エネルギー情報局、「2017年エネルギー年次見通し」を発表

2017年1月11日

NEDOワシントン事務所
松山貴代子

エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(Energy Information Administration =EIA)が2017年1月5日に、「2017年エネルギー年次見通しAnnual Energy Outlook 2017 =AEO2017)」を発表した。AEO2017は、National Energy Modeling System(経済変化やエネルギー需給・価格に基づく統合モデル)を利用して作成されたもので、既存技術の向上や一般に受け入れられている経済・人口動向に基づいたレファレンス・ケース(reference case)のほかに、石油・天然ガス資源力と技術力が高いケース又は低いケース、経済成長が高いケース又は低いケース、クリーンパワー計画(CPP)を含まないケース等の複数シナリオで、2017年から2040年までのエネルギー市場を予測している。

AEO2017が予測する、「発電」「運輸」「ビルディング」「産業」という各部門でのレファレンス・ケースにおけるエネルギー消費見通しの概要は以下の通り。

発電

老朽化した低効率の化石燃料発電所の閉鎖と再生可能エネルギー税額控除が、新規発電所建設の主要な牽引役となる。仮にCPPが実施されない場合であっても、安価な天然ガスと税額控除により、天然ガスと再生可能エネルギーが新規発電設備容量の主要エネルギー源となる。将来の発電ミックスは、天然ガス価格と電力需要の伸びに左右される。

  • 省エネ電気製品の普及、穏やかな人口増加、及び、エネルギー集約度の低い産業への移行により、電力需要の増加率は近年鈍化している。
  • CPPの下で老朽化した低効率な化石燃料発電所が閉鎖されることが、新規発電市場を支えることになる。
  • 資本コストの低下と税額控除に促進され、2017年から2021年までに約70ギガワットの風力・太陽光発電(PV)が増設される。
  • 新規の風力発電所は風力生産税額控除(PTC)が満期終了となる2023年末までに大半が建設され、その後は横ばいとなるが、PVは大幅なコスト削減と効率改善及び10%の恒久的な投資税額控除(ITC)によって2040年まで成長が続く。
  • 2030年以降に新設される発電設備の追加容量は、PVと天然ガスが主体となる。
  • 風力発電とPVは水力発電を追い抜き、再生可能発電の支配的な資源となる。
  • 事業規模PVのコストが分散型PVよりも安いことが一般的であるが、状況によっては分散型PVの方が経済的に魅力的な場合もある。税額控除の継続、コストの低下、及びピーク時の発電プロフィール(generation profile)により、事業規模PVと分散型PVの双方の建設が進む。
  • 原子力発電は、2018年から2040年までに既存発電所で4.7ギガワットの増設が行われるにとどまる。安価な天然ガス、再生可能発電の増進、電力需要の伸び悩み、及び高い投資コストのために、現在までに発表されていない原子力発電所が2040年までに新設される見通しはない。2040年までに約10.6ギガワットの閉鎖が見込まれており、原子力発電の純設備容量は減少傾向となる。
  • 2016年の石炭生産量は2015年比17%減で7億4,300万ショートトン。予想される天然ガス価格上昇により石炭火力発電所の競争力が改善し、石炭生産は2020年までは増産となり8億ショートトンに達するが、それ以降は下降傾向となり2040年には6億2,000万ショートトンまで減少する。(CPPが導入されない場合の2040年の推定石炭生産量は8億5,000万ショートトン)
  • CPPの石炭に対する影響は、石炭の質、天然ガスと石炭の地域別価格、再生可能発電の進出状況等が関与するため、地域毎に異なる。アパラチアと米国西部の石炭が市場シェアを失う一方で、内陸地域の石炭の市場シェアは2016年の20%から2040年には26%に拡大する。

運輸

運輸部門のエネルギー消費は2018年にピークに達し、その後は、燃費引上げが自動車や貨物輸送の走行距離増加を上回るために消費が減少する。

  • 軽量自動車と大型トラックによる走行距離の増加は、燃費基準の引上げで相殺される。軽量自動車は2018年をピークとしてその後はエネルギー消費が2040年まで減少し、大型トラックの2040年のエネルギー消費は2016年とほぼ同量となる。
  • 軽量自動車(小型トラックを含む)の平均燃費は2016年の1ガロン当たり22.2マイルから2040年には34.6マイルまで引上げられ、これがガソリン消費の大幅な削減に繋がる。
  • 安価なガソリンと消費者の嗜好により乗用車から小型トラックへの移行が進んでいるが、2018年以降は、乗用車に分類される前輪駆動クロスオーバー車の人気が高まり、小型トラックの販売は減少する。
  • 米国の軽量自動車販売台数に占めるバッテリー式電気自動車(BEV)の割合は2016年の1%から2040年には6%まで拡大する他、プラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)は1%未満から4%に、水素燃料電池自動車(FCV)は約0.6%へと拡大する。2025年のBEV、PHEV、及びFCVの予想販売台数は150万台に達し、軽量自動車予想販売台数の約9%となる。
  • 航空輸送の需要が高まり、効率改善にも拘わらず、ジェット燃料の消費は2016年から2040年までに40%以上増大する。

ビルディング

世帯数や業務用建物床面積が増大するにも拘わらず、電気機器の向上や省エネ基準強化により、住宅と業務用ビルのエネルギー消費は2016年から2040年までほぼ横ばい、または僅かな減少となる。

  • 家電機器やビルディング基準を導入・更新する法令や規制が、家庭・商業部門のエネルギー効率を引き続き向上させる。
  • 家庭・商業両部門で、冷暖房、温水、照明、冷凍のエネルギー消費が減少する一方で、その他用途(家庭部門では、効率基準の対象外である小型電気装置や家庭用防犯システム等の浸透;商業部門では、電話や通信技術のネットワークの増加)のエネルギー消費は増大する。
  • 国内の温暖な地域への人口移動が続き、冷却需要が増大する一方で暖房需要は減少するため、プロパンや灯油等の石油燃料の消費は家庭部門で減少し、商業部門ではほぼ横ばいとなる。
  • PV技術コストの低下とインセンティブにより、家庭・商業部門における分散型PVの導入量は2010年の2ギガワット未満から2040年には125ギガワット以上へと増大する。
  • 主に商業部門へ導入される小型風力発電や熱電併給(CHP)等のその他技術は、PVよりもゆっくりとしたペースで成長し、2040年には約13ギガワットに到達する。

産業

経済成長と比較的安価なエネルギーにより、エネルギー集約型の製造業;エネルギー集約型ではない製造業;非製造業という産業部門の3つのサブセクターにおけるエネルギー消費は、2040年まで増大する。ただし、技術進歩の結果、エネルギー集約度は低下する。

  • 産業部門のエネルギー総消費量は2016年から年率平均約1%で増大し、2040年には2016年比25%増の32兆Btuへと拡大する。
  • 産業部門における石炭消費は、CHPで使用される燃料が安価な天然ガスに大きく取って代わられるため、2040年までに24%減少する。
  • 産業部門の全体的なエネルギー集約度は、2016年から2040年まで年率約0.9%ずつ低減する。
  • 食品・紙・バルクケミカル・ガラス・セメント・鉄鋼・アルミニウム製品を含むエネルギー集約型産業は、産業出荷量の25%にすぎないものの、そのエネルギー消費量は全体の60%以上を占めている。
  • 産業用CHP(平均規模65メガワット)は、バルクケミカルや精製、紙や食品等、たくさんの蒸気を必要とする巨大産業で最も一般的に使用されている。産業用CHPは、2016年に購入電力の約0.5兆Btuを相殺。2040年には0.7兆Btuを相殺する。

     

 

 

Top Page