン燃料補給インフラの開発を支援し、政府・民間によるインフラ投資を奨励する。
    • 新たなクリーン技術(先進自動車も含む)の研究・開発・実証活動を助長する。
    • 自宅、仕事場、およびコミュニティにおいてZEV燃料補給インフラへのアクセスを促進する。

  • 3国調整済みの、超低硫黄ディーゼル燃料大型自動車(ultra low-sulphur diesel fuel and heavy-duty vehicle)の排ガス基準を2018年までに施行。

  • 3国調整済みの、軽量自動車の燃費・GHG排出基準を2025年に、大型自動車の燃費・GHG排出基準を2027年に施行。

2. グリーン貨物輸送のベストプラクティス導入の支援

  • SmartWayプログラムを拡大してメキシコを加えることにより、北米におけるグリーン貨物輸送の調整・調和。

 

気候変動対応において国際指導力を発揮

1. パリ協定の施行の支援

  • パリ協定への加盟に対する3国のコミットメントを今年再確認。

  • 国別目標(Nationally Determined Contributions)を実施し、進捗状況を共有。

  • パリ協定に準じて、21世紀中期の長期的な低GHG排出戦略を策定。これら戦略の策定に関して3ヶ国ダイアログを実施。

  • パリ協定の炭素市場関連条項実施を支援。

2. 気候変動に対する国内適応努力および気候変動へのレジリエンスの強化

  • 北米気候変動・健康作業部会(North American Climate Change and Human Health Working Group)を介し、健康分野における越境関係の助長、および気候変動適応能力の拡大で協力を継続。

  • 環境協力委員会(Commission for Environmental Cooperation)を介し、3国の危険コミュニティ3ヶ所で猛暑を監視するリアルタイム症候群サーベイランス・システム(syndromic surveillance system)の開発で協力を継続。

3. G-20諸国による断固たる行動の奨励

  • 非効率的な化石燃料補助金を2025年までに段階的に廃止。

  • パリ協定に準じ、2020年までに低GHG開発戦略を策定。

  • 大型自動車の環境パフォーマンス改善へコミット。

  • 石油・天然ガス部門から放出されるメタンガス排出への対応。

4. クリーンエネルギー経済への適切な移行の促進

  • コミュニティへの戦略的な投資。

    経済の多様化、質の高い雇用の創出と維持、クリーンエネルギー経済の恩恵共有でコミュニティを支援。

  • 化石燃料の採掘・精製、およびエネルギー技術の製造・設置・運転に携わる労働者の基本的な原および権利の保護。

 

 

North American Climate, Clean Energy, and Environment Partnership Action Plan, June 29, 2016; EE News, June 28, 2016)

 

 

 


注釈:

1: Natural Resources CanadaのEnergy Fact Book 2015-2016によると、2013年の総電力の62.2%が水力、13.3%が原子力、3.4%が水力以外の再生可能資源となっている。条項が個人対象の税額控除、31条項がビジネス対象の税額控除、13条項がエネルギー関連の税額控除。

2: 2015年の米国発電量は4,000テラワット時。資源別では、石炭が33%、天然ガスが33%、原子力が20%、水力が6%、水力以外の再生可能資源が7%、その他1%。

3: Center for Climate and Energy SolutionsのDoug Vine上級研究員、M.J. Bradley & AssociatesのArlan Sahaクリーン発電政策アドバイザー、他。

4: ジョージ・W・ブッシュ元大統領時代にEPA大気局長を務めたJeff Holmstead氏。現在はBracewell LLPというロビー会社の弁護士。

5: 気候変動へ対応するために、政府及び民間のクリーンエネルギーイノベーションを世界規模で加速させることを誓約するイニシアティブで、米国・ドイツ・日本・カナダ他計20ヶ国が2015年11月30日に発表した。2016年6月1日に、欧州連合を代表して欧州委員会が参加。

 

 

 

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